隻腕の師匠と捨て子の弟子 作:銀髪っ娘にTS転生したいおじさん
「では早速色々観に行こう!食べに行こう!」
「「「「おーー!!!!」」」」
予定も決まった5人はユクモの村をぶらぶらと歩き始めた。
もっとも、村の名前をしてはいるがその大きさは町と言ったほうがいいくらいには発展しているが。
「いやーすごいねぇ〜。場所的には自然の恩恵を受ける村って感じなのにそこらの自称重要交易拠点よりよっぽどいろんなものがあるね〜」
「うん、すごいねこれは…お、アレは…なんだろう、目利きかな?」
バルバレに勝るとも劣らない賑やかさに感心していると、リーフがとある催しをしている建物を見つけた。
何やら参加者が必死になって木の板を凝視している。
「へいへい!どんどん参加しておくれっと、あんたら、旅のもんか?ちょうどいい、この『ユクモ産の木材を当てられたら賞金ゲーム』に参加しねぇか!?
参加料金は5000ゼニーだが、当てられたら10倍だぜ!」
5人が興味津々にのぞいていると、この催し事の主催者と思われる男が参加を進めてきた。
話を聞くに、用意された5つの木材を見て、どれがユクモでとれたものかを当てる遊びらしい。
「ほほう…ならば、今こそ私の出番…!てんちょー、私が行く」
それを聞くや否や、ラクシュが鼻息を荒げながら参加を申し出ていった。
見た目や噂とは違い、意外と遊ぶことが好きなラクシュはノリノリのようである。
「あー、なら私も行こうかな。面白そうだしね」
「あいよ!ならお嬢ちゃんたちはこっちにきてくれ!……ほう?こっちのおっきい姉ちゃんはG級ハンターか。いいね、盛り上がるぜ。
さて、もう参加者は揃ってるからすぐにおっぱじめるぜ!」
2人を案内するや否や、店長が声高く宣言をし始める。
「さぁさぁ皆様ご注目!只今よりユクモ産木材目利き大会を始めます!今回は参加者にG級ハンター様もおりますぞ!
では、早速始めるとしましょう!」
いい興奮剤が手に入ったと言わんばかりにラクシュのG級を売りに出す店長。
おそらく、このままラクシュが当てて「さすがG級!」となる事を期待しているのだろう。無論、リーフのことなどせいぜい人数合わせ程度にしか思っていないはずだ。
ーーー他者の特技など見た目でわかるはずもないのだがーーー
「ぃよぉーーーーい…初め!!!」
店長の開始の宣言をして、同時に参加者たちが一斉に5つの木材を凝視し始める。
ある者は手に取り、ある者はこれでもかと目を開き、ある者はかじり始める始末。だがそれでも全く見当がつかないようだ。
「ふぇ、こ、これ、わかんない…」
もちろん、ラクシュも例外ではないのだ。
「君、さっきの自信はどこへいったんだい?」
そんなたじろぐラクシュを呆れ半分で自信はどこへ消えたと問うリーフ。
だがそれに応えることすらできないくらいには取り乱しているラクシュである。
もはや初めの自信など何処かへ行ってしまった。今頃は海底遺跡の中で大海龍と情熱的なダンスを踊っていることだろう。
「り、リーフだってわかんないくせに。さっきから全然動いてない。
それに、他の人も同じだもん。私だけじゃないもん!」
自分だけが間抜けなわけではないと子供のように主張するラクシュ。確かに彼女の言う通り参加者たちは阿鼻叫喚であるようだ。
「くそ!わかんねぇぞこれ!」「全部同じじゃねぇかクソがぁ!」「はい答え分かった!実は全部偽物!え?違う?ちくしょう!」「燃やしてやろうかしら…!木材ごときが…!」
だがこの中でリーフだけが余裕の表情を浮かべていた。
「ふぅ…これだから雅の心を持たない人たちは…」
わざと聞こえるようにやれやれとため息をつくリーフ。
そして、それに黙っちゃあいないのが他の者たちである。
「おいおい!何もしてない奴が調子に乗ってんじゃねえぞ!」「そうよそうよ!全く動いてないじゃないの!」「どうせお前もわからないんだろ!?」
やいのやいのとリーフを責める哀れなる参加者たち。
ーーーリーフはそれに、この挑戦の模範解答を以て黙らせた。
「ユクモ産は右から3番目。
理由はいくつかあるけどやはり一番はその木目だね。途中までは均等に、真っ直ぐにある木目だけど、下の方で僅かに湾曲している。これは温暖湿潤な気候で、沢山の養分を吸った特徴だ。他にも、ほんの少しだけする心を落ち着かせるような香りもある。ああ、音もそうだったね。ユクモ産のそれは叩くと他より少し軽い音がするのさ」
「「「「「「「「「……………………………………………………………………………………………………………………………………」」」」」」」」」
「あ、あれ?み、みんなどうしたんだい?」
「「「「「「「「詳し過ぎて引く」」」」」」」」」
「そんなぁ!?」
リーフは正解と根拠を雄弁に語り、完全勝利を確信していた。今なら世界の半分を賭けてもいいくらいには。
だが悲しきかな、人は突飛している者には冷たいのである。
「ええっと…はい、完璧です。じゃあこれ、賞金の50000ゼニーです。はい」
無念、店長にまで引かれてしまったようだ。
「なんだよみんなして!これが勝者に対する扱いかー!!!」
あまりの扱いにそう憤慨するリーフであった。
★ ★ ★ ★ ★
その後も彼らはユクモの村を遊び倒し、最後に何か寄ってから宿へ行くことになっていた。
「お?アレをやってみないかみんな」
すると、宿に向かう途中アベルが何かを見つけたようだ。
「ん?なんですあれ…選定の包丁?」
みれば岩に包丁が突き刺さっており、どうやらアレを抜くらしい。
「あー、アレ確か絶対抜けない奴として有名じゃなかったかい?私はパス。きちが…アンネ、行ってこい」
「え〜アッシもパスで。抜くぐらいなら土台の岩ごと粉砕するから〜」
「ふむ、ならレオン、行ってこい。あ、師匠命令ね」
キャピ、と言う音が聞こえそうなくらいかわいこぶった顔と声で言われたレオンは、珍しく師の笑顔に殺意を覚えていた。
「師匠、後で覚悟しておいてくださいね。主にモガにある秘密の酒蔵について」
そう言って岩へと歩くレオン。後ろで「ヒェッ」と言う声が聞こえたような気がしたが気にしない。
「これが選定の包丁…なんで包丁なんだろう?剣にした方がいいと思うんだけどな…」
ぶつくさと愚痴じみた事を言いながら包丁の柄に手をかける。そして、これより硬い硬い包丁との熱き戦いがーーー
「ふっ…!ってあれ?抜けた?」
始まることはなかったーーー
なおそのあとは長らく抜けなかった包丁…銘を「ホーリーキッチンソード:えくちゅかりぱぁ」と言うらしい…を一瞬で抜いた者として、「えくちゅかりぱぁの主」の名が広まったレオンであった。
★ ★ ★ ★ ★
時が経ち、既に村は睡眠の時間である。
無論、この5人もそれは同じだ。同じなのだが…
「はぁ…はぁ…なんか体が熱い…?」
リーフは火照る自信の身体に悩まされ、眠れずにいた。
だが、原因がわからないことにはどうしようもない。無理やり寝るしかない、そう思って横になった時であったーーー
「ふふ…つっかまーえた♪」
ーーー上から変態が覆いかぶさってきたのは。
「ちょ、何を、こら!やめ、やめろぉ!むぐーーー!んーーー!」
必死に抵抗するが馬乗り状態であり、さらに口まで布で塞がれてしまった。
「ふへ…ようやく…アッシのモノにできる時が来た…。そう抵抗しても無駄だよぉ〜?ラクシュちゃんには強烈な睡眠薬を飲ませてあるからねぇ〜。そして、リーフちゃんに飲ませたのはとある事情で入手できたおクスリだよ。効果は…もあ身をもって味わってるよねぇ?」
ねっとりと、まとわりつくような粘着質な声で耳元で呟く変態。さらに、その変態の魔手は哀れな被害者の下半身にゆっくりと伸びてゆく。
「んーーー!むぐー!!むーーー!」
必死に声を出そうとするも布に阻まれてほとんど響かない。
「涙目で必死に抵抗しちゃって…かわいい…でも無駄だよぉ〜?さぁ、もう諦めちゃいなよ」
するりと、手が脚と脚と間に入ってくる。舐め回すような、触手のようなその手はそのまま上へ上へと登ってゆき、遂に、その最終目的に到達しーーー
「憲兵及びギルドナイトだ!大人しくしろ!」
得ることはなく、救世主が現れたのだったーーー
★ ★ ★ ★ ★
翌日、4人は帰路についていた。
なお、1名は死んだ魚の目をして呆けているが…
「し、師匠?大丈夫ですか?」
レオンが心配そうに声をかけるも、引きつった笑いしか返ってこない。
「リーフ、失ったものはない…はず…だから頑張って。貞操は無事だったわけだし」
「辛辣だね!?私の心はどうなるんだい?」
ガバリと起きてラクシュに飛びかかるリーフ。しかし当の本人はどこ吹く風である。
「やー、リーフが情熱的ー」
「ぶっ殺す!」
「お、落ち着きたまえマドモワゼル!」
「落ち着けるかぁ!私は命に変えてもこの防御バカを打ち破らねばならないのだ!」
車の中でドタバタと大乱闘を繰り広げるリーフ。
ーーー彼女のポケットに例の薬が入っているのは本人だけが知ることであったーーー