隻腕の師匠と捨て子の弟子 作:銀髪っ娘にTS転生したいおじさん
追加:UA2000ありがとうございます!励みになります!
モガの村に来て数日経った頃、3人は、そろそろ水中での狩りにも慣れていこうという話になっていた。
「今日、村にロアルドロスがいた。練習にはぴったり」
「ロア…?名前から察するに、ルドロスのボスですか?」
ジャギィとドスジャギィ的なものなのだろうか。反応を見るにどうやらその通りのようだ。
ただ水中での狩りにいきなり大型を相手にすることに、わずかに躊躇を覚える。
「師匠、僕いきなり大型行って平気ですか?」
後ろにいる師匠に、不安げに聞いてみると…
「大丈夫じゃないの。今ロイヤルハニーの世話で忙しいから」
なんだこの人。本当に崖から海に落としてやろうか。
そんなことを思っていると、雰囲気で伝わったのだろうか。慌ててリーフが振り返る。
「なんか身の危険を感じたぞ!?まあ、冗談はさておきってやつだ。ラクシュが同行するだろうし大丈夫だと思うよ。とはいえ彼女割とスパルタだから覚悟はしておいた方がいいかな」
スパルタ。それは遠い異国の地に存在すると言われている辺境の地だ。国民全員が戦闘員であり、脳筋と言われている国だ。風の噂によると、黒轟竜の咆哮すら子守唄程度だとか。
ただ極東の国とは違い、確認が全くできないために半ば伝説となっている。
「死にそうになったら助ける。それ以外は何もしない」
「ひょえ…わ、わかりました。早速行ってきます」
彼女も意外と脳筋的な思考の持ち主なのだろうか。頭脳派でもあるウィレムが恋しい。人は見た目によらないものであると実感したレオンであった。
★ ★ ★ ★ ★
「ここが、モガの森…凄い…」
クエストに出発した2人。とはいえ場所の孤島とは要はモガ森なので村からすぐに行ける。そして、村を出たレオンはその雄大な自然に圧倒されていた。
「バルバレとはぜんっぜん違うや。渓流みたいだけど、そこともやっぱ違う。なんか、静かな気分になる」
渓流とはまた違った自然。隔絶された環境で育った独特の生態系、陸と海の両方から成り立つ複雑な島。森、草原、海…あらゆる環境を持ち合わせているのがこの場所なのだ。
「わかる。私も初めてきた時はぼーっとした」
ラクシュは相変わらず無表情のままだが、耳が微妙にピクピク動いている。自分の同じ感想を抱いているのが嬉しいのだろうか。いじりたいという雑念が上がってくる。
「…触ったら、ただじゃおかない」
訂正、やはり遠慮させていただきたい。
呑気なやり取りをしながら二人は奥へ進んでいく。目指すは海辺のエリアだ。
★ ★ ★ ★ ★
わずかに聞こえる波の音に、風に乗ってくる潮の香り。そろそろだろうか。
「ん…いた。あの黄色いスポンジ」
「え?スポンジ?…スポンジだ…もしかして今回のクエスト、スポンジの材料の調達なんじゃないのか…?」
群の首領たる黄色いたてがみを持つロアルドロス。そのたてがみは水分を多分に含んでおり、地上での活動の大きな助けとなる。見た目はスポンジだが…
「私は影で見てる。頑張って」
「ふぅー…よし、スポンジ狩りに行ってきます」
そう行って駆け出すレオン。それを見たロアルドロスは威嚇のために吠える。
だが、飛竜や獣竜のように咆哮を伴うわけでもないその行動はただの隙晒しだった。
「せえい!」
大きく踏み込む1撃目を皮切りに、次々と攻撃を仕掛けていく。ロアルドロスは、その流れるような連撃にほとんど反応することができない。
「おっと!」
苦し紛れの爪の引っ掻き。バックステップで即座に回避。モンスターにとっての繰り返し紛れも、人にとっては十分に脅威だ。桜火竜の防具とはいえ直撃は避けるべきであろう。
「そらそらそら!」
斬って、避けて、斬ってを繰り返す。そろそろ気も練り上げられてきた頃合いだ。大きな隙を晒したら太刀のとっておきを進呈してやろう。
「ー!?」
そう思っていると、ロアルドロスの足が爆発を起こした。粘液というものを全く知らないロアルドロスは、何も気にしていなかったのだろう。そして時間切れとなったわけだ。
「よし!はぁ!せい!…てぇやあ!」
ここぞとばかりに鬼人斬りを仕掛けてゆく。そして連続鬼人斬りの締めはーーー
「大回転斬りぃ!」
360度回転しながら薙ぎ払う大技だ。太刀の中では威力が高い上に、一定時間攻撃力を上げてくれる副次的効果まである。
「へぇ、なかなかやる」
影から見ていたラクシュはぼそりと感想を溢す。確かにアレはいい腕だ。1年弱で上位に上がるのも納得できる。
だからこそ、ロアルドロスがぴったりなのだ。
「あ?おいこら!水の中に逃げんな!」
と、ここで、かなり消耗したロアルドロスが海に逃げた。だがラクシュは全く気にせずに…
「ほら、さっさと行って」
「え?いや、まだ僕狩りで水の中に入ったことないんですけど」
「早く」
「はいぃ!」
抗議したら物凄い眼光で睨まれた。モンスターも逃げ出すような威圧だった。
バシャンと音を立てて海へ潜るレオン。その水はそれなりに冷たいが、支障をきたすほどではない。幸い、流れも穏やかだ。だがそこには穏やかではないのが1匹いた。
「ーーー!!」
「がっ!」
目の前から、ロアルドロスが突進をしてきた。その速さは地上の比ではない。
「いってぇ…くそぉ、ようやく本領発揮かよ!」
回復薬を飲みつつ悪態をつく。なかなか苦戦しそうだと予感するレオンであった。
★ ★ ★ ★ ★
レオンが海に行ってから少しした頃、浜辺で待っていたラクシュの元にリーフがやってきた。
「やあやあ、我が弟子の調子はどうだい?なかなかどうしてやる奴だろう?」
自慢げな表情で問いかけてくる。まあ特に否定する理由もないので正直な感想を話してやろう。
「ん、筋もいい。驕りもない。もっと強くなれると思う」
「おや…半分冗談だったんだがね。君がまさかそこまで認めるとは彼も本当にやっているようだ」
「私だって、褒めるもん。あと、リーフはなんでここにいるの?」
意地が悪いと言われたような気がしてムッとしながら聞き返すラクシュ。リーフはそれに苦笑をしつつ返事をする。
「いやぁ……君、今までここにきたハンターたちを1人も認めてなかっただろう?ちょっと説得力がないよ…。あとここにいるのは単に採取するものがあったから、ついでに寄ってきただけさ」
そう、今までもモカにハンターが来たことがあるのだ。理由は種々あるが一番はG級ハンターの弟子になり、おこぼれに預かる事だろう。まあそんな輩は全員水中戦という壁に挫折したのだが。
「みんな、軽く身過ぎてる。いくら陸で強くても、水の中は別世界。それに気づいて居ないならここにはいれない」
水と陸。あまりにも違いすぎる環境ゆえに、また1からやり直す必要があるのだ。だが大抵は持ち前のプライドや油断が邪魔をして取り合わない。
「一から教えようとしても、みんな聞かない。『どうせ変わらない。俺は平気』そんなんばっか」
そうやって、油断して失敗する。
「でも、君のおかげで誰一人として死んでない。よくやるよ。それに君があのスパルタになったのも、体に海の恐ろしさを叩き込むためだろう?厳しいように見えてその実、死なないようにしている。損な役回りだねぇ」
「別に、そんなんじゃない」
「はいはい、そういうことにしておくよ」
妙に核心をついた物言いに思わず言い返す。しかしリーフはのらりくらりとかわしてしまう。
「もう。…リーフは、さ。また狩りに行く予定はないの?」
ラクシュは躊躇いながらもそう尋ねる。直接聞くのは気がひけるが、どうしても聞きたいことでもあった。
「うーん、ないねぇ。まあどうしてもの時以外だけどね」
「そっか」
簡潔なやり取り。だがそれで十分だった。可能性を捨ててないなら、まだーーー
「なんで嬉しそうなんだい?」
「なんでもない。あ、あと最近、ちょっと森が騒がしい。気をつけて」
突然の忠告。それもかなり抽象的で不明瞭なものだった。
「ん?んー、よくわからないけどわかったよ。君の勘はよく当たるからね」
「もう行くの?多分、レオンも終わる頃だと思うけど」
師匠なら待っておくべではないのか、暗に言ってくる。しかしその要望には答えられない。
「だからこそ、だよ。私はアドバイスこそしているけど、ほとんど狩りの手本を見せたことがないのさ。むしろ君の方が師匠らしい」
そう言って自嘲の笑みを浮かべて背を向ける。
「それでも、レオンはリーフを師匠としている。妄信でもなく、誠実に信じている」
「そうだね。腕のない欠陥品であっても疑わずについてきてくれる。縁を切っても何もおかしくないのに。ああ、全くーーー」
ーーー私ごときには、過ぎたる弟子だよーーー
★ ★ ★ ★ ★
リーフが村に戻ってからしばらくして、2人も戻ってきた。話を聞くに、途中で水属性のブレスの初見殺しにあい危なくなったものの、自力で立て直したらしい。尻尾の切断もできてホクホクだ。
「お疲れ様、はじめての水中もなかなか上出来だったようだね」
「はい!海が穏やかなのもあってすぐに慣れました!あのブレスだけは焦りましたけどね。対してダメージがないなーなんて思ってたら斜め上の効果があるんですもん」
初めての水中で、ロアルドロスのブレスを食らっても立て直せる。そのことがどのくらい凄いかは全くわかっていないようだ。
「うん、特に私もいうことはない。これからもその調子」
G級ハンターであるラクシュからも直々に認められた。その事実に思わず嬉しくなる。
「は、はい!頑張ります!あ、そういえば…」
とりあえずひと段落したので、レオンはここで狩りの最中に感じた違和感について話すことにした。
「なんか、あのロアルドロス変でしたよ」
「「変?」」
いまいち要領を得ない言葉に首をかしげる。
「なんというか、焦ってる?恐れている?とにかく普通じゃなかったです。初見のモンスターですけど、なんとなく思いました」
「ふぅん…ならしばらくは奥地に行くのはやめておこうか。村の人たちにも話してこよう」
ラクシュだけでなく、レオンも似たようなことを言っている。さすがに警戒をすべきだろう。
「何も起きなければいいんだけどね…」
そう言って振り返る。その目には、いつになく暗く不気味なモガの森があるだけだった。
メリークリスマス。皆様は何をしておりますかな?私は…ぁぁぁぁあ(発狂)
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