ジャミトフに転生してしまったので、予定を変えてみる【完】   作:ノイラーテム

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外伝:Change Yes We Can!

 シンセサイザーにも似た複雑な調整装置をパプティマス・シロッコは容易く操る。

抵抗しようとするティタニア側の管制を、己自身が設定したバックドアで黙らせて完全にシステムを掌握した。

 

メッサーラ改二へ搭載したバイオセンサーとティタニアに搭載した増幅装置がリンク。

意識の拡大と共に、火星沖に現われたばかりのアレクサンドリア級二番艦イスカンダルすら把握する。

 

『判る。判るぞ。お前たちの未来が閉じていくのが判る。せっかく来てくれた増援も一隻、それもあんな彼方では運命は変えられぬ』

 シロッコのドス黒い意志が周囲に拡散。

連邦が火星開拓の為に送り込んだサイコフレームを次々に掌握していった。

 

アムロ・レイはその時になってようやく母艦で最低限の補給を終えたのである。

 

「そう思うのはお前の料簡が狭いからだ。人の意思は運命なんて言葉、簡単に乗り越えられる!」

 アムロはシロッコの『狭さ』を感じた。

自らの見識と何をしたいのかもわからない欲に突き動かされ、ただ激しく己を揺さぶるのみ。

 

独善的で狭い方向性に突き進む意思だからこそ、爆発的な行動力を示すのだろう。

だがそれは可能性の狭さであり、たかだか一機のモビルスーツ、たかが遠方の戦艦と侮るのだ。

 

「アムロ! まだ早いわ! 弾薬だって……」

「手持ちだけ補給できればいい。どうせウイングの予備も用意してないしな。その代わり、コイツを持って行く!」

 止めようとするクリスチーナ・マッケンジーを振り払いアムロは発進。

オートマチックで推進剤を補給しようとするチューブを引き千切りながら、一つのケースを持ち出した。

 

そのケースには『破棄後、薬品焼却処分とのこと』と記載されたマル秘の秘匿兵器である。

非常時で無ければ持ち出しどころか、シュミレーターで練習するのも厳禁と言う武装であった。

 

「ちょっと! ソレは重要機密でしょ!」

「こういう時の為の武装だろ? だいたい、あれだけのサイコフレームを完全に掌握されたらコトだぞ。……ソロモンを落っことすシミュレートを見せられたことがあるんだ」

 ケースを開きながら、ニュー・アレックスが持つ盾の後ろ……左肘にバックラーを設置した。

残るは腰にマウントした大振りなビームサーベルのみ。たかがこれだけの武装が秘匿兵器だというのだろうか?

 

エネルギー供給用のコードを腰部にある予備ジェネレーターに繋ぎながらコンピューターに秘匿コードを打ち込むことで、AIの最大化を図る。それまで何も無かった領域のラベルが剥がされ、管制データが公開されたのだ。

 

「補給したばかりでコレか。まあ途中で中断したしな。30分保てばいい」

 恐ろしい勢いでエネルギーを喰い始める二つの装備。

コレを用意しても不安ではあるが、それだけの相手だけに稼働時間が30分制限と言うのがむしろ余裕に感じられた。

 

おそらくまともに戦ったら10分もせずに決着がつくだろう。

そして先ほどの戦闘を見る限り、シロッコは逃げ回らずに足を止めて戦うはずだからだ。余計な時間を掛けずに、最低限のフェイントだけで打破できるだろうか?

 

「ララァ。一つだけ聞かせてくれ。オレは……ボクは奴に勝てるかい?」

「一人では無理よ。人と寄り添う貴方は、たった一人で世界を敵に回す異常者には成れないもの」

 アムロの問いにララァ・スンは冷静に答えた。

慰めを言っても何にもならないし、ジャミトフ・ハイマンから送られた絹の袋に助言は書いてあった。ならば可能性を信じて皆で戦うべきだろう。

 

「貴方の世界はこの世界。この世界の広さで、パプティマス・シロッコの狭い世界に挑めばいい。貴方ならば、私達ならば、みんなでならば勝てるはずよ」

 そう言いながらララァもまた艦をシロッコに向けて動かしていた。

機動実験艦『rugged leveled』に大した武装は搭載されていない。対空用のレーザーファランクスの他は、艦首ラムとNTノイズをぶつける音波砲という時点でお察してある。

 

だがしかし、強大なサイコフィールドで身を守るシロッコには相性が良いかもしれないと信じる事にした。

 

 そしてニュー・アレックスが飛び立った。

チャージ式のビームライフルはフル・チャージしたが、こればかりは避けるなり向こうも何か防御手段を用意するだろうと予測している。

 

ゆえにここからは切り札(エース)の切り合いだ。

どれだけ相手の予想を上回り、そして手札の切り合いで上に立てるかである。

 

『来たか連邦のニュータイプ! 古き時代の終わりと共に!』

 シロッコには絶大の自信があるが、棒立ちになるほど愚かではない。

いや、ただモビルスーツならばそうしたかもしれないが、操縦するアムロには戦うべき価値を認めているのであろう。

 

メッサーラと一体化したティタニアに猛烈な砲撃を敢行させる。

まずは各部に設置されたメガ粒子砲と、追随している大型武装をオートで射撃させた。

 

「くそっ! ただやられてはくれないか。ままよ!」

 アムロは効かないのを承知でダミーバルーンを放出。

ランダム回避するダミーに紛れ、自身はせっかくチャージしたライフルに細工した後で放り出し軌道を変える。

 

迫りくる光がダミーを次々と撃ち落とし、やがてロックさせておいたライフルが逆撃として激烈な閃光を放ったかに見えた。

 

『あまり失望させてくれるなよ。見えているぞ!』

「だからどうした!」

 ニュー・アレックス本体を追う様に本命のデュアルビームガンが放たれた。

しかしアムロも見切られるのは先刻承知の上。接近しながら今度は爆雷付きのダミーバルーンを放つ。

 

勿論そんなものが目くらましにも足止めにもならないのも予定の内だ。

重要なのはアムロの戦闘機動がシロッコの予想もつかない速さで変化する事。アムロから目を離してはいけないと無意識化に刷り込むことである。

 

『ちっ! 次から次へと小賢しい! 爆雷が何だというのだ!』

「邪気が来る! シロッコが動いたか! 」

 シロッコはこれ以上の小細工をさせまいと、メッサーラのブースターを吹かせた。

機動戦ではなくただ距離を縮める為。ティタニアにライフルを撃たせつつ自らはビームスピアを薙刀(グレイブ)状に変形させて切り掛かる。

 

幅広のビーム刃が残ったダミーごとアムロに迫る!

 

「今だ! 斬艦刀、起動!」

 だがニュー・アレックスの握った大振りなビームサーベルはそれ以上。

何しろ予備電源からバイパスせねば使えぬような欠陥兵器だ。ザク系ですらエネルギ-チューブは内部機構に収めたというのに時代遅れも甚だしい。

 

しかしそれだけに出力は侮れない。

ニュー・アレックスのサイフレームの後押しもあり、当たればただではすまないだろう。

 

『やる! だがこの程度でTHE・Oは落ちんよ。むしろサイコフィールドの良い実験になった!』

「だったらそいつを剥がせばいい! ララァ! やってくれ!」

 切っ先が装甲を抉るもあくまでティタニアの一部を傷つけたのみ。

メッサーラ側に登場するシロッコには何の影響もなく、むしろサイコフィールドが阻んだことに気を良くした。

 

エネルギーを集中させて、鍔迫り合いで押し返そうとした時。ラグド・レヴルドが急接近してきた。

 

『「{LA・LA・LA……}」』

『なんだ心に走るこの悪寒は!? ジャマーか!』

 幾重にも放射されるNTノイズ。

それはララァの精神力を増幅させ、プレッシャーを与え続けるだけの武装である。シロッコの作った機械が調整装置であり、その増幅器であるというのとは一線を画している。

 

これがニュータイプ研究に先んじているということであり、シロッコ側のリンクを解除……無理だとしてもレベルを落とすだけの働きはあった。

 

「今だ! このタイミングならいける!」

『馬鹿め! この位置では貴様も巻き込まれよう。ならばこうするまでだ!』

 両機のサイコフィールドがにわかに低下した。

斬艦刀で迫るアムロに対し、シロッコは頭痛を覚えながらも最適解で逆襲する。至近距離からの全力砲撃と、ビームスピアによる斬撃の連続攻撃である。

 

ニュー・アレックスのシールドが一撃で粉砕され、斬艦刀の軌道も強引に変えられてしまった。やはり二機が一つになっているシロッコ側の有利は否めない。しかも次からは、シロッコとて母艦を無視しないだろう。

 

『その盾ではもう防げまい? 次は腕を一本ずつ切り落としてやる!』

「悪役のやる事だよ、それは! こなくそ!」

 シールドが破壊されたと見るや、ビームスピアによる斬撃を連発してきた。

今の攻防の間にアムロがトリモチを放ったのが見えたからもある。しかしそれよりも、この距離では各部のメガ粒子砲を向け直すよりもこちらの方が早いと踏んだのだ。

 

連続で斬撃を浴びせ、トリモチが落ちた頃に砲撃すればいい。

ダルマになったニュー・アレックスを斬り割こうと、振りかぶった時に二つの変化に驚愕することになった。

 

『なんだそれは……ビームシールドだと!?』

「そうさ。プロメテウス機関の秘匿兵器は斬艦刀なんかじゃない。こいつが最先端でね! だからこそ、お前の時間切れだ!」

 ニュー・アレックスの左肘に設置したバックラーはこの為の物だった。

光り輝く盾が展開されてビームスピアを弾いていく。これに対してシロッコは貫通力を上げた槍状に変形させながら、トリモチを洗浄用の弱酸で洗い流しメガ粒子砲で母船であるラグド・レヴルドを追い払い始める。

 

サイコフレームとの同調自体は完全であり、怪しげなNTノイズさえなければ互角の泥仕合などせずに圧倒できるのだ。

 

『何が時間切れだ。苦し紛れを。だが新しい発想をもたらしてくれたことには感謝しよう。私を成長させたことを悦びとして死にたまえ!』

 シロッコは気が付かなかった。

アムロの作戦はシロッコの気を引き続ける事だったのだ。もちろん勝つための努力はしたが、二機で一機の反則マシンと有利に戦えるとは思っても居なかった。

 

あくまでラグド・レヴルドを安全に使用する為。

……そして『もう一隻の戦艦が何をしているか』を覆い隠す為であったのだ。

 

「死んでたまるか! ボクにはまだ帰るところがあるんだ!」

『無駄だ!』

 斬艦刀とビームスピアがすれ違う。

ニューアレックスの繰り出した一撃はティタニアの主腕を斬り割いたに過ぎない。だがメッサーラ自体には少しの被害も及ぼさず、その反撃でビームシールドを貫いてみせる。

 

そのまま刃の形状を再び大鎌状に戻すと、それだけでニュー・アレックスの腕が切り落とされてしまった。

 

『次は首をもらう』

「たかがメインカメラがやられただけだ!」

 袈裟斬りから逆袈裟への連続攻撃。

左腕を落とされたことで防御が間に合わない。咄嗟に胴体をそらせて斬撃から身を守ったものの、頭を半壊させられて正面画像が消失した。

 

予備回路に繋げて敵の位置を一致させると、記録画像を元に再構築させる。しかしアムロは見たくないものを見てしまったのだ。

 

「駄目だララァ! ここで君が出てくる必要はないんだ!」

「ダメよ、アムロはやらせない」

『こいつら、慣性制御を切って? ぬおおおお! この程度で……私はやられぬ!』

 突進を掛けて艦首ラムで迫るラグド・レヴルド。

ティタニアを切り離して直撃を避けるが、それでも体積が駆逐艦サイズなので完全には防げない。強烈な衝撃に見舞われるが、シロッコは持てる力を総動員して抑え込みにかかった。

 

サイコフィールドによってダメージ自体はさほど無いが、人間の体は衝撃によって揺れるどころでは済まない。それに対して悪魔の頭脳が仕事を始めたのだ。

 

『そうだ。バイオセンサーを活かして私自身の力を再構築すれば良い。無事な状態のデータを元に、肉体に精神を従属させるのではなく、精神に体を従属させるのだ!』

 内臓へのダメージどころか、打ち付けた際に生じる擦過傷や打撲すら消えていく。

緩やかに消えていく外傷は『実際には無かったことになった』のではなく、『傷を負ったが治癒力と時間経過で治った』というべきだろう。

 

だがシロッコにとってそんなことはどうでも良い。

自らの閃きのままに肉体を精神が凌駕したという誤解のまま、精神力で何もかもを押さえつけたのである。

 

『よくも私に死の恐怖を味わわせたな! 死ね、女!』

「急速回避!」

「キャアア!?」

 既にシロッコの制御力は機体同士のリンクを必要としていない。

切り離して捨てたティタニアを操って立体的な砲撃を掛けさせる。自らもビームスピアを操り、斬艦刀もかくやという斬撃をラグド・レヴルドに浴びせていく。

 

元より駆逐艦サイズとはいえ機動力に特化した艦である。

申し訳程度にサイコフィールドを張ったものの何発か喰らって無視できないダメージを喰らってしまった。ティタニアの機体が半壊して居なければ、あるいは機動力に任せて回避していなければ爆沈していたかもしれない。

 

『むっ? なんだ、この不快さは。先ほどのノイズとは違う。新たな敵が現れようとしているのか? このシロッコの前に!』

 アムロの予想よりもシロッコの方が精強であった。

だがそれでも努力の結果が、ララァが行った必死の突撃がシロッコにとって絶好の好機を逃させたのだ。

 

もし運命というものがあるとしたら、仲間たちの努力によって動かされたのである。

この時の衝撃を、バーナード・ワイズマンは輝ける星の様だと後に語った。

 

 さて、改めて紹介しよう。アレキサンドリア級はムサイを連邦が設計し直した造りをしている。

その本質は機動母艦であり、長距離移動力にこそ意味がある。これまでの戦艦全てを沿岸警備の海防艦かと思わせるほどの移動力だ。

 

そして当然ながら部隊展開力こそが要であり、流星の様に戦場を駆け抜けた機影が一組。

 

『馬鹿な……モビルアーマーだけとはいえ、もう辿り着いただと? 早過ぎる。だが、おかしいのはソレじゃない。アレはなんだ!?』

 イスカンダルから出撃したのは40m大のモビルアーマーであった。

巨大な円盤状の姿を持つアッシマーは、この世界のティターンズにとって主力兵器である。それを40m級で再設計したのであればその移動速度も頷けよう。

 

だが、これほどまでの速度で移動して中の人間は無事なのか? シロッコのメッサーラ改二としてこれほどの機動を見せてはただではすまない。

 

『対Gは、慣性制御はどうした! どうして死んでいない!』

 シロッコは苛立ちまぎれにメガ粒子砲を放ったが通じていない。

アッシマーにもビームシールド装備しているのは、まあ予想できた。不可思議なのはその軌道が奇妙であることであった。

 

「決まってるだろ。そこのサイコフレームは第一優先事項に周囲へ対ショックを掛ける事になってるんだ。お前がソフトを乗っ取っても、ハードまで抑えたわけじゃあるまい」

 アムロは現れた機体がデータバンクに乗っている事で安堵した。

その名はゴルディアス・ホイール。アッシマーをベースに開発された大型SFSで、スターゲイザーとのペアリングを前提としている。この機体があらわれた以上は、ビームシールドですら最新鋭ではない。

 

そいつはビーム攻撃を避けるために曲がろうとして、先に曲がってからスラスターが追随して方向を変えている。その後にスラスターを吹かせて加速し、ビームを軽やかに避けていた。

 

『何故だ! どうしてそんな機動が出来る。慣性は中和したとしても……吊り下げた様なその動き。まさかまさか!』

 変幻自在に動き続けるアッシマー。

例え当たったとしても上下二枚のビームシールドが攻撃を弾く。機動力に加えて防御力まで尋常ではなく、ありえないほどの能力を秘めていた。

 

何があり得ないかと言って、40m級モビルアーマーであってもこれほどの出力はありえないし、あるとしたら攻撃してこない理由が思いつかないのだ。

 

それとも移動と防御のみに特化しているのか?

そうだとしたらとんだ欠陥兵器だ。SFSとしては完璧であろうとも、増援としては無意味でしかない。

そう思った時、シロッコの脳裏に閃く言葉があった……。

 

『まさか! I・フィールドビーム駆動を実用化したというのか!』

「その通りだ」

 相手を探ろうとして重苦しいプレッシャーが逆流している。

不甲斐なく生き延びた自らを苛む強烈な自意識。煉獄で焼かれてなお後悔せず、ただ自らを罰するかの如く重き荷を背負って歩く一生。

 

そんな精神に触れてシロッコは自分と合わないであろうことを受け入れた。

 

『気狂いめが。私の邪魔をするな!』

「お互い様だ。後に残せぬ貴様はここで確実に止める。だが……今日の主役は貴様などではない」

 その男は武装など展開しなかった。

武器は付いているが、それでは『彼』を運んでいる意味がない。戦略的にも政治的にも意味が損なわれてしまうからだ。

 

代わりに三種の信号弾を用意するとビームシールドを解いて『彼』に語り掛けた。

 

「少年。よく耐えたな。話があるのだろう?」

「はい! 行ってきます!」

『たかが一機、それも非武装で何ができる!』

 現れたのは非武装のモビルスーツが一機。

円形の翼『ヴォワチュール・リュミエール』を装備し、マイクロウェーブや太陽風をエネルギーに替える無限推進機関を夢見たマシンである。

 

実際にはサイコフレームでようやく達したに過ぎないが、それでもその意義は大きいだろう。後の世代に言う『火星の申し子』、そして未来を築いたマンマシーンであった。

 

『停戦信号だと? 今更こんな物が何になる!』

『隣にある狼煙……あれは……ジオンの信号灯だ……まさか……』

 停戦信号を挟んで、ジオン形式と連邦形式の信号灯があがった。

意味するところは両陣営の首脳が、既に停戦へ納得しているという意味だ。単純に見たシロッコが無意味だと笑うのも仕方あるまい。

 

だが……戦場でこんな事をする男に、火星ジオンを援護するオットー・カリウスには心当たりがあった。

 

『まさか、貴方が……生きておいでなのですか少佐!?』

「そうだ。待たせたなカリウス」

 彼方で驚くかつての部下を仮面の男は、アナベル・ガトーは理解していた。

無様に生きながらえたこと嘲笑うだろうか? そんなことはない。だが驚くだろう、そして話を聞く耳はあるだろうと。

 

そして青々と上がるジオンの信号灯。

正史と違いデラーズ戦役で挙がらなかったことから、実に9年ぶりに目にする光景である。

 

「みなさん! 地球方面ではガルマ・ザビとキャスバル・ダイクンの和解が成立したんです!」

「ジオン公国はジオン共和国になって、連邦はこの自治を認めました!」

「他にもコロニー自治体の設立許可が下りて……それでそれで、そのみんなが改めて連邦参加をしたんです!」

「だから……」

 スターゲイザーを操るアルフレッド・イズルハは必死になって言葉を操った。

圧縮されたデータを協力無比なレーザー通信で無差別に照射。暗号どころか平文で構成された文言は、ブレードアンテナを持つ隊長機ならば読めたかもしれないし、戦艦群は確かに受け取っただろう。

 

そして感極まる思いを最後に漏らした。

 

「戦争は終わったんだよバーニィ! もう、戦わなくていいんだ!」

 この最重要局面における最後の一言はただの私事。

だがそれだけに、人の心を動かす一言であった。もしこの事実を理解できないとすれば、それは私欲に走るパプティマス・シロッコに他あるまい。

 

『馬鹿め! 世迷言を!』

 ある者からして感動的な光景であろうとも、他の者から見ればくだらない戯言である。

何が起きたのか受け入れられないシロッコからすれば、子供が戦場にしゃしゃり出てきて馬鹿な事を言っただけだ。

 

その言葉に真実を持たせるために非武装なのだとしても、シロッコから見れば良い的でしかない。

 

『この戦場は既に私が掌握した。理想を夢見て溺死するがいい!』

「そうはいかん!」

 メッサーラを加速させてスターゲイザーを砕こうとするシロッコ。

それに対してガトーはアッシマーで塞ぎにかかった。ビームシールドだけでは防ぎきれない。何しろ奴はサイコフレームで底なしの悪意を加速させているのだから。

 

ゆえに百戦錬磨のガトーは、機体を回転させて受け流したのだ。

普通のモビルアーマーならば不可能な機動。それもI・フィールドビーム駆動あればこそ。この様子を見た趣味人は『タイヤが空飛んだ』と笑ったものである。

 

『邪魔をするな! 貴様も子供の世迷言を信じる気か!』

「信じてなどいない。私が信じているのはデラーズ閣下が導いた先だからだ! 少年はその姿を体現しているに過ぎん!」

 巡り巡って、それを信じているのだと言っても良い。

だがそれでも事態は拮抗したに過ぎない。アムロのニュー・アレックスは顔や片腕が無く、アッシマーは防御するので手いっぱいだ。

 

攻撃の手が足りない。それもシロッコに通じる程の攻撃力が。

 

そう思った時、現れた男が居る。

 

『手を貸そう。だが間違えるなよ。私はジオンの騎士。ジオンの理想を守るに過ぎん』

『マシュマー! 貴様裏切ったな!』

 そこには重傷を負い、機体もボロボロのマシュマーが居た。

サイコフレームのリンク機能を破壊し、完全なマニュアル操縦ではどれほどの戦力だろうか?

 

だがしかし、そのたった一機が表す事には無限の可能性が溢れていた。

 




 と言う訳でシロッコの無双回は一回で終了。
ボロボロになりながらみんなで彼を打倒する回でした。
一応は後一話で終わりの予定。

●今週のメカ
・斬艦刀、ビームシールド
 Vガンダムの時代よりも先駆けて完成。
まあニュー・ガンダムの大型ビームサーベルやI・フィールドと何処が違うのか?
と言われたらほとんど同じですが。

・NTノイズ
 トップをねらえのエルトリウムに搭載されたマーシャル音波砲や
超人ロックのジャマーに似た兵器……といえば格好良いけど、いつものララァ。

『ゴルディアス・ホイール』
 40mで再設計された新宇宙時代のアッシマー。
スターゲイザーを運び、武装を提供する為に居る。
しかしビームシールドを二枚展開して回転する姿は、どうみてもアインラッド。
Iフィールドビーム駆動を実用化させたという、何気に凄いマシンである。
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