「あ……」
「おおっ!」
思わず、声が出てしまった……
「おめでとうございます~!」
愛想のいい店員さんだ、これが陽キャってやつか……
などと益対もないことをぼんやりと考えてしまう
「あ~、ありがとうございます」
「いえいえ~、にしても凄いですね!
くじ引き一回で特賞を当てるなんて~」
今まで生きてきた中で始めて言われた称賛の言葉に対して、なんだかむず痒くなってしまう
「いや~、今までこんなくじ引きやらって当たったことなかったんですけどねぇ」
「ありゃ、そうなんですか?
「いやいや、ホントですよ? だって俺、銀のエンゼルだって見たことないですし」
「あはははっ! それマジっすか! ……っとスンマセンお待たせしました~」
なんて、軽く雑談しながらでもチョコチョコと動き回り景品を用意してくれるあたり要領もいいらしい、優秀な店員さんだ
さて、まさか当たるとは思っても見なかったので、景品に何がもらえるのか全く把握していないのだが、何がもらえるのだろうか?
「こちらが特賞のカブトメダルです~」
と、プラスチックのケースに入ったメダルを差し出してきた
「え……」
……特賞というのだから、それなりにいいものを貰えるのだろうとは思っていたが、まさかメダルとは
「あ、あれ? あんま嬉しくない感じっすか?」
「あ、いえそういうわけじゃあないんだけど、俺メダロット持ってないんですよ
だから、ちょっと宝の持ち腐れになっちまうなぁと」
「ああー……いや、でも考えようによっちゃあ、かなりツイてますよ!」
「え?」
「いや、実際カブトメダルってかなりレアなんすよ
メダロットの専門店とかでも常に品切れ状態ですし、入荷しても即完売ってな具合に」
「え、まじで? なんでそんなに人気なの?」
「あ~、一番は製造数自体が少ないってのが理由だと思うんすけど、
それだけじゃなくて単純に人気なんですよ」
「なんてったってカブトムシですからね~小学生からしたら喉から手がでるほどっすよ」
「あ~……?」
……それだけで? 言っちゃあなんだが、そんな理由だけでこんな小さなメダルが
そんなに人気だと言われてもイマイチ信じられない
第一、カブトムシがモデルだとか言われても、メダルに描かれているデザインは幼虫のもので
カブトムシと言うかイモムシである
「まぁ、とはいえパーツあっての事だと思うんすけどね?
「パーツ? ……まぁ他にも人気の理由があるってのは分かったよ」
イマイチよく分かっていないが、あまりダラダラと喋り続けていると仕事の邪魔になるだろうと適当に切り上げる
「まぁ、ちょっと脱線しましたけど、初めてのメダロットがカブトメダルってマジ贅沢っすよ!」
「ほ~ん、でもメダロットってメダル以外にも色々必要なんでしょ? 俺あんま金ないんだよね~……」
店員さんの謎の圧に押されて、つい否定的な言葉が口をつく……
「いや、実際そんな金かかんないっすよ?
ティンペットなんかは最初の一体だけですけど、メダロット社が配布してますし
パーツも安価なヤツなら5000円も出せば一式揃いますし……」
「え、安っ! しかもタダ!?」
ティンペットが何かはよく分からないが、なかなかの大盤振る舞いではないのだろうか?
「まぁ、子供の小遣いでも買えるようにって事なんじゃないっすかね?
実際、ハイエンドモデルなんかになると、目玉飛び出るぐらい高いですし……
ま、ピンキリっすね」
「ただ、あと一つ必要な物があって、メダロッチって言うんですけど……」
「あ~それがそこそこする感じですか?」
「っすね……大体、3万位が相場っすね……
あっでも最近出たモデルなんですけど、まだ在庫あったかな……」
等と言いながらカウンターの中をゴソゴソしだす店員さん……
(しっかし、客全然来ねえなこの店……)
それなりに気を使っているのだが、あまり意味は無いようだ……
「っとコレっす! なんとお値段1万5千円(税抜)っす!」
「え~……半額って、そこまで行くと逆に何か怖いわ……」
「まぁ、安いだけあってマジで最低限の機能しかないんですけどね
でもこれ、マジで入荷待ちになるくらい人気なんすよ? ウチにあるのもこれが最後の一個ですし」
「は? いやいや、話聞く限りじゃただの廉価版でしょ?、流石にそれは話盛り過ぎでしょう」
こいつ、人のこと人気だ希少だと言っときゃ喰い付くバカだと思ってんじゃなかろーか……
「ふっふっふっ、ただの廉価版と思われちゃあ困りやすぜ、お客さん
実は、このモデルから新しく追加された機能なんですけどね?
スマホと接続して、機能の一部をアプリとして管理できるようになったんですよ」
「ん? それって、そんなに重要なの?」
「もちろんっすよ! 今まではこの小っちゃいモニタか
わざわざパソコン使うかしかなかったんすから
もうマジで操作性も利便性もダンチっすわ!」
ほんとマジ、パーツの管理が見にくいしメンド臭いしで……
ブツブツと不満を漏らしている店員をよそに、俺はカウンターの上に目を向ける
(まぁ、確かに見た目はちょっとゴツい腕時計だしなぁ……)
操作がしにくいというのもうなずける
「と、まぁそんな感じで大人気な新型メダロッチ! 当店最後の一つ!
次回入荷は未定となっておりますので、ご購入はお早めに~」
「商売人の本性出してきやがったな……」
ただ、まぁ……
「ん、じゃあ取り敢えず、そのメダロッチだけ買わせて貰おうかな」
「パーツとかってのは、色々種類があるみたいだし、ちょっと自分でも軽く調べてから買いにくるわ」
「え……即決っすか……」
「いや、なんでアンタが驚いてんだよ?」
「いや~ あんだけセールストークしてた自分が言うのもなんですが、実際そこそこの値段ですし……」
「もうちょい渋るだろって?」
「あ~ はい、まぁ……」
確かに、逆の立場に立ってたら、たぶん俺もドン引きしてただろう
チョロすぎだろこのリーマンってな感じで
「まぁ、出せねぇ金額じゃなかったし、それに……」
「?」
「色々と親身になって教えてもらってたら、つい欲しくなっちまった」
「……ははっ! チョロいっすねお兄さん!」
うっせ バーカ
「ほいじゃまぁ、お買い上げありがとうございます! ってことで会計しちゃいますね~」
「おう、カードで頼むわ」
流石にそこまでの現金を財布には入れてないので、クレジットカードを渡す
「は~い お預かりしま~す」
……しかし、つまみとビールがとんだオマケを連れてきたもんだ
コンビニのくじも馬鹿には出来ねぇもんだな~と
店内に貼られた「700円で一回引けます!」などと書かれたPOPを眺めているうちに会計が終わったようで
「はい、ありがとうございます~ カードとレシートのお返しで~す」
「はい、ど~も 色々とありがとうな」
また来るわ~、と
そのまま店を出ていこうとするが店員に呼び止められる
「あ、お兄さん!」
「あん?」
「アタシ、平日の今ぐらいの時間だったら、だいたいシフト入ってるんで!」
「来るならその時間でよろしくっす!」
ズルっ
「コンビニバイトが営業してんじゃねーよ!」
「お前はキャバ嬢か!?」
思わず新喜劇のように転けそうになってしまった……
「……まぁ、一応 覚えときますわ……」
「は~い! ありがとうございました~」
今度こそコンビニのチャイムを聞きながら退店する……
最後の最後でなんかどっと疲れた……
「でも、まぁ……」
「これから晩酌は、あの店で買うかぁ……」
……我が事ながらチョロすぎて心配になるわ……
小学生のころ男子と一緒になって遊んでいた系ギャル
いいよね