隻腕の師匠と捨て子の弟子   作:銀髪っ娘にTS転生したいおじさん

29 / 30
クソ忙しいのに絵の練習始めたバカがここに1人。


21話 炎戈竜、そして「龍」後編

 

肌を焦がすような熱気が充満するエリアである火山。山の麓ですら僅かに気温が高いその場所の奥地は、もはや生物が生きていけるとは到底思えない光景だ。

 だがーーー

 

「よし!そのまま押してくれ!心眼はすぐにかけ直す!」

 

「了解!でもそろそろ武器研ぐので前後の交代を!」

 

灼熱の嵐の中、巨大な海竜種を相手取る人間が2人いた。彼らが戦っているのは火山の支配者たる炎戈竜だ。

 

「溶岩の中に逃げ込むようだ!一旦退避して動き続けろ!」

 

「ああくそ!何が海竜だ!」

 

炎戈竜の全長は実に30メートルを超す。しかし今はその巨体が仇となり、自身にまとわりつく弱者を追い払えずにいた。

 ならばどうするか。

 

【一度逃げて仕切り直す】

 

 強者たる炎戈竜が弱者である人間に背を向けて逃げる事は、普通は想像できない。だがこの地獄で頂点に君臨するためには、時に臆病でなければならないのだ。

 勇者でもなく、怯者(きょうしゃ)でもない。即ち、【勇怯(ゆうきょう)半ばする者】。それこそが王者が王たる所以である。

 

「っ!来るぞ!」

 

「また地面から…!」

 

直後、地面から炎戈竜が競泳選手のバタフライの如く高速で飛び出し、また地面に戻っていく。

 これこそが炎戈竜を厄介なモンスターたらしめている攻撃であった。

 

「なんでこんなに性格な狙いなんだ…!」

 

「無駄口はあとだ!でかいのが来るぞ!」

 

鋭く警告が飛んで来る。何が、などと聞き返す愚行は犯さないでただひたすらにジグザグに避ける。

 

「ッッッ!」

 

リンシンの地面が僅かに隆起する。それを認識した彼女は無我夢中で横に転がった。

 

「ーーーーー!!!」

 

そしてその直後、炎戈竜が大きく突き上げ来た。

 

「マジかよ…飛び跳ねる魚みたいな動きすんのかよ!ぜんっぜん可愛げがねえ!」

 

「ぐっ!…同意する。あの質量でやる動きではない…が、それをするのがアグナコトルだ。そら!次は突進だ!」

 

僅かなため動作の後、猛烈な速度でこちらに迫る炎戈竜。その動きはどちらかというと突進より滑走に近い。

 どちらにせよ、直撃は死を意味するのだが。

 

「ぬぅ…あまり図に乗るなよ!ぜぇい!」

 

だが、やられっぱなしでいる訳には行かぬと、リンシンは力の限り狩猟笛をぶん回す。

 そして、重量のあるものが速度を伴った場合、どうなるか?答えは簡単だ。

 

「ガガッ!?」

 

鉄塊のフルスイングが直撃した炎戈竜の頭部が割れる。

 いや、性格には纏っていた溶岩が粉砕されただけだ。しかし物理的ダメージはある程度は天然の鎧に防がれたが衝撃までは殺せない。むしろ硬い分よく通るのだ。

 

「ガ…アア…」

 

まさかあそこまで大きな一撃が来るとは思ってもいなかったのだろう、炎戈竜は意識が跳びかけておりふらついている。

 畳み掛けるなら今しかない。

 

「よし、行きます!援護を頼みます!」

 

このチャンスを逃すわけにはいくまいと、一気に距離を詰めるレオン。だが次の瞬間、彼は悪寒を感じ取った。

 

「ッ…!?」

 

何事かと思い、足を止めて炎戈竜を見る。見ればーーー

 

「ーッーッーッーッ」

 

カッカッカッカッカッと、クチバシを打ち鳴らしていた。だがそれは決して警告や恐れといった類のものではない。

 

「これ、やばい…!」

 

さらに悪いことに、濃厚な死の気配は、どんどんと増していく。そしてーーー

 

「避けろーーー!!!まずいのがーー」

 

リンシンから一際大きな警告が飛んで来る。が、その声が終わる前に、炎戈竜の攻撃、いや、砲撃が飛んできた。

 

「ーーーーーーー!!!!!!」

 

真紅の線が、解き放たれた。

 

「うあぁぁぁぁ!!?」

 

これこそが炎戈竜の奥義。溶岩に潜った時の熱を蓄え、十分に貯まったら一気に吐き出す。触れれば肉などもちろん、骨すら炭と化す。いや、原型が残ればまだマシだろう。

 

「ぁぁぁぁぁ!!!」

 

縦に、横に、あらゆる方向に振り回される熱線の脅威に、レオンは伏せて当たらぬことを祈るしかできない。だがーーー

 

「ーーーーーーーッガァァァァァ!!!!????」

 

突然、炎戈竜の胸部が爆発を起こした。

 

「なに!?」「え!?」

 

突然の理解しえぬ出来事に困惑する2人。しかし、リンシンは思い当たる節があった。

 

「もしや、私の攻撃が胸部の蓄熱器官にダメージを…?」

 

頭を殴ったあの時、熱線吐きに必須の器官である胸部の蓄熱器官が大きな損傷を起こしていたのだ。だが打撃とダメージは受けた側は認識しにくい。

 

「ァーーー…」

 

体内で熱暴走を起こし膨大なネエルギーにより自らを焼いてしまった炎戈竜は、息も絶え絶えだった。

 ヤツは確かに炎に強い。だがそれは外部の話であって内臓まで耐火耐熱仕様ではないのだ。

 

「レオン!いけ!止めを刺すんだ!援護はする!」

 

「はい!」

 

頼もしい宣言を背に受けながら、今度こそはと疾走する。その動きは、弾丸のようだった。そしてーーー

 

「ギュイッ」

 

「とったぁぁぁぁぁ!!!」

 

「よくやったぞ!!!」

 

ーーー炎戈竜の喉元に、ディオスソードが突き刺さったーーー

 

 

 

★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

「いやー、強敵でしたね」

 

「まあ当たり前だな。この厳しい地の頂点に立つのだ。あれくらいの力がなければダメだろう」

 

「ですね…でも最後の自爆はラッキーでしたね。まあリンシンさんのおかげですけどね!」

 

「よせ、あれは全くの偶然だ。狙ってやってできるなら、私はとっくにG級さ」

 

マグマ煮えたぎる灼熱の中、2人はお互いの健闘を讃えながら歩きながら帰っていた。

 途中、好戦的な小型モンスターやラングロトラと言った中型モンスターに遭遇したものの、炎戈竜の臭いでも染みついているのか遠巻きに見るてくるだけだった。

 

「そういえば、リンシンさんはHR幾つなんですか?」

 

とっくに、というには既にG級なのだろうか?しかしただでさえ人口の少ないG級に、狩猟笛という珍しい武器が加わればすぐにでも知れ渡るはずだが…

 

「いや、私はHR6。つまるところ上位だな。…G級昇格の件は来るのだが、なって仕舞えばギルドの支持するままにあらゆる地へと赴かなければならない。

 だが、私はこの地を、故郷を守りたいのだ。…失望させただろう。私は結局、私利私欲のためにギルドへの協力を拒否しているのだからな」

 

顔をうつむけて自嘲気味に笑うリンシン。だがレオンは、決してそれをバカになどしなかった。

 

「全く失望しませんよ!むしろ憧れます!自分の守りたいもの、守るべきもののために命をかけるなんて!」

 

羨望、尊敬、憧憬の念こそあれど失望などするわけがない。

 

「そ、そうか…うむ、そこまではっきり言われると少し恥ずかしいな…。

 そ、そうだ!お前、随分といい動きをしていたが誰か教官でもいるのか?」

 

ポリポリとほおをかきながらあからさまに話題を変えるリンシン。だが…

 

「あ、いまs「待て!!!!!!」っえ?」

 

自慢げに答えようとしたその瞬間、突然遮られてしまった。

 

「ど、どうしたんですか…?」

 

並々ならぬ気迫に恐れつつも問いかける。しかし、炎戈竜を倒した自分たちは既にこの火山では弱者ではないはずだ。それは野生生物の反応でわかる。

 では、いったい何が起こっているのか?だがリンシンの反応はイマイチ要領を得ないものだった。

 

「この粉塵…この地のものではない…しかしどこかでみたような…」

 

レオンも目の前の空間を注視する。

 するとそこには、火山の火よりも僅かに鮮やかな色をしているモノが浮いていた。

 

「粉塵…?あ、これかな?火花のようなものに紛れてちょこっと混じってますね…さらさらしてる」

 

興味本位で触り、擦ってみる。すると…

 

「どわぁ!?」

 

「な!?大丈夫か!?」

 

「大丈夫です…びっくりしたなぁ…」

 

なんと爆発したのだ。規模は極小であり怪我はない。だがいきなり目の前で爆発されると心臓に悪いものだ。

 

「ふむ…爆発する赤い粉塵…初めのアグナコトルの異様な警戒は火山の噴火ではない…では…これが原因…?しかし爆破を操るモンスターでヤツが恐れるレベルとなると古龍………………古龍…………?」

 

与えられた情報同士を組み合わせ、可能性を上げては消していき原因を探る。そしてその頭脳が導き出した結論は、あまりにも恐ろしいものだった。

 

「ッ…まずいな。レオン、早くここを出るぞ。さあ急げ」

 

「え、ええ?なんですかいきなり?」

 

「足を動かせ。…いいか、今から言うことはただの推測だ。だが心して聞け。…この粉塵、古龍のものかもしれん」

 

「こ、古龍!?」

 

いきなり突拍子もないことを言われてめんくらうレオン。しかしリンシンは至って真面目であった。

 そもそも古龍とは情報が極端に少なく、未だその生態の多くが謎に包まれているモンスターが分類されるものだ。故に、覇竜や崩竜のように時間が経ち古龍枠から外されたモンスターもいる。

 だが長い時を経ても、古龍という枠を常に占領しているモンスターもいる。その多くは生息数が極端に少なく、また超常的な能力を持つ。

 

「古龍なんてきたらやばくないですか?」

 

「だから急いでいるんだ。さあ歩け歩け。時間はないぞ」

 

「わ、わかりました。ところで予想ではなんの古龍かわかってるんですか?」

 

だが、古龍といえども知名度の差くらいはある。例えば鋼鉄の甲殻を持ち風を操る鋼龍は比較的目撃数が多いし、雷を操る幻獣は目撃数こそ少ないものの討伐数は一番多い。…五十歩百歩であるが…。

 そして、今回のように爆発性の粉塵を操る古龍といえばーーー

 

「私の予想では炎『王』龍テオ・テスカトルだ」

 

炎王龍は炎に特化した古龍である。古龍の中では鋼龍と並び比較的目撃数が多い種である。討伐数は公式記録では両手の指で足りてしまうが。

 

「見た目とか、わかります?」

 

「ああ、今までで1回だけ遭遇してな。ヤツは紅い。特にたてがみはあまりにも見事な色をと形をしている。角も大きい。翼もだ。はっきり言って全て素材のままでも芸術品になりうる」

 

これだけ詳しく知っているのは言った通り会ったことがあるからだろう。

 それにしても、よく覚えている。やはり古龍とのエンカウントは印象に残るのだろうか。

 

 

 

 

 

 

ーーー例えば、こんな風にーーー

 

 

 

 

「…リンシン…さん、あれ、そう…じゃないですか?」

 

明らかに震えた声で問いかけるレオン。それを聞いたリンシンは恐る恐る首をそちらに向けた。そしてそこにはーーー

 

「グルルル…」

 

ーーー両翼を大きく広げ、見るもの全てを圧倒する『炎の王』がこちらを「敵」として見据えていたーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブラボを久々にやったらなんかMHと組み合わせられるんじゃないかと思った。まだ書いてみるか決めてないから気軽に答えて欲しいです。仮に書いてもオッケーが多くても本当にやるかはわからないです。

  • あり
  • なし
  • ありより、でも世界観難しいんじゃ?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。