ジャミトフに転生してしまったので、予定を変えてみる【完】 作:ノイラーテム
エイプリルフール外伝
「ジオンです!」
「どこだ? どこから来る!?」
「北極星の方位!」
uc.0079。9月某日。大気圏突入ポイントに置いて戦闘があった。
連邦とジオンの戦いの中で、モビルスーツ隊同士の戦闘が行われる。
『想定時間は120。その間だけでも粘れば今回の任務は……』
『こういう時に数を減らす! 何機か着いて来な!』
迫り来る敵はみな熟練兵。
この危険地帯での戦闘などお手の物だ。重力圏のギリギリを攻めて来る。
対する連邦兵は傷つきながらも、こんな空域まで出て来るベテランばかりだ。ジオンに負けぬように必死で追い返していった。
「マダガスカルを前に出せ! 突入までの時間を稼ぐ! セイバー隊、頼んだぞ!」
「仕方ありやせんね。宇宙鼠どもを……っと。失言でした。忘れてくださいや」
巡洋艦の陰から飛び出た宇宙戦闘機が推力に任せて重力圏を舐めるように進軍。
ジオン側のモビルスーツ隊の後方を牽制し、連邦側のモビルスーツ隊が体勢を立て直す時間を稼ぎにかかる。
「アムロ! もういい! 艦に戻れ、もう直ぐ大気圏に突入するぞ!」
「ブライトさん、まだです! 奴が、奴が来る! ……赤い彗星のシャアだ!」
大気圏に突入しようとする母艦を守っていた白い機体。
アムロ・レイが登場するRX-78-2は帰還命令を無視した。指揮官も僚機も騙されたトリックに引っ掛からず、攻めて来ているのがシャア・アズナブル率いる部隊でないと気が付いたのだ。
『大気圏投入に専念し始めた今こそが最大のチャンスだ! このタイミングで仕掛けた例など古今東西存在しない、連中も油断して居よう。だがザクでは燃え尽きてしまう、戦闘最大時間は120秒とするが忘れるなよ』
『『『了解!』』』
シャアの赤いMS-06Sに続いて三機の06が追随する。
囮を務めた戦隊より突入艇が並行して降下していた。万が一の場合は、こちら側に戻れとの手筈だろう。
『流石ですな少佐。この分ならば十分に成功の目があります。しかも失敗したとしても、我が軍の勢力圏に追い込めると計算が出ました』
『戦いは非情さ。だから常に二手・三手先を考える様にしている』
副官とのやり取りを聞かせて部下の心を落ち着かせるシャア。
もしこの宙域で戦うのがRX-78、通称ガンダムだけであれば華麗に勝利していたのは間違いない。
だが連邦軍は既にモビルスーツを生産している。
サラミスには搭載方法の都合上でセイバーフィッシュしか居ないが、ホワイトベースにはRGM-79ことジムの先行型すら配備されていた。
結果として突入コースの変更と言う保険は成功、連邦軍の哨戒上から行方不明に陥らせたしたものの……。ホワイトベースの撃沈はならず、あまつさえシャア自身が大怪我を負ってしまったのである。
宇宙世紀0079年9月。地球連邦軍最大の反抗作戦が始まる。
モビルスーツの開発が一カ月以上早く繰り上げられたことで、正史よりもオデッサ戦線が拓かれたのである。
これを受けて北米に降り立ったホワイトベースを攻撃するはずだったガルマ・ザビも予定を変更せざるを得なかった。親友であるシャア・アズナブルが大気圏突入時の作戦で負傷したことにより、警戒度を大きく上げていたこともある。
「ジャブローに向かう予定であったホワイトベースが北米で行方不明になりました。それとインドシナ戦線からジオンを追いかけたライヤー大佐のガルダもアラビア半島で同様に行方不明です」
(む? この光景は……)
ニヤニヤした顔で不幸な戦友たちの不運を告げるジャマイカン・ダニンカン。
何十年も部下として扱った男の顔は若く、士官としてはまだまだ若造の部類に見えた。その事に大きな違和感と、何処かで見た既視感が脳裏に浮かぶ。
そして何より、北米とアラビア半島で連邦の船が行方不明という事態に覚えがあったのだ。
(これは一年戦争の記憶? いや、この感覚は記憶だけではない。体に当時の体感と同じ感覚を感じられるだと!?)
ジャミトフ・ハイマンとして転生し数十年。
死を迎えたはずの私は、何故か一年戦争時に逆戻りしていた。
これは夢ではない。寿命で死ぬ際に感じた体の苦痛、そして今は若い体……といっても既に壮年期に入っている体の感覚を感じている。この異常事態に私は戸惑う他は無かった。
(まさか逆行したのか!? 馬鹿な。歴史をさかのぼるなどナンセンスだが……何より、どうしてこの体で逆行するのだ! いっそアムロかシャアにでも憑依すれば良い物を!)
転生物の小説とは別に、逆行物というジャンルがある。
しかしながらまさかジャミトフ・ハイマンとして生涯を終えた後に、逆行まですると思わなかった。
個人的な希望を言えば同じ逆行するならば、この時点で死にかけていたシャアの方がありがたかっただろう。ジャミトフという地味な男に転生してパイロットの適性が無く辟易していたのに、大往生を遂げた後にもう一度ジャミトフをやらされるとは! むしろ拷問に近いとすら言える。
「どちらを選んでも良いのですが、どうなされますか? 大佐……大佐殿?」
「……判断は少し待て。計画に修正を加える」
咄嗟に返事を止めて推敲する事にした。
逆行までやらされるという事は、何かやらねばならぬことがあるのだろう。ハッキリ言うとジャミトフとして生きて後悔ばかりだが、それでもやり直したいとなど思ったことはない。私の性格もあるが傲岸不遜に精一杯生きることが目標だったからだ。
生前と同じ行動を取ることも苦痛であるし、何をするかは自明の理だ。
天はおそらく、私に今回の選択肢で以前とは別の手段を採れと言っているのだろう。他者に命令されるなど業腹だが、逆行までさせられては仕方あるまい。もし生前と同じ道を選んで数十年経ち、もう一度戻されて更に数十年など地獄と言って良かった。エンドレスエイトをやったらもはや六道輪廻と変わるまい。
「北米を重視しよう。ホワイトベース隊に乗っている民間人救出を前面に出し、ジオンと一時的な休戦協定を出せ」
「了解しました。クロトワ・バジーナを派遣いたします。ですが……」
ジャマイカンは忠実な男ゆえに即座に了承を返して来た。
ヴィッシュ・ドナヒューに与えたコードネームを出して、先触れとして派遣すると返して来る。
ここで一拍置いたのは、意図の裏を聞いておく為だろう。
この当時はアラビア半島ならばギニアスと接触してアプサラス関連を、北米ならばホワイトベース隊と接触しニュータイプと知り合う事を前提にしていた。将来に備えてのことだが、逆行した今では少し説明が付け加わる。
「民間人救出……表向きは、な。この戦い長くは続かんしジオンも愚か者ばかりでは無かろう。今の内にザビ家の穏健派とパイプを持っておく」
「なるほど! 戦後を見据えてのことですか。それは腕が鳴りますなあ!」
ガルマ・ザビは北米の統治に成功しており、その手腕は温厚な物だった。
その事を告げる資料を指さし、今の内からパイプを作っておけば、戦争が下火になった時に自分たちが交渉役になると今のジャマイカンでも判るだろう。
●
この後は小さな差があれど、大筋は前回と似たルートを通るだろう。
実際に前回と同じくオデッサ作戦の為に北米を牽制していたヒマラヤ級空母を下げることで、ガルマはアッサリと交渉に乗って来た。
シャアが重傷である事、そして敗走するジオン軍に息を吐かせる為という思考に変わりはないからだ。同じように流れさえ変更しなければ、この後はアラビア半島での掃討戦が地上最後の戦いになるのは間違いあるまい。メラニーの小細工も含めて……。
(悪いなギニアス。私を逆行させた天が悪いのだよ)
選択肢をギニアスのエネルギー研究から、ニュータイプ理論に舵を切る。
その影響がNT兵士などで収まるわけがない。おそらくはサイコフレームを開発し、それを利用せよというのだろう。
代わりにギニアスとのパイプが作れず、彼は病死しアプサラスは未完成のままに終わる程度の差に成るはずだ。
(だが……ニュータイプ。いや、サイコフレームが生じさせるエネルギー。ソレが人類の文化にもたらす影響とはなんだ?)
サイコフレームが発生させる膨大なエネルギーで何をするのか?
ホワイトベースの回収と交渉締結の最終段階として北米にまで訪れながら、その目的をこの時点の私は決められないでいた。
「シアトルのスタジアムが見えました。先遣のディンゴ小隊が出迎えてくれてます」
「符丁はどうなっておる?」
そうこうする内に約束の時間が訪れる。
仕方なく目の前に専念し、今は状況と共に考えの整理をしておく。思えば今からニュータイプの卵たちと出会う訳で、混濁した考えが思考を読まれぬ為の欺瞞情報だと思えば丁度良いと思っておこう。
「アナハイムとジャイアンツの試合は九回裏でクラッシュ。スタジアムは総立ちだそうです」
「問題ないな。着地に移行しろ」
「了解。着地態勢まで二十」
廃墟に成ったシアトル・スタジアムを交渉の場として選んだ。
出場したチームや点数票などに幾つかの意味を持たせ符丁としている。現在の状況は以前と同じ、要するに出がけ前に決めた取り決めと同じである。
クロトワことヴィッシュにつけたディンゴ小隊が滞りなく警戒に当たっているようで、敵地ではあるが問題なく過ごせそうだ。
「あんな所に少年たちが? レイ大尉の子息たちでしょうか?」
「だろうな。戦績を見る限りただのボーイスカウトでは収まるまい。余計な事は考えるなよ」
ヴィッシュには保護した民間人として、何人か判り易い者を選んで連れてこいと言っておいた。
もっと小さい子供もいたはずだが流石に危険性があると判断したのだろう。兵士が暴力を振るうとも子供が暴れるとは思わないが、ヘリに近づいたり崩れたスタジアムの下敷きになる可能性はある。
見ればブライト・ノアを含めて数少ない軍人組も居るようだ。
物資を供給する為に先行させたマチルダ隊は見えないので、我々と入れ違いでジオンの領域から去ったのだろう。
「ジャミトフ大佐! 我々の為にありがとうございます!」
「礼ならマチルダ大尉やクロトワ大尉たちに言いたまえ。命を懸けたのは私ではないよ」
敬礼するブライトを尻目に、用意したデータやらなら色々詰めたトランクをジオン側の将兵に引き渡す。
半分のケースを出迎えたガルマの兵に、もう半分を捕虜交換という言い訳で連れて来た兵に持たせて解放しておく。工作員が紛れ込んでいる可能性を考えそうなヴィッシュも、カーティス大佐を連れて来たので気を取られて居るようだ。
「戦争に民間人を巻き込んで申し訳ない。軍の代表ではないが、地上軍の裏方として詫びさせてもらおう」
「大佐……そこまでなさらずとも……」
「軍人が民間人に戦わせるのは恥だよ。我々は好き好んで戦場に立っておるのだ。それに、これからも暫く迷惑を被る少年たちを思えば私の頭で良ければ幾らでも下げよう」
連れて来たジャマイカンだけでなく、何人かの連邦士官が動揺する。
上層部という物は容易く頭を下げるべきではないのに、民間人などに謝意を表すれば官僚主義の連中にとってはこんなものだろう。
だが上官の役目は部下の尻拭いをすることだ。
直接の上司に当たらずとも、彼らを戦わせたワッケイン少佐(大佐待遇に野戦任官)の不明を詫びるのは当然のことと言えた。
「それで……ボクたちはこれからどうなるんですか?」
「貴様!」
「止せ、ジャマイカン。救出した民間人たちは安全な場所で解散、救護することになる。必要であれば仕事を斡旋しても良いが……君が言っているのはそんな事ではないだろう」
物怖じせずアムロが声を掛けて来るが、この時期はこんな感じか。
確かランバラルと戦う前辺りで急降下のダウナーに成るはずだが、今はそれほどナイーブでもないのだろう。
いや、それ以上に自分たちがどうなるのか他の少年たちにせっつかれているというのもあるか?
「選択肢は三つ。一つ目は守秘義務を交わし、ある程度の監視を受けるが他の民間人たちと同じ道を辿る方法。二つ目は軍属となって最後までホワイトベースに関わる事。三つ目は軍属ではあるが安全地帯で勤務する事」
「監視?」
「軍属……ですか?」
当然だが少年たちは首を傾げた。
どうして自分たちが監視されなければならないのか、それが嫌ならば軍属となる道しかないのか判らないのかもしれない。
「ぼうやたちは艦を守るためにガンダムやガンキャノンで戦ったのだろう? 仕方ないとはいえ……いや、押し付けられたとはいえ重要機密に触ったわけだ。無罪放免とはいくまい」
「そんな勝手ですよ、ボクらはやれって言われただけなのに!?」
「余計な取引は止せジャマイカン。彼らは被害者だ。できるだけ便宜を図るべきだ。それが大人の役目だろう」
流れを読んでジャマイカンが口を出して来た。
良いフォローだとは思うが、精神的に追い詰められたアムロ達には逆効果だ。ここは時間を与えて、彼ら自身に決断させるべきである。
その方が間違っていたとしても納得できるし、その後に後悔しない方法なのだ。
「我が軍だけならば私の所で止めることもできる。だが、ジオンは赤い彗星を退けた君たちの事をニュータイプだと誤解しているかもしれん。そこで私はこんな物を用意させてもらった」
「軍へのスカウト?」
「あれ? でも、これって変ですよ? 日付が数年前に成ってる」
歴史に介入するかはともかく、流れだけは判っていたので資料くらいは用意できた。
無記名の令状を用意し、『●●は軍属として、以下の条文に従って戦時とあらば兵として戦う』といった内容を予め書き込んでおいたのだ。
もちろん無記名にしたのはアムロ達をスカウトするとは限らないからだ。他にもジオン側の人間や中立サイドの人間を雇う為に有効利用している。ジャマイカン達が不審な顔をしていないのも、こういった資料は無数に用意していた。今後を考えれば、シーマ艦隊の戸籍を用意しておくのも良いだろう。
「サイドセブンに移住する前の段階で契約して、資料のモニターになったり軍務訓練していたという態を取る。つまり訓練していた准士官が職務に当たっただけだから、犯罪でもないしニュータイプの異常性を発揮したわけでもない」
シャアが攻め入った段階で動員され、監視員やパイロット候補になった。
適性があるだけだから予備人員で収まるはずだったが、士官たちが軒並み戦死して繰り上がってしまった。これならば軍事機密に触れたことは罪でも何でもなくなる。
だが、より重要なのはもう一方の方だ。
戦える者が優秀な兵器に乗って、その優秀さを活かすための戦いをしただけ。……という強弁を採れるし、後の資料にはそう残されるだろう。
「これを受け入れれば……オホン! 失礼。大佐殿は罪の帳消しだけではなく、モルモット扱いからお救いなさろうという訳だ」
「モルモット扱い……」
「まあそういうことだ。どの道を選ぶとしても責任もって請け負おう。恩着せがましい言い訳はしない、好きな道をゆっくり選びたまえ」
正直な話、目の届かない所で何かされるのが一番困る。
私は私がしたいことをしたいだけだから、アムロ達を利用する気はない。その意味で彼らがどこかで隠居しようとも、軍に所属してもらっても構わない。ホワイトベースはレビル将軍の麾下になるだろうが、安全地帯に行きたいならば私が適当に手配しよう。
「判りました。ボクらで話し合ってみます。……あの、それは此処に居ない人も、ですよね?」
「無論だ。戦った民間人全員に同じだけの選択とフォローはさせてもらう。まあ民間人とは言い難い、ヤシマ家のお嬢さんやマス家のお嬢さんは本人が望んでも放り出す訳にもいかないが」
上目遣いにアムロが聞いてくるので正直に答えておいた。
ミライ・ヤシマは宇宙用ヨットの使い方を知っていたから舵を任されたとか、セイラ・マスはどう見ても上流階級のお嬢様の態度だ。二人を親元まで保護すると言うのは不自然ではないだろう。
セイラ・マスことアルテイシア・ソム・ダイクンに保護者が居るかは別にして。
●
やはり別ルートというのは新鮮だ。
前回は部下に指示を出しただけで直接会わなかった為、物資補給と援護のためにマチルダ隊を送り出して終了だった。
現時点では特に変わったようには見えないが『アルテイシア』を確保できた事が大きかった。アムロに関してはサイド6から情報でテム・レイの情報でも入れば、少しは進展するのではないかと思う。
「お疲れ様でした。これで名実ともに地上部隊の代表ですね」
「まあな。大した成果は上がってないが、ガルマ・ザビの性格を直接知れたこと。良識派であるとの相互理解を得れたことは大きかった」
今回の民間人保護を取り仕切り、同時にアフリカ戦線の手配もしている。
北米を牽制していたヒマラヤ級を下げる事が条件の一つだったこともあるが、戦況予想やら変動に対する準備が前回を知っている分だけ容易だったこともある。
特にサハリン家からの情報が無くともアラビア半島の情報を知っている事は大きく、メラニー・ヒュー・カーバインがどんな策謀を仕掛けて来るか、どう対応すればよいのか知っているのは大きなアドバンテージだろう。
「ここだけの話だがな、ジャマイカン。おそらくだが状況の推移次第ではガルマは北米を明け渡すだろう。そうなればコリニー閣下の勝ちは揺ぎ無くなる」
「まさか!? いえ、た、確かに……」
この後の流れは大きく変わらないだろう。
アフリカ戦線に勝利し地上ジオンに勝ち目が無くなるだけではなく、同時に宇宙でも要塞が次々に陥落するのだ。
ガルマならずとも不安に成るし、ここで私とパイプが作れたことは大きいはずだ。
サイド3の安全と引き替えに北米を譲り渡すという約束が取り付けられれば、戦争はそれで終結する。メラニーの策謀が影響を与えて私に権力が転がり込むのだが、何だったら先に交渉を取りつけて、アラビア半島での戦い前に決めてしまっても良いかもしれない。
「そうなればレビル将軍の後継にはコリニー閣下で決まりですな。おめでとうございます」
「今後はお前に部隊を任せようと思うが、その時までくれぐれも手綱は緩めるなよ? せっかく労せずして何もかも手に入るのだ。不心得者に我が隊の評判を落とされても困る」
「心得ましてございます!」
このころにはティターンズの結成準備に入っていた。
研究機関としてプロメテウスを設立し、いわば『院政』を行いながら時代を動かすキーである技術開発だけは手元に置いておく。
場合によってはアムロたちニュータイプに関しても、今回は私が手を出す必要があるだろう。
(そういう意味では会ってみて正解だったな。良い気分転換には成ったし、『自分の為に行動する』という事の重要性をようやく思い出せた)
アムロを悪い意味で刺激しないために、選択肢は与えたが決断は任せた。
その時に悩む姿、そして決めた後の行動を見て思い出したことがある。
『可能だから行う』とか『効率が良い』などと言うのは人生のオマケに過ぎない。
やはり人は『自分がしたいこと』の為に行動するのが一番だ。前世でできなかった事のうち、私がやりたかったことを試せばよい。サイコフレームの効率など考えず、ただ自分の楽しみの為だけに用いれば良いのだ。その延長に世界の繁栄があればいい訳も必要あるまい。
「それでは人事で面会を求めておりますバスク少佐の件は却下でよろしいので?」
「あの手の輩はどこかで
前回は面会してから断ったが、今回は最初から断っておく。
弾劾されるのも面倒だが、コロニーの処理に関する手際があまりにもアレ過ぎた。次回も同じことをされては地球に落下しかねない。それでなくとも民間人に被害が出るというのは外聞が悪いからな。
それはそれとして、能力的にも発言の印象的にもなにか
「それとカムラ博士の研究は私の元で育てる。クルスト博士の伝手で潜り込んで来るジオン系の技術者も同様だ」
「例のプロメテウス機関で研究なさるのですな。承知いたしました」
前回はNT研究を全て止めたが、それでもEXAM系が残った。
やはり中途半端はいかんということだろう。カムラ博士には最初からAIでも開発させて、NT研究は分離してもう少し健全なモノを目指せばよい。
そもそもサイコフレームさえ完成し、それを組み込んだ技術を創り上げれば良いのだ。別に演算機としても出力機関としても、強力なニュータイプなど用意する必要もないのだから。
「どういうことですかジャミトフ閣下!」
「どうもこうもない。その必要を感じないだけだ」
不思議な事にバスクとの面会をキャンセルしたのに……。
別の人物からの暑い訪問が待っていた。別に選ばなかった選択肢の裏側を見たいわけでも、A面B面共通のレコードを聞きたいわけでもない。世の中不条理な事である。
もっともティターンズが地上を守る部隊であり、プロメテウスが研究機関となる以上は避けられない問答なのかもしれない。
「閣下、ニュータイプには無限の可能性があるのですぞ! それが何故お分かりになりませぬ!」
「知って居るとも、ナカモト博士。貴公よりは余程な。……少し待て」
詰め寄って来たのはローレン・ナカモト博士。
サイコミュ研究者の一人でジオンの敗色が濃くなったと当時に、さっさと見切り付けてこちら側に来ている。
もっとも中立であるサイド6に研究所があり、キシリア機関が連邦に接触を強めている時期なので、ついでにくっ付いてきたというのが正解だが。
「この資料は一体……」
「確かミノフスキー粒子では阻まれないサイコ・ウェーブを使って通信を行うのがサイ・コミュニケーターであったな?」
「は、はい……」
原作知識を解説するのは面倒なので適当に資料にまとめておいた。
クルスト博士やスパイに聞いたという態で、推測や伝聞情報を多分に交えて簡単に説明したものだ。
だがナカモト博士は次第にギラギラとした目で、私のことを理解者であるような目で見始める。
「素晴らしい! まさか部外者がここまでサイコミュの事を理解されていようとは。ですが、これほどにお分かりになるならばご承知の筈!」
「知ってる居るから不要と申したのだ。貴公がやりたいレベルまでは考察済みだ」
正直な話、有線も無線もサイコミュ兵器なんか要らない。
それならば優秀な部隊を三倍用意し、それらが十全に活動できる物資を揃えるために付近の基地に五倍程度用意しておけば良いのだ。連邦ならばそれが可能だし、妙な兵器を作って暴走される方が怖い。
もっとも今回はニュータイプ系を育てる気なので、別方向から育てると決めているのだが。
「遠隔兵器などパターンを決めたドローンの切り替えで十分だ。その上でサイコミュを求めるのであれば精神エネルギーの問題に成るが、結果が出るまでティーンエイジャーを1000人は切り刻まねばなるまい」
「せっせん……。いえ、そこまでという訳では」
世界の滅びでも来るならば、1000でも2000で採殺場に送って見せよう。
だが逆に首を絞める結果にしかなりそうにないので、人体実験だけは何としてでも止めさせる。
何が嫌かと言って、その方法では自分が強く成れないのだ。
せっかくニュータイプ研究に舵を切って同じ人生を二回も行うならば、『私自身』が無双を楽しめねば意味がない。
「何処に進めば良いかを思考・指示する航法用の生体コンピューターであるならば、別に人間である必要もあるまい? どうせ全滅する運命なのだしな。文字通り助け船を出してやろうではないか」
「閣下?」
私の言いたい事をナカモト博士は理解できないようだ。
まあ無理もあるまい。人間を改造してニュータイプもどきの強化人間を作るという研究に落ち着くはずだったのだ。まさか人間以外を対象にせよとは言われるとは思っても居まい。
そう、この時代には全滅し掛かっているニア知性体が存在する。
コロニーが落下した衝撃をモロに受け、重工業による汚染で水も飲めなくなった海洋には、今にも全滅しそうなイルカや鯨が存在するのだ。モビルスーツに載せようとするから人間でなければならないわけで、なのに初期サイコミュを載せたエルメスは軍艦並みのサイズなので問題はあるまい。
●
という訳でニュータイプ研究はイルカ・鯨の救済案をダミープランとした。
海洋汚染の影響を研究し、人体にどう影響するか、どう回避するかを研究するとしている。
死にかけたイルカやクジラを回収し、この頭脳を切り刻んで色々と有意義な実験をさせてもらった。もちろんアムロ達のサイコ・ウェーブには及ぶべくも無いのだが……。誰からも文句を言われないのが良い。
放っておけば全滅するはずであり、『海洋研究などに予算を使うな』という勢力や逆に『イルカや鯨を研究するなんて可哀そう』などという勢力には、正論をぶつけてお帰り願っておいた。
「サイコ・フレームの達成率はどうだ?」
「なかなか素材への定着が行えませんが、製造形式だけならば確立しました」
人間ではなくイルカをベースにした為に、まるで出力が足りてない。
その影響もあってサイコ・フレーム研究がかなり早くなり、完成品はまだ遠いが理論だけならば完成した。
もっとも研究室ならば証明できるという程度であり、素材としての実用段階など程遠いのではあるが。
「面倒だな。構わんから液状のまま試験してしまえ。データ取りと並行して素材化を進める」
「それならば問題ありませんが……。現状の規格ではまるで合いませんよ? 巡洋艦どころか戦艦すら越えてしまいますよ?」
固定化しようとするから問題が生じる訳で、流体のまま運用することにした。
計器をゲル状の素材に浮かばせて、サイコ・フレームの為の小型素子を周囲に流し込んだのだ。
なお、この巨大化する装備にはうってつけのモノがある。
今回はギニアスの為にマイクロウエーブ機構を開発する必要がないので、ドコス・ギア級をモチーフにしたハーキュリーズ級が浮いている。このオプションパーツに組み込んでしまう事にした。
「疑似三胴艦のハーキュリーズ級を使って試験を行えば問題ない。艦の名称を『アルケイデス』、追加パーツを『L・トリム』と名付ける」
「ああ、あの艦のサイズならば確かに」
「接続システムだけ設計してしまえば、後で追加できますしね」
所詮は実験用の船なので理屈は何とでもなる。
基本システム自体は通常の戦艦なので、追加パーツの方向性だけ変更すれば良いのだ。イルカを生きている航法コンピューターにする方は先行しているので、何の問題も無いだろう。
「……という訳だ。例のマシンには目途が立ちそうかね? パープルトン女史」
「当然ですわ! これで私のガンダムが完成いたします!」
せっかくなのでサイコガンダムをデンドロビウム化することで早期に製造する事にした。
40mの本体で足にエンジンを移し、更に追加パーツに色々な装備と強化装備をくっつける。この方法でならばかなり早く完成するだろう。小型化などゆっくりやれば良い。
問題なのはアクシズ・ショックなのだが、そちらにはある程度の目算が立っている。
何しろVガンダムではアクシズ・ショックは起きていないのだ。正確にはサイキッカーが連動して暴発したエンジェルハイロゥの転移くらいだが、あれも同じ理屈で説明できる。よって予め対策しておけば何とでもなるだろう。
「ステイメンは複座型のコックピットにして、オーキスにも念の為に用意して……。このサイズならI・フィールドも行けるわね! そうだ、メガ・ランチャーの試作機も載せてよろしいでしょうか?」
「構わん。最初は大きすぎるかもしれんがな。直ぐに実用段階で再現させてやろう」
そう言いながら上がって来る仕様書と仮画像に修正を入れてGOサインを出す。
形状に自分の趣味も持ち込み、色合いはもちろんティターンズ仕様MKーⅡのカラーだ。大きく違うのは爆導索ではなく、インコムの試作型をコンテナで載せているくらいだが。
ここまで来るともはやガンプラ・バトルでもやっているような気分であるが、逆行させられて退屈な人生を二度もやらされているのである。もはや我慢する気など微塵もなかった。
●
さて、色々と無茶はしたが基本的な流れは変えていない。
ゼロ・ムラサメの代わりに覚醒していないアムロが部隊に居るとか、ニナ・パープルトンがガトーとではなくコウと最初からくっ付いている程度の差だ。
「閣下……。本気で出撃されるのですか?」
「コレに乗って脱出しろと言ったのは君らではないかね。単に脱出から迎撃に変わるだけだ」
サイド6にある研究所が攻められた。
前回とほぼ同じ流れだが、アッシマーの代わりにオーキス。サイコガンダムもどきの代わりにステイメンという差が存在している。
オーキスには予備のコックピットがあり、武器管制の一部を担当できるようになっている。研究者たちはこの部分に私を乗せて、慣性制御が効く範囲の速度で脱出しろと言ってきたのだ。
「こう言っては何だが、ヤザンたちが勝利すると信じておる。ならば私が逃げる必要もあるまい」
「それはそうですが……」
私が提案した空間投射型のキーボートで機体の制御を開始する。
すると牽引パーツに登場しているイルカたちが返事を返してくれた。VRシステムを被って光彩認証をクリアすると、画面の端にコウとニナのカップルが見えた。
「君たちには礼を言っておこう。かねてから言ってみたい言葉があったのだよ」
「あら? どんな言葉でしょうか?」
「やっぱり、ガンダムいっきまーす! ですか? アムロさんみたいに?」
二人に対し首を振りながらニヤリと笑って見せた。
老人であるこの私が戦い、無双すること自体も喜びだが……。一軍を蹴散らせるデンドロビウムならば言うべきことは一つだ。
「ティターンズを操る男が、ティターンズよりも弱いと思ったかね? とな」
「はっ!?」
「あー。閣下も意外とお茶目ですね」
ティターンズのティターンとは巨人の事だ。
簡単に言うと私は巨人の王という訳だ。巨人の王がその辺の巨人より弱い訳はないだろうという強弁である。
「とはいえウラキ少尉の言う事もっともだな。今回の出撃に際し、この試作機ステイメンをナイトガンダムと名付けるこちら側のコックピットがある状態ではデュラハンというのはどうかな?」
「それで構いませんよ。どうせ作ったのは閣下ですから」
「何よコウ! 作ったのは私なんだから!」
イルカたちのサイコウェーブで管制制御システムが動き出す。
サイコ・フレームはまだ試作段階だが、アクシズ・ショックはともかくこの程度は熟して見せるだろう。であれば後は大火力で蹴散らすのみである。
「ナイトガンダム・デュラハーン。出撃せよ!」
「了解しました! ガンダム、いっきまーす!」
これでパイロットとして戦うという夢は叶った。
次は火星や木星など、官僚どもが止めるから移動できなかったところへ平然と顔を出す。やがては外宇宙と行こうではないか。
我が征くは星の大海と洒落込むことにしよう。
という訳でエイプリルフール企画で別ルートをダイジェストでやってみました。
第八話から分岐。NT研究からナイトガンダム物語、やがては魔法とは言わないけれど
I・フィールド駆動やらステルスやら魔法ッポイシステムが作られるかと。
急遽思いついて、ダイジェストをでっちあげた内容なので話がアレなのはご勘弁ください。