隻腕の師匠と捨て子の弟子 作:銀髪っ娘にTS転生したいおじさん
複数戦は描写がきつい。上手く書ける方、本当に尊敬します。
「え…?ギルドナイト…?」
とある日の昼下がり、大通りから少し離れた小さなマイハウスでそんな声が響いた。その声は何かを疑っているように聞こえる。
「そ、ギルドナイトさ。なんでも砂漠の調査にやってくるらしいんだ。そんなもん調べて何が面白いのかわからないけど…まあそんな訳だ、彼の案内でも頼むよ」
そんな気持ちなど御構い無しに続けるリーフ。というか情報量が多い。なんで自分が相手をしなければならないのだ。
まさか…
「師匠…今までありがとうございました。あなたが何処へ行っても僕はあなたの弟子です。だからちゃんと罪を償ってきてくださいね」
そうか、遂にこの人はやらかしてしまったのか。アーメンアーメン。
「何を言ってるんだい!?どうやら君はものすごい誤解というか偏見があるみたいだね!彼が私たちのもとに来るのは彼が旧友だからさ!何もやましい事などないとも!」
心外と言わんばかりにまくし立てるリーフ。心なしかふんす、という音が聞こえる。だが残念な事に、そんなドヤ顔をされても前科があるので説得力皆無なのだ。
「いや師匠この前その義手に仕掛けを組み込もうとしてましたよね?」
「うぐっ」
そう、このポンコツ師匠は何を血迷ったのか左腕にとあるものを仕掛けようとしたのだ。それはーーー
「どう考えてもリオレウスのブレス機構を組み込むとかアウトだろ!何と戦ってるんだあんたは!」
火竜の火炎弾を発射する機構だった。
例のごとく「猟人日記」に感化された彼女はすぐさま加工屋に言って駄々をこねていたらしい。
そのあとすぐに加工屋のゲールから救援要請がきて無理やり引き取らせたのだ。
「な、なにおう!考えてみたまえ!腕から巨大な炎が出るとかロマンじゃないか!憧れないのかい!?」
リーフは逆ギレしつつロマンを問いかける。確かにアレはロマンだったしカッコいいとも思った。しかし大問題が一つあったのだ。
「どう考えても過剰火力でしょうが!あの威力は法に触りかねませんよ!」
ば火力だったのだ。具体的には1発で小さな村が消し飛びかねないぐらいのものだった。
後から聞くに、なんと増強剤を入れていたらしい。おかげで大変な火力になってしまった。おまけに熱が排出出来ずに腕が赤熱してしまう欠陥付き。
「その後はザボアザギルの氷ブレスとか入れてたし…」
「うぐぐ」
次々と前科を言われて反論ができない。しかしこのまま丸め込まれるのは癪に触る。ここはもう実力行使しかない…!
「聞いてますか師匠!…師匠?」
反応がないリーフを訝しんで振り返ると、そのには手をわきわきさせてる彼女が居た。
「な、何ですか師匠…?」
「なにもなにも、君は私を怒らせたんだー!」
「な、何をする!やめろ!やめてくださ、ひゃは!ひゃはははは!ひひひ!まっ、やめ、くすぐったい!許して!ごめ、あはははは!!」
がぉーと飛びかかってくるリーフ。おもむろにマウントポジションを取ったと思うといきなりくすぐってきた。
絶妙な力加減に加え、撫でたり押したりする緩急のついたくすぐりは抵抗すらさせずに獲物を弱らせる。
「いいや!やめないね!君が謝るまで私はくすぐるのをやめない!」
意味のわからない宣言をされてしまった。抜けようともがくが力が抜けて抜ける気配がない。背に腹はかえられぬ、ここは素直に謝るしかないだろう。そう思った矢先だった。
「失礼します!ギルドナイト様がご到着なされ…ま…した…」
ガチャリと家のドアが開いて2人の男が入ってきた。その男は始めこそハキハキしていたものの徐々に語調が弱まって行く。
ちなみにもう1人の方はというと…
「あなた方は…昼間っから不純な行為を働いてハンターとしての自覚はないのですかね?」
氷海よりも冷たい目でこちらを見ていた。
★ ★ ★ ★ ★
「全くあなたは…あのような事をしては誤解を招くに決まっています。オレであったから良かったものの、他のギルドナイトだったら事情聴取ですよ?」
「め、面目次第もございません…」
あの後、2人はとある店で遅めの昼を取っていた。あれからこのギルドナイトの誤解を解くのにかなりかかってしまったのだ。自業自得ではあるが…
「でもほんとにギルドナイトが来るとはね。しかもオットー、わざわざ君が来るとは驚きだよ。砂漠の調査ならハンターに任せておけばいいんじゃないのかい?」
そう問いかけるリーフ。ギルドナイトは治安維持の側面が強い。密猟や犯罪行為を働く輩を取り締まる役割がある。わざわざこんな事をする理由がないのだ。
「何でもハンターとしても強くないとダメらしいですよ。両方の技量が高ければ優遇されますし、そのような者が多ければギルドナイトの権威も上がります」
「ギルドナイトらしからぬ我欲にまみれた理由だねぇ」
どこの国も、いつの時代も権力争いというのは終わらないものだ。若干呆れてしまうリーフであった。
すると何となく気まずくなったのかオットーは話題を変える。
「それで調査内容なんですけどね、どうやらデルクスが異常に発生してるらしいです。ダレンモーラン説も浮かびましたが少し前に撃退されてるらしいので結局現地まで足を運ぶことになったってわけです」
砂漠地帯での異常は大抵デルクスに現れる。今回は逃げるように大量に発生しているらしいので大方、大型モンスターが出たのだろう。
食事を待ってる間の通しをツマミながら語るオットー。
「それで本題なんですけどね、あなた方のうちから片方と一緒に行きたいのです。現地のハンターと同行しなきゃいけないのでね」
どうやら1人ハンターを同行させる義務があるようだ。なるほどわざわざ2人のところに来た理由がわかる。
「なら、さっき一緒にいたあの弟子を連れて行くといい。なに、見た目はひよっこだが実力は本物さ」
「ふうん、弟子ですか…ギルドマスターから聞いてはいましたが…あなた、変わりましたね」
そう言ってオットーはこちらを見る。その目には色入りな感情が混ざっていたが、それを出さずにポーカーフェイスを維持する。
「そうだろうね、よく言われるさ。あの子の存在は私が思っているより大きかったようだ」
「ふむ…では、クエストに行ってみてはいかがでしょう?何なら、今回の調査でオレ達と一緒にーーー」
「いや、遠慮するよ。私は…私のように惰性でハンターをやっている人間は、採集クエストで充分なのさ」
「そう、ですか…」
穏やかな顔をしながら静かに語る。
それっきり会話は途切れ、二人の間には沈黙と時折食器のなる音が響くのみだ。
★ ★ ★ ★ ★
翌日、オットーとレオンの2人は日が昇る前から砂漠に来ていた。
「うう…眠い…しかもまだ日が昇ってないから寒い…」
すると、愚痴をこぼすレオンは批判じみた目線を送られながら苦言を呈される。
「弱音を吐かない。砂漠は広いんですからこの時間から行くべきなのですよ」
「そうですけど…」
そんな事はわかっている。だが、理屈で説明されたところで心が納得しないのだ。若干居心地が悪くなったのでそそくさと話題を変える。
「そ、それは置いておいて…オットーさん、ギルドナイトなのに大剣なんですね。しかもみた事ないや」
そう言ってオットーに目線を注ぐ。彼の装備は支給品であるギルドナイトの装束に大剣という絶妙にミスマッチな組み合わせだ。
さらにその大剣が三角形のプレート状の金属で刀身に文字が彫られているという、独特の雰囲気である事も違和感に拍車をかけている。
「はい、本来は片手剣や双剣何ですがね。今回は何が出ても討伐していいとのことでしたので得意の大剣できました。あと申し訳ないが、この武器の詳細はお伝えできませんね」
どうやらその武器は何か機密情報があるようだ。まあレオンは大剣使いではないのでこれ以上は聞かないでおいた。
「おっと…遠方にデルクスの群れですね…戦闘用意をしましょう」
そんな雑談をしていると、件のデルクスが現れたようだ。
まとわりつく眠気を飛ばしてディオスソードを構える。
そうしている間にも奴らのとの距離は狭まって行く。
「そろそろ接敵です…行きますよ!ってあれ?」
「んん?無視された!?」
いざ立ち向かおうとした2人だったが、何故かデルクスは脇目も振らずに彼らの横を通り過ぎてしまった。
その異常な光景に困惑する2人。
「デルクスが無視…?いや、これは何かから逃げている?」
頭を高速で回転させ、感じ取った僅かな違和感から結果を得る。そしてその結果から最終的な結論を導き出すのだ。その答えはーーー
「っ!その場から離れてください!」
「!?わかりました!」
一瞬戸惑ったもののすぐにその場から離脱する。その直後、轟音とともに砂が巻き上がった。
「あ、あれは…」
立ち込める砂煙の中から出てきたのは…
「キェェェェェェェ!!!!」
「ここでディアブロスに遭遇するとはね…!」
ーーー角竜ディアブロスであったーーー
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「角竜が出没したとのう…なかなか厄介な強敵が出たようじゃ…」
角竜出現の報せにバルバレギルドは僅かに緊張している。
だが最も心配なのはやはりリーフだろう。先程から爪をかじり続けておりら既に深爪の領域になっているがまだ止まらない。
「リーフや…血が出ておるぞ。不安なのはわかるが自分を傷つけるのは辞めるのじゃ」
それを見かねたマスターが注意を促す。それを聞いてようやくリーフ爪かじりをやめた。
「すまないね…だが角竜は想定外だったよ。…やはり私が行くべきだったのか…くそ!」
後悔と怒りから机を叩いてしまう。その怒りの矛先は自分であるのだ。
「うむ…仕方ない、小型の撃龍船を援軍として1隻出すとしよう。名目はギルドナイトの救出にするのじゃ。それはら後腐れはないじゃろうからのう」
「え…いいのかい…?ありがとう…!ぐすっ…ありがとう…!」
下位ハンターのために撃龍船が出されるという異例の対応にリーフは困惑しつつも涙を流しつつ感謝をする。
「うむ、じゃが撃龍船が彼らの所まで到着するのに少々時間がかかるのう…」
頼むから持ってくれよ、とマスターは祈るのであった。
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「レオンくん!突進がきます!」
「ぬわぁぁぁ!!」
鋭い警告の直後、爆鎚竜と同等かそれ以上の質量と速度を持つ物体が通り過ぎていった。進路上にあった岩や枯れ木は粉々に粉砕されている。
「グォォ…」
「くっそぉ、こいつ図体に反して早い!」
2人は苦戦していた。実力不足というよりは相性の問題だろう。
防御と速度と攻撃力の3拍子が揃っている角竜だが、厄介なのはその防御と速度だった。
「攻撃が当たりませんね…」
そう、避けられるのだ。大剣の溜め攻撃は隙が大きすぎて全く当たらない。
「でも僕の太刀じゃあ弾かれてしまいますね」
それなりの速度で攻撃できる太刀は、一撃の重さが足りない。攻撃を弱点に当てないと弾かれるのだ。
「かなりまずい状況ですね…ギルドに伝書鳩を飛ばしては起きましたが、我々2人に援軍が来るかどうか…」
しかし、そんな哀れな人間の考える事など知った事ではないとまたもや突進の構えを取る。単純だが、それ故に効果は絶大だった。
「くそ!また来ますよ!」
「させるか!オットーさん目を!」
随分と抽象的な警告ではあったが、その意図を察したオットーは即座に目を覆う。瞬間、朝の薄暗さを切り裂く光が走った。
「グ!?」
突進をしようと力を溜めていた時に視界を奪われてしまった角竜はバランスを崩し倒れ込んでしまう。
「ナイスですよ!さぁ、今までのお返しです!おおおお!」
「はい!はぁ!せい!そりゃあ!」
ここぞとばかりに攻撃を叩き込む2人。重い大剣の攻撃と太刀の流れるような連撃が角竜に襲いかかる。
いくら角竜の甲殻が堅いといえどここまで攻撃をくらえば罅の一つや二つは入る。そしてその罅に、オットーが大剣の切っ先を入れ込み、一気に横に倒す。
「剥がれろぉぉぉぉぉぉ!!」
テコの原理により、角竜の頭の甲殻はベリベリと嫌な音を立てつつ剥がれた。その痛みから逃げるように角竜が地面に潜る。だがエリア移動をしないことを見るに攻撃の機を伺っているようだ。ならばーーー
「甘いですね!出てきなさい!」
キィン!と甲高い高周波の音が響く。その音源は音爆弾である。
地に潜り、発達した聴覚を持つ角竜にとって効果は絶大であった。
「ヴォアア!?」
驚きのあまり中途半端に体を出してしまい、さらには心ここにあらずといったようにボーッとしている。
「すごい!よし、さらに攻撃だ!」
その隙を逃すはずもなく、2人は攻撃を続ける。
しかしここで角竜が僅かに震えた。
「っ!?レオンくん引いてください!何かきます!」
その変化にも気づいたのは経験だろう。多くのクエスト経験がソレを見逃さなかったのだ。では経験が多くないハンターは?
「え?がっ、」
角竜がその巨体を震わせて角をぶん回す。
レオンは、ガムシャラに振り回される角に巻き込まれてしまった。角竜にとってはまとわりつくコバエを振り払った程度のことだが、その威力は絶大だった。
「レオンくん!」
血を撒き散らしながら宙を舞うレオン。
おっとーは即座に武器を捨てキャッチした。見ればレオンの傷は内臓まで達している。息も絶え絶えだ。
「くそ…これじゃあ逃げられない…」
撤退に荷物となるのは負傷したレオンだ。ではここでレオンを置いて自分だけ帰る?
そんなことは、できなかった。
「彼のおかげで友人が立ち直りそうなのです…!ここで彼を死なすわけにはいきませんね!」
そう言ってレオンにとっておきの粉塵を使った後、彼を横にして武器を拾う。
「さぁ、続きといきましょうか!」
「ヴォォォオォ!」
低い呻き声と共に巨大な角が突進してきた。先程よりも数段早い。しかしオットーは今までの戦いで死角がある事に既に気づいていた。
「足元、貰いますよ!」
懐に潜り込み大剣を切り上げる。
それに対して角竜は巨大なアイアンメイスのような尻尾を振り回してくるが、それも姿勢を低く保てば当たらない。
「ガバガバ…ですね…!ぐ!」
しかしその尻尾も時々地面を叩きつけてくる。それは懐に居るだけでは避けることができず、距離を取るしかない。
「ちっ、せっかく詰めたのに…!」
また一からやり直しだ。だがまた潜り込めばいいだけのこと、そう思った矢先だった。
奴が、タックルをしてきたのはーーー
「っ!?ごあ!」
あまりに早い予備動作に反応が遅れてしまった。紙一重で避けたものの、避けきることはできずに被弾。大質量が体にあたり20メートルほど吹き飛ばされてしまった。
「しまった…がは…くそ…」
一撃で戦闘不能。あんなに善戦したのにたった一回のミスで終わる。
圧倒的な種族の差。生まれつきのパワーの格差に儚い抵抗は水の泡と化す。
ああ、目の前に角が見える。ここで終わるのか…意識が遠のく。
「(申し訳ありません…レオンくん)」
そっと、心のなかで謝った時だった。
「1番2番!大砲てー!」
聞きなれない声が聞こえた。誰だ?
回らない頭を回転させるが思考がおぼつかなくわからない。ただ一つ確信できることは…
「援軍…ですか…」
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太陽の光が瞼を貫通して目を刺激し、意識が戻り始める。
「う、ううん…ここは…?」
見たことのない場所だ。どうやら自分はベッドにおり、包帯をまかれているようだ。朦朧とする頭で考える。
確か調子付いて攻撃していたところに角竜の反撃を…
だが生きてるということは助かったようだ。
その事実に安堵していると、近くでもう一つの寝息が聞こえてきた。
「師匠…?」
自分の近くでリーフが寝ていた。椅子に座っているというとこは寝落ちだろうか?
「お、起きたか」
そんなことを考えていると、部屋に団長が入ってきた。
その後、いろいろ話を聞くに援軍が来て角竜を仕留め、自分たちを救出してくれたそうだ。オットーはレオンより軽傷であるそうだ。
「すまんなぁ…どうやらアレは上位個体だったようだ」
だからあそこまで強かったのかと納得する。
そんな話をしていると、リーフがもぞもぞし始める。そろそろ起きそうだ。
「おっと、俺はこれで退散するよ。そいつに礼を言っときな。お前さんが寝てる2日間、ずっとそこにいたんだ」
「え!?わかりました」
なんと常に側にいてくれたらしい。レオン申し訳ないと思いつつも、それ以上に嬉しかった。
少しして、うにゅ、と言いながらむくりとリーフが起き上がる。
寝ぼけているのか少しこちらをぼーっと見た後…
「あ!だ、大丈夫だったかい!?ひどい怪我をしていたんだ!どこか痛むかい!?」
ものすごい勢いでまくしたててきた。その慌てようは見ている側が笑ってしまうくらいに。
「な、何を笑ってるんだい!…まあ大丈夫ってぽいかな…でもしばらくは安静だからね」
落ち着いたリーフはしばしの休養を伝える。そしてしばらくの無言が続いた後ーーー
「おわ、し、師匠?」
いきなりリーフが抱きついた。顔を埋めているが啜り声が聞こえる。
「もしかして、師匠泣いてます?」
「ぐすっ…少し、こうさせてくれ…」
弟子の無事に安堵する師の気持ち。それを拒否することなくレオンは無言で抱きかえした。
砂漠の強い陽の光はカーテンを通り抜け、柔らかな加護となって2人を包み込む。
ーーー病室には静かな泣き声が響き続けた。ーーー
もっと濃い戦闘描写をしたい!てきない!くそ!