結局初接触を行った「灘風」は、翌日同じ場所での再会を約束し日本へと帰っていった。
その話は即日クワトイネ政府まで届き、外務局の役員が複数名、灘風を誘導する予定のマイハークに派遣された。
また、日本でも約束を取り付けてすぐに外務省がクワトイネに派遣する外交官を選び、クワトイネに提出する資料も取り纏めた。
そして邂逅の翌日早朝、外交官を乗せた灘風はクワトイネ公国へと向かった。
無事第六飛龍隊との再会を果たし、マイハーク港へ入港した灘風。暫くすると3隻の帆船がやって来て荷物や人員の運搬を始めた。
それを丘の上から眺めているのは、クワトイネ公国外務局のヤゴウだった。
「あれは何ともまぁ、大きな飛空船だ………」
ヤゴウは翌日行われる協議に参加することと、事がうまく運べば日本国に視察へ行くことが決まっていた。同僚からはかなり羨まれたが、第三文明圏外国の中では圧倒的な衛生観念、生活水準をもつクワトイネ人としては、他の新興国家なぞに行きたいとはとても思わなかった。
この飛空船を見るまでは。
「これなら日本国はミリシアルやムーと同じくらい綺麗かも知れないな。」
魔法技術には疎いヤゴウだったが、外務局員というのもあってパーパルディア皇国や第三文明圏国家の技術については大まかに知っている。あの飛空船はパーパルディアが背伸びしても作れないものである事はよく分かる。
正直、ムーやミリシアルでも無理だろうとは思うが。
ヤゴウは既に日本国に興味津々だった。日本国の技術、町並み、生活、全てを知りたい!
その前に協議を成功させなくては、と気合いを入れ直したヤゴウだった。
「………ふぅ。」
日本国との会談は無事終了したが、何とも信じがたい話の目白押しだった。
日本国が転移国家であるということ。人口は昔は4億2000万人だったが、宇宙という空の上の世界の人々を置いてきたので7000万人であること。領土は38万㎢と人口の割には狭すぎること。科学文明国家であること。
これだけの情報であれば、バッサリ嘘だと切り捨てることも出来たが、いかんせん窓越しには港にホバリングしている灘風があったため誰一人疑いの声を上げることは無かった。
そして驚くべき事に、日本国は軍事同盟を前提に無償での技術供与を提案してきた。というのも、日本国の軍事兵器とはすなわち古の魔法帝国の「星の僕」のような兵器であり(灘風もそのうちの一つだそうだ)、それがほぼ全て無くなってしまったため日本はいま丸腰なのだそうだ。我が国に技術を供与する対価として、日本国の国防を我が国が担う。流石にこれは返事を先送りしたが、恐らく政府は賛同するだろう。
「ロウリアとの戦争に間に合うだろうか………」
マイハーク近郊の丘の上では、灘風を一目見ようと人々が集まっていた。
「ねぇねぇお母さん!あれなーに?」
エルフの少年は母に尋ねた。
「外国のお船なんだって。お母さんも詳しいことは知らないんだけど、すごく発展した国らしいわよ。」
既に日本国から技術供与を受けることは決定しており、耳の早い彼女はその事を既に知っていた。
それを聞いた子供は、目を輝かせて聞いた。
「じゃあ、あの人達がロウリア軍をやっつけてくれるの?」
「………そうね、きっと私達を守ってくれるわ。」
また、普段から酒場に通う一部の者達は酒盛りを始めていた。
「俺はあの船は古の魔法帝国のものだと思う。」
一人の商人がそう言った。
「馬鹿言え、もしそうなら今頃俺達は嬲り殺されてるだろうよ。」
「でもあれはミリシアルの第零魔導艦隊の船より強いぜ?長い間ミリシアルで働いてた俺が言うんだから間違いねえ!」
「ハハハ、ミリシアルより強いから魔法帝国って言うなら、100年後にはムーが魔法帝国かもな!」
隣の商人は馬鹿げた話だと一蹴した。しかし、彼はまだ続ける。
「なぁ、パルキマイラって知ってるか?」
「なんだそれ?」
「ミリシアルが保存しているとされる魔法帝国の兵器だ。国は存在を否定しているが、目撃例があんまり多いから公然の秘密といった感じだ。
俺は直接見たことはねぇが、そいつは空を飛んで大きさは200m位だって話だ。」
「おい、それって………」
かの商人が言うとおり、ミリシアルにはパルキマイラという古の魔法帝国の超兵器がある。しかし、実際はベンツのロゴマークのような形をしており、灘風とは似ても似つかぬ容姿をしている。
ただこの話は噂好きの商人達の手によって広められ、第一文明圏の列強国、神聖ミリシアル帝国まで伝わることとなる。