ジャミトフに転生してしまったので、予定を変えてみる【完】 作:ノイラーテム
●機械化大隊
V作戦が始まってしばらく、ようやくコアファイターやガンタンクがお目見えする。
ペガサス級も予定に入ったそうなので、連邦が持つ技術力・工業力の恐ろしさが垣間見えようというものだ。
同時に先行して投入した牽引車両も役にたち、持ち込んだ大型砲が戦果を挙げたそうだ。
セイバーフィッシュを本体にでっちあげたブースターも、この分ならば十分に役立ってくれるだろう。
「新兵器に関する人事……か。ふん」
送られてきた書類は新編の機械化大隊……モビルスーツや砲兵を含む戦車部隊への一時考察だ。
予定されている責任者候補の上位に、自分の名前があるという事は、欲しかったら部隊をあげても良いよという、プレゼントのお誘いであろう。
V作戦の取りまとめや既存兵器のてこ入れに成功したので、功績を報いる形なのだと思う。
ここで考えられる方策は次の三つだ。
一つ目。モビルスーツを率いてブイブイ言わせる。
二つ目。戦車大隊を率いて既存兵器の有用性がまだあると知らしめる。
三つ目。模様眺めで今は様子見に徹しておく。
「当然ながら、こうしてしまうのがベターだな」
書類から自分の名前に線を引き、同様に向かなさそうな連中も排除しておく。
そして色の違う丸印しをつけて、それぞれの候補を推薦しておいた。
「ご自分で率いられないのですか?」
「てっきりどちらかは、父上がご自分で管理するものだとばかり……」
「私が前線向きならここにはおらんよ。必要ならば否応はないがね。それとハイマン中尉、ここでは大佐と呼びたまえ」
取り巻きのジャマイカンと、息子のリチャードが首を傾げる。
それはそうだろう、せっかくの精鋭部隊。それも自分の裁量で人材や装備の権限をある程度は持てるのだ。
これほどロマンを掻き立て、かつ戦功を稼げるポジションは他にあるまい。
それゆえに二人が疑念に持つのも当然ではあった。
「仮にも軍人ならば大局的な視野を持て。才能のある指揮官に任せる方がよほど軍の役に立つ」
「も、申し訳ありません!」
硬いところを見せておいて、いったんこの話は打ち切る。
正直なところ、戦艦で争うどこかの戦記物ではないのだ。
功績をガンガンあげても昇進し続けるのは無理だし、V作戦や新型砲の導入で大戦中に准将になれるのは確約されている。
これ以上は同僚の妬みを買うし、コリニー閥から鞍替えするのかと思われかねない。
万が一、先見の明があるニュータイプだと言われては、監禁されて政治生命が絶たれてしまいかねない。
それを考えれば派閥内や他派閥の連中に恩を売り、今持っている関連装備発注の権利を維持・拡大する方が賢いだろう。
「しかしお前が口を挟むのは珍しいな。欲しかったのか? だがもう少し待て。いずれ指揮官も士官も足りなくなる。それとジャマイカン大尉、出立の準備をしておけ」
「「はっ!」」
二人とも別の意味で畏まる。
堅物の息子は私心出してしまった自分を引き締め、裏も今後の予定も知っているジャマイカンは失敗できない『接待』のために奔走しなければならない。
もちろん接待する相手は派閥の軍人ではないし、接待の材料も料理や金ではないのだが。
●鷲は羽ばたく
功績を譲った見返りに獲得している権限を拡大。
その余勢をかって、とある戦場にお客付きで訪れた。
そこはコリニー閥が管理する戦域の一つで、戦車隊と共に数は少ないが砲兵隊。
そして持ち込まれたばかりのコアファイターが数機、並んで我々を出迎えていた。
「随分と役に立っておるようですな」
「ナポレオン時代の真似事ですが、まあジオンには十分だったということでしょう」
牽引車両で大型砲を持ち込み、相手の兵器よりもロングレンジで砲撃を掛ける。
一昔前どころか随分と昔の作業だが、既存の技術だけで完了し、しかも手早く導入できるとありがたい限りだ。
「ですが命中精度が気になります。本体の方も予定通りに納入していただけるとありがたいですな」
「融合炉稼働の大型戦車の発注ですな? 間もなく満足できるものがお届けできるかと」
もちろん備え付けではなく、専用の本体があれば言うことはない。
だからお客の一人であるメーカーに納期の方を確認しておいた。
近距離戦を61式に任せることでシンプル化し、かつ、そちらの受注も取り下げない。
お互いwin-winの関係なので、これ以上言う事はなかったはずだ。
しかし予想外の一言が、この後に大きな影響をもたらすことになる。
主に黒歴史が、黒歴史で無くなるという意味でだが。
「時に、アレはなぜ地上にあるのですかな?」
「コアファイターですか? ああ、あれは教育型コンピューターと統合型OSがありますのでね。データの管理を任せておるのです」
さきほど見たコアファイターは、飛行のために待機していたのではない。
砲兵隊を繋げているリンク用ケーブルから、データのバックアップを借用して、検証やらフィードバックを計算させているのだ。
何せコアファイターの技術は恐ろしく、アニメではGスカイとGブルの制御も同じOSで管理しているのである。
教育型コンピューターともども、今後の技術発展に役立ってもらうのは悪くないはずだ。
「ふむ。そういえば閣下。道々ハービックさんと話し込んでいたのですが、セイバーフィッシュに増加パーツを付ける話があったとか」
「セイバーオルタのことですか? なんでもコアファイターをベースに切り替えたそうですが」
今回は連邦企業各社のうち、コネのある数社を呼んである。
受注枠の話やら、今回渡す『菓子』で作って欲しい物があるからなのだが。何やら業者同士で色々と話し合っていたらしい。
「それなのですが価格の問題で、スケールメリットを活かすために一部を流用。必要とされる火力は大型戦車に倣って、別物を用意しようとなっているそうなのです」
「コアファイターは小型化した分だけ無理もありますし、高額化したそうですからなあ」
確かにジェット・コアブースターは機首部分だけを使っていたはずだ。
原作では最初からそのような計画だったはずだが、こちらではセイバーフィッシュをベースとした分だけ開発順番がおかしくなっているのだろう。
そもそもガンダムの活躍に合わせて、それを輸送するGファイターなんか作られそうになかったしな。
「どうでしょう? せっかくですし、我が社の技術を提供しても良いと思います。代わりに大型化したマシンに我が社も協力させていただけたらと」
「……大型戦車にまでフィードバックしようとは言わんでしょうな?」
ライバル会社でこそないが、企業同士が技術提供し合うのはありがたい。
特に遅れている戦闘機の納期が早まるのはとても嬉しい。
とはいえ新技術投入のせいで、また遅れたらそちらの方が問題だ。
後から出てきたコアファイターが高性能過ぎたせいで、直ぐにでも納入されるはずだったセイバーフィッシュブースターこと、セイバーオルタの納入が遅れに遅れているのは苦笑しか出ないが。
「いやいや、もちろんですとも。我が社の製品は納入間近なのですからね」
どうやらGファイターの開発に一枚噛みたいらしい。
大型戦車の数はそこそこで、61式と併用で受注するという形では思ったよりも利益が伸びないのだろう。
特にモビルスーツの登場と、それによる戦争の早期終結の見通しを伝えた為、彼らも大きく焦っているらしい。
「それならば構いませんが……」
問題はGブル? Gブルなのか?
原作でGブルがそんなに役立ったっけ?
そう思いつつGファイターの活躍を思い出そうとする。
しかし原作でも登場したのはアニメの方だけで、劇場版以降では登場がカットされていたはずだ。
その後の外伝とかに出ていたかもしれないが、関連書籍込みでパっとは思い出せない。
どうやって断ろうかと思いつつ、言い出せないのは原作でのガンダムMAの活躍とか、別にGファイターがあろうがなかろうが大勢に影響はないことだ。
「しかし宇宙で戦車の能力をそれほど使う訳でも……。宇宙で戦車?」
砲門の技術はありがたいが、Gブルは断ろうとした矢先。
GファイターはGスカイだけで良いじゃない……と言おうとした自分を殴りつけたくなるほどのアイデアを思い付いた。
「よろしい。大いによろしい。せっかく大型化するのです。V作戦の機体を輸送できるようにしていただけるとありがたいですな」
「閣下? いえ、大佐?」
思い出した知識があるが、正確にはプラモデル雑誌の記事を思い出したのだ。
ニヤリと悪い笑顔を浮かべた私に、営業マンだか技術者だか判らない企業側の男が青ざめる。
「コアファイターを基準にするのではなく、RXマシンを基準にします。そのうえで大型戦闘機として利用するだけなら、ジョイントでもかませばいい」
「そこは判りますが、RXマシンをですか?」
Gファイターはコアファイターを前提にした状態よりも一回り大きく、アニメでのサイズには矛盾がある。
だから初期のプラモデルでは大きすぎる形状になっていたのだが、後のプラモではジョイント形式に改善されたはずだ。
それはそれとして理解できない彼に、私はそっと耳打ちすることにした。
「地上ではバランスの問題で無理ですが、宇宙でなら上半身のAパーツに下半身はブーストパーツという組み合わせも可能でしょう。それとRXマシンの組み合わせを考えてごらんなさい」
「はあ。モビルスーツの高速移動形態という訳ですな。例えば弊社の関わるRX-75ですと……っ!?」
どうやら判ってもらえたようだ。
ガンダムMAの魅力という意味ではない。
そう、一番重要なのはガンタンクのモビルアーマー化である!
プラモデルの雑誌で見た、グリフォンというガンタンクとGファイターを組み合わせたやつを思い出したのだ。
とはいえその為には、多少の手直しが必要だろう。
Gブルみたいな感じで戦車技術を応用するのはもう無理だ。後ろ半分をメインに、前半部分は対空レーザーやコックピットを守る装甲版にでもするしかないだろう。
あとはEWACとしての流用が精々だろうか?
「お判りいただけただろうか? それと此処だけの話、宇宙ではビーム攪乱の技術を研究中でしてね」
「……閣下。今後とも私どもをご用命ください。もちろん今のお話には誠心誠意お答えいたします」
ガンタンクMAの移動力と射程があれば、I・フィールドだって怖くないね!!
それに地上でしか役立たないと思われていたガンタンクが宇宙でも使えるならば、数を増やして運用することもできる。少数だからお高いが、量産型やらガンタンクⅡを製造するついでに増やせば良いだろう。
結果としてガンキャノンやジムキャノンが早期に消えそうだが、まあその辺は仕方あるまい。
「お待たせしましたな。御社にお任せしたい物がありまして。ジャマイカン、鹵獲品の元に案内してさしあげろ」
「はっ!」
「鹵獲品ですか? ザク……いえ、ドップやドダイでしょうか?」
もう一組はハービックを中心とする航空機組だ。
むしろ今回は、こちらの方がメインといっても良い。
だからこそ、連中も渡したいのがザクではなく、航空機なのだと思っていたようだが……。
正確にはドダイだけではないのだよ。
「ドダイYS。爆撃機の搭載量を利用した、モビルスーツ運搬用の機体だそうです。言ってみればサポート・フライング・システムといったところか」
「これが……」
そこになんとか無事のドダイ、そしてぶっ壊れた無数のドダイや、同じようにガウがある。
壊れているのはそのまま使うのは無理だが、一機でも無事なドダイがあるのはありがたい。
「これが我が軍にもあれば、モビルスーツや少量物資の運用がスムーズになるでしょう。もちろん宇宙用も欲しい」
「それは誠にありがたい話です。しかし……」
「その場合、我が社はなんの御用で?」
ゲタやセッタを早期に開発しておけば後が楽になる。
ミデアを使うほどでは無い任務や、目立ちすぎる場合に便利だ。搭載量のあまりに、携行武器や弾薬くらいは積めるだろう。
だがそれでは話半分でしかない。
重要なのは残り半分である。
「ガウ攻撃空母というらしいですよ。V作戦の母艦に使われているミノフスキー・クラフト・システムを使えば、ペガサスよりも安価な母艦ができると思いませんか?」
「それは確かに! 大型の航空母艦ですか。それは素晴らしいですな!」
航空母艦は連邦でも作れる技術なので、残骸とはいえガウを研究すれば確実だろう。
「とはいえ大物ですので直ぐにはできないでしょう。半年……いえ、場合によっては戦後を見据えてくださっても構いません」
さすがに母艦となれば上層部への打診は必要だが、コストの問題で許可が降りていた。
ペガサス級はあくまで危険な重要任務へ使用し、地上では安価に設定した航空母艦を用いるという話である。
そして一連の受注は戦争後も見据えている。
戦時と日常では予算の使用量が違う。緊急時用の強襲揚陸母艦と、より安価な航空母艦ではどちらがメインになるか自明の理。
その為は彼らの企業が必要になるという事であり、その命運を保証した私の利益となるのだ。
という訳でコジマ大隊をスルー。
自分の戦力で楽しく戦うルートを放棄して、代わりに恩を売る感じになりました。
まあ計画に関わったから『どうしてもというならあげるよ?』と言われたので、どうしても欲しいわけじゃないんだからね。と言って、他の人に回しただけです。
あと調子に乗るとアプサラスとかで大変な目にあいますしね。
●Gファイターの量産と、ガンタンクMA=グリフィン
嘘だろ、GブルとGスカイって同じOSなんだぜ。
ガンダムだけならまだしも、これは連邦脅威のメカニズム。
教育型コンピューターでコマンドの処理を簡易化して、AボタンBボタンだけで済ませてるだけで、曲射射撃とかはテクニックは無理でしょう。
しかしこれだけ凄いベースマシンがあるならば、使用しないのも嘘ですよね。
ですからガンダムの高速輸送・コアファイターの重装化だけではなく、ガンキャノンやガンタンクをMAできるようにします。
そうすると簡易量産化の決まっているガンタンクを増やして、ガンタンクMA部隊を作ればビムザムだって何とかなりそうです。
ですからこの世界ではハヤトが多少活躍したり、スレッガーさんは戦死しないんじゃないでしょうか?
まあアムロも乗れるだろとか、それはそれとして戦死する可能性は他のシーンもであるでしょうけれど。
●ガウとドダイYS
この辺も早期に着手しますが、あくまで戦後に向けての発注。
企業連に今後の受注をほのめかして、利益保証があるから潰れない。としているだけです。
ジャミトフさんとしては間に合わなくても良いし『今後トモ、ヨロシク』と言ってもらえば良いので。