京まふのステージ席が2列目と3列目取れたのでとてもテンション上がってます。
突如始まった爆裂デートの帰り道。
いや、これからレストラン行くから移動中か。
まあ、何にせよ。俺は街までめぐみんをおぶって歩いている。
そして、俺は今早くおんぶを止めてこの場から逃げ出したい気分だった。
「ねえ見て、あれってさっき展望台でキスしてた二人よね」
「お熱い二人だね。おんぶして散歩から帰ってくるなんて」
さっきからすれ違う冒険者からこんな感じのヒソヒソ話をされてる。
せめて聞こえないように話してくれればいいものを!
絶対わざとめぐみんが起きない程度で、俺には聞こえるように話してるだろこいつら!
もはや恥ずかしさより怒りの方が勝ってきてる気がする。
早くめぐみん起きてくれないか。
「ったく、なんで俺がカエル狩りなんざしなきゃならねえんだ!」
「あんたが借金増やすからでしょうが!」
借金か。
俺もめぐみんに借金してたようなもんだよな。
本人は貸してなどいないって言ってたけど。
そんなことを考えながら今からクエストに向かうパーティーを見る。
「本当借金作るのも大概にしろよな。俺はアノ店行ってゆっくりするつもりだったってのによ」
「お前だけずるいぞ!俺の分奢ってくれ」
「誰が奢るか!誰か何か言ってくれ」
借金男以外の二人を見て応援を求めるも、魔法使いらしき女はため息をつくだけで、もう一人騎士風の男はため息の後に口を開いた。
「お前はもう少し金の使い方を学べ、それとずっと気になってたんだが、お前たちのよく話してるアノ店ってのは何だ?」
「そ、それはまた今度な」
「けっ、金金うるさいんだよてめぇら!」
「あんたが言うな!」
何か楽しそうな連中だな。
ああ言う普通のパーティーで冒険がしたかった。
はぁ、俺は何処で選択肢を誤ったんだろう。
・・・間違いなくあの駄女神の勧誘に乗った時だな。
「あれ?ねぇねぇあそこにいる二人って最近有名な子達じゃない?」
魔法使いが俺達に気付いたみたいだ。
指された方向を男三人が追って、パーティー全員と俺の目が合う。
「あ?有名だ?この俺様より有名なやつが居るってのか?」
「お前は悪名だろうが、言われてみれば最近ギルドで有名な冒険者カップルの風貌に似てる気がする」
「冒険者カップルだと!?しかも見ねえ顔だ」
「あんたは何処に反応してんのよ」
何かこのまま借金男に絡まれる気がする。
こう言うのは適当に流さないと面倒になるんだよな。
今すぐにでも襲ってきそうな血相で睨んでるし、ヤバそう。
「威嚇も止めなさいっての!ほら、見なさいよ!彼氏さん怯えてるじゃない!ウチのバカがごめんね」
「いや、あの、こっちこそ何かすまん」
騒ぎを起こした原因は俺達らしいから、とりあえず借金男以外に向かって頭を下げて通り過ぎようとしたら、また怒鳴られた。
「何謝ってんだこら!煽ってんのか!」
「止めんか!」
魔法使いの子は借金男を殴って、引きずって行った。
何かいつもの俺とアクア見てるみたいだな……
「ウチの仲間が悪いな。ほら行くぞ日が暮れちまう」
アイツ以外は基本常識人なんだろうな。
またギルドであったら話しかけてみよう。
「ん?かずま?」
「起こしちまったか」
「・・・」
めぐみんは何か一点を見つめて不思議そうにしていた。
「どうした?」
「あなた誰ですか?」
「さっき名前呼んでただろうが!」
急に記憶喪失になるはずないし、原因が無さ過ぎて本当になってたら怖い。
ツッコミを入れた結果めぐみんは首を横に振って言った。
「いえ、カズマじゃなくてですね」
「はあ?お前何言って・・・」
「こんな所にいたのね」
振り返ると黒髪ロングの女の子がこっちに向かって歩いてきていた。
結構な美人だけど凄い剣幕でこっち見てる。
全く知らないやつだけど、めぐみんの知り合いか?
でも眼は紅くないし、どちらかと言うと日本人ぽい子だ。
「誰だこいつ?」
「私に聞かれても知りませんよ」
「忘れたとは言わせない!その剣!覗き犯の持ってたやつと同じなんだから!」
なんということでしょう。
突如現れた美女に冤罪を吹っかけられました。
中古で武器買うんじゃなかった!
「はあ!?ちょっと待て!人違いだ!」
「問答無用!」
「話せば分かる!話せば……あれ?」
殴られると思って目を閉じて腕で顔を守る体勢で構えていたのに、衝撃がなくて気になり目を開けて見ると、めぐみんが女の子に馬乗りになって取り押さえていた。
後ろで手を組ませて、まるで犯人逮捕した見たいにやってるし、さらに肘でグリグリしてるし……
「カズマ、安心してください。私が倒したので」
「・・・やり過ぎだ!おい、大丈夫か?怪我はしてないみたいだな」
「覗きのクセに!」
・・・何でおれここまで言われなきゃならないんだ。
この剣の元の持ち主に会ったら許さねえ!
てかこの場面誰かに見られたらまた悪評広まりそうでいやだ。
「だからやってねえって!この剣はつい最近買ったばかりなんだよ」
「・・・え?」
「中古なので、前の所有者が犯人でしょう。私のカズマがそんなことしませんから」
サラッと私のとか何言ってんの?
もちろん恋人のフリするのは分かってるけど、この子役に入り過ぎてない?
何か、本当に俺めぐみんのみたいに思えてきたんだが・・・
「えっと、あなたは?」
「私はカズマの恋人です」
堂々と嘘つきやがったよこいつ。
やっぱりめぐみんに恥じらいなんてないんだよきっと。
じゃなきゃ今日キスしようって言ってきたりしないはずだ。
俺にはそんなの無理なんだけども……
「・・・恋人が居るのに覗きなんてしないよね。・・・ご、ごめんなさい勘違いで」
「分かってもらえればそれでいい。今度これ買った店で犯人の特徴聞いといてやるよ」
「えっと、そこまでして貰わなくてもいいよ。これ、勘違いで襲いかかったお詫びに上げるよ。それじゃあ、私は犯人探しするからいくよ」
と言って黒髪の子はいなくなった。
名前聞きそびれたな。
あと、常識人ぽかったから出来れば仲間にって思ってたんだけどなあ。
「名残惜しそうですね。カズマはああ言うのがタイプなんですか?」
「いや、同郷ぽかったから名前聞いときたかったなって」
「確かに特徴は似てましたね」
「まあ、冒険者のようでしたし、ギルドでまた会えるでしょう」
「そうだな。切り替えてレストラン向かうぞ」
「はい!」
色々あったけど、おんぶの状態から解放されて向かいから歩いてくる冒険者にヒソヒソ話されることもないだろうと楽観視していたのだが、めぐみん様はそんなことを許してくれなかった。
「・・・めぐみん?」
「どうかしました?」
「これ何?」
「恋人繋ぎですよ?私たち恋人なんですからこれくらいしとかないとって前にも言いましたよ?」
俺の質問に対して何を言ってるんだと言わんばかりの呆れ顔で答えた。
言ってることは分かるけどそれを実行するには早すぎると思う。
だってまだ街に着いてないし。
「・・・誰も見てねえだろ」
「急にあの林から人が出てきたらどうするんです?その瞬間から手を繋ぐ方が怪しいでしょう」
「・・・」
めぐみんの主張に全くもって反論出来ない。
俺はクリスが帰ってくるまで、大人しくめぐみんになされるがままになるしかないのか?
それそれで癪だから何かないかと考えてみる。
「私と恋人関係ってことになってるのそんなに嫌なんですか?」
「嫌じゃないけど、こんなに引っ付いてたらクリス戻ってからも暫くこれだし、別れたとかってなったらそれはそれで面倒だろ?」
よし、とりあえず現状の方法が齎す将来的な問題点を挙げてめぐみんに考えを改めて貰おう。
と考えて言ってみたけども、めぐみんは小首を傾げているから望みは薄そうだ……
「どうもしませんよ。倦怠期に突入したくらいにしか思われませんよ。だって爆裂散歩は偽装と関係なく続けますからね」
「・・・納得したくないけど、凄い説得力あるなそれ」
「ええ、クリスが帰ってきた後もどうせ私達はカップルだと思われ続けますよ」
めぐみんが俺たちの関係について既に開き直ってるのがよく分かった。
その上で、まだ適応できてない俺をからかうのが、ここ最近出来ためぐみんの新たな日課なのだろう。
とは言っても一度恋人になったと言う情報が残ることになんとも思ってないんだろうか?
「前にも聞いたけど、お前はそれでいいのか?」
「構いません。カズマの可愛い反応見れますし」
「・・・」
俺で遊んでるの隠すつもりもないらしい。
めぐみんは楽しめるからいいだろうけど、俺は全然良くない!
この世界でやり直せるならキャベツ狩りの時にクリスへ窃盗スキル使う前に戻って、バカなやり取りしないようにしよう。
「カズマにもし好きな人が出来たら言ってください。その人にはちゃんと私からこの関係を伝えますから」
「止めろ。それ間接的に告白してることになるじゃねえか」
「じゃあ好きな人出来たらどうするんですか?」
「どうもしねえよ。どうせ俺なんかフラれて終わりだろうし」
・・・自分で言ってて悲しくなってきた。
自分に大した魅力がないことくらい理解してる。
はぁ、こいつもモトは良いから俺の気持ちなんて分からないだろうな。
「そんなことありませんよ!私ならカズマと付き合います」
「はいはい。世辞は結構。門が見えてきたからこの話も終わりな」
「お世辞じゃないですよ?何度も言ってますが私はカズマが」
「はいはい。俺の事好きなんだろ?分かってる分かってる」
めぐみんがお世辞で言ってないことくらいは最初から分かってる。
もう俺にはこうやって受け流すことくらいしか出来ないだけ、だって、これ以上真正面から受けてたら身が持たない。
「なんですかその返しは!私の想いを踏み躙ったこと後悔させてやります」
「何しようってんだ?」
「まずはこうです」
世間に聞くめぐみんの制裁とやらを受けると覚悟してたのに、なんの衝撃もなく、どちらかと言うと優しく包み込まれて、柔らかい感触が腕にさっきまでよりも鮮明に伝わってくる。
「・・・動き難いんだが?」
「そうしてるんですから当然です」
「つかこれでどうやって俺を後悔させるんだ?」
「見てれば分かりますよ」
何をと言おうと思ったら周りがやけに騒がしいことに気付いた。
周囲を確認するともう街の中に入っていた。
つまり、イチャつく冒険者がいれば目立つわけで……
「見て見てあの二人もう隠す気無いどころか見せつけてるわね」
「羨ましいぜちくしょう!」
「ヒューヒュー!」
・・・めぐみんの意図してたことがよく分かった。
謝って止めさせようと思ってめぐみんの方を見るとめぐみんは女性が多い方向に向かって言った。
「カズマは私の男です!近付こうものなら全力で叩き潰してあげます!」
・・・こいつ今の関係終わった時のこと考えてんのか?
絶対俺をからかうことしか考えてないだろ。
はぁ、もういいや。
未来のことは未来の俺に任せて今はめぐみんの感触楽しむ方に思考をシフトして……
「いや、誰もあんなパッとしない男興味無いわよ」
「そうそう。興味あるのあんたくらいだって」
「おい、カズマ。お前も安心しろよ。短気な爆裂娘に興味あるやつなんていねえからよ!」
「間違いねえ。あんなガキに興味あるのはロリマくらいだよな。あははははは」
本人が目の前に居るってのにこいつら言いたい放題だな。
色々言われて怒ってるめぐみんは俺の腕から離れて拳を鳴らしてる。
多分、俺と同じこと考えてるな。
「カズマ」
「めぐみん」
お互いに名前を呼びやることを確認して、俺は男たちに、めぐみんは女たちに近付き殴り倒した。
こんなことしたらお互いに恋人を馬鹿にされてキレたって判断されるよな。
でもまあ、この場合はしょうがねえ。
「俺達を馬鹿にするやつはこうだ。分かったな?」
「他に何か言いたい人はいますか?」
さっきまで冷やかしてた連中がいなくなった。
これでもうめぐみんの言ってた通り関係が終わっても倦怠期からの自然消滅的流れしか無くなったのか。
めぐみんは世間的に俺の元恋人なんて扱いでいいんだろうか?
「カズマ早く行きましょう」
「おう」
全く気にしてる様子はないんだよなあ。
気にしてるのは俺だけなのか?
「カズマ、思い知りましたか?」
「諸刃の剣って知ってるか?」
「私にとってはなんの問題でもありません」
だろうと思った。
「それよりも何処のレストランに行く予定ですか?」
「知らないからこの前行ったレストラン街にとりあえず行ってからメニューとか見て決めようかなって」
「なるほど。それもありですね。私はステーキの気分です」
「じゃあ、肉屋行くか」
と行先が決まった。
移動中ずっと視線を集めてたがもう何かどうでも良くなってきた。
ステーキ屋を見つけて二人で入った。
そして、出来れば出会いたくなかった二人がそこに居た。
「あっ!ダクネス見てよ!ウチのラブラブカップルが来たわよ」
「という事になっているだけだ!」
このバカは協力するとか言いながらカップルだと思ってるのはどうなってんだ。
俺の味方は多分居ない。
どうせ隣に居る変態も同じような反応だろう。
「ふむ。見た限り実際にそうなってるように見えるのだが気の所為なのだろうか?」
「だから違うって言ってんだろうが!めぐみんも何か言ってやれ」
予想通りとは言え、ムカつくのは変わらない。
流石に仲間相手ならちゃんと訂正いれるだろうとめぐみんに振って見たけど、不敵な笑みを浮かべてるから嫌な予感しかしない。
「分かりました。カズマのことは例えアクアとダクネスでも渡しません!」
「何か言えとは言ったがそうじゃねえ!」
味方不在の中、俺はどうすればいいんだろうか。
このパーティー抜けてクリスの向かった街に行って、それこそパンツコンビでパーティー組んで活躍とかしてやろうか。
「めぐみんが言ってた通りカズマの反応面白いわね」
「うむ。予想以上の慌てようは見ていて飽きないな」
「おいこらお前ら分かっててやってたのか?」
何やら様子がおかしい。
めぐみんが付き合ってくれとかキスしてくれとか言った後に、俺を嗤う時みたいな空気になってる。
「当たり前じゃない。この前協力するって話してたでしょ?」
「クリスが戻って来るまでの関係だろう?」
「てことはこの前のも……」
「全部演技よ」
アクアがドヤ顔してるのが超ウザイけどとりあえず無視だ。
今は状況の整理をしないと。
「めぐみんに頼まれていたからな」
「めぐみん?これはどう言うこった?」
「実はお風呂でアクアに恋人のフリすると言う話をして、そこからダクネスに話は通ってたのですよ。まあ、カズマがダクネスに話を聞いていた時はまだダクネスは知らない話でしたけどね」
は?
こいつもしかして最初から俺とクリスとの三角関係デマが広がってるって知ってたのか?
知ってて対応策まで考えて準備万端な状態にしておきながら、俺には黙ってたのか!?
「てことは俺達パーティーでいる時は別に恋人のフリとかしなくてもいいのか?」
「では多数決取りましょう」
「何を?」
「このままカズマの反応を楽しみたい人」
三人とも手を高く上げる。
こんな出来レース知らない。
数の暴力とはまさにこのことだ。
「認めない!絶対嫌だ!ちょっとくらい普通にしていられる瞬間が欲しい!」
と叫んで見たが、三人のと言うかめぐみんの行動が今日のような感じで所構わず続くため結局この多数決と関係なく、俺はめぐみんに翻弄されるのであった。
次回も更新シリーズと時期は未定です。
カズめぐしてるシリーズの可能性大です。