隻腕の師匠と捨て子の弟子 作:銀髪っ娘にTS転生したいおじさん
「ギルドから緊急クエストですっ!!!」
とある昼下がり、モガの村に大きな声が響く。もう交易船も出発しており、とても静かだというのに一体なんなんだろうか。
「アイシャさん声おっきいです…」
耳元で叫ばれたレオンがフラフラしながら抗議する。当の本人は全く聞いていないが…
「まあまあ良いじゃないか。元気なのはいいことだ!」
そう言ってアイシャの擁護をするのはG級になってから少し時間が経ち、名前も他のギルドに広まってきた「騎士」アベルだ。
「そうは言いますけどね…ところでなぜここに?」
「ん?ああ、とあるものを栽培しててな。それの収穫に来たわけだ。だから用があるのはこの村そのものじゃなく、農場だな」
なるほど作物の収穫は現地に行かねばならない。その割にはラクシュに言い寄りまくっていた気がするが、気にしたらクエスト失敗なのだろう。
「へぇー。ちなみに何を?」
「マンドラゴラだ。秘薬の調合に必要でな」
「秘薬…?」
聴き慣れない言葉に首を傾げるレオン。しかしその答えを聞く前にラクシュが遮った。
「アベル…それ、秘密。レオン、ごめんね。これG級ハンターしかダメなの」
「な、なるほど」
G級にならないと情報すら開示されないアイテムらしい。正直アイテム情報などすぐに出回ってしまう気がするが、そこは天下のギルドナイト様のおかげなのだろう。
そんなことを考えていると…
「ちょっとお!聞いてますか!?レオンくんに言ってるんですよー!?」
また耳元で叫ばれた。キーンとする。
「わ、わかりましたから!耳元で叫ばないで!痛い!」
「聞いてくれないレオンくんが悪いんです!…オホン、さてさて話を戻しまして…ギルドから緊急クエストです」
わざとらしく咳払いをして場を仕切り直すアイシャ。真面目にしていると優秀なギルド職員なのに…
「今回のターゲットは灼熱の火山に生息し、なんと溶岩を泳ぐ竜!その名はアグナコトルです!」
「アグナコトル…聞いたことあるな…」
確かリーフの情報では溶岩を泳ぎ、熱線を吐き
「しかしなんでまた緊急クエストなんて?」
タイミングがあまりにも突然すぎる。緊急クエストというのは基本的には名の通り緊急ではあるが、それにしてもこれはあまりにもいきなりすぎる。
だが、理由を聞かれたアイシャは少ししょぼくれる。この受付嬢がしょげるとは何かやむを得ない理由があるのだろうか。
「そのですね…今回のクエスト、とある国からの依頼なんです」
「く、国!?」
まさかまさかの国令だ。なるほどそれは確かに緊急だろう。だがなぜそんなクエストが上位ハンターであるレオンに来るのだろう?
「それなんですけどね、バルバレギルドマスターからの進言です。なんでも実力試しになるからとか」
あのリーフを手玉に取っていたなんか癪に触る爺さんのおかげか。
「あのジジィ、やっぱりロクでもない。早く衰弱するべき」
ラクシュに関してはガチ切れ寸前だ。聞けば癖のあるG級ハンターをおちょくるのが楽しみらしい。さすがに趣味が悪い。なおギルド愉悦部なんてものを組織してるとか。
「おっと話がずれました。さて、今回のアグナコトルですが火の国からの救援要請です。『主要な採取地域にヤツが陣取ってこのままじゃ国の産業が潰れてしまう!』との事です」
「おおう、思ったより切羽詰まる状況ですね。ならさっさと行きましょうか。移動に少し時間かかりますし」
そんなことを言われては行くしかない。なら善は急げというヤツだ。
と、ボックスをガサゴソと漁っていると奥の部屋から我が師が眠い目を擦りながらフラフラと現れた。そして…
「ん、これ持ってくといい」
ひょい、と手のひらサイズの青い球を渡してきた。微妙にひんやりしている…?
「あ、ありがとうございます?これ、どう使えば?」
「んー、隙見て投げるか傷に埋め込む。あとは逃げる。それだけ…ふにゃ…」
えらく簡単な説明をしたリーフは、役目は終えたとばかりに床にもう一度寝てしまう。
「え、えぇ?てかここで寝ないで!全くもう、ベッドまで連れてかなきゃ…」
このまま放置するわけにも行かず、リーフを抱きかかえながら部屋にもう一度寝かせに行くレオン。だが…
「(ああ!やばいいい匂いがする!っ!落ち着け…落ち着け…そう、これは決してやましいことではなく安全上や健康上の影響をよくよく熟考した上で止むを得ず行う救援処置であってーーー)」
誰に見られているわけでもないのに頭の中で超早口で言い訳をする。というか、そうしなければ本能に身を任せてしまいそうなのだ。
だが、そんな薄氷の上に成り立つ不安定な理性など、僅かな衝撃で壊れるのだ。例えばーーー
「ふにゅっ」
「っっっっっ!?!?!?!?」
ーーー寝ぼけたリーフが抱きついてくるとか。
「んん…zzz」
「(まってまってまって無理無理無理無理無理だからーーー!離れたいのに離れられない!あー!お客様!困りますお客様!僕を巻き込んで寝ようとしないで!)」
想像を超えた出来事に頭がヒートアップするレオン。そして、限界を超えた理性を粉々に打ち砕く止めの一撃が放たれた。
「むにゃ…レオ…ン…」
「(あ)」
寝言で名前を呼ばれてしまった。
その事実は、彼の儚い抵抗を潰すには過剰戦力だった。
「…師匠が悪いんですからね…」
寝ているリーフの上に覆いかぶさるレオン。
「(もう我慢の限界だくそったれ。もうどうにでもなればいい。もうなんでもいい!)」
ーーーだが彼は失念していた。彼らの行動はなぜか常に第三者の乱入があることを。
「おおい、元気なのは受付嬢が呼んで………おっと………俺は時と場所を考えるべきだったかな」
ガチャリと入ってきたアベルはナニカを察してそそくさと撤退して行った。
そして、僅かな沈黙ののちーーー
「まってください!待って!待って!これには深いわけがーーー!」
ーーーその日、モガの村に2回目の絶叫が響き渡ったーーー
★ ★ ★ ★ ★
「ようこそ我らの火の国へ。私が今回同行する林杏(リンシン)だ。狩猟笛を得意としている。…ところでなぜ貴公はそこまで落ち込んでいるのだ?」
数日後、火の国に到着したレオンは現地のハンターと面会していた。どうやら助けを頼んだ挙句全く支援がないのはまずいと判断されたのか、国一番のハンターが同行することになったらしい。
「はは…僕はもうおしまいだぁ…ちょうどいい…アグナコトルに焼いてもらおう…」
だが当の本人はそんなことなど全く聞こえない。少し前の過ち(未遂)が未だに足を引っ張っているのだ。
一応、アベル以外にバレてはいないのだが…
「本当に大丈夫か?もしやこの暑さでやられてしまったか?いや、まだここはそこまで暑くないはず…」
「あ、大丈夫です…こっちの話なんで…それで、今からでも行くんですか?」
とはいえこのままウダウダしてるだけではどうしようもない。とにかくクエストを達成してからだ。
「う、うむ。随分と復帰が早いがまあ良い事だ。そして肝心の出発だがその通り、今からだ。既に被害が甚大なのでな」
「よし行きましょう!さあ!さあさあ!」
やはり今から行くらしい。ならさっさと行こう。この表し難い感情を思う存分ぶちまけてやりたい。
「あ、ああ…準備は終わってるようだし行くとするか(こいつ、二重人格か…?)」
★ ★ ★ ★ ★
「しっ…居たぞ…アレがアグナコトルだが…少しデカい。銀冠か…?」
出発してから30分ほど、2人は火山の上の方で件の炎戈竜を発見する事ができた。暑い火山で初めの捜索を短縮できたのは僥倖と言えるだろう。
しかし、リンシンは怪訝な様子で炎戈竜をじっと観察していた。
「あ、あの…どうしました?不意打ちでも?」
1分ほど動かずに観察をし続けるリンシンに違和感を覚え、何をしているのか尋ねるレオン。
「よく見ろ…あのアグナコトル、しきりに嘴を打ち合わせて音を鳴らしている。あれは威嚇行動、或いは味方に危険を知らせるサインだ」
「なっ…じ、じゃあ僕たちがバレてるかもっと強いモンスターが来ているんですか!?」
より強力なモンスターの乱入。
生態系を食い荒らすかの恐暴竜がフラッシュバックする。
だがそれを、リンシンは静かに否定した。
「それはあり得ん。アイツはこの火山の地で生態系のトップに君臨するヤツだ。アイツとタメ張れるモンスターなんて、砕竜、恐暴竜くらいだ。
だが前者はともかく、後者はそもそもここにはこない。もっと肥えた土地に行くだろう。そして砕竜程度ではあそこまで警戒はしない…」
では、いったい何を?
「それはわからない。だが少なくとも、今すぐに迫っている危険ではなさそうだな。…アレはモンスター特有の本能的な危機察知なのだろう。王者は強さと臆病さを兼ね備えてこそだからな」
そう言って立ち上がるリンシン。どうやら狩りをするようだ。
それに続くようにレオンも武器を抜く。
「ほう…話にした砕竜の武器か。良いな。アレは身に纏った溶岩が固まり天然の要塞となっているが…粘液の爆破なら溶岩もろとも脚や手を破壊できるだろう。
さて、私は少し下がったところから注意を引きつつ攻撃と支援を繰り返そう。では行くぞ!」
「了解!」
レオンが飛び出すと同時に狩猟笛の旋律が奏でられ、疾走する彼を強化していく。
火山の王と、それに対する挑戦者の戦が今開かれた。
★ ★ ★ ★ ★
「リーフさーん?お手紙です!この箱の中に入れときますねー!」
「んん…ふわぁ〜あ。ありがとう〜。ねむ…」
レオンが出発してから数刻ほど経ってから、今回の小さな騒動の元凶(意識なし)はもそもそと起き上がった。
「いや…寝過ぎた。さすがに起きよう、うん…うん?なんの匂いだろ…?」
意識が覚醒し、嗅覚が働き始める。すると、嗅ぎ慣れない匂いを察知した。
それは臭いわけではなく、むしろ安心感の覚えるーーー
「これレオンの匂いじゃないか…というかすぐわかる私は実は…やめておこう。私は普通私は普通私は普通…。てか手紙手紙っと」
邪推を途中でやめ、珍しい手紙を開ける。普段はギルドからの厄介ごとだがモガにいる限りそんな事はないだろう。
というか、そもそも誰からだ?
「ええっと…はい?名も無き通りすがりの旅人から…っ」
そこまで読んだリーフは一瞬、ほんの一瞬だけ思考が止まった。なぜならそこにはーーー
「名も無き通りすがりの旅人から
ご機嫌ようリーフィールハンター。いや、『
さて、突然の手紙で戸惑っていることだろう。大いに結構、思う存分戸惑いたまえ。そして、私が言いたいことは一つのみ。
災いは解き放たれり
では、貴殿の健康と更なるご活躍を心より願い申し上げる」
「っ!ふざ、けるな!」
読み終わる前に手紙を破りすてる。
「ふざけた悪戯だ…ギルドに連絡しておこう…ああくそ、最悪の気分だ」
普段はどんな事があっても本気で怒ることなどないリーフだが、これはあまりにも度が過ぎていた。思わず叫んでしまったほどだ。
「リーフぅ?どうしたの?叫んでた」
案の定ラクシュが様子を見にやってきた。彼女にコレを見られると少々面倒くさい。さっさとゴミ箱に捨ててしまおう。
「うんにゃ、なんでもないさ」
心配そうにこちらをみるラクシュに、何事もなかったように振る舞う。
「本当?」
「ああ、本当さ。荒唐無稽なバカ話が書いてあっただけさ」
そうだ。アレはバカなホラ話なのだ。
ーーーそうでなければ彼女が救われないーーー
ーーーそうでなければ、私はーーー
最近、絵の練習始めてみました(どうでもいい
ブラボを久々にやったらなんかMHと組み合わせられるんじゃないかと思った。まだ書いてみるか決めてないから気軽に答えて欲しいです。仮に書いてもオッケーが多くても本当にやるかはわからないです。
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あり
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なし
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ありより、でも世界観難しいんじゃ?