ジャミトフに転生してしまったので、予定を変えてみる【完】   作:ノイラーテム

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戦争は終わりぬ

●戦いの裏で

 中東戦は予定以上の損害がなく終わったものの、北米戦に備えて再編ということにした。

無事な様子を見せつけて、宇宙に上がった中将たちを牽制。

 

その裏で、政府主導の交渉にジャミトフたちも参加していた。

正確に言えば事前交渉を行っていた捕虜交換に、政府筋の連中を誘ったのである。

 

「一命をとりとめたばかりだというのに君も現金だな。アマ……」

「その名前は不愉快ですな」

 部屋の一室を無菌室に改造して半病人……というか、棺桶に足を突っ込んだままの男を乗せていた。

面会に訪れたとき、その男は適当に付けた偽名に対し、本気で嫌がっているようであった。

 

「では天本教授とでも呼ぼうか。ドクトル・Aというところだな」

「それで結構」

 所詮は偽名である。

男は嫌な相手の名前以外は気にしていないようだ。

あるいは妹婿の名前に統一した場合、実家が吸収されたような気がするのかもしれない。

 

「ともあれ、このキローンはお気に召したかな? 教導艦ゆえ特化した能力は特にないのだが」

「いえ。さすがに連邦製。ザンジバルとは物が違います」

 偵察能力旺盛なガルダを使うと刺激するので、宇宙訓練のために用意したペガサス級を転用。

既に訓練していることを隠すため、教導艦としての時代は正式名称ではなくキローンと呼んでいる。

 

それはそれとして、謙遜しているのか、本当にそう思っているかは分からない。

天本教授、あるいはドクトル・Aと呼ばれることになる男は、自身の研究にこそ最大の関心があるのだから。

 

「それよりも例の件ですが……」

「うむ。教授には世界を救うに相応しい船の研究をしてもらうことになる。三胴艦として建造し、両舷そのものを別の船として連結という名目にした」

 長い胴体を持つ巨大な船体に、大型炉心と埋没できる特殊艦橋。

その両舷には専用の炉心と特殊装備を備える、超大型戦艦であり、建造許可が降りる前から研究しても問題ない造りになっていた。

 

「艦名はハーキュリー。まあハーキュリーズ計画とでも名付けておこうか」

「ハーキュリー……。ギリシア最大の英雄か。確かに特殊装備を最大で十二も研究するのであれば、一つくらいは問題ないと」

 木を隠すなら森の中。

超大型兵器開発を隠すならば、超弩級戦艦の研究に混ぜてしまえば良いのだ。

これならば実際に開発成功しなくともよいし、本当に成功すれば別の分野にも活かせる。また、十二も研究するのであれば、バリエーションを増やすことも、他の科学者に予算を割り当てることもできるだろう。

 

「まあ大和式というやつでな、十二というのは予算を隠す名目だ。とはいえ二・三であれば好きにして構わんよ」

「感謝する」

 ハーキュリーズ級は何隻か実際に作る気だった。

実験艦兼見せ札として重装甲かつ最も大型のハーキュリー、外宇宙探索用という名目で対アクシズ用の長距離軌道ユリシーズ、高速展開用の戦術機動艦アキレース、そしてこの艦をバージョンアップする教導艦キローンの四隻。

残り八つの武装に対応した船は建造しない予定なので、予算を宙に浮かせるには十分なのだろう。

 

「しかし、私はともかく結構な人数の捕虜を解放すると聞いたが?」

「ふん。別に敵を開放する必要はあるまい? 意図して開放するのは穏健派や中道派を優先する。もちろんガルマ大佐の元にな」

 捕虜交換はスパイ潜入や領土交換の名目ではある。

しかしジオンを二つに分裂させ、悪くとも親連邦派を作ることを一応の目的にしていた。

 

ゆえにザビ・ユーゲントを始めとする、どう考えても敵対する連中は理由を付けて返さない予定だった。

中立派が穏健派と協力するかは分からないが、ガルマの元に送れば、彼が自分の勢力として組み入れ再編するだろう。

 

 

 ドクトルとの話を終え、彼が療養を終えればどこの基地に所属するかなどを話し合う。

そして数日が過ぎれば、いよいよジオン地上軍との交渉である。

 

「先行してお返ししたメンバーのほかに、この交渉が終わり次第、ウォルター・カーティス大佐らを引渡しいたしましょう」

「ご配慮、痛み入ります。では早速内容の方に」

 本来、ここで渡す書類はお互いの最大条件だ。

無理を承知で色々と注文を付け、妥協案を途中で結ぶのが通例だ。

 

しかし今回は既に事前交渉が終わっており、ほぼ直球で連邦側の条件が通ることになっていた。

これに対して敗者が確定しているジオン側は条件を呑まざるを得ず、中間交渉はあくまでガルマ派を持ち上げる為だけの物と言える。

 

これによってガルマは他の将帥と比べて唯一、最後まで地上拠点を保持という功績を達成。

無事に同胞を取り戻し、サイド3と引き換えに仕方なく北米を返却するという流れになっていた。

その頃にはガルマ派が最大の部隊を握っており、滞りなく交換が行われる予定である。

 

そこまでいけば住民にも慕われているのが、ここに来て後の評価として大きくなるだろう。

ジオンと連邦の双方に対する架け橋として十分な物であり、今回の持ち上げとは違って、純粋にガルマ個人への称賛でもある。

 

「ジオンが行った北米へのインフラと引き換えに、サイド3へ連邦が行ったインフラを相殺。これで名実ともにジオンは独立することに成ります。その後は……」

「判っておりますよ。私はあくまで代理です。人民の代表が選ばれるか……」

 インフラ投資という物は、仮に植民地が独立したとしても宗主国に払わねばならない。

しかも武力蜂起で占領しても、法としては権利が残り続けるのである。

 

だが、この交換条約によって真実の独立をジオンは成し遂げる。

それもまたガルマの功績であり、彼は認めないだろうが、その人格ゆえに連邦も許したと言って良いだろう。

彼ならば、改めて連邦へ参加すると信じられるからだ。

 

「ジオンの後継者であるキャスバル・レム・ダイクンが帰還するまでのつなぎと弁えております」

「それが判っておられるならば言うことはありません。では、戦時賠償への減免措置についてお話ししましょう」

「……」

 ホワイトベースが北米に降り立った時、強襲したシャアは重傷を負っていた。

原作よりも護衛が多かったのだから仕方がないが、その治療とガルマへ貸しを返すために留まっていたらしい。

 

今回の交渉で自分の本名が使われたことに、どんな思いをしているか非常に興味がそそられた。

しかし今はそんなことを言っている暇はないし、先にやるべきことがあるだろう。

 

「賠償として、サイド3は無事なコロニー群を連邦に提供していただきます。とはいえその規模は大きく、代替コロニーを適当に建造するわけにも行きません」

「コロニー再建計画では、すべてのサイドで完全循環型を目指しております。ご満足いただけるでしょう」

「サイド3でも新型コロニーの建造をご許可いただけるのですね。ありがとうございます」

 この計画はジオンの罪を軽減し、それを判り易い形で国民に伝える物だ。

 

だが、同時に経済を活性化させるプランでもある。

コロニーをすべてのサイドで建設するだけではなく、今までになかった水や空気を完全循環する新型を目指していた。

 

ジオンにもそれを許可するのは、温情であり経済的な事情であり、同時に反発を抑える為でもあった。

皮肉にも、ジオンは敗北をもって空気税と水税から解放されるのである。連邦の力と慈悲を知らしめるための一環として。

 

「この交換条件は一度に行うことは不可能でしょう。その担保として、ソロモンとア・バオア・クーのどちらかを、コロニー群の一部と交換いたします」

「重ね重ねのご配慮ありがとうございます。その間は宇宙開発拠点として本来の使い道をさせてください」

 これは交換というよりは、宇宙での拠点を渡すという意味だ。

もちろんジオン本国がギレンの手にあるままである場合は、正当政府として連邦側に付くことが条件に成る。

 

そしてコロニー群と引き換えにした後は、単純に連邦に戻すのではなく……。

火星ないし、木星を開発するための移動拠点として扱うことになっていた。

なんのことはない、アクシズ対策に使用するだけ。今後、また攻防戦で奪い合うことを避けるだけである。

 

「ではお互いの誠意を確かめる象徴として、例の物を交換いたしましょう」

「……そうですね。こちらに用意しております」

 ここに来てガルマが渋い顔をした。

交換するのは完全に整った状態のモビルスーツだ。

 

ジオンにしかない水中用モビルスーツと、そのノウハウ。

ようやく生産が軌道に乗った、ホバー移動するドム。

ジオンの次世代機であり、ビーム兵器運用を目指しつつある試作型……ゲルググ。

 

それらすべてを連邦が接収し、代わりに陸戦ガンダムや陸戦ジムを渡すことになっていた。

見た目こそ対等の交換に見えるが、陸戦ガンダムやジムは鹵獲されたこともある。実質的に没収と言って良いだろう。

 

「……悪いねシャア。君に送られた機体だったんだが」

「構わないさ。この程度で借りを返せるならばな」

 セレモニーとしてシャアに預けられているS型ゲルググの駆動キーが渡される。

他にもキーが盆の上に乗っているが、水中用などのキーということになっていた。

 

「お納めください。キャスバル総帥専用ガンダムです」

「赤とはユーモアが効いていますね。当面、シャアに預けますが構いませんか?」

「勿論です。そうなると見越して、白以外の塗装と決めた時に赤を指定しましたので」

 ちなみに色彩の指定をしたのはジャミトフだ。

これを順当と受け取るか、皮肉と受け取るかは分からない。

 

本当のことが知られれば二人の間はギクシャクするだろう。

しかし、一応の味方になるとはいえジオンには違いない。楔を打っておいて問題はあるまい。

 

 

 そして宇宙では予定通り、ア・バオア・クーで激戦が行われた。

ソーラレイは未完成ゆえに威力こそ低かったものの効率的な場所を撃たれ、史実に近い形の損害を連邦軍は出してしまう。

その後の再編が行われる前に、和平と停戦が発表されて、以前に出た噂を肯定する形で十二月までに戦争は終結したのである。




あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたしますね。

 という訳で一年戦争は終了。
連邦軍は余力を残し、あえてジオンにも余力……穏健派ジオンを残す形で停戦が起きました。

捕虜開放で引き渡されるのは、一応はガルマ支持を約束できる人らばかりに成ります。
戦力比として大きな差に成り、また和平に反対するかもしれない宇宙の中将たちも戦力が疲弊した状態なので何もできない感じです。

●北米・サイド3交換条約
 インフラ代こみで交換しますよ、という感じでジオンにまだ余裕あると見える状態で交換。
サイド3のコロニーは二・三割ほど持っていかれますが、新型コロニーがそのうちの半分くらいを補う予定。
ジオンの国民に見せつけ、また経済上の問題で、今までよりも良い物になります。

とはいえガルマにも拠点は必要だろうとか、コロニーを取り上げて何もないと許可されないだろう。ということで、ソロモンを返却。また後で連邦に提供してね……ということで木星に移動させる予定。

経済に関しては、戦争が早期に終わったこと。
また乱発される兵器製造がかなり減っていること、北米戦そのものがないので損害が減っている事。
また明るいニュースで上向いているので、原作よりはマシな状態です。

●天本教授
 金髪で死に掛けの科学者らしいですよ。

●今週のメカ
ペガサス級改『キローン』
 ジャミトフたちが宇宙に上がる必要が出る時のために、一応抑えておいた練習艦。
教導用なので特筆するのは新型カタパルトくらいで何もなく、交渉の使者が乗っていた。
名前はセントール族の賢者の名前から付けられている。

・ハーキュリーズ計画
 バーミンガム・ドゴスギアに類する計画。
実験艦で他の艦と接続する三胴艦のハーキュリーを最初に建造し、色々と実験する予定。
ギリシア最大の英雄である彼の武勇伝にちなみ、十二の武装艦を研究するという理由で、大和式の予算措置が行われる予定。

 建造するのはあくまでドゴスギアに倣って四隻。
一番艦はネームシップのハーキュリー。
二番艦は移動力に優れたユリシーズ。
三番艦は戦場での機動展開を重視したアキレース。
四番艦は訓練であるキローンの更新。

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