隻腕の師匠と捨て子の弟子   作:銀髪っ娘にTS転生したいおじさん

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疲れた…


9話 砕竜爆破

ある日の早朝、レオンに一通の手紙が届いた。差出人はバルバレギルドからである。

 

「なんだろう?」

 

疑問に思いながら開封してみると…

 

バルバレギルド所属ハンターのレオン殿

 

この頃の目覚しい活躍やギルドに対する貢献に深く感謝を述べる。そして、これまでの功績を考慮し貴殿のHRを3に昇格した事を報告する。ひいては貴殿に一級危険モンスターの狩猟を許可する。

それでは貴殿のさらなる活躍を。

 

バルバレギルドマスター

 

どうやらハンラーランク昇格の知らせだった様だ。

 

「おや、ついに下位の中では最高ランクになった様だね。上位も割と目と鼻の先ってやつだ」

 

手紙を見ているとひょっこりとリーフが現れた。

 

「いやー嬉しいですねー。てか一級モンスターってティガレックスとかそこら辺ですか?」

 

「うん、轟竜や火竜、砕竜なんかが該当するね。私的には危険だからあまり行って欲しくないんだが…もう仲間達もいるし、ここでわがままを言う権利はないね」

 

そう言って笑うリーフ。どうやら遠回しに「好きにクエストに行ってこい」と言っている様だ。

その意思を汲み取ったレオンは師に感謝をしつつクエストの準備を始める。

 

「早速だね、何を狩る予定なんだい?」

 

「ブラキディオスです。爆破属性の太刀が欲しくて…」

 

いきなり砕竜に挑むと言うレオン。それに苦笑しつついつも通り事前情報を与える。

 

「それはまたいきなりハードだね。まあ爆破は相手を選ばないし大型モンスターには特に有効打となり得るから悪くはないか」

 

そうして砕竜の特徴の説明に移るリーフであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おはようございますー。早速クエストを…ってあれ?3人ともどうしたの?」

 

中に入ると3人のハンターが座っていた。

 

「お前、HR3になったろ?」

 

そう問いかけてくるのは緑の髪に大柄な大剣使いのウィレムである。パーティーを組む時の火力担当だ。

 

「実はね…アタシたちもなのよ!」

 

それに続く様に喜びの声を上げるのは小柄な金髪のライトボウガン使い、アリスだ。

どうやら2人とも昇格していた様で、一緒にクエストにいこうと誘いにきた様だ。しかし残り1人、ユクモ装備のハンター、アオイは昇格していない様だが…

 

「あ、私は既に3なんです。なので皆さんに同行することは可能ですので!」

 

そんな疑問を汲み取ったのか補足をするアオイ。なんと既に3だった様だ。

するとレオンはとある疑問が浮かぶ。

 

「あれ?じゃあ前に失礼な事をした時、僕たちはまだ2だったわけだけど…」

 

その意味を理解したのか残りの2人も青くなる。

 

「まさかアタシたち…」

 

「先輩ハンターに襲いかかってたのか…?」

 

何という事だ。失礼どころの話ではない。3人は流れるように脚を折り、頭を下げる。

 

「ええっと、皆さん?」

 

「「「申し訳ありませんでしたーーー!!!」」」

 

ユクモの村からさらに遥か東方の地より伝来した究極の謝罪奥義、スライディング=ド=ゲザである。

起源の詳細は不明だが、一説には大昔の冒険家であるサン=マルティンが伝えたと言われている。彼が著した「超東方見聞録」には『最上級の謝罪であり、これをされた側は絶対に許さなければならない』とあるらしい。

 

「そ、そのことはもういいですから!早くクエストに行きましょう!」

 

若干顔を赤くしつつ早口でまくしたてるアオイ。相当に恥ずかしかったようだ。

 

「そ、そうだな。時間もかかるかもしれないしさっさといこう」

 

「そうね、こんな茶番やってる暇はないわね。さ、準備しちゃいましょ」

 

「だね、こんなお芝居は後でいくらでもできるからね。ああ、どうやら少し消臭玉あると楽らしいよ」

 

やいのやいの言いつつ各員準備を進めていく。しかしーーー

 

「え、ちょっと待ってください!今のごめんなさいって茶番だったんですか!?ねえ!無視しないで!私に謝ってくれてたんじゃないの!?」

 

約1名、悲痛な叫びを上げるのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「砕竜の特徴は何と言っても爆破と殴打だよね」

 

アプトノス率いる乗り物の中で4人が話し合う。…1人は微妙に涙目だが…

 

「そうね、見たことはないけど腕が凄い発達してるらしいじゃないの」

 

「まさに火力の体現者だな!」

 

「あ、あと頭突きするらしいよ。しかも頭に爆破の粘液がめっちゃあるらしい。油断するとボン!だってさ」

 

頭突きの真似をしながら衝撃の事実を告げるレオン。何とあのモンスターは殴る上に頭突きまでしてくるらしい。

 

「本当に肉弾戦なんだな」

 

「そうです。しかし単純な戦い方故に決定的な弱点はありません。堅実に削るのが得策でしょう」

 

そう締めくくるアオイ。キリッとしようとしているが目が赤くなってなんとなく威厳がない。

ちなみに彼女はもともとHR3のため、砕竜と戦ったことがあるそうだ。もっとも話を聞くに、物資をほぼ全て使い果たした末に勝利した辛勝であったらしいが。

 

「それにしても…レオンくんのお師匠様は凄いですね。ブラキディオスの特徴を完全に把握してます。もしかして名の通った凄腕ハンターなのですか?個人的には見たことのない容姿でいらっしゃいましたが」

 

少しキラキラした目で問いかけてくるアオイ。自分も弟子になりたいのだろうか…?

 

「呼び捨てでいいですよ。それと、詳しくはわからないんです。何しろ師匠の狩猟はほとんど見たことがないので…あっても採集クエで絡まれた小型の相手だけです」

 

「それにリーフさんはHRが1って言ってたわね」

 

アリスが同意するように付け足す。

しかしそれに驚くのはアオイである。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。HRが1なのにブラキの事を知ってるんですか?」

 

どういう事だと困惑しているアオイだが、3人から補足説明が入る。

 

「あ、彼女は左腕が義手なのよ。だから今は一線を退いているって事じゃないかしら」

 

「ああ、師匠はいつも長くて大きいマントで体全体を覆ってるからね。ぱっと見じゃわからないね」

 

「ああ、なるほど…体の一部を欠損してもハンターを続ける方もいるにはいますね」

 

「ハンター様!そろそろ目的地ですにゃ!降りる用意をお願いしますにゃ!」

 

アプトノスを操作しているアイルーから声が飛んでくる。それを聞いた彼らは砕竜狩猟の覚悟を決めるのだった。

 

 

 

★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

「あっちぃ…溶ける…」

 

「さすが火山ね…半端じゃない暑さよ…」

 

一同は溶けていた。クーラードリンクには限りがあるから最初は節約して探そうという話になったのだが…

 

「これもう無理じゃない?そろそろ脱水症状の危険が…」

 

「そうですね…ケチって力尽きるなんて笑えませんし」

 

我慢の限界を迎えた4人は、懐からクーラードリンクを取り出し一気に飲み干す。そのお味は…

 

「「「「ごく、ごく、ごく、ぷはぁー…」」」」

 

「「「「まずい!!!!」」」」

 

お気に召さなかったようだ…だが材料が氷結晶と苦虫なのを考えると妥当な感想かもしれない。

 

「(あれ?氷結晶って溶けないんだよね?ならこのドリンクの液体部分はもしかして全部…)」

 

クーラードリンクの調合は苦虫と氷結晶でできるが後者は基本は溶けない。なのにクーラードリンクが液体ということは…

 

「(考えるのやめとこ)」

 

何かの闇を見てしまったような気がするレオンであった。

 

 

 

★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

「あれかな?」

 

「アレですね」

 

クーラードリンクのまずさを堪能したあと、彼らは幸運にもすぐに対象を発見できた。

 

「凄い見た目ね…話の通り、腕と頭が特に発達してるのね」

 

深い青色をした黒曜石のような甲殻に丸く長い腕と頭がかなり特徴的だ。さらにそこには緑色の粘液がうっすらまとわりついている。

 

「ようし、ではアイツを狩りに行こうぜ」

 

「あ、ちょっと待って」

 

早速狩りに行こうとするウィレムを制すレオン。すると彼は何やら弾丸のようなものを取り出してアリスに渡した。

 

「はいこれ、師匠から」

 

どうやらリーフがレオンに渡すのを頼んでいたらしい。見たことがない弾である。

 

「あ、ありがと?見たことないわね。リーフさんが作ったのかしら?」

 

「そうみたいだよ、どんな効果かは聞いてないけど『お守りがわりにでもしておいてくれたまえ。でも、もしどうしようもない状況に陥ったり、仲間がピンチの時はこれを使ってくれ』だってさ」

 

肝心の性能がわからないが、まあリーフが作ったものなら大丈夫だろう。アリスは素直に受け取り懐にしまう。

 

「よし、それじゃあ…」

 

「「「「行こう!!!!」」」」

 

ーーー砕竜討伐が開始されたーーー

 

 

 

★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

戦闘が開始されてから数時間、戦いは熾烈を極めていた。

 

「レオン!前に出過ぎです!そろそろ周りの粘液が爆発しますので退避してください!」

 

「わかってるけど…!ここで下手に引くと後ろから殴られる!」

 

「ガァァ!!」

 

砕竜の左ブローが横を通り、それをしゃがんで間一髪回避する。しかし攻撃は終わらず頭突きが来る。

地面に転がり避けれないレオンはあっけなく潰されてーーー

 

「調子に乗るなぁ!」

 

そんな事はなく、横から大剣のなぎ払いを脚に当てて注意をそらす。

 

「グォォォ!?」

 

巨大な刃を遠心力に任せて振り回す1撃はとてつもなく思い。小型モンスターならそれだけで原型すら留めない事もあるがーーー

 

「ガァァ!!!!」

 

ひるむ事なくむしろお返しとばかりに尻尾を振り回してきた。

 

「うわぁ!」「ぬぉお!」

 

直撃は防いだが余波で吹っ飛ばされてしまった。

 

「2人とも大丈夫!?回復弾を撃つからこっち来て!」

 

叫ぶアリスが新緑の弾丸を発射、優しい回復の弾が体にあたり、傷が癒える。

 

「ありがとうアリス」

 

「お礼は後で、今はアレが先よ」

 

そういいながら砕竜を睨むアリス。

 

万全の体制に4人パーティーで挑んだが、戦況は芳しくない。

砕竜の動きが思った以上に早いのだ。あの大きさからは想像しにくい身の軽さでこちらを追い詰めてくる上に、一撃は重い。しかもーーー

 

「アイツ、怒ると粘液がすぐに爆発するようになるの卑怯だろ!」

 

砕竜は怒り状態となるとどうやら粘液の細菌が活性化するらしく、何か行動をとるたび爆発を起こしていた。おかげでレオンとウィレムは近づく事すら叶わない。

 

「ほんとだぜ!あれじゃあ近づけねえよクソッタレ!」

 

男2人が愚痴をこぼす。レオンの口調が少々荒くなっているところを見るとかなりイライラしているようだ。

 

「私は双剣なので鬼人回避でなんとかなりますがお2人は厳しそうですね…」

 

双剣はスタミナを消費して攻撃速度と回避性能を向上させる鬼人状態になれる。さらに一定以上攻撃を当て続ける事で半鬼人状態が続くわけだ。

しかし太刀や大剣はそのような事は出来ない。

 

「せっかく師匠から鬼人斬りを教わったのに…これじゃあ当てられない!」

 

太刀にも双剣と似たような事ができる。もっとも回避性能でなく攻撃力を高める大技であるため今回は出番がないが…

 

「このままじゃジリ貧ね…あの頭を破壊できればまだなんとかなるんだけど…」

 

どうやらこの個体は頭突きを多用するようで、砕竜の代名詞である殴打よりも攻撃頻度が多いくらいだった。

 

「でも、頭の破壊は厳しそうですね…」

 

険しい顔で砕竜を見るアオイがこぼす。確かに破壊できれば大きな戦力ダウンとなるのだろう。しかし攻撃に使われる頭は硬い上によく動く。とてもじゃないが狙えない。

 

「俺のため攻撃も3発はいるだろうな…しかもそれをぶち込む隙が隙がねぇ…」

罠は一個しかなく、ここで使ったところで何も変わらない。4人に重い空気が漂う。打開策がない。どうしようもないのか?そう思った時、ふとアリスが思い出したように何かを取り出した。

 

「これに賭けるしかなさそうじゃないかしら?」

 

「これは…」

 

取り出したのは1発の弾丸。クエスト直前にリーフからと、レオンが渡した謎の弾だった。

 

「師匠の道具か…」

 

「ええ、どんなものかは全くわからないけどリーフさんが作ったなら必ず何かあるわ」

 

しかしそれにアオイは反対する。

 

「待ってください。何が起こるかわからない未確定要素の塊に頼るのは危険すぎます。ここは何か別の…」

 

「無理だな、物資もそろそろ尽きそうだしそもそも打つ手が他にない。これでダメならさっさと逃げてリタイアだな」

 

その反対をウィレムが押し切る。アオイはしぶしぶながらも納得したようだ。

 

「…わかりました…しかしこれでダメならリタイアですからね?」

 

「大丈夫よ、なんとかなるわ。根拠はないけどね」

 

そういいながら金の髪を揺らしながら装填するアリス。絶望的な戦況でありながら、その顔は明るかった。

 

 

 

★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

「いたな…結構気が立ってるぞアイツ」

 

行動を再開してから少しして彼らは砕竜を見つけることができた。その身体は細かい傷が大量についており、片腕は酷い裂傷が走っていた。

 

「こう見ると結構痛めつけてますね私たち…」

 

「だね、でもあれだけ攻撃してあの程度のダメージなんだから怖いよ全く」

 

「おしゃべりはそこまでよ。確実に当てるためにシビレ罠を見えないところに仕掛けて、そこに誘い込むわよ」

 

彼らはリオレイアの時と同じことを計画しているようだ。

 

「よし、角に罠を設置しました。罠にかかったら全員離れましょう。何が起こるか全く予想がつきませんから。アリスも射程限界とまで言わずとも距離をとってください」

 

「よし、じゃあアオイ、行こうか」

 

「ちっ、この作戦じゃあ大剣の俺は足手まといだからな。その代わりきっちりやってくれよ!」

 

動きが遅くなるのであえなく除外となったウィレムが激励を飛ばす。

それに会釈をして飛び出る準備に入る。

 

「3…2…1…行くぞ!」

 

「はい!」

 

敵の目の前に飛び出る2人。対する砕竜は邪魔者がまた来たと言わんばかりに殴りつけてくる。

 

「避けるだけです!攻撃は最低限で!」

 

「わかってる!」

 

おびき寄せるだけ。攻撃は最低限で絶対に被弾をしない。

 

「グァァァァァァ!!!」

 

ちょこまかと避ける人間にイラついたのか大技の構えを取る砕竜。しかし、それことが狙いであった。

 

「来た!殴りつけ突進!」

 

移動距離の長いこの攻撃は、普段は広い有効範囲を持つ厄介な攻撃だが今回に限っては待ち望んでいたものだった。

 

「グガ!?ガ、ガァァ、グ!」

 

攻撃に夢中だった上に怒り状態だったためか、罠が見えなかった砕竜は綺麗にかかってしまった。

強烈な電気が筋肉を否応なく固まらせて動きを封じる。そしてーーー

 

「「「アリスーーーーーー!!!!」」」

 

「食らいなさい!とっておきよ!」

 

ワルキューレファイアが一際大きな炎を吹いた。銀色をした美しい弾丸は寸分たがわず砕竜の頭部に着弾した。

するとその頭部が白く光り始めーーー

 

「っ!?全員伏せろぉ!!」

 

誰の声か危険を知らせる怒号が響いた直後、ズドォォォォォォォン!!!!という、今までの砕竜の爆発がおもちゃと言いたくなるような大爆発が起きたーーー

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「それで…お前はあいつらに何を渡したんだ…?」

 

重い静かな声がカンッ、カンッという鍛鉄のに混ざる。声の主は加工屋ゲールであり、今朝リーフが渡した特殊な弾について聞いているようだ。

 

「アレかい?アレは…なんというべきか…そうだね、名前をつけるとしたら『自滅誘導弾』って言ったところかな?」

 

「自滅…?なんなんだそれは…」

 

何やら物騒な名前が出たと、手は止めずに聞き返す。

 

「アレは被弾した対象の特殊能力を一気に増加させ、暴走させる代物さ。もちろん身体能力を除いてね?」

 

つまり火竜であれば発火器官が、雷狼竜であれば背の増幅器官が、そして砕竜であればまとわりつく粘液の爆破力と唾液の活性能力が暴走する。

 

「おい…それは…」

 

あまりに危険なものにさすがのゲールも手を止める。その目はリーフを非難しているようだ。

 

「もちろん量産もしないしレシピも公開しないさ。あれ一つでいろんなものが崩れるからね」

 

量産などするわけがない。アレの危険さはよく知っていると念を押す。

 

「はぁ…気をつけろよ…それとメンテナンスは終わった…」

 

「ご忠告痛み入るよ。さて、メンテナンス代はいくらだい?」

 

「ほとんど直すところはない…最低料金の1500zだ…たまには使ってやれ…」

 

先程とは別の意味で避難をするゲールだったが、それに答えるわけにはいかなかった。

 

「ありがとう…でももう、私は使わないことを祈るよ」

 

「ところで…」

 

帰るときになってゲールが問いかける。

 

「その弾丸は銀で塗装してあったようだが…何か意味はあるのか…」

 

「…いや?何も、ないとも。」

 

その答えに僅かな間があったことにゲールは足を踏み入れなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ゲホッゲホッ…みんな大丈夫?」

 

大爆発が起こった後、レオンは全員の安否を確認していた。

 

「ええ、私とウィレムは離れていたから平気よ。アオイは…」

 

「私も平気です。しかし今のは…」

 

そう言って砕竜がいた場所を見る。

その場所は巨大なクレーターとなっていた。周りには岩の残骸が散らばっている。

 

「なるほど…周りにあったいくつかの火薬岩も全て誘爆したようですね」

 

そのせいでここまで大きな爆発になったようだ。

 

「それにしてもすげえな…」

 

ウィレムは感心したように呟く。しかしそれは爆発の規模に向けていったものではなくーーー

 

「グルルル…」

 

尚も倒れぬ砕竜に向けて言ったものだった。

 

「「「まだっ!?」」」

 

完全に仕留めたと思った3人は慌てて振り返る。しかしウィレムは全く動じてない。

 

「落ち着け…よく見ろ、あいつはもう立っているのが精一杯だろう」

 

砕竜は満身創痍だった。自慢の腕も頭も無残な姿になり、脚は片方機能しておらず引きずっている。尻尾も半分千切れている状態だ。しかしそれでもその眼だけは一切の油断もなくこちらを捉えている。

 

「本当に感服するぜ…だからせめてもの敬意だ。俺だけで、お前に挑んでやる」

 

死にかけでも引く気配がない砕竜にタイマンを挑むウィレム。その宣戦布告は彼なりの敬意の表し方だった。

 

「ガァァァァァ!!!」

 

それに呼応するように咆哮する砕竜。瀕死とは思えない力強い咆哮だった。

 

「へへっ、すげえよ」

 

そう呟きウィレムが走る。

 

「ガァ!」

 

砕竜が迎撃するように拳を振り下ろす。しかしあまりにもダメージが蓄積された体では、ウィレムを捉えることはできなかった。

 

「ぜぇい!」

 

拳を避け、腹を斬る。鮮血を吹き出し苦悶する砕竜は尾を振り回す。しかしウィレムは溜めを始め真っ向から受けてたった。

 

「おおおおおああああ!!!」

 

大剣が振り下ろされた直後、先程より大量の血が飛び散ると同時に巨大な塊が宙を舞う。それは、砕竜の尻尾であった。

 

「グ!ガァァ!?」

 

激痛に混乱する砕竜。今までのダメージも相まってついに倒れこむ。そしてーーー

 

「俺の、勝ちだ」

 

静かな勝利宣言とともに、大剣が砕竜の首に触れた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おや、おかえり」

 

ボロッボロの4人を迎えてくれたのは、例の弾丸を作ったリーフだった。

 

「「「「ただいま…めちゃくちゃ疲れた…」」」」

 

砕竜討伐にかなり時間がかかり深夜のためにネコタクが使えなかったので、彼らが帰った時間はすでに翌日の朝になってしまったようだ。

 

「ふふ、お疲れ様。聞きたいこともあるがとりあえず汚れを落として飯と睡眠を取るといいさ。話はその後でも聞けるしね」

 

「「「「はーい」」」」

 

そう言って各自家に戻っていった。

 

「お主、最近はあまり余計な心配をしていないのう」

 

また静かになったところでギルドマスターが話しかける。

 

「そうかい?いや、そうかもね…彼らが強くなってるのがわかるからかな」

 

「それもあるが…いや、なんでもないわい」

 

途中まで言ってなぜか言葉を切るマスター。それにリーフが抗議をする。

 

「なんだい?言ってくれなきゃわからないよ」

 

しかし相変わらずどこ吹く風のマスターは減らず口を叩くのみだ。

 

「わかる必要がないから言わないんじゃろう。言葉というのは返品がきかんからのう」

 

「確かにね。情報屋の利用金が高いわけだよ…」

 

「そうじゃのう…なかなか悪質な商売じゃわい」

 

軽口を交わした後に訪れる僅かな沈黙。しかし不思議と重圧はなかった。

 

「「ふふ…」」

 

静かな部屋にお互いの笑い声が響く。

 

ーーー今日もバルバレはいつも通りだーーー




3回分くらいを一気に書いた気がする。
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