隻腕の師匠と捨て子の弟子 作:銀髪っ娘にTS転生したいおじさん
アルセルタスとの死闘からしばらくして、レオンにとある依頼が舞い込んできた。
「雌火竜…リオレイアの狩猟…?」
依頼の内容は「バルバレに貿易物資を運んでいる途中に雌火竜が邪魔をしてくる。このままでは貿易路が使えなくなってしまう。だからなんとかしてくれ」という事だった。
これだけ見れば普通の依頼だ。しかしレオンにとっては特別なことであった。
「僕に直接依頼…?」
この依頼の重要な点は「依頼人がレオンに直接頼んできた」という事だ。今まではリーフの斡旋だったりギルドに行って選んできたが、今回は個人的に舞い込んできたわけなのだ。
「それは君が世間にハンターとして認められた証だね。実力あるハンターには個人的に依頼をしてくる者もいる。もちろんギルドからの許可は得ているはずさ。じゃないと密猟でギルドナイトが飛んでくるから」
ギルドナイト。治安維持やモンスターの捕獲を専門としている特殊部隊であり、彼らは力よりも技量を重視している。それを裏付けるかのように、ハンマーや大剣といった大型武器使いは皆無で、双剣や弓といった音が出ない軽い、または遠距離の武器を使う者が多い。
「ひょえ…僕はギルドナイトのお世話にはなりたくないです…」
だが上記は表向きの顔で、実際は密猟者や気の狂ったハンターを「処理」する対人エリート部隊との噂がある。特にギルドナイトの中でも一際強いとされる小隊はかなり黒い制服を着用しているため「影」と呼ばれ畏怖されているとかなんとか。
「まあ所詮は噂だ。それに何かやらかさなければ平気だとも。さて、話が逸れてしまったが…ともかくそのレイアは君を信頼しての依頼だ。失敗はできないよ〜?」
ニヤニヤしながらプレッシャーをかけてくる。おのれ性悪師匠め。
「緊張するなぁ…あ、リオレイアの特徴ってなんですか?」
それを聞き少し悩むリーフ。ここで教えてしまうか否か…まあほぼ初見で挑む試練は前にやったし、その後も特に情報がなくてもやっていけてたし大丈夫か。そう判断したリーフは雌火竜の特徴を伝える。
それを聞いたレオンは早速準備を始めるのだった。
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「リオレイア…別名『陸の女王』か…飛竜種なのに陸なんだな…」
目的地である原生林に向かいながら誰に言うでもなく呟く。その呟きはそのまま周りの自然に飲まれ消える…筈であった…
「そうよね!でも飛竜が陸で活動するならこっちもやりやすいってもんよ!」
「ああ!俺たちでぶっ飛ばしてやろうぜ!」
今回はなぜか、他のハンターが2人いたのだ。
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時は遡りギルド内にてーーー
「なあ!そこのお前、俺らもそのレイア狩猟に連れて行ってくれないか?」
レオンがクエスト直前の最終確認をしていると、そんな声がかけられた。
振り向いてみるとそこには二人の若い男女が立っていた。
「ええっと、あなた達は…?」
若干混乱しつつも彼らを見る。
男の方は深い緑の髪に黒い瞳、身長はレオンより高く170センチ後半といったところか。背にはバスターソードを担いでいる。
女の方はポニーテールにしている金髪に翡翠色の目をしている。160センチもないだろう小柄な体型も相まって貴族や王族の王女様のようだ。武器はウルクススのライトボウガン。
「ええーと、なんで僕のクエストに行きたいんですか?」
打ち合わせどころか初対面でいきなり連れて行ってくれ、と言われどうすればいいのかよくわからない。
「敬語じゃなくていいわよ!それと…実はアタシたちもリオレイアの素材が少し必要なのよ。それで一緒にってお誘いしたのだけど…迷惑だったかしら?」
別に迷惑ではなく、ただ少し驚いただけだ。しかし、個人に向けて出された依頼に他人を連れて行ってもいいものかと悩む。
「師匠、この場合って…」
こういう時ほど聞くべきだろう。するとリーフは特に拒否するでもなくーー
「いいんじゃないかな?君に来た依頼だが、君の意思で仲間を引き入れるのはありだよ。それに、仲間とやった方が成功率も上がる。とにかく私はその二人と共に行く事をオススメするよ」
その言葉に喜んだのは二人のハンターだ。
「やった!ありがとうお師匠さん!」
「これで四人で行けるな!」
しかし彼らはリーフも共に行くと思っているようだ。戦力的に大きいと思っているのか期待の眼差しを向けてくる。しかし…
「あー、期待してもらってるところ非常に申し訳ないけど私はいけないよ」
え、と驚いた顔をする二人。その反応に苦笑しつつ説明を続ける。
「私は彼に師などと呼ばれてはいるがHRは1で彼よりも低いのさ。だからそもそもいけないんだ、ごめんね」
二人はその事実に驚きながらも納得する。
「そ、そうですか…(十中八九あの左腕ね…あまり彼女を困らすのはやめましょう)」
「わかりました。では俺たちで行ってきます。(そうだな、どう見ても事情があるみたいだ)」
そうしてレオンは初のパーティーを組んでの参加となったのだった。
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原生林についてしばらくして、3人は水の流れる浅い川のエリアにいた。
「見つけたわ…やっぱり他のモンスターとは貫禄が違うわね」
緑がかった体に巨大な翼を持ちながら、脚も屈強に発達している雌火竜。その迫力は今までのモンスターとは一線を画していた。
「よし、それじゃあ打ち合わせ通りに行くわよ」
「まず僕が脚回りを避けながら攻撃して、アリスが各種援護をする」
「そしてできた隙に俺がでけえのをぶち込んでやる」
「うん、頼むよウィレム。君がこのパーティーのメイン火力だ」
レオン、アリスと呼ばれたライトボウガンの女ハンター、ウィレムと呼ばれたバスターソードの男の3人は打ち合わせの確認を終える。
「じゃあ僕が最初に出るね。3…2…1…行くぞ!」
合図と共にレオンが飛び出し、それに二人が続く。
「ギャオオオオオオオ!!!」
目の前にいきなり人間が出てきた雌火竜だったが全く動じず、むしろ咆哮をしてきた。その音量は対策をしていなければ思わず耳を塞いでしまう大きさだ。
対策をしていなければ、の話だが。
「へ、俺たちゃ全員耳栓してるのさ!そんなもん効かねえぜ!」
咆哮対策は万全の状態で挑んでいる彼らには全くの無意味な行為だ。
「そら!隙だらけだよ!」
足元に潜り込んだレオンが武器を振るう。鋭い切り傷が出来た上に、その傷は僅かに凍傷状態となっている。
「すげえ…これが属性武器!」
今までは無属性の鉄刀を使っていたレオンだったが、最近武器を強化して氷刀にしたのだ。その氷属性はなかなかのものでリオレイアにも有効打となっているようである。
「はぁ!そぉい!おっとぉ!あぶね!」
流れるように斬っていくレオン。しかしリオレイアもただでやられている筋合いもない。
自分の脚に張り付く小癪な弱者を払いのけるべく尻尾を振り回す。単純な行為だが、それ故に威力は保証されている。
「へへん!遅いよ!初見でも避けられるなんてノロマだぜ!」
レオンは逆に腹の下に進んでそれを回避し、柔らかい部分を一気に斬りつける。
「グォォォオアァァア!!」
弱点の部分に弱点属性の攻撃をされて
苦悶を浮かべるリオレイア。しかしまだハンターたちの攻撃は終わらない。
「アタシたちの事も忘れないでよね!レオンくん一旦退避よ!」
アリスがボウガンを構える。ライトボウガンはその名の通り軽いボウガンで、通常弾や貫通弾の火力が足りない事が多い。反面、属性弾や異常状態弾の扱いはヘビィボウガンや弓を凌駕する。そして何よりライトボウガンの特徴といえばーーー
「くらいなさい!氷結弾の『速射』よ!」
対応する弾丸を連続で素早く撃てるのだ。
「ギ、ギャオア!」
突然横っ面に冷たい弾を打ち込まれたリオレイアは混乱しながらもその元凶を見つける。
「オオオオオ!」
小賢しい邪魔者を排除するべく、陸の女王たる所以の突進をしてくる。
あの威圧感のある外見が高速で突進してくる姿は実に恐ろしいものである。
だがそこはハンター、きっちり横に回避してさらに誘い込む。そして誘い込んだ先にはーーー
「ガ!?ギギ、ギャ、グガ!?」
雷光虫を使った対大型モンスターのトラップであるシビレ罠が仕掛けてあった。
シビレ罠は強烈な電流を流し対象の筋肉を固まらせて動きを封じる設置型の罠で、その拘束力の強さは屈強な飛竜や獣竜種であっても数秒以上はかかる。
「かかったわ!ウィレム!」
そして数秒あれば充分である。
「おう!くらえ!おおおおああ!!」
一撃を重視する大剣、その中でも最も重い溜め攻撃を脳天に叩き込んでやる。
「グォォ!?オオオオオ!」
いきなり痺れた上に頭にとてつもなく大きな攻撃を食らったリオレイアはフラつきながら混乱している。その頭部は大きな傷を負い、美しい形を保持していた鱗もなくなっている。
「よし!部位破壊だ!」
「さすがねウィレム!」
一撃で部位破壊をする。それはたしかに凄まじいダメージだったのだろう。
そして有効打を与えた事に嬉しくなり、ついつい油断をしてしまった。
「おい二人とも!!来るぞ!そこから逃げろー!」
だから気づかなかったのだ。口から炎を溢しているリオレイアの攻撃に。
「っ!?アリス逃げるぞ!」
「え?」
その声にいち早く反応したウィレム。アリスを連れて逃げようとするが…
「グォォォォォ!!!!!」
ーーリオレイアの口腔が赤く光り直後に轟音と爆炎が彼らを飲み込んだーー
★ ★ ★ ★ ★
爆炎が二人を飲み込む。
「おい…嘘だろ…」
あんなのを食らってしまえば生き残る事はおろか原型を止めることすら怪しい。
初めてのパーティーで死人が出た?そんな想像をするだけで血の気が引いて行く。だがそんな想像は杞憂に終わったようだ。
「だ、大丈夫よ!アタシたちは両方ともなんとか生きてるわ!」
煙の中から生存を知らせる声が聞こえる。
「よかった…」
見れば二人は側の穴に退避していたようだ。さらにその穴をウィレムがバスターソードで蓋をする事によって炎を完全にガードしていたらしい。
「凄い発想だな…よく思いつくよ」
よくまああの土壇場でその案が思い浮かぶものだ。素直に感心してしまう。
「いや、お前が言ってくれなかったら俺たちゃ2人とも炭だぜ。本当に助かった」
「助けてもらった身で申し訳ないんだけど2人とも、アイツが来るわよ」
「ああ、もう油断はしないぜ」
「頼もしいわね。私も全力で援護するわ」
「さあ、行こうか!」
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「おや、戻ってきたかな?」
夕刻、レオンたちが戻ってきた。
防具はボロボロで激しい戦いだったことが伺える。しかし彼らはどこか清々しい雰囲気だった。
「あ!ただいまです師匠!」
レオンも自分を待ってくれる師匠を見つけたようで手を振っている。
最近はリーフがクエスト帰りのレオンを迎えに行くことも日課となっていた。
「ああ、おかえり。それにしてもずいぶんとボロボロだね?まあその様子ではきっちり勝てたんだろうけどさ」
「ええ、大変だったわ…」
「まさかあそこまでとはな…」
話を聞くとどうやら高圧力爆炎球を使用してきたようだ。それを聞いたリーフは大いに驚いてしまった。
「うそ!?あの技は火炎袋が強靭な上位以上の個体じゃなきゃ使えないはずなんだが…」
「ああ…それならアイツ、それで喉をやっちまったんだな。あの後1発もブレスをしてこなかったし…つかはよ帰らせて…」
早く帰って疲れを癒したいらしく2人はよろよろとした足取りでギルドを出ようとするが、それをリーフが引き止める。
「解散の前にちょっといいかい?何、大したことじゃないよ。今日のクエストは彼と組んでみてどうだったかい?」
目の前でそんなことを聞かれてギョッとするレオンだが意に返さないリーフ。
どんな回答が来るのか不安になるレオンであったがーーー
「正直、今までで一番だったわ」
「ああ、レオンがいなきゃ死んでる場面も多かったぜ。あのバク宙攻撃を教えてくれたのもレオンだったからな。マジであれば助かった」
かなり好評のようだ。少し照れる。
すると今度は団長が横から話をしてくる。その内容は、「お前らはなかなか噛み合っているからこれからも一緒にやってみてはどうだ」と言うものだった。それに対して彼らはーーー
「おう!これからもよろしく頼むぜ!」
「むしろアタシたちから誘おうか、って言ってたところよ」
嫌な顔一つせず快諾してくれた。
それを見てレオンも嬉しくなる。
「うん!こっちこそ宜しくね2人とも!」
ーーーここに新たなパーティーが出来上がったーーー
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「懐かしさを感じているのかのうリーフや?」
新たなパーティー結成を微笑ましく見守っていたリーフに、ギルドマスターが声をかける。
「そう、だね。昔を思い出すよ」
在りし日の思い出が蘇る。実に懐かしいものだ。
「ふむ…弟子もある程度は成長した。お主も、前線に戻るつもりはないかね?最近はモンスターも活発でなぁ」
そう誘いかけるギルドマスター。しかしリーフの返答は決まっていた。
「いや、遠慮しておくよ。それに私のような隻腕よりももっと強いハンターもいるだろうさ」
戻るつもりはないと、はっきりと伝える。
「そうか…ならこれ以上は無意味じゃのう」
そう言葉を切り、奥へと消えるギルドマスターとそれを見続けるリーフ。
その間には、僅かな哀愁が漂っていた。
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追加:前後編に分けていたのを統合しました。
モガ村、森について
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