ジャミトフに転生してしまったので、予定を変えてみる【完】   作:ノイラーテム

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外伝:語られぬ金字塔(ビック・ゴールド)

●その男、不退転につき

 サイド6に置かれた実験施設にジャミトフ・ハイマンが左遷されたことがある。

彼を暗殺せんと目論む輩が、ジオン残党の暴発に便乗したという。

 

ジオン残党は連邦内のタカ派に利用されたというが、人々が関心を持つのはむしろ結果だ。僅か一個中隊が大隊規模の敵を壊滅させたとあれば、酒場のつまみには程よい与太話である。

 

「G-3ですか? マグネット・コーティング等を試す為にレストアしましたが、調整もしてない旧式ですよ?」

「構わん、奴ならば使いこなす」

 黒幕である連邦政府のタカ派が工作していたため、ジムの補充が間に合ってなかった。

コロニー内に残る戦力は資料として保存された旧型機が一機のみ。対する敵は一個中隊は居る。

 

(くくく。最初に見た時から決めておった。鬼に金棒を持たせれば面白かろうとな)

 だがジャミトフは知っていた。

その一機があればジオン残党如き、一個中隊では相手にならぬと! ゆえに命がけで高みの見物をする気であった。

 

 

『分断に成功した! 守備隊全機が動かぬうちに未稼働の機体を叩け!』

『了解!』

 主力になったとされるのはMS-09を主力とする一個中隊。

彼らが敗北したのは偶然ではあるが、大枠では誘導された結果である。

 

まさか納入もされてないジムを、空き家のケージごと攻撃しているとは思ってもみなかった。

その情報を黒幕である連邦のタカ派が伝えていたら、彼らは別の場所を狙うので襲撃は成功していたのではないかと推測されている。

 

『こちら02! 一つ目が終わった。次のケージに……』

 ドムだけで構成され、強襲を得意とする小隊が運悪くソイツと出会った。

小隊長は報告の途中で、腹からビームサーベルを突き出しながら沈黙。

 

『どうした02? 報告は最後まで……』

『02戦死! 指揮を引き継ぎ……』

 残り二機の末路も似たような結末らしい。

現れた死神はビームサーベルだけで瞬時にドム三機を殲滅したことになる。

 

『第二小隊に何が起こった? 03! そちらから敵が見えるか?』

『敵です! 黒い角突きがたった一機で……。こちらに来ます! 迎撃しろ!』

 部隊の半分をモビルスーツ・ケージと歩兵施設を潰すために充てていた。

第三小隊はマシンガン装備の制圧戦向きで、歩兵施設からそのまま周辺施設を潰している所だ。ケージにも近いことから、本隊よりも詳細を掴んでいるのだろう。

 

報告を元にデータをピックアップすると、インドシナ戦線で見られたという角突きの画像が報告内容と共に現れる。

 

『ルナ・チタニウム装甲だと? そいつはマシンガンじゃ無理だ、白兵戦で仕留めろ!』

『了解! ジェットストリーム・アタックを掛けるぞ!』

 牽制弾を撃っても効かなかったのか、第三小隊は素直に従ったようだ。

相対距離が近づくまでに、白兵戦を選択して叩き潰しに掛かった。

 

そこから先は隊長機からも目視できる。

何しろ敵は迂闊にも飛びあがってジェットストリーム・アタックを回避したのだ。地上ならまだしも、コロニー内でそれは殺してくれと言わんばかりであった。

 

『散開っ!? しまっっ読まぁぁ……』

「ふたつ!」

『馬鹿な。副砲ごときで装甲が!?』

 黒い角突き……G-3ガンダムは浮かび(・・・)上がると同時に足元を中心とした円へ左腕を向けた。

ヴィィーン……と鈍い音を立てガトリング砲のルナ・チタニウム弾が唸りを上げる。火花が散ると同時に損害が発生し、避け切れなかった機体は沈黙。瞬殺されたらしい。第三小隊の残りは二機。

 

『馬鹿な。右手の剣が……どうして左に?』

 いや違う……最初の機体はすれ違いざまにサーベルで貫かれていたのだ。

空中のガンダムが二本目のサーベルを抜いたのと、ドムが崩れ落ちるのはほぼ(・・)同時だった。

 

『迂闊なんだよ!』

 地上よりも軽いGのコロニーで空中に飛べば制御し難くなる。

そう思って切り掛かろうとした機体は地獄を見た。そいつは右手のワイヤーを使って、上空に設置された訓練用カメラに捕まっていただけなのだ。躊躇なくサーベルを捨てていたのも、ワイヤーをコントロールする為だろう。

 

下から上へと、上から下へ。

同じ加速ならばどちらが有利なのかは一目瞭然だ。攻撃タイミングを完全に読まれたこともあり、相手になるはずもなかった。

 

『くそっ。半分殺りやがった。隊長! 敵を討ちましょう!』

『よせ、不用意に出るな! そいつはエースだ! しかも……俺たちのやり方を知ってるぞ!』

「ハーハッハッハ! 良くご存じだ!!」

 着地にブレの無い見事なタイミング、もしマントがあれば優雅に翻っていたかもしれない。

仲間の仇を討とうと迫るザクとドムのうち、ザクがあっけなく切り殺された。そこから最速の右回り左向き、回り込んだはずのドムの更に後ろへS字機動をかけている。

 

『馬鹿な。速過ぎ……っ!?』

『ひぃ!? 死にたくなっ……』

「三つ!」

 あまりの強さとその意気込みにもはや恐怖を覚える部下も居る。

だが回り込まれて九機目が沈み、即死とは言わないが腕や足をやられて逃走できる機体は一機もない。

 

そしてガンダムのパイロットが口走る数字はどうやら機体数ではなく小隊数らしい。

どうやら士気を挫くために、わざわざレーザー通信を使ってカウントを伝えている様だ。

 

『強い! 俺たちにもエースは居る……。だがこいつはそんなもんじゃないぞ。連邦に降った奴が何でこんな……』

「あえて言うならば、鍛え方が違う! 想定が違う! この戦に掛ける意気込みが違う!」

 ガンダムを操る男、ミッシングナンバーのBこと戦闘執事(バトラー)ノリス・パッカードは全てが違った。

 

(そして何よりも、忠義の積み重ねが違う!)

 主君であるギニアス・サハリンの命を助けられたばかりか、その本懐も叶えてもらった。妹姫のアイナには子供が生まれ、もったいなくも子供からは『じーじ』とまで呼ばれるありさまだ。

 

しかもジャミトフの護衛というよりは、教官役(アグレッサー)として招かれた。

実際に自分で相手しているわけでもないが、ジオン兵の動きは全て考慮してヤザン達に伝えてある。この訓練場でモビルスーツがどう動き、どう回避機動をかけるかまで想定済みだ!

 

ましてや乗る機体はガンダムの改修型。ドム相手ならば十分過ぎる程だ。

最新型のジムをノリスが借りれるはずもないので、テストが終わって放置されたこの機体で訓練せざるを得なかったことが、逆に幸いしたともいえるだろう。

 

「さて。残りは本部小隊のみ。見れば未完成だったMS-18でしたか? 完熟訓練は御済みで? 弾丸の装填は確認されましたかな? そうそう。命乞いは聞いても良いとの仰せです」

『ぬかせ! こちらはジャミトフ一人葬れば良い算段よ!』

 襲撃隊の隊長機は、連邦を陰で操る政府助言役(ブレーン)の一人であったジャミトフの価値を知っている。

宇宙市民の決起を伝えるには良い対象だし、たとえ残り全機が倒されようとも、誰かが暗殺に成功すればよいのだ。

 

そう決断して部隊内だけで通じるハンドサインで指示を送り、自身は対重装甲用の秘密兵器に指先を掛ける。

 

『隊長! 戻ったら酒でも奢ってくださいよ!』

『腹が破れるまで奢ってやる! 散開して一機でもジャミトフの元に辿り着け!』

『ミノフスキー粒子の重戦闘散布開始します!』

 先ほどから援軍が来ない。

あるいはケージを潰した時に、残りは倒しきったのか? 戦力の払底に気が付いた隊長機は、自分が殿軍に残りつつ部下を散開させた。しかも指向性レーザー通信でも連絡ができなくなるレベルのミノフスキー粒子である。

 

「考えたな。このレベルの散布では通信はおろか、画の受像にも影響が出る。だがしかし!」

 ミノフスキー粒子が光に与える影響はそれほど大きくはない。

正確に言えば、通常の戦闘レベルでは問題ないといえるだろう。だが重戦闘散布まで濃度を上げると、おおよその位置情報の上に、『この機体であるはずだ』というデータを被せて処理するしかないので探知性能や命中性に差が出るのだ。

 

「その戦法は既に確認済みだ! ここの隊には良い子たちが揃っているからな!」

 実のところ、このコロニーで実戦練習をする場合。どんなことを想定するだろうか?

通常戦闘などとう(・・)にやり尽くし、途中からは暗殺の可能性を入れて様々な強襲戦を試している。当然のことながら、重戦闘散布下での暗殺など何度もやった訓練内容である。

 

「その程度の援護、効かぬ!」

『ルナ・チタニウムに実弾効かぬは先刻承知!』

 ノリスは相手の動きを想定すると、移動力の速いルートを先に潰しに向かった。

ドムは一度迂回して直通路に向かうので無視し、ミノフスキー粒子を撒く装備のザクを先に倒す。

 

片手でMMP-80を連射しながら迫るケンプファーを無視したノリスだが、敵もさるもの引っ掻く者。自分を無視させるためにマシンガンを使っていたのだ。本命の秘密兵器を握り締めて最後の突撃に打って出た!

 

「ウヌ! こやつめ! 死ぬ気か?」

『諸共に沈め! 爆・導・索!!』

『隊長!?』

 黒いガンダムに迫るチェーンマイン。

最期の一人が見ることができたのは、そこまでだった。敵味方共に巻き付けた大爆発で隊長機は見る影もなく……。

 

『くそ! 何も見えねえ。最後は俺一人か。だがジャミトフだけは必ず殺……』

 それが疾走するドムのパイロットが最期に口にした言葉だった。

最も装甲の薄い頭上後方よりバルカン砲を撃ち込まれ、あえなく戦死したと伝えられている。

 

「やれやれ。下半身が全損とは。申し訳できませぬな」

「くくく。そのセリフを他の奴らに聞かせてやりたいものよ。まあ次の機会があれば、再合体を試すというのもよかろう」

 そう、ノリスはAパーツとBパーツを分離。

その勢いで上半身であるAパーツを吹っ飛ばし、飛行形態になったコアファイターでドムを仕留めたのだ。

 

重戦闘散布では参照するデータを再結合させる必要がある為、一瞬、敵はノリスの姿を見失ったのである。下半身とケンプファーに巻き付いたチェーンマインで、周囲が爆発したことも大いだろう。注意が削がれて、急接近するノリスに気が付かなかったようだ。

 

こうしてジャミトフ暗殺事件において、コロニー内で起きた語られぬ戦闘は終了した。

戦闘もであるが、相手の動きを先読みした無駄のない動きは特筆に値する。

その画像は教導団入りを目指す者たちだけで共有され、門外不出の金字塔となったという。




 という訳で第一部の外伝で削ったノリスの戦闘回です。
まあ震える山とポケ戦を混ぜただけなんですけどね。
もう一本戦闘を載せようかと思ったのですが、長くなるので割愛しました。

●戦闘補足
 要らないとは思うけれど、必要な人向けの詳しい解説。
本文にゴチャゴチャ書いたら5000字突破したので、見易く切り分けたとも言います。

・第二小隊戦:
 モビルスーツ・ケージを潰している間に起動して、他の建物から攻撃。
驚いている間に二機目、サーベルしかないのでケージに向かって武器を回収すると思って先回りしようとしたところを、躊躇なくビームライフル回収なんか無視して攻撃。

・第三小隊戦:
 敵はジェットストリームアタックからの分散戦闘で連携技を連発するの予定。
右手の武器を左手に持ち替えてリーチを誤魔化して刺殺しつつ、右手のワイヤーを上に。
スラスターは一切使わずに上空へ上がりつつ、散開して旋回戦闘しようとする敵に左手のガトリング砲。これはアレックスと同じルナ・チタニウム弾頭で、ドムの装甲では防御不能。
相手がジャンプして来ると予想できるので、ワイヤーを外して下に向かってスラスター移動しつつ抜刀攻撃。

・第四小隊戦(実際には本部小隊と一部入れ替わっている)
 まず即座に倒せるザクを切り殺し、『右回り左向き』という高速マニューバーに移行。
これはメインスラスターで右回転の移動を掛けつつ、小型スラスターで左向きに態勢を変えるもの。
敵からは後ろに回ったつもりなのに、後ろの後ろを瞬時に取られたように見える。
まるでゲームのブルーディスティーでイフリート改の高速移動を見たような驚きであり、ここで一機が逃走。こいつを切り殺して三つ目の正体が壊滅。

・最終戦:ミノフスキー隠れの術 vs 変わり身の術!
 敵はハンドサインで分散、ならびにミノフスキー粒子を重戦闘散布。
これは光エネルギーを含めて阻むレベルで散布するもので、あまりみられない。
(指向性レーザー通信も使えなくなる)
録画した画像をそのままモニターには映せず、記録画像を位置情報に合わせ直す必要がある。
戦い難いらしいが、どの小説ないし資料に乗っていたマメ知識かは忘れてしまいました。

 敵の隊長機はこの戦法で分散させ、一機でもジャミトフに辿り着くことを選択。
同時にノリスが装甲に任せて一機ずつ狙うと判断し、チェーンマインで自爆気味に殺す予定。
ノリスは実際にそう判断したものの、相手にも隠し技があるとみて分離を準備してザクを潰す。
そして迫る隊長機に向けて、分離で上半身を向かってきた相手にぶつけつつサーベル展開。
自身は脱出しつつドムを追おうとしたが、実際にはチェーンマインだったので、サーベルは回避。
自爆で生き残っている可能性を考えて確認のために旋回したため、ドムがホバーする暇があった。
ワンテンポあったのでモビルスーツでは追いつけないかもしれなかったが、コアファイターなので追いつけた。
(ドムではなくザクを残した場合、疾走しないぶん追いつき易いが、隠れられる可能性があった)

という感じですね。
1対12とはいえ、ミノフスキー粒子まいてるのにノリスは経験と過去例で無視できる。
ルナチタニウムの装甲と弾丸にビームサーベルがあるので、時間が掛かるだけで勝てます。

●その週のメカ
G-3ガンダム『影』
 活躍がないまま終わったガンダムの予備機を回収し、テスト用に使用していた。
黒色:ステルス迷彩の実験
本体:ジムカスタムに使うマグネット・コーティングの実験。
右手:インコムの実験用のワイヤー(指でなぞった通りに移動するだけ)
左手:ガトリング砲はルナチタニウム弾頭(後のジムライフル?)の実験。
記録:心眼モードは実験場で行われた記録を教官として検証していたゆえの産物。

MS-18E『ケンプファー』
 ジオン残党が脱出時に持ち出した機体。様々な武装を用いた強襲戦が得意。
表向きはともかく資料は接収しているので、有名な機体はジャミトフ配下は知っている。
(ペズン基地を接収していない扱いだけど、実は接収しているのと同じ)

MS-6E『ザク強行偵察型改』
 マインレイヤーのパーツを使用してミノフスキー粒子の散布もできる。
改造機というよりは、壊れた機体を二個一したものと思われる。
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