湊さんの要望に答え、仮面ライダーの歴史を作った『仮面ライダー旧1号』から『仮面ライダージオウ』まで連続で変身をしてみせた。
「何だか良く分からないけど、キレが凄いわ……」
やってくれと当の本人は『良く分からない』と言いながら、褒めてくれていたらしい。リサさん訳で。
あと、湊さんと同じ様に氷川さんも、『気合が…、怖いくらいに伝わって凄いわ……』と言って若干引かれた。リサさんと主様と白金さんは、割と楽しいで居たようで最初は『不思議』と言いたそうな顔だったが、次第『お〜!』と言いたげな顔してくれていた。主様が見ながら練習していたのが見えて、少々泣きそうになりました。
それと一つ分かったのが、『和覇さ、折角ベルトがあるなら使ってやって見せてよ』とリサさんの希望でビルドシリーズだけは全てのライダーとアイテムの揃っていた怪人もやってみたのだが……、これがまさか……。
部屋でやっていたように、ビルドドライバーを腰に装着してボトルを選ぶ。
ビルドはベストマッチが多いので、『ラビットタンク』、『ジーニアス』、『クローズビルド』の3つに絞り込み、クローズは、『クローズ』、『クローズチャージ』、『クローズマグマ』のテレビ版の順番で変身してみせた。
クローズはドラゴンだったので、主様が『あこも、やってみたい!』と言っていたので、後ほどやることになった。
そして、グリスとローグが残っていたので、グリスから変身することにしたのだが……。
「主様、いきますよ!」
スクラッシュドライバーを腰に当てる。すると、いきなりベルトが勝手に体に巻き付いた。
「こんな機能は無かったのに……」
不思議に思いながらも、今自分が置かれている状況も十分に不思議だと思ったので考えずに、スクラッシュゼリーを差し込んだ。
『ロボットゼリー!』
「変身!」
ベルトのレバーを押し下げ、スクラッシュゼリーの中身を出し尽くす。
『潰れる! 流れる! 溢れ出る!』
ベルトから変身完成までの音声が流れる、すると急に視界が暗くなってきた。
「主様〜、電気消しましたか〜?」
今度は声まで籠もってきた……、あれ?これって……。
『ロボットイングリス! ブラァ!』
変身が完成した事を告げる音声が流れると、
「あ、明かりが着いた。もう、主様〜。いきなり電気消したら危ないじゃ」
視界がようやく明るくなり、元通りに見えるようになったのだが。
「か、和覇…、え、和覇…何だよね…」
僕の方を見て口を金魚のようにパクパクさせて、何かを言おうと試みているようだった。
「そうですよ、主様が召喚した眷属ですよ。全く、酷いじゃないですか。ねぇ、リサさん」
リサさんの方に視線を向ける、倒れている白金さんを介抱していた。
「燐子!ちょ、しっかり!燐子!」
「ど、どうしたんですか」
「何かいきなり、倒れちゃって…」
あれ?リサさんまで急に黙ってしまっ…。
「キャァァァァ!何、え、何なの!待って、え、どいうこと!?」
まるでホラー映画で、ありえない怪物に出会ったみたいな叫び声を上げられた。
「急に叫ばないで下さいよ、流石に傷つきますよ……」
これは心が痛みます……。
「その声…、和覇…」
震える声で、怯えながら名前を呼ばれる。
「いや、この場に他に和覇が居ますか?」
思わず皮肉混じりに答えると、
「貴方…、自分が今どんな姿なのか判っていないの?」
氷川さんが、震えながら近づいてきた。
「自分の姿って、別に普通にパーカにジーパンで黒の新品のブーツですけど?」
「紗夜、彼には口で言うよりこうした方が早いわ」
湊さんが、リサさんの手を握りしめながらやって来てスマホを目の前に突き出してきた。
そこには、
「グリスの写真じゃないですか?あれでも、何でこの写真……僕と同じ動きをしてるの……?」
右手を挙げれば、右手が挙がり。左手を挙げれば、左手が挙がる、全く動きと連動している写真が映し出されていた。
「湊さん……、これ何かの冗談ですよね…」
あまりの出来事に頭が事実を認めようとしていなかった、というより理解したくなかった。
「違うわ、これは」
湊さんが今一番聞きたくない答えを答えてしまった。
「あなた自身よ、貴方がそのドライバーで変身した姿よ」
「……。アハハハ……、そんな……。嘘だ〜〜〜!」
リサさんの叫びと並ぶくらいの、悲鳴が部屋中に響いた。
「お、落ち着いて下さい。まずは、そのベルトを外して……」
氷川さんが、慌てふためきながらベルトを外そうとしてきたが、
「何で、ビルドやクローズには変身できないんだ!」
「「「「「え!そっちに驚く!」」」」」
満場一致の全否定が聞こえてきた。白金さん、目が覚めたんだ。
「グリスも好きだよ、かずみんのことは尊敬してるよ……。でも、何故に主人公は出来ないのに……、言い方悪いけど…ドルオタさんのライダーには何で成れたのよ!」
膝から崩れ落ち、思わず本音が溢れ出る!グリスだけに……、『潰れる! 流れる! 溢れ出る!』だけに……。
「もしグリスに成れたってことは……、まさか……」
嘘だと、どうせ無理だろうと思いながら、一本のボトルを手に持つ。
スクラッシュゼリーを取り出すと、変身が解けたので、
「和覇…、和覇〜!」
「黒崎さんが……、さっき変身していた……」
「う、嘘でしょ……。これって夢だよね……、友希那、ちょっと私の頬抓って」
「ちょっと、リサ……。なら、私の頬も抓って頂戴……」
「こんな非現実的な事が…、そんなありえない……」
元の姿に戻ったは戻ったで、また唖然とした空気は変わっていなかった。
「グリスに変身できたってことは……、これも使えるはず……」
手に持った紫色のボトルのフタを回した。
『ピキィッ……デンジャー!』
「主様、お願い離れて!」
近づいてくる主様を、強く言ってこちらに来ないようにする。
「主様が、もしも怪我なんてしたら……嫌だから……」
そう告げると、ベルトにボトルを差し込む。
『クロコダイル!』
「変身!」
レバーを押し下げると、再び視界が暗闇に包まれる。
『割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!オーラァ!』
「『キャァァァァァ!!』」この悲鳴は……、変身音と実際の悲鳴です……。本日2回目の、リサさんの盛大な悲鳴が響き渡りました。白金さんは、何とか倒れずには済みました。てか、主様の手を握りすぎ。
「湊さん、あのまたスマホで確認させてもらっていいですか…。多分……」
「えぇ…、やっぱり見ておいたほうが良いわよ……」
映し出された画面には、やはり僕が変身した『仮面ライダーローグ』が映っていた。
「やっぱりぃぃぃ!NO、主役!YES、サブライダー!なのかよ」
頭を抱えて、項垂れる。
「和覇、これが言っていた仮面ライダーなんだね……」
今度はちゃんと僕が自身だと確信があるからか、主様がやって来た。
「主様……。さっきは怒鳴ってしまって、ごめんなさい……」
「大丈夫だよ、和覇があこを心配しての行動だったんだから。気にしなくて良いんだよ」
そう言って、頭を撫でてくれた。
「うぅ、主様……」
これは反則だ、と心の中では思っているものの、行動は素直に撫でられていた。今この瞬間に、変身を解除したい。
「それで、これが和覇が言っていた『仮面ライダー』なの?」
撫でてもらう時間は、これにて終わりを迎えてしまった。
「そうですね…。これが『仮面ライダー』です…」
正直な話、何故ビルドとクローズは変身できなくて、グリスやローグは出来たのかは理解できない……。
「すっごく、すっご〜く、カッコいいよ!」
でも、案外これはこれで良いのかもしれない。
「これが、僕が大好きな仮面ライダーです!」
こうやって、主様の最高に素敵な笑顔が見れたのなら。
でも、もしマッドローグやエボルトも変身できたら……。黒い考えが頭の隅にモヤモヤと生まれる。
「世界が滅びたら嫌だな……」
思わず言葉に出てしまった。
「和覇?どうかしたの?」
心配そうに、主様は見つめくる。
「いえ、何でも無いですよ。それより、クローズの変身やってみます?」
「うん!あこも和覇と同じ『仮面ライダー』に成ってみたい!」
僕と同じ……。
「分かりました。じゃあこれから主様には、僕が全力で教えてあげます」
「全力でかかってくるが良い!」
胸をはって、やる気に満ち溢れた主様。
黒い考えが、頭の中で最悪の未来をチラつかせてくる。けど……、
「僕が必ず…、この命に変えてでも守りきります……」
そう胸に誓った……。
大好きな者には成れずに、何故か大好きな者を支えてきた者に成るという……。
何でビルドとクローズには成れなかったのだろう……。
でも、あこちゃんがカッコいいって言ってくれたから良いのかな?
本当にあこちゃんが可愛くてたまりません…。
今回も閲覧いただきありがとうございました。
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