隻腕の師匠と捨て子の弟子   作:銀髪っ娘にTS転生したいおじさん

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少しの間、投稿頻度が遅れまする。
なんか新キャラいっぱい出てるけどまとまるかな。


13話 気狂い

肌を焼くような強い日差しが容赦なく人々を照りつけ、しかし活気で満ち溢れる砂漠の交易都市バルバレ。

そんないつも通りの日の朝、一通の手紙がギルドが届いていた。

 

「ハンター リーフィール宛

 

上位ハンターであるアンネローゼがG級に昇格。それに伴い、彼女の拘束を解除し、拠点間の自由移動を許可した。

ついては短期間ながらこのバルバレに来訪することとなった旨を貴殿に伝える

 

ハンターズギルド総本部 ハンター人事課」

 

「……………は?」

 

それを読んだリーフは固まりながら抜けた声を上げてしまった。

 

「どうしたんですか?ってあれ?また手紙ですか…なになに、…ウソ!G級ハンターの方が来るんですか!?すごい!」

 

チラッと手紙を除いたレオンはG級ハンター来訪の知らせに胸が踊っているようだ。しかし肝心のリーフはというと…

 

「ふざけんなクソッタレのギルドのジジイ共め!面倒ごとは押し付けるってか!職権濫用じゃあ!オストガロアのエサにしてやろうか!」

 

ブチ切れていた。それはもうブチブチに。

 

「え!?ちょ、どうしたんですか師匠!?あ、手紙破り捨てた!?つかオストガロアってなに!?あーもう!落ち着いて!落ち着いてー!左手改造しようとしないで!」

 

「離せ!離すんだ!私は今から存在してはいけないモンスター、元老院を駆除しに行かなければならいのだ!共にいくぞ!銀の義手よ!」

 

なぜかとても怒っていてキャラ崩壊までしてしまったようだ。左腕に火薬を仕込み始めている。

 

「待ってください!そんなことしたら逮捕どころじゃありませんよ!一旦落ち着きましょう!」

 

「落ち着けるか!いいか!人にはな、やらねばならぬことがあるんだ!さぁ離せ!離…せ…」

 

「はぁ、はぁ、はぁ…師匠?」

 

何かを思ったのか突然鎮静化するリーフ。先程までの狂いようがウソのように落ち着いている。怪訝に思い、恐る恐る問いかけてみると、もっと恐ろしい答えが帰ってきた。

 

「なぁレオン。私たちはいまお互いに暴れて取っ組み合いの絡まってる状態だ」

 

「全面的に師匠が悪いんですけど」

 

「うるさいよ。ふぅ…そして前回も同じようなことが起きていた…その事から考えると…」

 

「あ」

 

何かを察したレオン。大急ぎで離れようとするもーーー

 

「やっほ〜!アッシがきたよーーーん!!!ってあら〜…ベッドの上で随分激しい遊戯ね〜?」

 

間に合わなかったようだった。

 

「ち、ちがいまふ!これは誤解です!」

 

焦って否定するも噛んでしまい全く説得力のないレオン。助けを求めるようにリーフを見るが…

 

「ヒェ…こ、来ないでくれ…いや下さい…」

 

部屋の端っこで固まっていた。普段からは考えられない弱々しさである。

するとそれを見たアンネローゼは…

 

「あら〜そんなに怖がっちゃって可愛い〜!こっちはお弟子さん?可愛いわねぇ!ふふ、さっきのお遊戯、アッシも混ぜてもらおうかしら?」

 

そんな不穏な事を言い始めるのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ぐす…これだから君は嫌いなんだ…ずず…」

 

涙目で文句を言うリーフ。あの後何があったというと…

 

「ごめんね〜!でも可愛かったでしょ?ね、弟子くん?」

 

「は、はい」

 

着せ替え人形にされていたのだ。いろんな服を代わる代わる着せられて、しかも外に出てみようなどと言われてしまったのだった。

 

「弟子くんはなんの服が良かったと思う?」

 

「そうですね…メイド服が良かったかなと。アレに狙撃銃?というものを持たせた姿はどストライクでした」

 

しかしそんなリーフの恨みなど全く気にせず続けるアンネ。なおレオンも既にアンネ側だったようだ。

ちなみに、肩まで切りそろえた絹のようなツヤのある白髪、深い青の瞳、少し小さめの体格の3拍子が相まって道行く人々が振り返るくらいには似合っていたと記しておこう。

一部では「義手に見たことのない武器…いい!」とか言っていたハンターもいたとかいないとか

 

「ぐす…酷いよ君たち…後でアイアンパンチ(比喩抜き)の刑だからね…ふぇ…」

 

「「申し訳ございません。それだけはお許しを」」

 

即座にこうべを垂れ、恭順と反省の意を示す2人。実際に義手で殴られると痛いのだ。具体的には殴られたチンピラもどきが真っ当な聖人になるくらいには。

 

「全く調子のいい…ところでアレはどこで入手したんだい?模型であったようだけど」

 

リーフでも見たことのない武器珍しい狙撃銃。その出どころは少しきになる。

 

「うーん、情報が曖昧だから詳しくはわかんないや。でもアッシは、例の極東の国じゃないかって思ってる。『猟人日記』の上が関わってるらしいしね。ちなみに用途は不明。でも対人用って話が濃いね」

 

「え…それ、本当かい?最近は例の国とも交易とかしてるのかな?」

 

少し物騒な、そして奇妙な話である。ただ情報が少ない上に倒錯していて真実は全くわからないが。

 

「まあアッシらには関係ないっしょ。そんな事より、いい依頼があるんだよ。行かないかい?」

 

話を変えて本題に入ったアンネ。なんとなく嫌な予感がする…

 

「君、なんのためにそれを受けるんだい?というか、その依頼はなんだい」

 

「よくぞ聞いてくれました!」

 

ふふん、と胸をはってなぜか自慢げなアンネ。微妙にムカついたリーフは無視して先を促す。

 

「実は作りたいものがあるんだ!それはジンオウガのオリジナル防具!そしてそのためには勿論だけどジンオウガをからなければならない!」

 

そう言って彼女は一枚の図面をバンッと机に叩きつけた。どうやらこれが件の防具のようだが…

 

「君、これは防具として機能しなくないか?無駄な飾り付けが多いのに守るべき場所の防御が薄い。キリンならともかく、これじゃあねえ」

 

もはや防具というよりただのファッションだ。なぜこんなもんを作るのか聞いてみたがはぐらかされるだけだった。

 

ちなみに狩るのは上位個体だそうだった。本来はレオンはいけないが、下位にしてはかなり経験豊富であり、見ているだけという条件で許可を得て行くことになった。

 

 

 

★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

「結局、師匠は来ませんでしたね…」

 

2人は渓流に訪れていた。もちろん、雷狼竜を狩猟するためである。

 

「仕方ないね…まあクヨクヨしててもしゃーないし行こう!あ、もうヤツの縄張りだからいつ会ってもおかしくないよ!」

 

地味に重要な事を言うアンネ。そしてそれがフラグとなってしまったのか…

 

「グルルルルル…」

 

ズン、という思い足音と共に「狩人」が姿をあらわす。強靭な四肢、その中でも特に発達した前脚は異様な大きさを誇っている。

 

「ひゅーお出ましだ。レオンくんって言ったっけ?君は下がってなよって早いね!」

 

もう言われるまでもなく徹底していたレオンであった。前の角竜で上位個体の強さは嫌ほど味わっているのだから。

 

「まぁいいや、これで好きなようにやれる…へへっ狩人か…どっちが真の狩人が決めようじゃねぇの?」

 

レオンの撤退の早さに苦笑しつつ武器を構えるアンネ。

ちなみにだが、アンネにはとある異名がある。というよりG級ハンターは並々ならぬ技量を持つため、ギルドや他のハンターから畏怖の敬意の念を込めて異名がつくことが多いのだ。

そして、アンネに付けられた名前は

 

「赤バラのアンネ」

 

真っ赤な髪に返り血を厭わない無謀とも言える戦い方から付けられた名前である。

 

「あっははははは!いいねえ!上位個体と言えどもさすがはジンオウガだよねぇ!痺れるよ!文字通りね!」

 

彼女の獲物である破岩双刃アルコバレノを振り回し雷狼竜を切り刻んで行く。しかし彼もやられっぱなしでいるわけがない。

 

「グルルァァァァ!!!」

 

ズドン!という低い音と共に雷を伴った衝撃波がアンネを襲った。雷狼竜の十八番、帯電掌底である。しかもその攻撃は終わらず2度も追加が来た。

普通のハンターどころか今のは上位ハンターでも即死、よくて離脱不能の重症だろう。

普通のハンターなら、だが。

 

「あははは!!凄いねぇ!君、上位個体じゃなくてG級個体に片足突っ込んでるよ!血湧き肉躍るとまでは行かなくても十分楽しめるねぇ!」

 

アンネは掌底の放たれる腕とは反対に横移動して避け続けていた。攻撃が来るたび、右へ左へ蝶のように避け続ける。

 

「グルルァ!!!!」

 

攻撃が当たらず自分だけダメージを蓄積させる事に業を煮やした雷狼竜が身体をひねる。そしてーーー

 

「アォォォォォン!!!」

 

跳んだ。咆哮と共に尾を2回転させながら跳躍。雷狼竜の尾は硬く大きく、直撃すればタダでは済まない。もし彼に人の言葉が扱えたのなら、とった、と思った事だろう。しかしそんな喜びも、眼の上にある小さな影により驚愕に変わる。

 

「ひゃっはぁぁ!!」

 

赤いバラは、さらに上空にいた。

雷狼竜が回転なぎをしながら飛び上がる直前、彼女は先に跳んでいた。しかし人間と竜では身体の性能が違う。そこでアンネは位置を調整して敢えて全力より低い場所に滞空した。そしてそこに雷狼竜の尾がちょうど脚の真下に来たのだ。

 

「一瞬でも脚をつければ、そこはアッシにとっては全て足場なんだよぉ!」

 

まかり間違えばただの自殺となるあまりにも危険な行動。しかしそれが彼女を「赤いバラ」と言わしめる所以であった。

 

「致命傷以外は構うな、これがアッシのモットーさぁ!おらぁ!」

 

常人にはおよそ理解できない信条を叫びながら、上からアルコバレノを獲物の顔に振りまくる。

 

「オァァ!?」

 

虚を衝かれた雷狼竜は反応すらできない。そして無慈悲な乱舞が、彼の威厳ある顔を容赦なくズタズタにしていく。爆破属性の爆発も相まって酷い状態である。

だがここでおめおめと撤退することは、狩人たる雷狼竜のプライドが許さなかった。

 

「ヴォォォォン!」

 

「なっ!?」

 

なんと空中で体をひねり、アンネを捕らえたのだ。そして、自分ごと地面に叩きつけた。

ドゴォォォォン!という轟音が響き、土煙が捲き上る。

 

「グ…アォォォォォン!!」

 

甚大なダメージを負いフラつきながらもその場から出てきた雷狼竜は、敵の生死を確認せずに勝利の雄叫びを上げる。そしてそれが、敗因となった。

 

「ギャン!?」

 

未だ晴れぬ煙の中から一本の剣が飛んできたのだ。その剣は雷狼竜の顔に突き刺さり目を潰した。

大いに混乱しつつもなんとかそちらを見やる雷狼竜は、驚きのあまり固まってしまった。そこにはーーー

 

「ぁあ、痛かった…食らう直前にいにしえの秘薬をかじったけどここまでとはねぇ?まあでも、お前は油断したんだ。これで終わりだ」

 

ズタボロになりながらなおも立っているアンネがいた。その体は傷だらけで出血量も多い。だが、意識を保つのがやっとのはずの状態でありながらも、その目は戦意を失っていなかった。

 

「グォ…」

 

あまりに異常な光景。そして未だ消えぬ自らへの殺意。生まれて初めて、雷狼竜は恐怖を感じた。

 

「くぉぉぉーん!」

 

犬のような声を上げて逃亡を図る。しかしそれを「赤いバラ」が許すはずもなく…

 

「逃げんなよオメェ、負けたんだよオメェはよ。じゃなあ犬っころ。死んで悔いろ」

 

ーーーそこで雷狼竜の意識は途切れたーーー

 

「で、アレの狩を見てどうだったかい?」

 

既に日も暮れ、人も少なくなった通りを歩きながら2人は話す。内容はもちろん、今回の狩猟だ。

 

「そう、ですね…ちょっとおかしかったと思います…その、アンネさんは凄く強いし上手い方だとは思うんですけど…残酷というか…何かが足りない気がして…」

 

いいよどむレオン。感覚では掴んでいるがそれをうまく表現できないのだ。しかしそんなレオンをリーフは仕方ないといった表情で見る。

 

「うん、言いたいことはわかるよ。アレは狂ってる。アレには恐怖がないんだよ」

 

死への恐怖はどんな生き物も持っているはずの本能だ。いくら強き竜であろうと命の危機に瀕すれば逃亡を最優先にする。

しかし、アンネにはそれが欠如しているのだ。故に引かない。痛み分けよりも相討ちを取る、おおよそハンターとは言えない生き方。

 

「朝に見た手紙に拘束ってあっただろう?あれはアレがあまりにも残虐で危険な狩りをするからギルドで身柄を確保していたんだよ。まあG級に昇格したからそれももうないけどね」

 

まあなるべく狩りに行かないようにとは言っているし、もうここにも来ないだろうけどね、と言い加えて家に着く2人。するとそこに、謎の箱が置いてあった。

 

「んあ?なんだろこれ?ええっと中身は…」

 

ごそごそと開いてみるとそのにはーーー

 

「げ、なんだこれ…あれ、手紙?」

 

そこには雷狼竜のコスプレ衣装と手紙が一通入っていた。なおコスプレ衣装は露出が多い事を記載しておく。

 

『やっほー!さっきのジンオウガの素材で頼んでたものができたんだ!着てみてね!』

 

「やっぱアイツ頭おかしいわ!くそったれ誰が着るか!」

 

「ちょ、師匠!勿体無い!」

 

ーーーそう叫びながら服を始末するリーフであったが、後でレオンに頼み込まれて顔を赤くしながら着たそうなーーー




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