ちゃんと魔王シリーズですから、安心して下さい。
「和覇を返す方法が、分からない……」
主様から衝撃の一言を受けて、もはや絶望を通り越してなぜか笑いが溢れてきた。
「あ、あははは、アハハハ!あ〜……、笑えないよ……」
しかし笑うのも数秒しか続かず、その場に膝から愕然と力が抜けて崩れ落ちる。
「確かに帰った所で、また辛い日々の始まりだし……。あ、でもジオウの次の仮面ライダーは気になる……」
どんな状況でも仮面ライダーへの愛は忘れません。仮面ライダー……、仮面ライダー……。
「そうだ!……、もしあれが使えるなら……」
収納したケースから黒いパンドラパネルと白いパンドラパネル、十本のロストフルボトルを取り出しパネルに装着し始めた。
「あ、あの……、和覇……、聞いて……」
主様が声を掛けてきているが、今はそれに答えている暇はない。
「出来た……、開け……開け……」
どうやったら開いたんだっけ……、あれは確か……。
「やるしか無いなら、これで……」
グリスのノースブリザードフルボトルを握りしめ、ビルドドライバーを腰に当てる。すると、グリスだからなのか腰に自動的に巻き付きついてきた。
「心火を燃やして……、乗り越える……」
ボトルの蓋を開け、グリスブリザードナックルに装填する。
『ボトルキーン』
そしてそのまま、グリップを持ち上げベルトに差し込む。
「和覇、お願いだから聞いてよ……」
必死に叫んで呼ぶ声が聞こえてくる、けどこの変身は賭けのようなもの。だから、ここで止めるわけには……。
レバーを掴み、前に倒して回していく。辺りが徐々に冷えていくのが、肌にしみる冷たさが教えてくれた。
「主様……、ごめんなさい……」
「和覇、何をするの……」
『激闘心火! グリスブリザード!ガキガキガキガキ!ガキーン!』
仮面ライダーグリスブリザード……、これが最後の変身になるのかな……。
ボトルを装着した二色のパンドラパネルが光り輝いたのを確認して宙に投げる。ベルトのレバーを掴んで、最大限に回す。
『Ready GO! グレイシャルフィニッシュ バキバキバキバキバキーン!』
左手の巨大なロボットアームで強力なパンチを喰らわす。そこにもう一度レバーを回し、
『Ready GO! グレイシャルフィニッシュ バキバキバキバキバキーン!』
今度はブリザードナックルを右手に持って、全身全霊を込めてパンチを喰らわす。
「開けっ!開けっ!開けっ!」
二回分の必殺技、しかもグリスの最強フォームの必殺技を打てばワープホールを開ける力には……。
「開かないだと……」
足りなかった……、あれだけの連続を必殺を喰らわしてもワープホールは一ミリも開く気配は無かった。一瞬光り輝いて、帰れると思ったのに……。
「ぐはぁ!あ、あぁぁぁ……、うわぁぁぁ……」
体中を激痛が走り、立つことすらままならなくなってしまい、変身は解除されその場に倒れた。転げた落ちたブリザードナックルを手に取ろうとして意識が事切れた。
再び目覚めた時には、全身にうまく力が入らなかったが何とか起き上がる事は出来た。
「あ、あこ!起きたよ!」
リサさん、氷川さんや白金さんまで……、何でそんな悲しそうな顔を。
「和覇……」
名前を呼ぶ声がして体を向けると、ポロポロと大粒の涙を溢している主様が見つめていた。
「あ、主様……、その」
「馬鹿!和覇の馬鹿!何で、あんな危ないこと……」
言葉を紡ぐ前に、盛大に怒られた。真正面から、その小さな体を震わせながら、力の限り怒っていたのだ。
「何であの時待ってくれなかったの……、何であの時、あこの言葉を聞いてくれなかったの……」
「それは……」
「あこのこと、信用してないの!あこが、あの時帰り方が分からないって言ったからなの?」
涙を溢しながら、先程の事を言ってくる。
「……、そうですよ。そうですよ!あの時、主様は僕の返し方が分からないって言ったから……」
「言ったから?言ったから、信用できないと思ったの?」
この言葉が心の中の何かを、砕け散らすような気がした。
「そうでしょ!普通に考えて、いきなり召喚されて最初は考えを放棄してたけど、
『きっと変える方法も知っているはず』ってどこかで期待してたから、こうして楽しんでいたけど……。いざとなったらこれでしょ!」
頭に血が上り、反論して怒鳴ってしまう。
「それは和覇が勝手に帰れると期待してただけでしょ。それに楽しんでいたんじゃん!」
それに対して、主様が呆れたのか同じ様に怒鳴ってきた。
「あぁ、認めますよ。楽しんでました、でも帰れなきゃ意味ないでしょ!だから自分の力で、どうせ成功するか分からないから、最後の手段をつかったんですよ」
「それが、さっきのだって言うの……。あれじゃ、和覇が死んじゃうじゃん!」
一番大きな声で、肩で息をするほど大きな声でそう叫んできた。
「僕はもうとっくに死んでるようなもんですよ!だから、今更死のうと関係ないです!」
この言葉を言い放った瞬間、パンッt!と音がして頬に鋭い痛みが走った。
「貴方、いい加減にしなさい!」
頬を叩いたのは、湊さんだった。
「貴方の不安の気持ちも分かるけど……あこの気持ちも少しは考えてあげなさい」
こちらを睨みなが言う湊さん。
「あこは貴方が目を覚ますまで、ずっとあの本で調べていたのよ。貴方を召喚した主としての責任を果すために」
「……」
事実を何も言い出すことが出来なかった。
「それを知らずに、あこに対しての怒りを向けるのは筋違いも甚だしいは」
「だとしても……、僕は……帰らなくちゃいけないんだ……」
怒りで押し込んでいた感情が、溢れ出すように流れ出してきた。
「僕の……母さんや……、友達が居る……あの場所へ……」
残された人の悲しみを知っているからこそ……、二度とあんな悲しい顔させないために……。
「だから……、例え心火が燃え尽きようとも……帰らなくちゃ……」
ベルトが置いてるテーブルに手を伸ばそうとするが、寝ていた所から落ちてしまう。
「もう一度……。それで駄目なら、さらにもう一度……」
這いつくばって、ベルトの元へと近づいていく。が、体を再び激痛が走り抜ける。
「この状態で、もしさっきの様になれば……本当に貴方は死んでしまうかもしれないのよ」
「それは覚悟の上……、じゃなきゃ……使用者が死んでしまったアイテムなんて使わな……」
全身を走る激痛に耐えきれず、動けなくなってしまった。
「貴方が死んだら、貴方を待つ人はどうなるの?」
湊さんの一言で、興奮していた頭が一気に冷たくなった。
「たとえ元の世界に戻れたとしても、貴方は既に死んでいるのよ。それを見て、貴方が大事に思う人がどう思うか考えなさい!それと、私達だって……。貴方とこうして繋がりを持って、知り合えたというのに。目の前で自ら死を選ぶような姿を見せつけられて、黙ってみていられるわけ無いでしょ!」
「だとしても……、僕は……」
頬を伝う温かな雫が、今自分自身も泣いていることを教えてくれた。
「ねぇ……、和覇……」
主様がゆっくりとこちらに近づいてきた。
「あこが身勝手な理由で召喚してごめんなさい、それにさっきも酷いこと沢山言っちゃって……」
主様は悔いていたのだ、自らが成した行為について。それで僕に謝ってきたのだ……。
「僕も酷いこと沢山言ったり、心配掛けてごめんなさい……」
冷静になって考えて見れば、僕も散々酷いことをしてしまった。
「和覇が帰りたいのは分かった……、だから主としてちゃんと安全な方法で和覇を元の世界に返すことを約束する」
「でも、方法が分からないんじゃ……」
「一生懸命に探すから、あこが一生懸命に探すから……。もうあんな事しないで……」
この時の悲しそうな顔が、僕の古い記憶を呼び覚ましてきた。そうだ、この顔をさせないために……。なのに、僕はさせてしまった……。悔しくて、自分が情けなくて、唇から血が出るほど噛みしめる。
「主様にそんな悲しい顔させてしまった眷属に、そんな一生懸命になられたら……。僕はもう……、使えないじゃないですか……」
そっと主様の手を取り、ふらつく体を立ち上がらせる。
「ねぇ、主様。僕がこの世界に居る間は、知り合いも居ない寂しい僕を側に置いてくれますか?」
「待ってくれるの……、あこが方法を見つけるまで……」
僕の言葉に驚いたようで、唖然とする主様。
「だって……、主様が泣いているのに…放って置けないですし……」
照れくさくて、面と向かって言えなかった。
「ブッ!」
後ろで誰かが笑ったようで、振り向くとリサさんが口元を押さえて笑っていた。氷川さんも、若干肩が震えていた。
白金さんは、顔を真っ赤にしていた。
「だから、方法が分かるまで、僕を主様の眷属にしていて下さい」
今自分が思えるように笑えているのか、正直なところ分かっていなかったけれど。
「うん……、分かった……。和覇よ、汝を…我が眷属として…側に居ることを…許そう…」
主様の目元は真っ赤に腫れていた、けどそれでも見せた笑顔は何よりも輝いていた。
「Yes,Your Majesty」
主様の手を取り、改めて契約を結んだのだ。
今回は盛大にあこちゃんとの大喧嘩をする和覇君でした。
でも、最後に仲直りをして、契約がより強固になっていくという。
ソイヤ姉さんを出すと言っておいて、出ししてないですね?
何か出すタイミングが、ありませんでした。次は出てきますよ。(多分)
今回も閲覧いただきありがとうございました。
感想などお待ちしております。