と言っても1話2話の振り返りみたいなものですけど……
セリフは少ないです。
-SHITTERUSHIRANAIHITO-
出会ったその日に好きになり、そしてその日うちに付き合う事となった彼が居なくなり私は落ち込んでいた。
『記憶が無いかもしれないけど必ず会いに来る』
言って彼は見た事もない転移魔法で去って行ったのだ。
唯一残していったジャージと呼ばれる緑色のヘンテコな服を抱き締め心を落ち着かせる。
色んな意味でおかしなあの人との出会いは運命的なモノだった。
私が飢えに苦しみ助けを求めるも皆見て見ぬフリ。
私だって同じ立場なら素通りしていただろう。
でも、変な服装だったあの人は私を救ってくれた。
まず、彼の宿屋に連れられて食事をさせてくれた。
その間に彼は着替えをしていたのか奥から出てきた時には普通の服装だった。
初め身体目的かとも疑っていたがそんな素振りは見せなかった。
そこで私は彼を試すように何でもすると言ってみた。
すると彼は待ってましたと言わんばかりに口を緩ませた。
結局そういう事かと思いながら、一応残しておいた逃げ道を使うかと考えていた矢先、彼が私に言った事はあまりにもおかしかった。
『なら俺の事は忘れてこの金を持って今まで通り暮らしてくれ。これだけありゃ半年は持つだろ』
人助けをして、礼も貰わずに金を渡して自分の事は忘れろなんて意味がわからなかった。
あの時は変な冗談だと思っていたが、今思えば本当に私が邪魔だったのだろう。
そして優しいあの人は私が飢えに苦しまないようにお金を渡そうとしたのだ。
それなのに私は意地になってお礼をするまで離れないなんて言ってしまった。
彼は諦めて、私の友人を紹介するように言ってきた。
意図が全く読めなかったが、とりあえずゆんゆんを呼び戻して紹介した。
紹介したその日は取り留めのない話をしているだけだった。
ただ話している二人を見ていると凄くモヤモヤした。
会ってすぐの彼が他の人と話しているのを見て嫉妬していたのだ。
我ながら分かりやすい人間だなあと思ったけど、そのおかげで彼が消える前に告白も出来たし、デートやキスだって出来たのだから良かったのかもしれない。
しかし、告白はちゃんとやりたかった。
彼が眠ったと思っての独白が、告白になってしまったのだから、本当はお礼を終えた後にと考えていたのに。
それに、今思うと彼の布団に潜り込むとは大胆なことをしていたのだと気付く。
予想外の返答にすぐ驚くでもなく、了承してから気付いたあたり、彼は疲れていたのだろう。
拒絶されずに受け入れて貰えた時は嬉しかった。
嬉し過ぎて眠れずに独白を初めてしまう程に。
そして、彼が起きていたことに気付いて、逃げようとした時に彼が私を止めて、告白してくれたこと。
これが一番嬉しかった。
あの人が私に一目惚れしていたと語った時、一瞬何が起こったのか分からなかった。
混乱している間も彼が何か話していたがその時に何を言っていたのか分からなかった。
理解が及んで、確認すると、好きだと告げられ、更には付き合ってと告白された。
断る理由もなく私は了承した。
次の日、告白したことや、キスしたことなんかを思い出してろくに話せなかった。
気まずい空気が続き、宿屋から離れてギルドへ私達は向かった。
そこでゆんゆんとまた会ったのだが、彼はゆんゆんと二人で話がしたいと言い出した。
不思議に思いながらも私は離れた席から二人を見ることにした。
初めは談笑が続き、少し経つと何かのアクセサリーをゆんゆんが取り出して彼に渡した。
その後、また少し話をした後に二人は別れた。
そして、私は察した。
彼がこの街に来た目的はゆんゆんとの取引だと。
彼が戻って来た時に、少し意地悪してみたら面白い反応が返ってきた。
嘘発見器を持ってきてくれなんて言うのだから、おかしくて笑ってしまった。
そんなものがあるはずないのに、余程焦っていたのだろう。
その後は二人でデートをした。
今思えば、目的を達成して別れる前の最初で最後のデートを彼は最大限楽しもうとしていたのだろう。
空回りしていることもあったけど、私のことを想って行動してくれたのが凄く嬉しかった。
しかし、今彼は居ない。
あれから三日経つが私の心はもう限界に近い。
里を出る前の私が見たら嗤うだろう。
今日一日を頑張る為の踏ん切りをつけて宿屋を出た私はギルドへ向かった。
今日もまた爆裂散歩同行のクエストを出して、彼が現れないか探ってみようと考えていると誰かを呼ぶ叫び声がした。
『カズマ!置いてかないでよ!』
『お前が屋台に気を取られるから遅いんだろ』
思わず振り返るとそこに居たのは間違いなく彼だった。
しかも飛びっきりの美人と一緒に。
・・・どうしよう。
声を掛けたいけど、怖くて出来ない。
そんな風に悩んでいると二人はギルドへ入っていった。
今日に限って、まだクエストを出していない。
ついていないとはこのことだろう。
二人が出てくるのを待っていた。
すると、ギルドから出て来た二人は凄く陰鬱な感じだった。
ふらふらと二人は路地裏へと入り、座り込んで絶望感を醸し出していた。
そんな中で初めに彼が口を開いた。
話を聞くと、どうやらお金がなく、冒険者登録すら出来ないらしい。
彼から貰ったお金は山ほどあったし、近付くいい機会だと思って声を掛けた。
返ってきた反応は、初見のそれ。
彼が記憶が無いかもと言っていたけど、やはり心に来るものがある。
しかも凄く子供扱いされて、家出少女みたいな対応をされた。
以前とはまるで違う彼に少々残念と言うより、苛立ちを覚えてしまった。
理由は簡単。
私の名乗りを見て、外の人がする普通の反応をして、名前が本名か確認してきたのだ。
ただ一つ、変わっていなかったのは、私に合わせて名乗りをやってくれたことだろう。
名乗りを見て、苛立ちは収まり、初めて彼の名乗りを見たあの時の興奮が再びやってきた。
彼と一緒にいた女の子はカズマを笑っていた。
こんなにもカッコイイ名乗りの何処がおかしいのだろう。
もう一度と頼んでも女の子の方を見て、嫌そうにしている。
二人きりなら見せてくれたのかもしれない。
そんなことを考えて落ち込んでいると、女の子が自己紹介をしていた。
アクシズ教の女神と同じ名前らしい。
彼の名乗りをもう一度見れなくて落ち込んでいる私は多分無愛想になっていると思う。
後でちゃんと挨拶しよう。
冒険者登録を行うことになった。
私は二人に同行するだけであったが、二人のステータスが気になる。
まずはカズマから手続きを始めた。
結果カズマは商人を勧められてしまう。
どうやら幸運値と知力が高いらしい。
厳しい現実を突きつけられて悲しむカズマに受付のお姉さんがフォローを入れるもアクアがそれを粉砕して、さらに落ち込ませてしまった。
そこで私がカズマを安心させるように言ったのだが、逆効果だったのか商人になるとカズマは言った。
最強の魔法使いを目指すためにも、カズマの魔王討伐と言う目標は近い。
何としてでも冒険者になってもらわねばならない。
そう思い、私がカズマの説得を試みていると、アクアが登録を行っていた。
そして、話を聞くとどうやら幸運値と知力を除いてその他のステータスが非常に高いそうだ。
もしかして、本物の女神様だったりするのだろうか?
カズマが消えて、周りの人から彼は忘れられていた。
そんなことが出来るのは神か、上位の悪魔くらいだと思う。
そんな彼と行動を共にしているのだから有り得なくはない話だ。
最も、出会ってから見てきた、彼女の行動からは女神らしさなんて微塵もないし、アクシズ教の親が容姿が似ているからと名付けたに違いない。
しかし、アクアとカズマの関係性が未だに掴めていない。
恋人とは違うようだし、友達と言うには距離感が微妙だ。
なぜ二人は行動を共にしているのだろう。
アクアが女神とするならば、カズマの目的から察するに魔王討伐が目的なのだろう。
しかし、仮にアクアが女神ならば、最低限の装備や資金を持っているはずだ。
つまり、この仮説は正しくない。
ともすれば、二人は行きずりや腐れ縁と言った関係なのだろうか?
謎は深まるばかりである。
武器の調達をと私は二人を武器屋に案内しようとしたが、アクアには断られた。
自分のステッキは持っているから、今日はギルドに馴染むためにもここに残りたいと言っていた。
私としてもカズマと二人きりになれるいい機会だったから、特に引き止めはしなかった。
そして、私がお金を出すからと二人で武器屋に向かったもののやっぱり自分で稼いで買うとカズマが言い出した。
これでは会った時と立場が逆だなあと思って少し笑ってしまった。
カズマは不思議そうにこちらを見ていた。
そんな彼に私は、勇気をだして誘ってみたのであった。
「カズマ、もし良ければ、デートしませんか?」
すると、カズマの顔はみるみる赤く染っていき、口をパクパクし始めた。
居なくなったカズマとは違ってこちらのカズマは何だかカッコ良さよりも、かわいさの方が印象として強い。
そして、動揺しているカズマを見ていると嗜虐心を擽られる。
「私とじゃ嫌ですか?」
「嫌じゃないけど……」
「では決まりですね!行きましょう!」
半ば強引にデートへ誘うことに成功した。
だがしかし、私はデートに失敗する。
いや、デートそのものをしなかったのだ。
爆裂散歩の後にと、考えていたらそのまま眠ってしまい。
目が覚めたら何処のお店も閉まっている時間だった。
これではデートと偽って爆裂散歩に連れてきたみたいではないか。
明日こそはデートを!
昨日の決意を胸に、私はギルドに向かった。
そして、今度はデートの誘いよりも上のをするのであった。
「カズマ、付き合ってください」
言ってから思う。
唐突過ぎやしないだろうか。
カズマとは昨日会ったばかり。
しかもこっちでは私から声をかけたわけで……
「嫌だ」
まさかの即答で、拒否された。
もう少し悩んでもいいのではないかと抗議したが、無駄だった。
この様子だとカズマは誘っているのは単に爆裂散歩のための口実と思っているのだろう。
いや、この際、今は勘違いして貰おう。
本当は告白だったけれど、爆裂散歩に誘ったことにしよう。
そして、カズマを何とか爆裂散歩に着いてくると約束させてバイトに向かった。
カズマから貰ったお金だから返す必要はないというのに、登録料もいずれ返すと言って聞かない。まあ、本人は知らないから当然なのだが。
でもそんな所がカズマが、カズマたる所以なんだと思う。
ギルドに到着し、いざバイトと意気込んでいると、アクアがクビになってしまったようだ。
なんでもお客のお酒を飲んで水を提供したのだとか。
本人は勝手に水に変わったと言っていたが、そんなはずがない。
何故こんな人とカズマが一緒にいるのだろう?
二人の関係が気になって仕方ない。
と考えているとカズマが妙なことを聞いていた。
秋刀魚を取ってこいと言う単純な指示に困惑していたのだ。
初めは聞きそびれたのだろうと思っていたがどうやら違うらしい。
何か言いたげな顔をしたものの、一度確認したあとは黙って取りに行った。
行ったのだが、カズマはなかなか帰ってこない。
マスターはサボっているのではないかと言って見てくるように私に指示した。
私もカズマが心配だったので、快く引き受け畑に様子を見に来た。
するとカズマはサボって寝ている訳でも、釣りが下手で悪戦苦闘している訳でもなく、ただただ呆然と畑を前にして仁王立ちしていた。
何をしているのか聞こうと思ったものの、声を掛けてカズマの表情を見ると大体何を考えているのかは分かった。
百足だらけの畑からどうやって秋刀魚を取るのか分からなかったのだ。
しかも確認するとおかしなことを言っていた。
「秋刀魚の取り方も知らないのですか?」
「畑に生えてる秋刀魚の取り方は知らん」
まるで畑に生えていない秋刀魚を見たことがあるかのような言い方だった。
そして私は思った。
カズマは没落貴族で、生計を立てるために冒険者を始めようと決意し、似た境遇のアクアと行動を共にしているのではないかと。
カズマは茶髪に茶色目だが、カズマの幸運値や知力を考えると養子に入れられている可能性は十分にある。
しかし、予想は外れていた。
カズマはチュウリュウカテイと言う階級らしい。
言い方からして普通の身分なのだろう。
謎が解けたと思ったのに、さらに謎が増えてしまった。
そんなこんなで、私が秋刀魚釣りを披露し、次からのために釣り方を教授してから戻るとマスターからイチャついてただろと言われ、どうしようと考えていると、カズマが即座に否定した。
話はカズマが秋刀魚を知らないと言うのが事実かどうかについてに変わっていたが、そんなことより動揺もなく否定されたのが悲しい。
カズマは私を女として認識していないのではなかろうか?
突然不安になってきた。
もし、恋愛対象として見られていなかったら……
と考えているとマスターから今日は帰っていいと言われた。
しかもカズマに常識を教えるだけで、給料をくれると言う。
マスターのおかげでカズマと二人きりになれると喜んでいたこの時の私はカズマの常識の欠如を甘く見ていた。
最初はまあ、カズマが何処まで私を意識しているかも兼ねた質問から始めてみたものの、凄い動揺っぷりに安心できたようで、安心出来ない。
なんとカズマはサンマが畑で取れることを知らない所か、この国の名前も知らないと言う。
他にもアクシズ教のことをアクア教と言ったり、柑橘類を食べやすく机の上に置くと言ったりと非常識な面が浮き彫りとなった。
半ば諦めて、カズマの国の話を聞くと、興味深い話が聞けた。
カズマの国はシマグニと分類されるようだ。
島国と書くのだろうけど、島が単一の国で構成されると言う話は興味をそそる。
更にはカズマは球体説を知っていて、理解してくれた。
まあ、私は地球が丸いと思っただけで、球体説と言うのはカズマから聞いてピッタリな言葉だと思ったもの。
理解者が出来て嬉しい。
しかも、好きな人が理解者だともっと。
ゆんゆんも信じてくれたし、まあ、学校のみんなは信じてくれていたけど、外の人は絶対に信じてくれなかったのだ。
私はいい人に出会えたと再確認し、そして、改めて決意する。
カズマとまた、恋人になれるように頑張ると。
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