宇宙世代日本国召喚   作:白糸

3 / 4
いよいよ戦闘回が近づいて参りましたね!気合い入れていこう!

ちなみに日ロ戦争は一方的に片付けますが、終わった辺りから日本がダメージを受け始めます。


003

1639/03/20 厚木

 

 

「というわけで、第二十一航宙隊を今度新設されるダイタル基地に配属する。」

 

「それは無理です。」

 

 

第二十一航宙隊隊長の 大内田 は、一応地球駐在の自衛隊員の最高位である 高橋少将 からの命令を断った。しかし高橋はそれを気にする事はない。

 

 

「………だよなぁ、俺も無理だと思うよ。」

 

「航宙機のことなんにも分かっちゃいないんですね、政府は。」

 

 

航宙機は、大気圏内での作戦行動を想定していない。

航空機のように翼があるわけではない。宇宙を目指す鉛直向きの飛行ならまだしも、水平飛行などは殆ど不可能に近い。その為本来なら宇宙空間に一度出てから大気圏に再突入するのだが、生憎この惑星は地球とは異なる点がいくつもあるので軌道計算コンピュータが使えず、宇宙空間の移動は不可能だ。

 

 

「しかしなぜ急に転属命令を?」

 

「どうも近々、ロウリアがきな臭い動きを始めているらしい。そこで援軍を送る方向性になったんだが………」

 

 

あぁ、と納得する大内田。現在の日本の戦力は航宙機100機と航宙護衛艦1隻のみ。灘風は敵海軍の対応を取らなければならないので、陸軍の対応に航宙機が駆り出されるのはやむを得ないことだった。

 

 

「せめて航空機を寄越して欲しいんですが………」

 

「20世紀レベルのレシプロ機なら用意できるとかなんとか………ジェット機はやはり金が掛かるからなぁ………」

 

「え、推力中心が前にある航空機は怖いですよ。もはや航宙機と何のつながりも無い………」

 

「私も何とかしたいとは思うが………やはり予算がなぁ………」

 

 

高橋はこの後政府に掛け合ったが、あまり芳しい答えは返ってこなかった。国家予算は既に税収の大幅減とクワトイネ軍の支援、シーレーン確保のための護衛艦建造でズタズタになっていたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

1639/04/08 横須賀

 

 

横須賀基地のドックでは、実に300年振りに海洋艦艇の進水式が行われた。自衛隊が、浮いた今年度分の航宙護衛艦の維持費を用いて建造した護衛艦だ。

初雪は日本─クワトイネ間の海路を護衛するために急遽設計された航洋駆逐艦だ。

全長100m近い20世紀レベルの駆逐艦だが、少なくとも第三文明圏外では十分通用するだろうということで建造された。砲撃能力を重視した設計だが、対空ミサイルもいくらかは積んである。拡張性も高く、有事には強化もしやすいようになっている。

 

 

進水式には一般人のみならず報道陣も詰めかけていた。彼らの目的は半分が新たな護衛艦の進水式を見ること、そしてもう半分は………

 

 

「なんだかすごく見られていましたね………」

 

 

賓客として招かれたクワトイネ人を見ることだった。

軍関連の視察要員としてブルーアイが、クワトイネ政府代表としてカナタがやって来ている。

実は既にネット上ではクワトイネ公国にエルフなどの亜人がいることは有名で、一目エルフを見るために集まった人も少なくはない。しかし今日は亜人はブルーアイ一人しか居ない。

 

 

「日本には亜人はいないそうですからね。ブルーアイさんの容姿が珍しいのかと。

それにしても大きな軍船ですね………」

 

 

カナタは先ほど進水式を済ませた初雪を眺めながらそう言った。カナタから言わせればこのレベルの艦艇を売ってくれるという話に裏があるのではないかと疑ってしまうのだが。

 

 

「ブルーアイさんから見て、初雪はどれ程の戦力になるとお考えですか?」

 

 

カナタは興味本位でブルーアイにそう聞いた。どうせ後になれば報告書として上がってくるだろうが、直接軍人から意見を聞いてみたかったのだ。

 

 

「少なくとも第三文明圏に於いては敵なしと言えるでしょう。パーパルディア皇国の戦列艦など、50隻集まっても初雪を沈めることは出来ないと思われます。ムー国の新鋭艦と同レベルと言ったところでしょうか。まぁ、我々の聞いている情報が正しければ、ですが。」

 

 

ブルーアイは率直な意見を述べる。彼は日本との軍事同盟を締結してからこの日まで一ヶ月強、クワトイネにある分全ての第三文明圏の軍事情報を掻き集めていた。その為ある程度は初雪の強さを理解していた。

 

 

「そうですか………心強いことこの上ないですね。」

 

「それにしても、これ程の艦艇をこの速度で量産できるのなら、我が国の存在意義はやはり殆ど無いのではないでしょうか………?」

 

 

ブルーアイはクワトイネが日本に都合のいいように扱われるのではないかということを心配していた。

それについては、カナタも心配するところだった。

 

 

「………今は日本国を信じるしかありません。」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。