隻腕の師匠と捨て子の弟子 作:銀髪っ娘にTS転生したいおじさん
ある日の夜、レオンは師よりとあるモンスターの話を聞いていた。
「なるほど、つまり自慢の機動力とツノを合わせた突進攻撃がメインの虫なんですね」
「そう、だからこのモンスターは別名『徹甲虫』と呼ばれているのさ」
どうやらアルセルタスについて話しているようだ。しかしなぜこんな話をこんな時間しているのか?
「明日はおそらくアルセルタスのクエストが発生する。主に酔狂な美食家を名乗るアホが懲りずにもう一度依頼を発注するだろう。君にはぴったりだと思ってね。まあそういう事だ、しっかり準備をしておきたまえ」
そんな事を言いながら自室に戻るリーフ。しかしレオンは違和感を感じていた。
(準備を大切にする師匠が、初見の敵の説明を簡単にしただけ?)
そう、説明が少なかったのだ。いくら簡単に思えるクエストでもしつこいくらいの説明をしていたのに、今回だけ何故か大まかな概要した伝えなかった。
「え、あの、もう少し説明を…」
もっと情報を得るべく引き留めるが…
「じゃあね、明日は早めに行くといい。それじゃ、おやすみ」
止めることはできず、彼女はそのまま部屋に入ってしまった。
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「結局、朝も聞けなかったなぁ…なんでだろう?」
一晩たち、聞こうとしてもはぐらかされるだけであった。
しかし聞けない事をいつまでも嘆いている暇はない。なるべく予想を立てて、こちらで準備をするしかない。
「空を飛ぶらしいからとりあえず閃光玉は必須として…後はあとはもし状態異常の攻撃をしてきたときのためにウチケシの実を持って行こうかな」
ウチケシの実とは水、雷、火、氷、龍の5大属性やられを一粒で治す不思議な実である。中に属性エレメントがあると言われているが詳しいことは不明だそうな。
「こんなもんかな」
荷物を詰め終えたレオンは最後に中身を確認する。持っていくのは
回復薬10コ
薬草10コ
砥石20コ
リーフ特製おつm…携帯食料10コ
閃光玉5コ
ウチケシの実10コ
ペイントボール多数
こやし玉1コ
「なんかあったらこやし玉ってマーガレットさんが言ったから1コだけ入れてみたけど…使いたくないなぁ…」
こやし玉はモンスターですらその臭さに逃げるのだ。人であるハンターはもっと辛いのだ。
「さて、それじゃあクエストに出発だ!」
そうして、準備は完璧と言わんばかりのレオンは意気揚々と狩りに出かけた。
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「行ったかい…?」
レオンが出発した直後、ギルドにリーフが入ってきた。その顔は不安げで落ち着きがない。
「おう、行ったさ。…そう不安になるな。こういう事もハンターには必要なんだ」
答えるのはさらに後から来た男、我らの団の団長である。団長は説得するように畳み掛ける。
「リーフィール、お前の優しさは甘さだ。最初はいい、それが無ければハンターになる前に死んじまうからな。だがあいつはもう駆け出しじゃないんだ。手取り足取り教わってちゃあ、その場の判断力っつーもんが育たない。その力がないままではこの先、ハンターとして生き残れない」
「わかっているさ…わかっているが、それでも不安なんだよ…」
体が震える。もしこれで怪我をしたら?いや、怪我ならばいい。もしそれ以上の事があればーーーーー
「大丈夫だ」
頭に手が置かれる。なんだこれは?撫でられているのか?
「あいつを信じろ。あいつなら、何があってもやり遂げて帰ってくるさ」
「それは…何の根拠もない言葉じゃないか…」
「そうとも、この根拠も証拠もありゃあしない。だが…」
団長は一度言葉を切り、息を吸い直し言葉をつなぐ。
「根拠のない自信ほど、頼りになるものはないぜ?」
「わかったよ…それで、そろそろ撫でるのをやめてくれないかい?さすがにこの歳でそれをされるのは恥ずかしいものだよ」
「はっはっは!そのちょい生意気な口が聞けるっつー事は少しはマシになったな!」
団長の笑い声がギルドに響き、それと同時に朝組のハンターがやってくた。
そうして、 とある弟子を待つ師匠の心情など御構い無しに、今日もバルバレが活気付く。
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「おー、あれかー」
レオンは到着後、早速ターゲットを発見した。かなり特徴的な見た目ゆえにすぐに見つける事ができたようだ。
「うーん、ずーっと飛んでるな。これは閃光玉で奇襲から入るのが一番かな」
アルセルタスの特徴の一つにすぐさま気づき、考えうる限りの中で最高の有効打を与える。狩りの基本にして効果的な戦術だ。
「そうと決まれば…せぇい!」
善は急げ、という事で閃光玉を握りアルセルタスに走って接近する。
「キシャー!」
足音に気づいたようだ、飛びながら脚を上げて威嚇してくる。
「へ!隙だらけだぜ!そらよ!」
だがこちらはすでに狩ると決めている。そんな威嚇など自ら隙を提供しているのと同義だ。
「ギギィィ!?」
強烈な光がアルセルタスの眼前で炸裂する。突然の光に目をやられ、アルセルタスはそのまま地面に落ちていった。
「せい!はぁ!てぇぇや!」
落ちたアルセルタスを容赦なく斬ってゆく。頭はツノがあるから硬い代わりに、脚や腹はよく攻撃が通るだろうと踏んだが正解だったようだ。
「ギ!ギギィァ!」
だがいつまでも斬られているアルセルタスでもない。脚を振り回してレオンを引き剥がし、即座に立て直す。
「ギギ…ギィ!」
いきなり堕とされた挙句斬りまくられて怒り心頭のアルセルタス。それに応じるように鉄刀【神楽】を構える。
僅かな静寂。先に動いたのはレオンだった。
「ふぅぅ!」
アルセルタスに向かって一直線に走ってゆく。狙うは、ツノの下に隠れている顔である。
「キシャァアア!!!」
当然、アルセルタスも迎撃をしてくる。爪による連続攻撃だ。
威力もさることながら、さらに悪いことに見た目以上に脚が伸びるようだ。
「っ!あっぶねえ!思ったより長いな!」
寸の所で攻撃を避け、ゴロゴロと横に転がる。しかし避けきれなかったのか、腕から多少の出血がある。
だがそれに構っている時間はない。向こうは待ってくれないのだから。
「ギギギィ!!」
僅かな為の動作。そしてーーー
「ッッッ!!!な、んだあれ…早すぎるだろ!」
避けられたのは偶然か必然か。最初の爪攻撃を避けた時に、僅かにアルセルタスが動かなかったのだ。それを見たレオンは、何も考えずただ伏せた。
そしてその直後に超高速の突進が繰り出された。
「あんなの、初心者ハンターじゃ捉えられないぞ…」
見てから回避はほぼ不可能。ならば予備動作と直感で避けるしかないがそれはあまりにも難易度が高い。
「何か対抗策を思いつかないとやばいな…」
そう独りごこちながら閃光玉を投げる。幸いにもこの虫は学習能力が低いのでたま引っかかってくれた。しかしアイテムも有限だ。とにかく考えろ。
しかしーーー
「落ちろ!…ちくしょう!残り1個かよ!」
考えが浮かばないままどんどんと消耗していく。その事実に冷静さを欠いてゆき、焦りが見え始める。そしてレオンは焦りゆえに失念していた。
閃光玉は目が慣れる事に。
「しまっ!?」
「ギィ!」
アルセルタスが今までで一番の速度で突進してきた。
何も考えずに体を捻る。避けれなくとも避ける。その無駄とも言える足掻きが功を奏したのか、致命傷は避けられた。だがーーー
「が、がぁぁぁ!」
しかし油断した代償は大きい。
「ぐ…に、逃げなきゃ…」
右の二の腕から先と脇腹をやられた。多量の出血と猛烈な痛みに意識が遠のく。だがここで意識が途切れれば確実に死ぬ。
だが、敵が待ってれるはずがない。何かもぞもぞと動いた後に、こちらに爪を近づける。
「(やべえ…何か…何かないか…)」
だがもうすでに閃光玉はなく、動きを止めるものは一つもない。
万事休す、そう思った時だった。
「(ん…?これは…)」
何かが手の中に転がってきた。この微妙な感触、この柔らかさ。そして朦朧とした意識の中でも頭に入ってくる臭いは…
「っ!くらえ!」
意識が覚醒する。手に取ったモノをアルセルタスの顔面に投げつけてやる。
それはーーー
「ギャィ!?」
こやし玉だった。
「はぁ、はぁ、お守りが本当に役に立つとは…」
いきなり顔に糞を投げられたアルセルタスは大いに混乱し、微妙にフラつきながらも逃げていった。
「がふ…か、回復薬を…」
震える手で瓶を取り、中の緑の液体を一気に呷る。
「んぐ、んぐ、ぷはぁー!危なかったー!」
レオンは文字通り生き返るような気持ちであった。
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