魔王に召喚されて、新しく生活を始めました。   作:龍宮院奏

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リサ姉にクッキーは美味しさ無限大!


餌付け?されちゃいました…。

 主様は只今絶賛お説教をされて、すごい大変そうです。

 僕がどうにか出来たら良いのですが、主様にお説教をしている人達が怖すぎて無理でした。一度は助け舟を出そうと思ったのですが……、何か鬼の形相と、般若の形相だったので……。

 それに何故か今ギャルぽい人がクッキーをくれて、絶賛試食中。多分だけれど、女の子から貰ったことも要因なのか、今まで食べてクッキーの中で一番おいしい。

「あ、あの、美味しいです……」

素直な感想を伝えると、

「良かった〜、まだあるけど食べる?」

嬉しそうにしながら、さらにクッキーを食べるか聞いてきた。

「そんな良いんですか……?だって僕、明らかなに部外者なのに……」

部外者どころか、そもそもこの世界の住人ですら無いのだから。

「だってあこの知り合いなんでしょ?いや、眷属?何でしょ?なら、部外者じゃないよ」

このギャルぽい人、見た目と違ってすごく優しい。それでも僕は部外者なのでは、そんな風に頭の中で考えていると、

「もし今ので納得出来ないならさ、和覇君に自己紹介をして欲しいな〜。そしたら、和覇君は私に君の事を教えてくれたお礼としてこれあげるから」

クッキーの入った袋を目の間に差し出してきた。このクッキーを……、いやクッキーに釣られるわけには……。

「……、分かりました。教えたらそのクッキー、貰って良いんですよね……」

「うん、良いよ」

「なら……、簡単に話させてもらいます……」

クッキーの誘惑に負けたわけではなくて、後で主様と一緒に食べるために貰ったまでの事。こんな美味しいものを主様を差し置いて食べるのが心苦しかったのだ。

「それじゃあ……」

ギャルぽい良い人は、主様達の方をチラッと確認して、

「向こうは暫く掛かりそうだから」

そう言って、僕の隣に座った。

「それじゃあ、和覇君。自己紹介お願いします」

まるで芸能人の登場場面みたいなふりで、自己紹介をお願いされてしまった。

「えっと……、名前は黒崎和覇(くろさきかずは)と言います。歳は17です……」

「和覇君、苗字黒崎って言うんだ。そうそう、私は今井リサよろしく」

「よろしくお願いします……今井さん……」

「良いよ、名前で呼んで。みんなそうしてるから」

「でも……」

「良いの、私だって和覇君って呼んでいるんだから」

「……リサさん」

出会って早々に名前呼びを強制されるなんて……、緊張して中々言えなかった。

「はい、よく出来ました」

何故か名前で呼んだことが、まるで赤ちゃんが喋った時みたいな褒め方なのが少しだけ違和感だった。

「待って、和覇君って今17歳なんだよね」

「そうですけど……」

「それじゃあ、私の一個下であこの一個上だね」

リサさんが僕の一個上で、主様が一個下……。なら、尚の事、

「やっぱり……先輩呼びの方が良いのでは……」

「あ、確かに。『さん』より『先輩』の方が良いね」

あっさりと僕の提案は採用された。

「分かりました、リサ先輩……」

改めて言い直すと、

「うん、こっちの方が何かいい感じがする」

とご満悦のようすでした。

「それじゃ次の質問ね、和覇君の好きなものって何かあるの?」

「えっと……、仮面ライダー……です」

「仮面ライダー?」

「あれ、この世界には無いんですか?仮面ライダー?あの例えば、『勝利の法則は決まった!』とか、『ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!』とか、『俺、参上!』とかの台詞聞いたことありませんか?」

勢い余って好きな仮面ライダーの決め台詞を連続して言ってしまった。

「う〜んと…、ごめんね。今言ってくれた台詞は聞いたこと無いな……」

「そうですか……」

どうやらこの世界では、仮面ライダーは無いのかもしれない。そうだったら、悲しすぎる。希望が消えた……。

「そ、そんな落ち込まないで。私が知らないだけで、きっと誰か他の人が知ってるかもだからさ」

「そうですよね……、この世界で……誰か一人くらいは……」

「そうだよ、だから元気出して」

ぽんぽんと背中を軽く叩かれた。

「その仮面ライダー以外に何か好きなものって無いの?例えば音楽とか?」

リサさんは変わらず話をふってくれた、

「音楽だったらアニソンとかで…割とカッコいいのを聞いたりとか…、ボカロとかだと…ギターがカッコいいのとかを重視して聞いてます…」

「へぇ〜、そうなんだ。じゃあ、ギター好きなの?」

「好きは好きです…ライブとかでのギターソロとかは見てて凄いと思いますし…」

「そっかそっか、カッコいいもんね。あの色んな音色を一本のギターから奏でてるって考えたら凄いもんね」

「そうなんですよ、まるで魔法ですよ。あの一つ一つ音に、魂って言うのか、何かが宿っているっていうか…」

また勢い余って熱く語りだそうとすると、リサ先輩が口元をニヤニヤさせて笑っていた。

「何ですか…?何か変な事言いましたか…?」

あまりにも楽しそうに笑っているので、思わず尋ねてしまった。

「いや、さっき何か私達が部屋に入ってきた瞬間に、あこの後ろに隠れるからとんだ人見知りかなって思っていたけど」

「まぁ…、だいぶと人見知りです…」

「でも、こうして好きなものについては一所懸命に語るから、ギャップが面白くて」

あははは、とリサ先輩は嬉しそうと云うか楽しそうに笑った。

「はぁ〜、和覇君は絶対女の子に弱そう。もう見ててもそうだけど、話してると余計に弱そうに思えてきた」

そう言って、指で脇腹を突きながらなおも笑っていた。

「ひゃっ…、ちょっ…リサ先輩やめて下さいよ…」

不意を突かれて突っついて来るので、思わず変な声を上げてしまう。

「何でよ〜、良いじゃん。後でクッキーあげるから、お姉さんに遊ばれなさいよ〜」

「ちょっ…、だからやめてくだ…、うぎゃ…」

人の反応が面白かったのか、リサ先輩は中々やめてくれなかった。

 そして、突然後ろから背中に何かが覆いかぶさるような感覚がして、前に倒れそうになった。

「リサ姉、駄目だよ。和覇はあこの眷属なんだから、あんまりいじめないでよね」

後ろから覆いかぶさったものの正体は、主様だった。

「あれ〜?あこ、もしかして私が和覇君と遊んでだたのが羨ましかったの?」

「そ、そんな事無いもん…、ただ単に和覇が……」

「和覇が〜?」

リサさん、主様の事すごいおちょっくてる。ていうか、主様…そろそろ体勢がキツイ……。

「あ、主様……。あの……、これ以上背骨曲がらないから……」

体を前のめりに倒しすぎて、おでこが床にくっつきそうなのですが。

「え?あ、ごめん。和覇、大丈夫だった?」

ようやく気づいてくれたようで、主様は背中から動いてくれた。

「大丈夫……、ちょっとお腹にドライバーがめり込んだだから……」

召喚されてからも、装着したままにしていたのがここでくるだなんて……。少しだけ、お腹が凹んだ気がするのと、食べたクッキー舞い戻りそうになったのは気のせいにしておこう。

「いや、めり込んだら大変じゃん」

リサ先輩が良い感じに突っ込みを入れてきてくれた。リサ先輩ナイスです、って痛い、痛い。

「主様、痛いって、急に耳抓らないで」

「だって今和覇から、良からぬ気が出てたんだもん。だからこれは粛清」

何で粛清?それに良からぬ気って何?と考える暇も無く、未だに抓ってくる。

「何で僕が良からぬ気を発するんですか……、僕は主様の眷属ですよ。ほら、主様と一緒に食べるようにクッキー残して置きましたし」

貰ったクッキーを見せると、一瞬照れたようにも見えたが……。

「何で、あこが怒られてるときにクッキー貰ってるの〜」

と逆に怒られて、今度はヘッドロックをされて首を締められた。

「ちょ……、ギブ、ギブです……。主様……、マジでキツぃ……」

締め方が良かったのか、主様への安心感なのか、いつの間にかぽっくりと魂が抜けていった。

「あ、あこ、ヤバイって!」

リサ姉が慌てたふためきながら、あこを止めてきた。でも、これは眷属である和覇がうつつを抜かしていたのが悪いのだ。だからこれは正当な罰なのだ。

「あ、これ完全に気絶してる……」

リサ姉からの衝撃の一言。

「え!嘘でしょ!あこ、そんなに強く締めてないのに」

まさかこんな簡単に気絶するだなんて、和覇弱すぎ……。

 和覇が暫く目が覚めるまで、時間がありそうなので近くにあったペンで落書きをすることにした。

 ちなみに書いた文字は額に、『あこの眷属』と大きく見やすく。




実際にリサ姉のクッキー食べてみたい……。
それにしても、仮面ライダーに成るために鍛錬してるって言っていたのに…、
主様のヘッドロックで、一発KO。まさかの気絶という……。
やっぱり主様は最強。
今回もご閲覧ありがとうございました。
感想などお待ちしております。

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