ジャミトフに転生してしまったので、予定を変えてみる【完】   作:ノイラーテム

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躍進のための準備

●戦略の復習

 現在の戦況と基本戦略をまとめておこう。

連邦軍の基本戦略は、余計なことをしないのを重視していた。

精鋭といってもジオンの方が練度は上だし、兵力も局所的に負けている場所すらある。

 

ゆえに数と精鋭を集中させて、勝てる場所だけ戦線を押し上げるという手段を取ったのだ。

固定した防御部隊と機動部隊に分ける『槌と鉄床戦術』に多少似ているか。

 

『槌と鉄床』というのは文字通り鍛冶屋のアレだ。

振り下ろすハンマーが攻撃部隊、反対側を抑える鉄床が防御部隊という訳だ。本来は戦術用語なのだが、連邦の国力でやるから戦略レベルになる。

 

アジア軍管区で言えば、北京基地はそのまま防衛態勢を堅持。

防衛用に多少数は積み増すが、迂闊に挟み撃ちにしようとすると戦力が馬鹿みたいにいるので、こちらは戦線を築き上げて終わりだ。この厚い壁……いや『鍛冶の鉄床』を築くのが基本戦略の半分になる。

 

「コジマ大隊は進発したのだな?」

「はい。マドラス基地を出てインドシナに向かいます」

 鉄床による防衛が半分だとすると、次は攻勢面の話になる。

少し前に機械化大隊の編成が二つ分ほど出ていたのを覚えているだろうか?

 

その一つであるモビルスーツ大隊は、まとめてジャブローからマドラス基地に送り込まれた。

これがアジア軍管区における攻撃役で、基本的にはこれら精鋭である機械化大隊だけを動かして、攻勢を掛けていく方針になる。

 

「こちらはどうだ?」

「コリニー中将が団長を決定し次第に進発します」

 同じようにオセアニア軍管区もまた、トリントン基地は防御態勢。

やはりジャブローから送り込んだ新編の戦車大隊をもって、優勢な場所を少しずつ増やしていく形になっている。

 

他方でこれ以上の攻勢面を増やすと戦力が微妙になってしまうので、他は防衛戦力を積み増すだけ。ヨーロッパ軍管区はベルファストやピレネーの線を固定したまま、オデッサ戦まで何もしない予定だ。アフリカや宇宙に至ってはさらに後になるだろう。

 

これらの背景には、現状の戦力では全てを奪還することは不可能だという現実があった。

それと同時に、国力に勝る連邦が余計なことをする必要はないのだ。V作戦によって主力兵器のパラダイム・シフトを行った以上は、ジオンが勝てる余地はないという事になる(コロニーレーザーは別にして)。

 

つまるところ、V作戦の真価とはジオンがやった卓袱台返しをなかったことにすることだと言っても過言ではない。

同じ兵器を用いて同じような戦術を採れば、国力に勝る連邦が必勝するという訳だ。つまらないがこれ以上の戦略はあるまい。レビル将軍がモビルスーツに固執するわけである。

 

 おさらいを済ませたところで、連邦が勝つのは判ってもらえたと思う。

となると次は商売の話だ。勝つための補助手段とも言うが。

 

「その前に確認しておくが、この損害報告は本当なのだな?」

「はい。軍艦を始めとして少なからぬ船舶が襲撃されています」

 これはジオン水泳部の仕業だろう。

既に存在している頃だと推測していたし、危険な相手だとも判っている。

 

だがコレを未然に防ぐのは難しいし、第一、防いでも私の得にはならない。

 

「……対潜ヘリとそれ用の足を用意しろ。軽空母でもヘリ空母でも構わん。戦車隊に被害を出すわけにはいかんぞ」

「対Uボート戦術ですか? しかしこの被害を考えれば、ジオンは水中型モビルスーツを開発したことになります。対処可能でしょうか?」

 魚雷ではない方法で軍艦まで普通に沈んでいる。

水中からの攻撃だと指摘してやった上で、それを考えればジャマイカンでも気が付くか。

 

それに頷きつつ、別の者に秘匿回線を準備させた。

 

「水中戦モビルスーツに関しては中将経由でレビル将軍の耳に入る様に。それとヒマラヤ級の申請をしておけ。私は対潜装備の発注をせねばならん」

「はっ!」

 直接にモビルスーツ系の技術部に連絡を取ると問題になりかねない。

ここは気が付いただけに留めて、コリニー中将経由で話を通しておく。

 

同時に対潜哨戒機に爆撃機を調達。

その改良型が完成するまでは、導入されたばかりの大型爆撃機であるデプロッグを追加注文して対処に充てる事にした。

 

「かくの如く暫定方針を中将閣下に具申しておく。少なからぬ人命が失われたが、手早く対抗手段を見つけることが何よりの慰めだろう。急げよ」

「「はっ!」」

 主任参謀らしく決めつつ新しい発注でコネを強化しておく。

 

センサーを搭載したブイを浮かべるとか事前に判る方法はあったが、未然に防いでも誰も得をしない。

静穏性に優れたアッガイを量産されるだけだし、その方が結果的に被害が増えるので困ったことになる。

用意ができ次第に一気に決めて、原作よりも早く水泳部の活躍を終わらせるので勘弁してほしいところだ。

 

●未来への予習

 さて、二つあった機械化大隊のうち戦車大隊編成が遅れたのには理由がある。

もちろん派閥人事で遅れたわけではなく、やむに已まれぬ問題があったのだ。

 

コジマ大隊が数の問題と探査能力の問題で、モビルスーツに指揮車両という組み合わせで終了。

これに対して戦車大隊の方は、その用途はそのままに意味合いが大きく変わった。

 

「大佐。妙な部隊が参加しているようなのですが……」

「あの連中はお前たちに与えた玩具とは別口だ。預かっているだけでそのうち出ていくから気にしなくていい」

 まず数機のモビルスーツと戦闘機が追加。

これを加えて増強大隊化した上で、戦技教導隊としてモデルケースとなったのだ。

 

各地の連邦軍は戦車が主力であり、これにモビルスーツを加えて順次増やしていく形だ。

共同任務は当然のことであり、その教導にあたる為の教育プランは今のうちに抑えておけということになったのである。

 

しかし当初の予定通りにいけば、既に進発しているはずだった。

セイバーオルタの件もそうだが、便利だからといって後出しの完成品の為に二転三転するのはどうかと思う。

 

「ジャマイカン大尉。リチャードにはああ言ったが、念のためにクルスト博士に監視は付けておけよ。何かあった時は、もみ消してやれば貸しにはなる」

「承知しております。何かあった場合は回収する手はずも」

 妙な連中というのはブルー関連のことだ。

モビルスーツを渡す代わりに、一緒に面倒を見ろと言われている。

 

いずれ暴走し、ニムバスが襲ってくることは知っているが……。

これをあえて放置することにした。そもそも襲撃があると知っていることを伝えるわけにはいかない。

 

「そうだ、連中を管理する権限はないが守る責任もない。まあ何もないのが一番だがな」

 そして放置する大きな理由としては、他派閥が無理に持ち込んだ実験兵器である。

問題が起きて、これに力を貸す方が利益になるのだ。ジャマイカンが言うように回収するのも良い。

 

何かの読み物で陰謀を未然に防いでも得しないと腹黒エルフが言ったが、実にその通りだと思う。

 

「しかしニュータイプはミュータントで、対ニュータイプ兵器というのは本当なのでしょうか?」

「ジオンのプロパガンダに毒され過ぎだぞ大尉。ニュータイプなぞ所詮は察しの良い環境適応者に過ぎん。熟年の夫婦ならば誰にでもできる事だ、新人類などではないよ」

 ホンの少し分かり合える。その程度の能力に過ぎない。

そういってジャマイカンの不安を払ってやる。

 

「それもそうですな。時に大佐。例の航空母艦の仕様書が上がってきました。ネームを考えて欲しいとのことですが……」

「早いな。……なるほど、在り物を上書きしただけか」

 少し前に提案し、ガウの残骸を引き渡した。

それがサポート・フライングシステムより先に仕上がって驚いたが、よく見ると既存の大型航空機の計画を焼き直しただけらしい。

 

ガルダどころか、ペガサス級にも遠く及ばない。

精々がガウの倍、ミデアの三倍というところである。

 

「とはいえペガサス級よりも安価な母艦として注文したからな。こんなものだろう。しかし名前か……ゼネラル・レビルとかアドミラル・ティアンムではいかんのか」

「大佐……。ジオンのような独裁国は除きまして、存命者の名前を付けないのがセオリーです」

 冗談で口にしたのにジャマイカンに呆れられた。

本気でそんな名前を付けるとか思っているのだろうか?

 

……アドミラル・ヤンにゼネラル・ゼゼーナン。

あるいはブリュンヒルトやスプリガン……フィクションは却下されそうだな。では大鳳か信濃、キエフ・レキシントン……。

 

「ガルダで良いだろう。攻撃装備を付けた雄型をプリンス・ガルーダ、自衛装備に留めた雌型をプリンセス・ガルーダとでも送っておけ」

「承知しました」

 やはり原作のガルダが一番しっくりくる。

ゼータ時代の半分くらいのサイズになるだろうが、一年戦争後期で活躍するには十分だろう。




 という訳でサクっと時間を進めるための準備回です。
本当は一週間に一回でそれなりと思っていましたが、思いつくままに数話書いて終わりにする予定です。

今回は現在の戦術解説と、精鋭の部隊編成・ガルダの就役予定の説明。
これでジオン地上軍に勝てない理屈はなくなるので、数と射程で圧倒しながら攻め潰します。
ちなみに主人公にネーミングセンスはありませんので、それは酷いものです。
放っておくと、クーゲル・ブリッツやクーゲル・シュライバーって格好良いなあ……とか言い出しますので。

●北京
 媒体によって連邦かジオンか微妙な基地ですが、連邦側です。
一か月早くV作戦が始まってるとか、大型戦車はともかく砲兵隊は早期投入可能というのもあります。

●ブルー
 ブルーはあちこち転戦しているので、そのうちの一戦域というだけです。
サラっと流ししつつ、戦技研=のちのニューディサイズとかの系譜を説明。
水泳部の話もチラっと出てきましたが、一部の軍艦を犠牲に情報を得たことで、対潜部隊を編成してさっさと終わらせるよと説明してます。

●プチ・ガルダ
 ガルダは300m越え、ペガサスは250m以上。
ミデアは45mでガウは60mらしいです。

そこで120m級で想定し、ガウの一回り、ミデアの二回り大きいくらいをイメージ。
ミノフスキークラフトを乗っけて、搭載量を拡大しただけで終了という感じで、設計し易くしています。
とはいえ予定より大きくなってしまうのは良くあることですし、連邦にはミデアがあるし中途半端は微妙。SFSも同時発注してるし、載せられる方がいいよね?

ということで、200m弱くらいに落ち着くんじゃないでしょうか?
それでもペガサス級より安くなりますし、搭載量も増えます。何よりも大きく作ってそこは装甲か搭載スペースに違いない!
とやる方が設計に余裕ができますし、予算も増えて企業も助かりますよね。

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