ジャミトフに転生してしまったので、予定を変えてみる【完】   作:ノイラーテム

29 / 52
外伝:炎の三十バンチ事件:前編

●発言力のバランス

 エンデュミオーン戦役が終わって暫くは平穏な日々が続いていた。

 

特筆すべき事柄としては、ジオンに返却された要塞が太陽路の防衛拠点に提供されている。

これに対し連邦政府は公国より共和国への変遷も踏まえ、ジオンの態度を殊勝として、法外な報復税率を見直すことになる。ある程度の引き下げか、より大きな譲歩と引き換えにさらなる軽減か。その二択を持ち掛けられたダルシア・ハバロ首相は、議会と相談して返事をすると返した。

 

「ジャミトフ閣下。次の大統領選に出馬はなされないのでしょうか?」

「私は軍人だよ。文民統治の面からそれは好ましくないな。だが……」

 その日の記者会見もいつも通りだった。

情報筋に予め漏らした予想が難しいネタを、上手く見つけ出した記者に応えてやる。ジャミトフが出馬しないというだけで話題になるのだから、情報隠蔽としてはまずまずだろう。

 

「もし一市民として出馬し直すならば、タイガースの十連覇をお約束しよう」

「タイガースってあのタイガースですか? 三次元ボールで万年Bクラス落ちしたあの名門球団……。さすがは閣下、冗談がうまいや!」

 文部局に命じて若き卒業生を斡旋し、外務局に各コロニーからスカウトさせる。

そんなことをすれば公私混同も激しすぎるが、だからこそ出馬しないぞというジョークとしては判り易かった。それでいてユーモアに富んでいるので、政界入りすれば熱狂的なタイガースファンの応援だけで当選は確実だろうとまで噂される。

 

なお、もう一人の選外人気候補はグリーン・ワイアットで、こちらも『私は軍人であり、諸君らを守るのが仕事だ』と返している。

押している球団は全国人気のジャイアンツという辺りも実に卒ない。

 

 

 ハーキュリーズ級三番艦であるアキーレースの進水式のあった日。

この時を境に、僅かばかりに世界が動いた。

 

「……で。疑似超空間通信の準備は?」

「滞りなく。既にマーサ社長から提供されているネタは高い再現率で開封しております」

 ミノフスキー粒子を利用してのリアルタイム通信はまだ実現していない。

揺らぎが多過ぎてタイムラグを覚悟して通信した方がまだ良いくらいなのだが……。だが逆に言えば情報の揺らぎを暗号と仮定して、暗号分析器を利用するという逆転の手法で疑似的な解決を達成していた。

 

もちろんこの方法では面倒極まりないが、秘密裏に通信するという意味においては、多重のセキュリティに成りうるだろう。

 

「よくもまあ、ローナンの奴はメラニーのところに入った嫁を翻意させたものだ。しかも外宇宙投資に積極的に乗り出すとはな」

「驚きなのは閣下の采配です。まさかあれだけ敵対していたカーバインの一族に、新型コロニーをくれてやるとは」

 アナハイム・エレクロトニクスは『箱』の無効化を契機に真っ二つに割れた。

若き女社長マーサ・ビスト・カーバインを筆頭としたグループが、本社の息が掛かっていない女性スタッフと共に外宇宙開発に加わっていた。ジャミトフはこの応援に新型の完全循環型コロニーを手配し、女性陣が統治する試験コロニー『ラビアン・ローズ2』が計画されたのである。

 

「それよりも閣下。全員……というには把握しているよりも多いのですが、ダブル・ナンバーだったのですね……」

 ジャミトフが直接抑えている直属部隊は精鋭のみに絞っているので八名。

だがこの場には十五名が参集しており、裏のメンバーを合わせて実質的に二倍の人員が居ると初めて知らされた者も多い。

 

「我々全員を招集されるとは。世界を燃やし尽くす日でも来たのですか?」

「そうだ。諸君らにはコロニーを丸々焼き払ってもらう。場合によっては逃げ出す職員全てを臨検、従わぬならば殲滅してもらわねばならん」

「冗談ではない。我々はそんなことの為に協力するわけではない。納得のいく説明をしていただけるのでしょうな?」

 笑えないジョークへ付き合うジャミトフに、当然ながら反発する真面目な者も居る。

それで判るのは裏のメンバーが局外員で構成されているという事だ。普段はプロメテウス機関以外に所属して、有事に際して一時的に協力しているのだろう。

 

「それについてはマーサ社長から発表されるだろう。メラニーめ、最後にとんでもないモノを隠しておった」

「アナハイムが割れる前に計画していたモノですか? まさか……」

「知っているのかドナヒュー?」

 アナハイムが割れる前、世間では新型のオアシス型コロニーが評判だった。

改良された循環システムを元に、小型化しても良いし何かの機能に特化しても良い。そういった特化型コロニー群を組み合わせて、複数のコロニーによる新たな形での完全循環を目指すという計画が盛んに行われた時期である。

 

とはいえその目玉は宇宙での大規模農業開発が可能になったという事だ。

かねてからその辺りに関心のあったヴィッシュ・ドナヒューは何かに気が付いたようである。

 

「まさか閣下。アレですか? あれは殲滅したはず……」

「残っておったのか、最初から複数の計画があったのであろうな。そろそろ通信が同期する。暫く黙ってみておれ」

 それはヴィッシュがクワトロならぬクロトワ・バジーナと名乗って調査した悪魔の兵器だ。

貧者の核と呼ばれるBC兵器の系譜であり、ジオンで開発されていた植物兵器である。彼が関心を持って疑いの目を向けていても、仕方があるまい。

 

だがそれを問い質す前に、マーサからの通信が等速に同期したようだ。

情報の揺らぎで半ば暗号化されたソレを、演算型コンピューターが新しいルールをその都度に作り上げて、滞りなく解読できるようにしたのである。

 

『聞こえるかしら? 地球の諸君』

「聞こえておるとも。どんなに荒唐無稽な話でも聞いても『馬鹿め』とは返さんから、説明してもらえるとありがたいな」

 若き女社長マーサは、重役というよりは参謀団とでもいうメンバーを引き連れていた。

殆どが女性であり、傍に佇む青年の様に一部の男性は『女性こそが世界を統治すべき』と考えているようなメンツで固められている。

 

「こちらの予想としてはアスタロスの件だと認識しているが?」

『そうよ。植物を枯死させる生物兵器アスタロス。義父は回収したソレを大々的に開発していたという訳ね』

 ジャミトフが確認するとマーサは面白くもなさげに頷いた。

後ろの方で『やはり』とか『アスタロスって?』という確認が聞こえるが、双方ともに初めて聞いた者も居るのだろう。

 

『キッカケとしては完全循環型コロニーの技術公開で、木星公団のクラックス・ドゥガチ総裁が動いたことね。義父メラニーはあれで相当焦ったわ』

「人は自分と分野の異なる偉人は素直に認められるが、分野が被ると比較が生まれるからな」

 メラニー・ヒュー・カーバインは地球圏屈指の成功者である。

比類ない程の資産を持ち、純粋な資金繰り以外にもその影響力だけで相当なものだ。

 

財界どころか政界にすら匹敵する者は少なく、数少ない例外……。

それも同分野で活躍していたのは、アナハイム内の協力者であるビスト財団の総帥サイアム・ビストと……木星公団のクラックス・ドゥガチ総裁であった。

 

『総裁が本当に地球圏に歩み寄ったのか、それとも表向きなのかなんて意味はないわ。膨大な資金が動き、義父よりも強い発言権を有してしまう』

 それがメラニーをして最後の博打を考えさせた真の要因である。

ハッキリ言って良いのであれば、『箱』と呼ばれる最重要機密など彼にとっては余技に過ぎなかった。所詮はサイアムの手札を借りれるだけであり、地球連邦の債券を膨大に所有しているだけでも政府筋は逆らえないのだ。

 

ゆえにメラニーの発言権はトップレベルであり、政財界に置いて果てしない上層に居た。

だがここに唯一の例外であった者が、公共の場に出てきてしまっては、相対的に彼の立場が無くなってしまう。地球政府にとっても、燃料(ヘリウム3)の生命線である木星公団の総裁である彼にはメラニー以上に逆らい難かった。

 

『貴方のところにも大きな話が舞い込んだのではなくて?』

「そうさな。新型として開発中だったオアシスに途方もない値を付けおったよ。実験段階の未熟な技術など恥ずかしくて売り渡せんがね」

 要するにメラニーの頭を飛び越えて、ジャミトフが地球圏最大手と見たのだ。

大々的に木星圏を開発するならばアナハイムの協力なしには不可能なはずだが、仮にドゥガチが全て自分の手で行うつもりだったのならば話は異なる。

 

計画に必要な年月を圧縮するためにこそ、金で何とかなるメラニーよりも、そうではないジャミトフの方に歩み寄ったのであろう。

 

『恥ずかしい……ね。本当かしら?』

「本当だとも。大規模農業プラントや別荘地としての開発が完了してから話を持って来いと断った。……金以外の代金を用意してな」

 実際の話、ドゥガチからは法外な金額を提示された。

それも金だけではない、メラニーが所有する連邦債を引き受けても良いとまで言ったのだ。もしジャミトフが頷いていたら、アナハイムの影響力は一気に落ちたかもしれない。

 

だがそれを断った事で、マーサの目がチラリと動いた。

興味深そうだと思ったのは勿論だろうが、参謀たちの方に目をやったのはその話の裏を読めているかを確認したのだろう。

 

『ビジネスの話はするつもりだけれど……。その件、もう少し詳しく聞きたいわね。火星圏の開発にも影響出てきそうだし』

「そこまで判っておるなら読めておるのだろう? 奴が王道楽土を作ろうと必死に集めた木星圏の環境データだよ」

 メラニーを引き吊り落とすために情報は提供する。

だがこれ以降も提携を組むのであれば、ドゥガチの情報を寄こせ。その要求に対してジャミトフは平然と口にした。彼にとって展開の流れ(イニシアティブ)さえ握れるならば、利益などどうでも良いのだろう。

 

木星圏の環境データは海洋や月面同様、資源利用や拠点建設に重要な物だ。

地球圏に留まるならばまだしも、木星開発には必須。ドゥガチにとっては赴任してから苦労して集め、必死で目指した居住環境の改善に関わる重大な情報だった。

 

『半生を掛けた情報を寄こせとは随分と傲慢な事ね。でも……それは木星に行かないのであれば必要ない情報』

「そうだ。木星圏を王道楽土にする願いの礎。それならば世界を広げるという大望の一翼を担うには相応しかろう。奴がこちら側に着けば、UC.0099までに世界は拡大する!」

 願いの代価は、願いによってしか等価交換しない。

ドゥガチが心底臨んだ結果を手に入れるには、その情報と願いを他の者たちに分け与えれば良い。頷けば二十年を待たずに木星の居住環境は一変する。

 

まさに悪魔の取引という他ない。

双方の参謀やパイロットたちも驚愕しており、地球圏のみならず世界の運命がこの場で聞けるなどとは思いもしなかったに違いあるまい。

 

「さて、そろそろ良いのではないかな?」

『そうね。面白い話が聞けたことだし、突っ込んだ情報を差し上げましょう』

 つい忘れそうになるが、今回の本題は悪夢の生物兵器アスタロスだ。

その脅威を排除するためにこそ、ここに居るメンバーは集められたのだから。

 

ここで参謀の一人が端末を持ち、説明を始める。

 

『アスタロスは爆発的な繁殖能力を持つ、植物系の生物兵器です。大規模農場プラントの開発という隠れ蓑を利用することで、排除しようとする者を躊躇わせようという試みもあります』

「なるほど。これを表立って排除しようとすれば、新宇宙時代に逆行する愚か者だと言いたいわけだな」

 この情報を得た時点で、演算コンピューターは幾つかのコロニーに絞った。

アナハイム所有に限らず、ソレが可能なコロニーを次々にピックアップしていった。各コロニーからの工作員や画像提供があれば、更に絞ることも可能だろう。

 

『予備プランもあるでしょうが、ドゥガチ総裁の関心を引き剥がすことを考えれば本命は此処でしょう。研究者を転向させましたが、実際に研究しておりました』

「ふん。共産主義者と同じ方法か」

 提供された情報は、ピックアップされたコロニーの一つだ。

仮名を『ユグドラシル』とした大規模農業コロニーで、火星圏開発や木星公団へ届ける食料品ということになっている。

 

これを見つけ出して討伐することはジャミトフだけでも可能だったろうが、第三者でありメラニーの身内であるマーサの告発がなければ大変な事になったかもしれない。

せっかく歩み寄ったドゥガチが離反し、それこそ木星公団が敵に回りかねなかった。

 

「やれやれ。バベルの塔を攻略したと思ったら、次はユグドラシルか。RPGでもやっている気分だな」

『せっかく情報を渡したのですもの、健闘を祈るわ。ドゥガチ総裁から尋ねられるかもしれないけれど、伝言はある?』

 一年戦争時にアスタロスを討滅した時には、コードネームをバベルの塔と付けた。

今回は世界樹であるユグドラシルなので、まさしくMMO・RPGにおけるレイドを思わせる。

 

「そうだな。バスクがやらかしたせいで一隻余った。ユリシーズ2として改装しているとでも伝えてやってくれ」

『ソレを売り渡す準備があるという事ね? でも、私の方が予約を入れておきたいものだわ』

 バスクが民間人への攻撃を行ったとして処刑された。

その時に旗艦としたせいで、せっかく完成したハーキュリーが不名誉な扱いだ。

 

連邦軍はハーキュリーズ級十二隻の建造計画を、四隻目のキローンで(予定通りに)凍結。

サイズダウンしたテーセウス級の開発に縮小としたが、宙に浮いたハーキュリーをそのままにするのは惜しい。これを外宇宙探査用のユリシーズに改装することで、火星圏や木星圏行きに充てるつもりだったのだろう。

 

そして火星圏開発に乗り出し、自らのコロニーを持ったマーサにとっても他人事ではない情報だ。

太陽路を通ればこれまでにないペースで往復できるため、物資の補給のみならず、地球に帰還して娯楽を愉しむなど職員のストレス改善に貢献するはずである。ドゥガチにしてもマーサにとっても、ジャミトフ派と付き合う良い理由ができたといえるだろう。

 

●世界樹が燃え落ちる日

 ハーキュリーズ級三番艦であるアキレースは進水式を終えたばかりだ。

艤装はこれからで、本来は戦うことができない。

 

だが強襲用の機動母艦という用途がそれを補った。

モビルスーツの高速展開を目的としており、サブ・カタパルトや補給ユニットなど最大効率を引き出す装備がないことに目を瞑れば、戦闘目的に使用することは十分にできる。

 

「メラニーの奴もまさかこのタイミングで仕掛けるとは思ってはおるまい」

「ですが流石にコロニーを丸まる焼き払うのは責任問題になるのでは?」

 緊張するジャマイカン・ダニンカンにジャミトフは笑って答えた。

自分で例えれば一番困るのは何か直ぐに判る。もしかしたら罠で『虐殺の責任を押し付けられるかもしれない』と思ったのだろう。

 

「上に立つ者の役目は責任を取ることだ。気にしなくても良い。まあ念のためにドゥガチや報道(プレス)には連絡を入れておくがな」

「そ、それでしたら遠慮無く」

 現金なもので、人間責任を取らなくても良いとなると途端にホっとする。

ましてジャマイカンから見れば、ジャミトフは絶対的な指導者であると同時に、目の上のタンコブでもあった。万が一の時は自分に道を譲ってくれるとあれば遠慮する必要もあるまい。

 

「アキレースを使えばかなりの時間を短縮できるはずだ。適当な時間で強制査察と臨検を通達しろ。身内からの告発があったことも伝えてな」

「はっ! 距離的にありえないことを利用するのですな」

 付近に戦艦が見えない段階で通達を送れば、通例の申し送り事項として判断するだろう。

数日後に行われると『想定される』査察が、実際に行われるまでに隠蔽工作や他のコロニーへの輸送を目論むはずである。

 

だが実際には数時間後に強制査察が行われ、輸送手続きが始まったころには間に合うだろう。

 

「そこで大人しく従えば良し。何の心配も要らぬ。本当に宇宙開拓用の植物プラントで、メラニー一世一代の演技であるならば喜んで引退しようとも。だが!」

「もし地球を死滅させかねない生物兵器を持って逃走を図るならば……仕方ありませんな」

「その時は殲滅もやむを得んでしょう」

 言葉を濁そうとするジャマイカンに、むしろ下の者が断言する。

血でその手を汚すことになるだろうに、胸を叩いて一同の前に躍り出た。

 

「閣下、我らニューディサイズにお任せください!」

「何を言ってやがんだ、てめえ。お前らばかりに良いかっこさせるかよ」

「……査察が適正であるならば従いましょう」

 二番隊のブレイブ・コッドに一番隊のヤザン・ゲーブル。

渋々ながらジオン側のメンバーも参加を申し出る。何しろマーサにもリスクのある話で生物兵器があるのは明確であると思われたし、もし間違っていたら全責任を取るとまで言われたのだ。ここで立ち上がらねば漢ではあるまい。

 

 だが一同はジャミトフの覚悟を知っていても、メラニーのソレを知らなかった。

マーサによってアナハイムが割れても大したことではないと思っていた彼も、ドゥガチによって発言権が落ちれば話が変わってくる。

 

地球圏を裏で動かせるのはこれで最後の可能性が高い。

となれば今度こそ本気の防衛態勢、別の言い方をするのであれば聖地奪還に向けた最終戦力が彼らを待ち受ける!

 

「まさかノーマルスーツどころか、耐熱性の軽環境スーツとは。査察だけでなく浄化作戦も考慮済みとは恐れ入りました」

「左様。我々は生物兵器があることを掴んでいる。大人しく引き渡すなり焼却処分を受け入れてもらいたい」

 初手で時間差の査察を申し入れ、二手目は重装甲の歩兵部隊だった。

全員が耐熱樹脂で追加装甲を編まれた軽環境スーツで身を固めており、その姿は悪の軍団と言った方が早い程だ。

 

この歩兵部隊は左手に同じ素材を使った耐熱シールド、そして右手には対生物兵器用の火炎放射器を持った火焔擲弾兵(ファイヤートルーパー)である。

一年戦争でアスタロスの脅威を思い出したのが遅かったことから、反省の意味も込めて用意した、大人げないほどの重装備である。

 

「支配人殿。今ならばメラニー・ヒュー・カーバインの命令で全てが済むと思うのだが」

「そうなのでしょう。ですが貴方がたには二つ誤りがあります。一つは誰もが利益で動くなどと思ってる事」

 奇襲で強制査察を行い、一切合切を焼き払う準備がある。

ならばさっさとやってしまうべきだったのだ。迂闊に警告するから、相手にも行動の自由を許してしまった。

 

自分たちに相応の覚悟とコネクションがあるならば、相手にもソレがあることを覚悟しなければならなかったのだ。

 

「二つ目は? ここで我々を殲滅すれば、隠し通せるとでも?」

「いいえ、ここで全てを終わらせる用意があるという事ですよ!!」

 このコロニーを預かる支配人は、メラニーと同じ思想を持つ男だった。

そして何より、このコロニーにはアスタロス散布に必要なすべてが揃っていたのである! たかが研究コロニーには相応しくない巨砲がそこにはあった。

 

「あれはまさか……。マスドライバー!?」

「対地攻撃には少々小さいですがね。しかしカプセルに大気圏突破させるには十分だ!」

 もはや隠し切れないと悟って大型砲を地球に向ける。

そして既存のモビルスーツよりも一回り大きい、大型の個体が次々とその周囲に展開し始めたのである。

 

「安心してください。我々は地球を汚す気などない。二十世紀の終わりに開発された、ワンシーズンしか保たない種子を元にしております」

「拳銃? そんなものがこの装甲に役立つとでも……」

 言いながら支配人はデスクから拳銃を取り出した。

ただしその用途は、護身用でも歩兵を排除する為でもない。

 

「地球がクリーンになる姿を見られないのは残念ですが、一足先に向こうで待つとしましょう」

「ま、待て!」

 支配人は自らに向けて銃を向け、拳銃自殺を行った。

生態パルスが途切れたことで、彼を優先とするキーは別の者に優先権が移される。それを今から調べる時間はない……その為にこそ命を絶ったのである。

 




 という訳で適当な戦闘物にストーリーをでっりあげたところ……。
長かったので、政治的部分だけで切りました。これを本末転倒と言います。

●メラニーの発言権
 よくよく考えれば判るのですが、箱なんかなくても良いよね。と。
地球でトップ5の金持ちが連邦債を陰謀目的で購入し続けてたら、逆らうことはできません。
普通ならば使わない『抜かずの太刀』なのですが、箱と並べておくことで価値が出ます。

 とはいえそれも、ドゥガチさんが動くまでの話。
マーサがアナハイムを割っても、表向きジャミトフ派と組ませただけと言い逃れが可能。
ですが木星公団総裁には誰も逆らえないので、彼が口出しするならメラニーは二番手。
事態はもう彼の頭越しであり、地球政府もいざとなれば泣き付けると距離感が増します。

●ハーキュリーズの変遷
 元から十二隻ではなく四隻で止める計画だったのですが……。
バスクがやらかしたせいで、打ち切りという丁度良い名目ができました。
大型艦過ぎるのでコストパフォーマンスを重視した、テーセウス級に移行。
ギリシア最大の英雄ハーキュリーをオマージュして、後の民族がテーセウウス物語を作った。
その流れを奇しくも再現した形になります。

なお、計画はそれで良いとしても、ケチのついた一番艦ハーキュリー。
これを二番艦で外宇宙航行用に改装することで、ドゥガチやマーサとの材料に。

●今週のメカ

『軽環境スーツ』火焔擲弾兵
 見た感じは赤いストームトルーパー。FSS知ってる人にはFEMC戦闘団。
耐熱樹脂製の装甲とシールドを持ち、火炎放射器で武装する殲滅戦のプロです。
どうみてもコロニー虐殺するにはオーバースペックで、逆に対生物兵器の信憑性が増すという。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。