ジャミトフに転生してしまったので、予定を変えてみる【完】   作:ノイラーテム

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外伝:THE・O

 本来であればアムロ・レイは速攻で敵前衛を蹴散らして母艦に戻る予定であった。

長時間の戦闘は集中力を削ぐし、何よりも脅威は野放しになっていると思わせる方が良い。そうすれば押し留めるために部隊をさらに派遣するか、守りに徹するだろう。

 

その隙を突いて、母艦共々ジュピトリスに迫るつもりであったのだ。

それらの思惑を見抜いたシロッコは一機のモビルスーツを投入することで全てをひっくり返した。

 

『アハハ! 凄い機動性じゃないか、そのモビルスーツ(・・・・・・)!』

「なんて装甲(・・)だ! フェイントでビームガンを当てるくらいじゃ削り切れない!!」

 凄まじい速度でキャラ・スーンがTHE・Oを稼働させる。

ニュータイプといえど散弾や拡散ビームの類を全て避ける事は無理だ。その事を理解している設計者のパプティマス・シロッコは、重装甲のマシンを強大なスラスターで移動させることで対処したのだ。

 

宇宙ならばそれで十分に機能する。

他にも対処方法はあるだろうが、『指揮官用』のモビルスーツとしてはひとまず(・・・・)の回答例として通用するだろう。そもそも部隊指揮官が前に出ることなどないのだから。

 

『当たると痛いよ!』

「なんと!」

 重装甲の機体から放たれる無数のメガ粒子光線。

本来であればスラスターと慣性制御で手一杯であるはずだったが、サイコフレームのエネルギー流用でそれらが軽減された。結果として断念していたはずのメガ粒子砲を搭載できたのだ。

 

それも胴体や手足に仕込んで四方八方に放てる暴風の嵐だ。

機動性を限界まで強化したニュー・アレックスをアムロの操縦していなければ容易く直撃していただろう。

 

『ちっ! あたしゃTUBAMEって嫌いなんだよ!』

「くそっ。チャージしている余裕がない。回避に専念させられるとは」

 ニュー・アレックスの増加装甲には稼働型のサブ・スラスターが付いている。

マント状の羽が四方向に稼働し、縦横斜め自在の動きだ。一度『天頂』方向に上昇してから戻って来る木の葉落としもアムロの技量ならば難しくはない。ましてシューフィッターであるクリスチーナ・マッケンジーが苦労してインプットしているのである。

 

しかも思考を読まれて問題ないように、複数のパターンから自動で選び出せる。

ニュータイプ同士の戦いを想定したフォーマットの差が濃密な火力を上回る機動性を約束していた。

 

「ララァさん。どうします? 相手がニュータイプならいっそ『主砲』を使っちゃいます?」

「ダメよ。あれはアムロにも効いてしまう物。それに……ずっと見ている()が居るわ」

 膠着してしまった状況にクリスがララァ・スンに尋ねた。

しかしララァは首を振り、温存している『主砲』の使用には頷かない。もちろんこれが厳密には兵器ではない(・・・・・・)と言う事も大きいだろう。

 

『rugged leveled』の主砲はただのノイズ発生装置でしかないのだ。

強力なニュータイプの思念をサイコフレームで拡張し、相手の思考を乱す程度の意味しかない。それこそニュータイプ部隊でも出て来るか、アムロに影響を与えない状況で無ければ意味をなさないだろう。

 

 そしてララァが言う様に戦場の推移を……いやサイコフレームの反応をこそ見守る者が居た。

 

「キャラめ。あんなにはしゃぐとは。パプティマス様のご指示を忘れてはいまいな」

「良い。アレはああ(・・)でなくてはな。あのくらいの変動が無ければ意味がない。お前の役目とは違うのだ」

 監視役であるイリア・パゾムは改めてシロッコの異常さを実感する。

目の前の男が告げる言葉は至極もっともではある。データ取りを考えるのであれば、精神をギリギリまで弄ったキャラと可能な限り安定度を高めたイリアに差があるべきなのだ。

 

しかしこの男はけっしてシロッコなどではない(・・・・)のだ。

紫色の髪と冷めた視線はまさに『彼』そのものだが、単なる一指揮官をシロッコに似せて調整しただけなのである。

 

(なのにこの物言い、そしてプレッシャー。まるでシロッコではないか。……奴は一体なに者なのだ。本当にこのまま協力しても良いのか?)

 サイコロジーやニュータイプ理論自体は研究したこともあったようだが、シロッコは素人だ。

なのに強化人間を調整するノウハウを瞬く間に身に着け、調整の仕方を工夫し始めている。それも並みの見識ではないレベルで。

 

ジオン軍が地球を離れて苦労しながら身に着けた様々なスキルを、事も無げに吸収し発展させていくあの男。イリアは背中に薄ら寒いモノを感じざるを得なかった。

 

「しかし戦線は膠着したというか、嵌められたな。撃破された連中は回収できたのか?」

「……はっ。全員ではありませんが脱出できた者の中で手近な者は」

 言われてみれば膠着した戦線なのに、連邦側は既に陣形を整え始めている。

所詮は前線指揮官に過ぎないが、それでも強化された思考で戦場全体を見渡す。この男……マシュマー・セロにここまでの洞察は出来なかった。

 

シロッコに対する言いようのない不安に駆られながらも、イリアは目の前の事態に対処するほかは無かった。

 

「オーベロンとティタニアの調整には今少し時間が掛かる。THE・OⅡを投下して時間を稼ぐとしよう。連れて来てくれないか?」

「確かにその局面ですね。承知しました」

 シロッコはTHE・Oの系譜を最終系とした。

他にもいろいろなモビルスーツを開発したが、データをフィードバックするのにどうしても大型化せざるを得なかったからだ。恐竜進化の限界線がTHE・Oであり、既存のモビルスーツよりも大きいがモビルアーマー級の性能と考えれば破格の性能を秘めている。

 

その中でオーベロンとティタニアはペアに成った機体で、その複雑さゆえに調整が難航していた。逆にTHE・OⅡは要塞攻略用として大型化したことでシンプルになり、早期にその調整を終えている。シロッコの周囲に実験体が揃っていない頃に、オールドタイプ用にしようかと思っていた面も大きいだろう。

 

「モビルスーツをくれるのはありがたいが、オレはともかく部下に使いこなせるとは限らんぞ」

「そこは問題ない。君たちのコックピット回りを調整した時、ユニバーサル規格の物に変えておいた。武装の使い方だけ覚えてもらえば直ぐにでも出撃できる」

 いかにも歴戦といった風情の男が部下を連れて来る。

脱出ポットで逃げ延びたとはいえ衝撃ダメージを考えれば無傷と言う訳でもないが……まだまだやる気十分。容易く倒されたにも関わらず、連邦へ目に物を見せてやろうという者ばかりだ。

 

もっとも……そういう人間を集め、モルモットにしようとモニターしていたのだが。

サイコフレームでの『伸び』が良いものや、他者に影響を与え易いタイプを中心にリストを作っていた。

 

「要塞攻略用の重モビルスーツであるTHE・OⅡと可変機の量産試作型であるハンブラビを提供しよう。いまさら宇宙市民の独立だのなんだのは言わん。連中へ目に物を見せてくれ。時代を動かす力を……『私』はそれが見たい」

「いいだろう。ラカン・ダカランが貴様の力になってやる」

 この時代、火星よりも向こうで共通する思いがある。

流れは遠く地球圏で動き、彼らの世代を上滑りして全てが決まってしまった。シロッコだけでなく一年戦争当時には若造であったラカン・ダカランもまたそうだ。

 

何かを為したい、世界に爪痕を残してやりたい。

その思いは共通しているし、自分に自信があればあるだけその思いは強くなっていった。心の中で燃える大いなる炎、それの行く先を与えられなかった者たちの戦場が今始まる。無謀な野心が重要なのではない、昂る自分の矛先こそが重要なのだ。

 

『ラカン・ダカラン。THE・OⅡ……出るぞ!』

『ハンブラビ。スペースウルフ隊! 出ます! 仲間の仇を討ちましょうぜ!』

 ジュピトリスより落下するように大型のモビルスーツが出撃する。

その周囲を取り巻くように、青いダイオウイカが二機出現した。随分と足の長い機体だと思えば、プロペラントタンクや巨大なテールバインダーを有していた。タンクは切り離すのだが、このテールバインダーが足の代わりに適宜AMBACを与えるのだろう。

 

そして異様なのはもう一つ。

全身を巡る三つのモノアイが、妙に巨大で妙に強烈な熱源を有していたのだ。

 

 落伍者が失着者に成らず新しい機体で出撃したころ、戦いは第二フェイズに移る。

アムロ達が突破口を開き戦力を引き付けたことで、連邦軍は移動している隕石の内、無理せず落とせるモノを火星に向けて指向させる余裕ができた。

 

サラミスから発射されるミサイルを中心に移動ベクトルを変えようと必死に攻撃していたのだ。

 

「ジュピトリス級より敵の援軍が三。その内の二機はこちらに来ます」

「モビルアーマー? いやこのサイズはアッシマーの様な可変機か」

 データバンクに無い機体であるが、類似例が存在した。

ティターンズが主力とするアッシマーの中に、飛行形態からモビルスーツに変形する仕様が何機かあったのだ。

 

その中でも戦闘力を高めた機体の中には、かなり強力な物もあったという。

 

「可変機なら厄介だ。突っ込みだと思って通り抜けるのを待つな! 慣れてる奴なら巴戦の中にも変形を組み込みやがるぞ!」

「そんなのが出来るのってアグレッサーくらいじゃないですか。勘弁してくださいよ」

 即座に警告を発した隊長の声に部下は苦笑いを浮かべた。

ここに来ているのはかなりの腕っこきが多い。全員が精鋭とは言わずとも、ジオンと同じくらいには歴戦の古参兵が揃っている。

 

そんな部下の声に対して隊長は笑ってこう答えるのだ。

 

「同じセリフをあそこで戦ってるお仲間に掛けてみな。やばい連中ってのは何処にでも居るもんさ。オレだって教導団から声を掛けられたくらいだしな」

「酒癖が無ければですけどね。増速しました……間もなく来ます!」

 軽口を叩きながら部下のジムⅢを四方に展開させる。

距離を開けながら油断なくシールドを構えて、ビームライフルを狙撃モードからバーストモードに変更。予備にバズーカの拡散弾をセットしておいた。

 

少しでも当たり易くした上で、隊長はサラミスが持つ対艦ミサイルの残り弾数を静かに数えた。この局面で投入される戦力が雑魚であるはずはない、その証拠に先ほどの機体は歴戦のニュータイプと互角に戦っているではないか!

 

「ロックオンされた? 緊急回……!?」

「どうした? 何が起きた!?」

 ハンブラビが突っ込んで来るのに合わせて、身をよじりながら回避しようとした。

だが駆け抜けた機体が即座に回り込んでる途中で突然、キランとビームを放ったのである。

 

通常ならばありえないタイミングであり、凄まじい捕捉能力であろう。

 

『ハッハー! もう一機撃破とはやるじゃねえか! 凄いなこの機体!』

『なに馬鹿なこと言ってやがる! くそっ、何で目玉にメガ粒子砲を仕込むんだよ! モニターが一つ焼きついちまったぞ! ファーック!』

 その補足能力の正体は、モノアイとメガ粒子砲が合一している事だった。

三つあるモノアイは全てが連動し、即座に都合の良い位置にある部分が砲門と化すのだ。高速機動からの連続射撃をタイトに編集した機能であり……本来であれば十分にバランスが取られている筈であった。

 

サイコフレームで敏感になった『感覚』が、これまたサイコフレームによってダイレクトに反応した影響と言えるだろう。

 

『……だいぶセンサーの調子が戻って来たな。どうする?』

『もう一機やってから隊長に合流する。連携攻撃のデータくらいはシロッコさんとやらに提出しねえとな』

 ハンブラビを操る二機はセンサー類や火器管制を調整しながらジム隊を翻弄。

サラミスを狙うフリをして相手の陣形を狭めさせ動きを拘束させていった。

 

今までアクシズに逃れて燻ぶっていたのが嘘なくらいの高揚感。

何時も大口を叩くラカンにでも影響されたかの如く、次なる獲物に狙いを定めた。

 

「二機が一組になって円周防御。母艦が対艦ミサイル(ハープーン)を使い切るまで粘れ!」

「了解! ってあと三発もあるじゃねえか。せっかく超過勤務の無い生活だったのになあ」

「何言ってやがんだ。おれら全員出張中だろうが」

 隊長機のMK-Ⅱが拡散バズーカと小型ミサイルを使って、ハンブラビの移動方向を制限。

高機動マシン対策をしっかりやりながらガードを固めるが、それでも新型機相手にはジムⅢでは荷が重かった。

 

回り込まれての射撃対策をしながら同時にサラミスを守るというのが動きに制限を掛けさせている。もしハンブラビが乗り立ての慣らし運転でなければ、とっくにもう何機かがやられてただろう。

 

「隊長! すんません、そっちに敵の新型が!」

「オレ狙いか!? ガンダムは伊達じゃねえ!」

 フェイントである可能性もある為、全力で逃げられないのがツライ。

そもそも可変機と通常機体では推力差があり凄る。仕方なく隊長機は博打に打って出た。

 

敵がいる方向に急速前進することで、相対距離を開けるのだ。そのまま天底方向……火星の重力を利用することで素早くターンを掛けたはずだった。しかし……。

 

「馬鹿な!? あの一瞬でコースを読んだだと!?」

「たいちょーう!!」

 ジム隊が最期に見たのは帰投するハンブラビが行きがけの駄賃にビームを撃ち込んでいく姿だった。

何故か完全にコースを読まれている状態であり、避けるどころかシールドで防ぐこともままならず直撃。脱出する間も無く吹き飛んだのである。

 

そしてハンブラビが戻るコースには、可能な限りカモフラージュされたナニカが浮かんでいたのであった。

 

『まさかビットを偵察専用に使うなんて思いもしなかったな。流石に目の付けどころが違う』

『それよりも私たちに使いこなせるほうが不思議です。三人乗りとはいえ……』

 それはTHE・OⅡに搭載された予備兵装であった。

ジオンで研究されてはいた物の、サイコフレームで強化された高機動時代にはまるで追いつけず投入までに時代遅れになってしまっていた。

 

しかしそれは攻撃用として捉えた場合の話だ。

測距用に浮かべて置き、中継器を挟んでデータ照合を行えば良いとシロッコは判断した。またTHE・OⅡは要塞攻略用である為、戦場全体を把握する事には意味があったのだから。




 と言う訳で今回はネオジオン系のキャラをババンと出してみました。
代わりに戦況はあんまり変化してませんがご勘弁ください。

●今週のメカ
・THE・Oシリーズ
 メガ粒子砲にも通じる新時代の装甲があるとはいえ、ニュータイプでも範囲攻撃は無理。
その弱点を『重装甲を高機動で動かす』ことで強引に解決した。

『THE・O』サイコフレームに変更した機体。余力はメガ粒子砲に
『オベロン』本体の性能向上に絞った機体
『ティタニア』色々な追加武装を持ち、オベロンとペアを組む事が前提
『THE・OⅡ』対要塞専用に大きくして全てをテスト、それを解決している
      偵察用ビットを係留して本体の火力を有効に活かす。なお三人乗りである。

・ハンブラビ(永野版)
 可変モビルスーツの試作機をサイコフレームによって完成させた。
三つあるモノアイが連動すると同時に、それらはメガ粒子砲でもある。
思ったよりも高性能になり過ぎて失敗したという珍しい例。

なお永野センセは
「判り難い? ならこれならいいでしょ。マルチに使えるデザインにしてるから。
どっちを正面と捉えても良いし、各部に見えるのはモノアイでもビームでも好きにして」
みたいなことを述べたらしいので、それを本当であることにしました。

●強化人間たち
『キャラ・スーン』
 可能な限り感情の波が変化するように設定されている。
もしかしなくてもサイコフレームの実験用。

『イリア・パゾム』
 可能な限り波が安定したタイプ。軍監でありお目付け役。
他があまりにも飛び過ぎているので、バランスを取る為のサポート。

『マシュマーセロ』
 シロッコに近いように調整された影武者。
すまんな。黒幕はジュトリスには居ねーんだ。(だから調整が終わってないともいえる)

『ラカン・ダカラン』とスペースウルフ隊
 サイコフレームの反応を見て使えそうだな。
と判断された人にしか期待を渡してない。他の人たちはお預け。
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