ジャミトフに転生してしまったので、予定を変えてみる【完】 作:ノイラーテム
一年戦争の終了は十二月の停戦とされている。
だが人によっては、十一月にアメリカで行われた捕虜交換式典の段階で既に終わっていたとの見方も強い。
いずれにせよ、戦の趨勢がそこでついた以上は技術開発もいったん凍結される。
連邦軍ではようやくV作戦で作成されたモビルスーツが本来の性能を発揮し始めたところであり、ジオンにおいてはMS統合化計画が軌道に乗ったころであった。
『ジム後期型』、『ジムコマンド』
高性能なガンダムで試験を行い、そのデータを量産型のジムにフィードバックするもの。
あまりにもパーツの精度や組み立て熟練度の差があったため、前期型と後期型のジムでは性能差が激しい。
指揮官の裁量で必要とされた改造を、後期型では取り入れているのも大きいだろう。
後期型のジムに現地適応を施したものがジム・コマンドである。
寒冷地型や砂漠型と呼ばれており、宇宙用のことを特にジム・コマンドと呼ぶことが多いのは、単純に現地適応装備が不用なため。
吸気口や電子パーツのシーリングなどが行われておらず、逆に小型ノズルなどが追加されているので機動力が若干高い。
『ジム輸出型』
高まる独立の機運を満足させ、同時に連邦軍の予算確保を目的として販売されたもの。
ダウングレードされているという事になっているが、現地適応装備やノズル追加がオミットされているので、実質的に弱いだけである。
『ジム・カスタム』
戦後に開発された技術や、ジオンから接収した技術を盛り込んだ機体。
特に十一月時点で開発されたマグネット・コーディングなどに関しては、本格的な開発が再開されたのは0083まで待つことになった。
ジオン側の技術としては流体パルス・アクセラレーターやユニット・ブロック構造があげられる。
なお全体的に強力なものの、データがバラバラになってしまうため、基本的には一部能力にリミッターが掛かっている。
ヤザン・ゲーブルら教導団に関しては、リミッターが外された上で、個人の得意な能力に合わせて調整がされているという。
『エックス・ワン』X-1
ジオンのペズン基地を間借りして開発していた特殊兵装。
これを装備していたのが、ジオン系モビルスーツを手直ししたエックス・ワンである。
統合生産計画の為に21mまで肥大化した機体を、18mサイズに戻すという計画。
この不満を解消するためにジオン独自の開発として存在したが、この装備の研究を共同開発する為、秘密工場であったペズンを接収せずに間借りで済ませていたという。
『ゼク・アイン』X-1
エックス・ワンの連邦版。ジムに特殊兵装を装備したもの。
いずれは専用の機体が開発されるはずであったが、エンデュミオーン戦役においてはジム・カスタムに装備された。
・第一種兵装
高機動用の装備で本体はバックパックである。
上に伸びた二本のサブ・スラスター、下部両サイドに伸びたウイング・バインダー。
これら各所から指定噴出することで、特殊な軌道で戦闘機動が行える。
・第二種兵装
長距離狙撃用のビーム・スマートガンまたはビーム・バズーカが主体。
追加ジェネレーターでの出力安定化や、小型EMSでの狙撃精度向上などがなされている。
・第三種兵装
持久戦用装備で、各種武装コンテナを接続。
給弾用ベルトマガジンでガトリング砲を運用したり、ミサイルなど様々な兵装を使って長期戦を戦い抜く。
・第四種兵装
長距離進軍用装備でシュツルム・ブースターを接続。
この装備のみで戦い抜く時は再利用が可能だが、使い捨てにする場合は、他の兵装との同時運用が可能というのが一番の利点。
・第五種兵装
殲滅戦用とも浄化用とも言われる悪夢の兵装。
宇宙でも使用可能な火炎放射器の運用を前提とし、強酸性の液体と酸化剤を混合して噴射。パイプ・ザイザー・厚みの薄い装甲などを溶かした後で、そこに炎を吐き出すことで何もかもを焼き払う。
なおこの兵装は他の機体との同時運用、陣列を組んでの一斉発射で回避不能状態を作り出したという。
・軽環境スーツ『火焔擲弾兵』
第五種兵装を人間が装備できるようにしたもの。耐熱樹脂製の装甲とシールドを持ち、火炎放射器で武装する。どうみても対人兵装としてはオーバー・スペックであり、対BC兵器として、瞬間的に感染した空気そのものを焼き払えるようにできている。
『アッシマー』
ニタ研を潰して接収した試作機を完成させたもの。
ティターンズの主力として期待され、治安維持活動のほかSFSとしてジムを搭載したという。
・?型:スダルシャナ:最初の運用試験やマイクロウェーブ実験型
・?型:ゼーゴック:大気圏突入試験用
・?型:イカロス・ウイング:長距離試験用。成果はチャリオットに受け継がれた
・A型:エアカバード:コスト重視の量産型
・B型:バトロイド:原作に近い、モビルスーツ形態実験型
・C型:チャリオット:SFSや長距離飛行用で、燃料・浮力が強化されている。
・D型:デストロイヤー:重戦闘型。この機体は大型ビームライフルがメイン兵装
・E型:EWAC:偵察用でレドームが追加されている
・F型:ファイヤポート:浮力全振りで、小隊火器として大型砲を持ち込むランチャー輸送型
『ガンダム・ワイズマン』
全長40mの技術検証用マシン。
インナー・フレームや脚部内臓エンジン、演算型コンピューターや循環装置などの小型化の実験を行った。
ビームスマートガンやインコム・カメラガンなどの試験を行い、色々な方面の技術を検証している。この機体最大の特徴は、マイクロウェーブ受信機能を持ったアッシマーとの合体であり、無限のエネルギーを所持し、脚部のツイン・エンジンを通すことで瞬間的な最大出力を得ることも可能。
ハーキュリーズ級三番艦『アキレース』
このクラスの中では唯一、外部砲塔を持たない。
大型ブースターまたは、大気圏突入ユニットのどちらかを装備する。
ドゴスギア並みの大きさだが、機動母艦であり戦場を掛け回れるのが特徴。
なお無数の対空銃座と、戦術管制を兼ねてオペ娘が二十人くらい居る。
ハーキュリーズ級にしては搭載量が少ないので、ほとんど二機に一人のオペ娘が付く。
ハーキュリーズ級二番艦『ユリシーズ』
集光セイルを持ち、太陽路ではエネルギーを吸収しながら移動できる。
外部砲塔は質量弾であり、試料検証用でもある三胴艦の中で精錬されたインゴットを撃ち出す。
(簡単に言うとダインスレイヴを装備して、太陽の近くなら無制限に移動できる外宇宙探査船)
なお一番艦のハーキュリーが不名誉な名前に成ってしまったため、ユリシーズがこのクラスの顔として有名になった。
『テーセウス級』
大げさで効率の悪いハーキュリーを、あくまで実験艦として捉え、完成させた新型戦艦。
三胴艦としての拡張性や外部砲塔などは潔くオミットされ、7割の完成段階で、必要な機能を追加するという方式でコストダウンを図った。
『完全循環型コロニー』初期型
一年戦争で開発された高性能炉心を使いコロニー自体も大型化することで、普通に暮らす限り、水や空気の心配が一切存在しなくなる。
余剰能力で小規模の菜園を作り、循環施設に排泄物を流すことで、多少ながらの食糧生産も可能。
マハルを始めとしてジオン公国時代に十基建造され、各地に送られている。
『完全循環型コロニー』中期型
マハル建造時に得られたデータを元に、コスト面での改良を施したもの、性能面での改良を施したものなど幾つかが造られた。
商品としての
『完全循環型コロニー』後期型
オアシス・タイプと呼ばれる特化型で、小型のリゾート施設、あるいは大型の食糧生産プラントとして設計された。とくに後者の存在は大きく、このコロニーを組み込むことで、各サイド全体の完全循環を可能としている。
真に完全循環型コロニーと呼べるのは、このオアシス・タイプからだという識者も多い。
太陽路一号『太陽航路』
ソーラーシステムでエネルギーを集め、ソーラーレイで変換して遠距離まで送り届ける、マイクロウェーブ送信設備。
真・太陽航路『オービタル・リング』
本来は軌道エレベーターを建造した際の名称。
火星・木星どちらに行くにしても効率良い場所にも、無数のソーラー・システム2を設置。ソーラレイよりも効率の良いグリプス2やシンヴァッツによって、エネルギーを供給するシステムである。GガンOPで地球を覆う光の枠を思い出そう。
別名はドゥガチの結婚指輪とも呼ばれている。
『ジャミトフのシュレッダー』
木星圏で製造された大型設備の概念と、新型炉心・マイクロウェーブ送受信などを組み合わせた物。デブリや小さな資源衛星くらいなら直接放り込んでインゴットにしたり、ちょっとした生産物を製造することができる。
ソーラーシステム2が効率化したとはいえ、大量生産できた理由は、この設備を使用したからであったとか。
この設備の運用利益と運用計画そのものが、ガンダム・ファイトの賞金・商品として設定されている。
上位入賞すれば相当額の資金、または資源・パーツなどを受け取る権利を得ることができ……。
優勝者には利益を減らして運用に口を出す権利、または口を出す権利を放棄してより多額の資金を受け取る権利のどちらかが付与される。
初代優勝者はテネス・A・ユングという謎のマスクマンで、連邦軍人ではないかと噂されているとか。
という訳で連邦版のデータ集です。
敵側のデータまで含めると長いので、第二部でも割愛しました。
必要ないとは思いますが、このシリーズで使用した技術や概念で、使いたい物があれば自由に使ってください。私自身、どこかで見た技術やアイデアを流用しているので、気になさることはありません。
本当は歴史なんとか風に書こうかと思ったのですが、やはり長くなりそうなので割愛。
というか余計な台詞や考察・心情描写を入れたくなるあたり、ドキュメント調で描く才能が無いのかもしれません。
●オマケ『没案』
「当時、連邦もジオンも限界でした。勝つだけならともかく、敗者の面倒を見るなど真っ平ごめんと思う者が出ても仕方ありません」
一年戦争時の内情に詳しいアリス・ミラー女史はこう語る。
「それがドナヒュー・ラインでの終戦に繋がったという事ですね?」
「そうですね。連邦において保守派の立役者だったジーン・コリニーの仲介で、ガルマ・ザビは秘かに停戦交渉を行っていました。連邦政府の意向がコリニー閣下に仲介を行わせたと言います」
特使として派遣されたヴィッシュ・ドナヒューは難しい往来をやり遂げた。
実際に交渉するのはガルマ・ザビであるが、メッセンジャーである彼の役割は大きかったという。
「両軍は既に動員令の準備をしていました。志願兵を予備隊として訓練中だった連邦軍はまだしも、実際に投入し始めたジオン軍では学徒兵が身近であったのでしょうね」
「その辺に関しては何とも言い難いですね。しかし両軍が疲弊していたのは覚えています」
アナウンサーを務めるカイ・シデンとしては苦笑した。
コロニー出身である彼は、なし崩し的に志願せざるを得なかったのだ。
停戦がなければ、もしかしたら死んでいたかもしれない。
何しろ彼は北米での捕虜交換で、なんとか連邦に復帰できたのである。それも現地で志願兵扱いを受け入れてもらえなければ、良くてレジスタンス、悪ければテロリストとして処刑されていた可能性が高い。
「ともあれ戦争は思ったよりも早く終わりました。それ自体は感激すべきことでしたが、一部の関係者に不満を持たせた形になります」
「エギーユ・デラーズとバスク・オムの興したエンデュミーン戦役ですね」
画面に二人の男が映し出される。
一人はジオン軍人としては国葬されていないにも関わらず、英雄として称える者の多いエギーユ・デラーズだ。彼は戦役後の裁判で一切の自己弁護を行わず、最後まで宇宙市民の権利要求を口にしたという。