ジャミトフに転生してしまったので、予定を変えてみる【完】 作:ノイラーテム
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戦力が五分になり戦線が膠着したことで、勝利の天秤は連邦へ傾いた。
ジオン側はシロッコの指導で改修されコックピット回りこそ調整されたが、いまだ旧態依然としたモビルスーツが多い。対して連邦は同じ改修で済ませたと言ってもフレーム型のジムⅢが主力である。
性能比で連邦が有利であり、加えて援軍が近づいているという時点で戦いの趨勢は明らかであったろう。もっとも規模の問題で火星ジオンには最初から勝ち目はなく、アクシズからの援軍を加えても『一時的な勝利』すら奪えなくなったというのが正しい表現かもしれない。
「ここまでか。しかし……ジオンの志は世界に見せたはずだ。まだまだ連邦に反旗を翻す勢力は存在すると喧伝できたことは大きい」
火星ジオンの上層部もここに至って敗北を呑み込む。
どこまで戦えるかという判断に見切りをつけたのだろう。
「ご協力感謝いたします。アクシズに所属する我々ですが、これまでの……」
「ここまで来たら私もオーベロンで御一緒しましょう。突破する為の戦力は多い方が良いはず」
補給の為と称して戻ってきたオットー・カリウスに、パプティマス・シロッコの影武者は静かに首を振った。
カリウスが揺れているのは明らかだ。『最後まで戦う』のか『部下を木星へ撤退させてほしい』と頼むのか、判断が付き兼ねているのだろう。
だからこそ『逃がしてやってくれ』という言葉を遮り、最後まで利用する為に自らも出撃すると言い出したのだ。
「助かりますが……良いのですか?」
「ムザとやられる気はありませんよ。それにどのみち、表向きは私も責任を問われることになりますから」
所詮はシロッコの影武者を務める、マシュマー・セロもまた捨て駒だ。
しかしそれを悟らせないために、表向きは処罰されるが、裏では取引しているのだと言い聞かせた。
そして共にデッキへと向かい、パイロットスーツを肩に引っ掛けて牽引式ワイヤーガンで機体に乗り込んだ。
「完成はしていないが時間稼ぎには問題あるまい。イリア、援護は任せたぞ」
「承知しております。パプティマス様。ティタニアはその為の機体ですから」
イリア・パゾムは全体の調整役であった。
洗脳したともいえるマシュマーもだが、倒されたキャラ・スーンに拾い上げたスペースウルフ隊。彼らを戦力としてバランスを保たせ、そしてシロッコの定めた方向性へと誘導する為だ。
今回の戦いはジャミトフ・ハイマンが火星基地を捨てさせた時点で、既に勝負が決まっている。その流れはどうやっても覆せないと判断したシロッコは、ある『目的』の為に火星ジオンもアクシズも使い捨てる気であったのだ。
サイコフレームのデータと有用性の検証そのものは、アクシズを通して木星公社にも渡っている。だからこそイリアも従ってはいるし、他の面々も協力していると言えた。
「キャラが倒されたのは誤算だが、まあいい。シロッコはともかく私とはイマイチ感性が合わないからな」
そしてイリアが搭乗するティタニアは特殊な機体だった。
機体性能向上を重視したオーベロンと対になり、その支援機として様々な武装を搭載。サイコフレームも放熱板に似せた大型の物を組み込んでいる。
しかしそれは偽りだ。知る者も居ようが、妖精伝承は昆虫をモデルにした女系社会である。すなわちティタニアが支援する機体こそが、真のオーベロンであり取り換えの利くダミーであった。ゆえにこの機体にはサイコフレームの共振を目的に、感情の波が安定したイリアをパイロットに選んでいるのだ。
「さあ。精々踊ってくれマシュマー」
知らず知らずのうちにイリアはシロッコの様な笑みを浮かべていた。
これもまた、サイコフレームのなせる共振なのだろうか?
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誰が目論んだか、戦況が再び動き出した。
火星ジオンは包囲撃滅される前に脱出を試み、予め下げておいたことで無事な艦艇に残存戦力を集結。同時に足止めを兼ねた部隊が彼らの言う所のバハムート……ジュピトリス級と共に別方向に動かしたのだ。
連邦としてはジオンも叩きたいのだが、ジュピトリスを確保せよと連邦政府から厳命を下されている。破れかぶれでヘリウム3を爆破されないように、ほどほどのペースで回収する必要があったのだ。
「……そしてオレ達がジュピトリスを捕捉しましたよっと。本当に閣下が今回の事を企んだんじゃないだろうな」
バーナード・ワイズマンは苦笑を浮かべながら測定距離を割り出した。
ミノフスキー粒子で妨害されていても、『指標』を幾つか用意することで、相対距離は割りと簡単に算出できる。
『rugged leveled』の機動速度と慣性制御力で言えば、ジュピトリスに横付けして相対速度を合わせられる位置だ。いつでも白兵戦に移れる場所に到達したと言っても良い。敵の新型モビルスーツ相手に睨み合いをしていたはずなのに、都合が良くなったとあってバーニィがジャミトフを疑うのも仕方があるまい。
「むしろ相手の方がこっちを目指してきてるってとこね。新型が全部ニュー・アレックスを目指してるの。公社に居る黒幕がデータを欲しがってるってとこじゃないかしら」
「オレ達だって散々やってるもんな」
所詮は火星戦役など兵器の実験場である。
本命であるスターゲイザー完成の為にデータ収集は続けられている。ニュー・アレックスとこの船が共同で戦うのも同じ計画の延長線上に製造されたこともあるが、直ぐ間近くでデータ収集をするという意味が大きかった。
クリスチーナ・マッケンジーの言葉にバーニィとしても頷くしかなかった。
自分達がやっている事を敵軍が思いつかないということなどはない。そして有効ならば真似ても恥ずかしいなどと言う事はないと、他ならぬ彼らの指導者であるジャミトフ自身がそうしていたのだ。
「それはそれとしてどうするんだ? まともにやり合ったら勝てっこないぞ?」
「こっちは非武装に近い駆逐艦だもんね。逃げ回って援護に徹するとして、無理だったらサラミスの陰にでも隠れちゃいましょ。もしくは当初の目的通りにジュピトリスに向かう感じで」
この艦はニュー・アレックスの燃料弾薬を輸送し、情報共有などの援護をする為の船だ。
しかし純粋な戦闘艦ではないし、相手も意図的に狙う程の目標ではない。アムロ・レイが引き付けた所で下がり、情報を光信号で共有してしまえば良いのである。
そして戦場の推移も、実際にそうなっていった。
そもそも足止めの為に残った部隊はあくまで撤退する艦を無事に逃がすために居るのだ、ワザワザ駆逐艦程度を相手にするはずがない。向かってくるのは新型機程度で、他は戦艦もモビルスーツも連邦主力に向けられている。
「……来る! そこか!」
『うお! 見切られたか! やるな!』
突撃を掛けるハンブラビに対して、アムロは機先を制した。
時に牽制弾としてビームライフルを放ち、時にハーフ・トランスフォームからの白兵戦を狙う。少しずつ後方のTHE・OⅡが接近していることに注意しながらも、たった一機で翻弄していた。
これはラカン・ダカランが操るTHE・OⅡが連邦軍への砲撃を優先している事も大きい。連装型ビームライフルによる長距離砲撃がサラミスを損傷させ、ジムⅢを一撃で中破に追い込むほどの脅威を見せている。
「……おかしいわ。私達はアムロなら大丈夫だと判ってるけれど……相手もそれを判っているみたい。まるで避けられるのを前提に牽制しているかのよう」
「やっぱり、ララァさんが言うように監視しているナニカが居るのかしら?」
THE・OⅡの砲撃を切り変えるタイミングは、あまりにも的確であった。
ハンブラビと情報共有しているにしろ、物理的に見えない戦艦の位置まで行動を推測していた。アムロが敵の動きを呼んで回り込もうとすると、直前で牽制されて何度逃げられたか判らないほどだ。
だが不思議なのはジュピトリスから監視していた何者かと違って、THE・OⅡからはそれほど戦場を見渡そうとする気配が伺えない事だ。もしそうならばララァ・スンがこれまで感知出来なかったことがおかしい。
「おそらく『システム』と同じドローンなんじゃないか? 『ウェラヌス』にはウラヌeys、『ラー』にはメジェドの眼とかいうのがあったろ?」
バーニィは過去例から幾つかの可能性を引き出していた。
以前行った実戦訓練でアムロが苦戦したのは『システム』に情報を送るドローンだった。地形を把握する為に複数基が放たれ、光信号で情報をやり取りしているのだ。
何が困るかと言って、機械によるプログラムはニュータイプでもそのままでは共感できないのが問題だった。殺気を込めた罠や
「とはいえジュピトリスからの管制じゃないし、大型モビルスーツとはいえ詰めるもんじゃない。ララァさんが気が付かないということは、ロボットカメラの類だと思う。移動指示以外はサイコミュ使ってたとしてもオートだから判らなかったのじゃないかな」
バーニィは戦闘データを元に戦場の地図を作り上げた。
同じような技術をジャミトフの元で見ている事もあり、それなりに想像することができる。そして相手が自在に把握している領域はそれほど広くないのだ。
そしてミノフスキー粒子が散布されているという事は、電波では管理しきれないし、戦闘中の閃光で光情報を常にやり取りするのは難しかしい。だが、どこのポイントに移動するかをサイコミュで指示し、定期的に光情報を受け取る時間を儲けていると推測するのはそう難しい話でもない。
「この領域……戦場を見渡す悪意の眼……判らない。でも……」
仲間たちの助言を元にララァは再び戦場を感じようとする。
先ほどまではまったく感知できなかったが、判らないという反応は同じながら違和感を覚えた。ジャミトフのもとで実戦練習をした時は、もう少しドローンも発見し易かった。『システム』の子機であるドローンは数が多く、処分する方が手間取ったほどだ。
ここまで何も掴めないという方がむしろ不自然なのだ。
「ここまで判らないという事は隠れようとしているという事。……そして私は既に、ソレを観ていたのだとしたら?」
つまり何かしらの技術を元に、意図的に隠しているということに他ならない。
ララァは最初に眺めた場所をもう一度確認し、そこに壁や岩などの『障害物』があるものだと思う事にした。そして目を閉じて意識を研ぎ澄まし、壁の陰にナニカを隠そうとする意識そのものを追っていく。
そんな中でララァは相手も覚悟している事に気が付いた。戦場で絶対などないからこそ、保険として隠しているが何時までも使えるとは信じていないのだとしたら?
「多分……見つけたわ。でも……今ここで壊してしまった方が良いのかしら? むしろ……」
ララァはドローンらしき違和感を発見した。
巧妙に隠されたというよりは、景色の中に溶け込んだ保護色。細かい配置を指示したのではなく、コンピューター任せにコンシールしたからこそ気が付かなかった違和感だ。
そして気が付かれても相手が困らないのだとしたら、今動くべきではないと感じた。物事には即断即決の方が良い時と、動かない方が良い事もあるのだ。どうすべきだろう?
「ここと、ここね? でも今壊さないって?」
「アムロが相手を追い込もうとする時……もしくは、ジュピトリスに向かう時が良いのかもしれないわ……おそらく、相手は私たちがそうすることを理解しているから」
判らない筈の物を感知したという事は、窮地でああるかのように見える。
だが同時に自分に対して直撃しなかったという事でもある。歴戦の戦士ならば、その事を良しとして意識を切り替えるのではないだろうか? 例えばそう……ヤザン・ゲーブルがそうであるように。
もしヤザンがコレを配置したのだとしたら、破壊されると同時に作戦を切り替えるだろう。それならばいっそ、暫く無視しておいた方が良いかもしれない。少なくともアムロが倒されるという気配は感じないのだ。
「発見したけど壊しに行かないんだな? なら動くのは隕石が火星に墜ちた時かな。たぶん、敵も味方もそこで一気に動くと思う」
計器類を操っていたバーニィが詳細な位置を特定する。
二基のドローンが隠れているのを見つけた様だ。そして新しい3D画面を呼び出して、隕石の軌道が既に下方へ移っている事を示す。
もし隕石が火星へと落ちる軌道に入れば、地面にぶつかる前でも変化が出るだろう。少なくとも火星表面に落着した自軍の兵士を救助せねばならないし、隠れ蓑にして逃げたりジュピトリスに向かうにはピッタリの条件なのだから。
そして戦いは最終局面へと差し掛かっていった。
と言う訳で火星戦役は間もなく終わります。
火星ジオンが逃げに入り、それを連邦軍が追う格好。
ジュピトリスを巡って攻防が始まり、その陰でシロッコが動いている感じですね。
●カモフラージュの発見
機械式でやられると、ニュータイプは見つけずらいです。
もしオートで射出する爆雷とか主砲の組み合わせが合ったら、きっと大変。
今回はサイコミュで誘導しているので、何とか見つけることは可能。
とはいえラカン・ダカランが偵察用ビットを壊された程度で困るわけはないので、
それに合わせて二手三手先を読む感じですね。
「っ! これハアムロがへそくりを隠した方法!」
「……でもプレゼントを用意する為ね。放っておきましょう」
●今週のメカ
『オーベロン』
機体性能特化型という点ではオーヴェロンとあまり差は無い。
ただしティタニアのバックアップがあるという意味で大きく異なる。
『ティタニア』
サイコフレームの共振と援護に割り振った機体。
タイタニアと違ってファンネルは攻撃用ではなく、重武装の移動・貸出前提。
また副腕で攻撃することもできるが、『両手持ち攻撃』x2で安定した攻撃を行い
同時並行で残弾補充や盾の展開などを同時進行できるのが大きい。