後、言ってませんでしたがこれは不定期投稿です。
1639/04/10 マイハーク
「突然申し訳ありません、朝田さん。」
「いえいえ、お気になさらず。喫緊の問題とお見受けします。どうなさいましたか?」
ヤゴウ重要な案件を持ってはマイハークにある日本大使館に訪れていた。色々あって駐クワトイネ大使となった朝田は、ヤゴウから数枚の書類を受け取る。
「ロウリアへ放った密偵から入った情報です。ロウリアでは陸上部隊を4/12までにギムへ、4/25までにマイハークに侵攻させることが決定したそうです。どうか、どうか日本国から援軍を派遣しては頂けませんか?」
書類には、ロウリア軍の詳細な作戦内容が書いてあった。規模、質、共にとてもクワトイネ軍が勝てるものとは思えない。しかし、日本も国土防衛すら未だ回復したとは言い難い状況であるのに、必要以上にこちらに力をさくことなどできない。とはいえ日本には最初からクワトイネを見捨てるなどという選択肢もない。
日本の選択は既に決まっていた。
「………了解しました。本国に確認を取りますが、いいお返事が出来ると思います。しかし、灘風とダイタル基地航空隊しか援護に回せません。そこはご了承下さい。」
「ありがとうございます。我々も戦争へ向けて十分な準備を進めて参ります。」
ヤゴウはそう言ってそそくさと大使館を出て行った。それを見送った朝田は、紅茶を飲みつつ必要な書類を手に入れるために外務省へメールを送った。
マイハークは今日も美しい。でもこの世界では、明日も美しい保証はないのだ。それは、この世界で飛び抜けている我が国とて同じだということを、ゆめゆめ忘れてはいけない。
同日 ダイタル基地
しとしとと雨の降る夜、ダイタル基地に高橋からの連絡が入った。
「もしもし、こちらダイタル基地の大内田です。」
「ああ大内田さん、どうも。突然なんですが、ロウリアがそろそろ動くようです。」
大内田はそれを聞いて、無意識に姿勢を正す。ロウリア軍が動きを見せる、それが即ちどういう事かをよく理解していたからだ。
「第二十一航空隊に告ぐ。これから我が国はロウリア王国に宣戦を布告する。クワトイネ軍と協力し、ロウリア軍を撃退せよ。」
「………拝命しました。」
「では早速準備を始めてくれ。クワトイネ軍も明日の朝エジェイ基地を出発し、その晩にでも到着するそうだ。」
「分かりました。それでは失礼します。」
受話器を置いた大内田は、深いため息を一つつき、自室に戻った。
街が遠いので、部屋からは煌めく美しい星空を見ることが出来る。彼は自衛隊に入ったときから国民のために人を殺す覚悟を決めていたが、なぜか今夜はあまり眠る気にはならなかった。彼はなぜか湧き出る不快な感情を、星空を硝煙と血で汚してしまう罪悪感に因縁付けた。
「本日は我が国への支援、誠にありがたく思います。」
クワトイネ軍からは、日本から供出された兵器が配備された精鋭部隊『特別ロウリア軍対策小隊』だけを派遣してきた。これはブルーアイの進言によるもので、剣と盾と弓では日本の足手まといになるだけだという判断からだった。そして実際、この判断は正しく大内田はこの編成に大変満足した。
「早速ですが、明日の作戦をお伺いしたいのですが。」
マイハーク防衛騎士団団長であり、特別対策小隊の隊長でもあるイーネは本題を切り出した。翌日にはロウリア軍のギム侵攻が始まるとされているのだ。一刻も早く作戦を聞き、調整を始めなければならない。
「ええ、まずロウリア軍の現在の動きですが、12日にでもギムに到着すると考えられています。ロウリア軍がギムから10㎞の領域に到達したとき、我が軍の航空隊から30機が航空攻撃を行います。その後、我が軍の航宙隊70名がNi25式(2925式という意味。9=Nineより。2925年=1625年)105㎜無反動砲でおおよその敵を撃退します。
この段階で敵軍が撤退もしくは全滅しておらず、ギムから5㎞まで近づかれた場合、航宙隊と貴軍と合同で防衛します。」
「なるほど………」
イーネは作戦の概要を聞いて納得した。しかし、心配していることが一つあった。
「しかし、いくら貴国の軍とはいえど、何万という軍人をこの短時間で殲滅することは可能でしょうか?敵はワイバーンもかなり用意していると聞きます。」
イーネの心配は尤もだった。クワトイネ軍に支給された兵器は確かに強力なものだったが、実戦経験がないため敵にどれだけの犠牲を出せるのか疑問が残る。そして何よりギムには十万の人間が生活している。何があってもギムへのロウリア軍の侵入は防がなくてはならない。
「ご心配なく。我が軍の航空隊は文字通り『一機当千』、確実にロウリア軍に甚大なダメージを与え、指揮系統に甚大な被害を与えることが出来ます。」
大内田は自信満々にそう告げた。
「その言葉に偽りはないか?」
「モ、モイジ殿、やめないか!」
しかし一人、大内田の答えに難色を示した者がいた。彼は、今回の副部隊長であり猛将と名高いモイジだった。彼は大内田の答えに不満があったらしく、彼を睨みつける。
彼は、長い間妻と子とギムに住まい、街を魔獣から盗賊から守ってきた。彼のギム防衛に掛ける想いは人一倍強く、たったの100人の自衛隊派遣にかなりの不安と憤りを感じていた。
「………あなたがモイジ殿ですか、お噂はかねがね伺っております。勿論モイジ殿の意見は分かります。ですがここは信じて頂くしかありません。我が軍も出せるだけの力をこの戦争に掛けています。生半可な気持ちでないのはこちらとて同じです。」
大内田はモイジの出す武士のオーラに内心かなり怯えながらも、しっかりと強く返事をした。
モイジと大内田の睨み合いはしばらく続いた。
「………なんにせよ、戦いのために準備を始めなければなりません。今日のところはこれで解散にしましょう。」
結局、イーネの判断でこの場は解散となった。しかし、モイジは未だ納得が出来ずにいた。