Ace of Aces - スラムダンクの続き -   作:こうやあおい

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第57話

 ──ハーフタイム。

 生中継で放映されているこの試合、ハーフタイム中は今までの試合のダイジェストが届けられており神奈川の至る所でその放映をかじりついて観ている人々の姿があった。

 

 魚住は実家で板前修業の手を一時止めてブラウン管の向こうの後輩達の活躍を頼もしく見届け、緑風のメンバー達は部室に集ってテレビを眺め、湘北の桜木は自身のアパートで友人らと共にブツブツ文句を言いつつもテレビ観戦を決め込んでいた。

 

「チッ、センドーも野猿もこの天才抜きの全国で決勝など……!」

 

 イライラしながら見やるテレビ画面では準決勝までの仙道のスーパープレイ集が流されており、「センドーめ」と逐一文句を言わずにはいられない。

 実況と解説も、その仙道のプレイぶりを事細かに視聴者に伝えている。

 

「陵南のキャプテンの仙道選手ですが、国体では神奈川のエースとして全国優勝に貢献した実績があるとはいえインターハイは初出場ということで……、初出場で決勝進出というのは素晴らしい活躍ぶりですね、唐沢さん?」

「これほどの選手が埋もれていたというのは、まさに神奈川のレベルの高さを表していると思います。海南の主将の神選手をはじめ、緑風高校のマイケル沖田選手、去年は山王工業に勝った実績を持つ流川選手など優れたフォワードがいます」

「なるほど」

 

 そこで桜木はちゃぶ台に手を付いて激高した。

「おいおいおい、コラ解説のジジイ! このスーパー天才児・桜木を忘れてるぞ!! ルカワやガイジンよりこの桜木だろう!?」

 隣で友人達が大爆笑し、頭突きで黙らせつつチッ、と舌打ちする。なおテレビ画面ではなぜか清田のダンクシーンまで映しており、イライラが頂点に募りつつある。

 

「神選手と仙道選手のフォワード同士の主将対決というのも見所の一つかと思いますが、両選手の違いというのはどういう部分なんでしょうか? 確か……神選手は神奈川の最優秀選手と得点王にも選ばれていますね。去年は全国の得点王という実績も持つ名シューターでもあります」

「ええ。神選手は正確なシュートを武器に点を獲るタイプのフォワードですね。仙道選手は攻守共に隙がなく、時には司令塔としてゲームメイクも出来る。こういうタイプのフォワードは日本ではとても貴重です。私自身、このインターハイで初めて彼のプレイを見て、その能力の高さに驚かされました。このような選手が初出場というのだから、いやはや恐ろしい」

「去年、一昨年と陵南は神奈川ベスト4に甘んじていたということですからね。しかし、その中であって毎年出てくる海南大附属はやはりさすがということですか」

「そうですね。海南はコンスタントに毎年いいチームを出してきます」

「しかし、楽しみですね。インターハイに来られなかった選手達も含めて、彼らが今後の日本バスケット界を担っていくと思うと……。唐沢さんも青田買いのために毎年インターハイを観戦されているそうですが、今年はどうですか?」

「高校生はまだ素材ですから、なんとも言えませんが……。やはり、仙道選手は我が深体大にぜひ欲しい選手ですね」

「深体大といえば、ここ愛知のスター選手である元愛和学院主将の諸星大選手が進学して話題となりましたが……」

「はい。非常に練習熱心で、今後が楽しみな学生です。一年生ながらに良いムードメーカーとなってくれています。もしも仙道選手が獲れれば、諸星・仙道を軸に数年後の我がチームも安泰でしょうね」

「彗星のように現れた仙道選手ですから、日本中の大学が彼にラブコールを送ることになるとは思いますが……。その辺りの進退も注目されるところですね」

 

 そんな解説と実況の声を聞きながら、緑風高校の部室では「ワオ」というマイケルの陽気な声があがっていた。

「いやぁ、凄いねえ仙道君! 公開スカウトだよ!」

「あら、でも仙道君だったら日本なんかにいたらもったいないわよ。マイケル、あなた彼をアメリカに連れて帰ったらどう?」

「はははは、面白いこと言うねえ恵里。んじゃ、ちょっと口説いてみてもいいかなァ」

 そんなマイケルの軽口に、ヤレヤレ、と肩を竦めつつ克美は画面を見やる。

「けど、まさか陵南が決勝まで進めるとは……。これってオレたちのおかげだったりしません? ホラ、見てくださいよ今の。オレたちと練習した成果だ」

 画面のダイジェストは準決勝の名朋対陵南戦になっており、絶妙のトライアングル・オフェンスを絶賛する実況を聞きながら克美は不敵に言い放った。

 そんな克美の頭をコツンと小突き、ふ、と名高も笑う。

「ま、せっかく決勝まで勝ち進んだんだ。今度こそ海南に勝って優勝してもらいたいよな」

「ですね。じゃないと協力した意味がない」

 そんな克美を、はははは、とマイケルが笑いとばした。

「克美クーン。素直に応援してあげなよ。なんだかんだで気になるんでしょー、越野君がちゃんとやってるかとかさ」

「バッ……! だ、だれが越野さんなんて! ま、まあ、心配といえば心配ですけどね。短気だし、小さいし」

 カッとした克美がそう言い放って、全員から笑いを誘った。

 なんだかんだ予選後は一緒に練習していた陵南に少し肩入れしてしまうのは無理からぬことだろう。

 

 そんな神奈川の面々の様子は露知らず、田岡は控え室で渋い顔をしていた。

 リードはたったの2点。あってないようなものだ。いつもいつも、海南には試合終盤でさんざんにやられてきており一度も勝てたことはない。つまり、現時点での2点リードなどマイナスのようなものである。

 しかしながら海南はまだこちらのオフェンスに対処できていないきらいがあり、ならばオフェンス時間を増やすことが先決だ。

「お前たち……。走る体力は残っているな?」

 言えば、ピクッ、と選手達の身体が撓った。

「後半、いっきに突き放すぞ。相手は海南だ、何十点リードしても食らいついてくる。走って走って、走り勝つしか道はない。いいな!」

「はい!」

 

 

 ──後半開始。

 最初の海南オフェンスの時に、その「事件」は起きた。

 清田のスローインからパスを受け取った小菅にピタリと植草が付き、コートに入った清田にもピタリと──仙道がついた。

 

「なッ……!!」

 

 神には福田が付き、田中・鈴木にはそれぞれ菅平・越野が付いて観客はワッと歓声をあげた。

 

「オールコートマンツーマンプレス──ッ!?」

「陵南、はやくも勝負に出たかッ!?」

 

 オールコートマンツーマンプレス、とは文字通りにオールコートでマンツーマンディフェンスにあたることだ。

 そのプレッシャーは相当なもので、予想だにしていなかったディフェンスに一瞬、小菅が気を取られた瞬間。

「あッ──!」

 植草にボールを弾かれて簡単にスティールを許してしまう。気づいたときには植草はボールを高く投げあげ──、清田をかわした仙道が高くゴールに向かって跳び上がっていた。

 

「うわああ!」

「仙道のアリウープだあああ!!」

 

 ものの数秒──あっという間に得点されて、唖然とする海南陣営とは裏腹に陵南ベンチが踊る。

 

「さすが植草-仙道ライン!!!」

「痺れるで、仙道さん、植草さん!!」

 

 再び海南のスローインであるが、やはり陵南はそのままオールコートプレスで来て、小菅はまだ動揺を抑え切れていなかった。共にボールを運ぶべき清田には仙道がついている。無理だ。パスで──、などと思ってしまったらもう相手の思うつぼだった。

 ロングパスは仙道にインターセプトされ、そのままゴール下でパスを受け取った植草にあっさりレイアップを入れられる結果に終わった。

 

「田岡先輩……!」

 

 早々に勝負をかけてきた田岡に、高頭は思わず陵南ベンチを見やった。

 昨日の準決勝といい、陵南は相当に体力に自信を持っているらしい。しかし──。このプレスを甘んじて受けるわけにはいかない。突破できなければ、昨日の名朋のようにものの数分であっという間に20点は取られてしまう。

 

「落ち着いていけッ、小菅! 練習を思い出すんだッ!」

 

 ベンチから高頭の声を受けて、小菅はハッとした。

 そうだ。今まで散々、打倒・山王を想定して、山王工業の伝家の宝刀であるプレスの突破練習はしてきたはずだ。しかし──清田についたのが仙道となると、やはり厳しい。陵南も分かっているのだ。いくら清田の機動力が高いとはいえ、仙道の速さと高さの前ではそう仕事はさせてもらえない。

 く、と歯を食いしばりつつ小菅はスローインに向かう清田に告げた。

「お前、すぐにあがれ。ここはオレ一人でいい」

「──! お、おっす」

 そうだ。仙道はバックコートから追い出した方がいい。プレスは破ってしまえばこっちのものなのだ。相手がマンツーで来ている以上、自分以外の全員がフロントコートにあがれば残るのは植草のみ。

 つまり、自分が植草さえ抜けば勝ったも同然。──と小菅は清田からパスを受けて植草を背にしつつ慎重にドリブルをした。

 10秒あるのだ。慎重に抜けばいい。

 

「7、8──」

 

 じりじりと移動するものの、ズバッと抜けないまま時間が過ぎ、残りあと2秒を切ったところでようやく小菅は植草を振りきった。が、センターラインまでまだ距離がある。

 クッ、と唸りつつボールを何とかフロントコートに投げ入れれば、10秒バイオレーションは免れたものの──。

 

「仙道ッ!」

「インターセプトだッ!」

 

 ゲッ、と目を見開いた時にはもう遅かった。いくら海南の戻りが速かろうが、間に合わない。なにせ既にバックコートには植草がいるのだ。

 

「カウンター!」

 

 叫んだ仙道の声と共に、絶妙のキラーパスが植草に通り──きっちりと植草はレイアップで一本決めた。

 会場全体が沸き、海南メンバーが少々焦りの色を浮かべる中で神がスローインのためにエンドラインまで来て、ボールを掴んでいた小菅に声をかけた。

「落ち着いてやろう。さんざん、プレス対策は練習してきただろ? 相手が山王か陵南かの違いだけだ」

「あ、ああ……。そうだな」

「頼んだよ。ここばっかりは、ガードの仕事だ」

「ああ」

 言われた小菅は一度深呼吸をして神からボールを受け取った。

 植草をかわしながら思う。プレスは上手くはまれば効果絶大で、やられる側は焦りからミスが出やすくなる。まずは落ち着くことだ。突破の基本はマンツーであれゾーンであれ、ガードがドリブルで破ることだからだ。

 あとは、プレスの性質を見極めて逆にワナにはめてやればいい。突破さえすれば、オールコートプレスは穴が大きなハイリスク・ハイリターンなディフェンスであることには変わりない。

 海南のガードをナメんなよ! と小菅は自分より背の低い植草よりもさらに腰を低くして駆けた。制限時間は10秒。10秒はあるのだ。焦らず突破して、神かインサイドに繋げばいい。

 

「抜いたッ!?」

「いや──ッ!」

 

 強引に切れ込んで、小菅は越野がついているミスマッチの鈴木のところにパス──、と見せかけ神に繋いだ。

 受け取った神はターンアラウンドで福田をかわし、クイックリリースからのフェイダウェイスリーを文字通り目にも止まらぬ速さで打った。

 福田のブロックは間に合わず──綺麗に決まって海南ベンチが沸く。

 

「いよっしゃあああ! キャプテーーン!!」

「さっそくプレス突破だあああ!!」

「見たか陵南! これが王者・海南だ!!」

 

 しかし陵南は動じない。

 冷静にトライアングル・オフェンスで一本返した直後に互いに目配せし──、ディフェンスに入った瞬間にさらに観衆はどよめいた。

 

「陵南……!」

「ゾーンプレス──!?」

 

 陵南はマンツーマンプレスを止め、ゾーンプレスに切り替えて2人がかりで小菅にプレッシャーをかけたのだ。

 驚いた清田が助けに行こうとすれば、もはや陵南の勝ちである。

「バカッ、来るなッ!」

 焦った小菅の叫びが響いたときには既に越野にスティールされ、ゾーンの2列目から駆けてきた仙道にパスが通っていた。

 あまりに絶妙な連係プレイに、観客席で見ていた諸星は興奮から立ち上がって叫び声をあげた。

 

「いっけえええ仙道ーーー!!!」

 

 その言葉を受けるように仙道のダンクが決まり、会場が仙道コールに染まって諸星は不敵な笑みを隣の紳一に向けた。

 どうだ、と言わんばかりの諸星の表情に紳一はため息を吐いた。

「まあ、陵南はいい連携なのは認めるが……。ウチだってこんなもんじゃない」

 とはいえ、紳一としてもやや心配げに後輩達を見やる。自分の代では試せなかったが、山王相手のゾーンプレス対策はさんざんにやってきたのだ。ここで披露せずにどうするんだ、と見やる先で陵南はゾーンの組み方を変えてきた。

「なにッ!?」

 さしもの紳一も声をあげた。──バカな。と、驚愕して分析している間もなくあっさりボールを奪われ、また陵南はポイントを重ねた。

 そのようなことが数回続き、なるほど、と紳一は額に汗を浮かべた。陵南はありとあらゆる陣形のゾーンを徹底練習してきているらしい。おそらくは陵南選手しか知り得ない「順番」があるのだろうが、幾種類ものプレスを使い分けることで、海南に冷静になる隙を与えない作戦なのだろう。

 ただでさえ強力なプレスはガードにとっては嫌なものだというのに。──と、自身が山王にプレスを仕掛けられて負けた苦い思いも過ぎらせつつ、後輩達を見やった。

 後半のまだこのような序盤では、高頭もタイムアウトは取れないだろう。選手達で何とかするしかない。

 

「いけいけ陵南! おせおせ陵南!」

「いけいけ陵南! おせおせ陵南!」

 

 会場が陵南一色に染まりつつある中、小菅はさらに大きな深呼吸をした。

 取りあえず、相手がどんなゾーンで来るかは考えても無駄だ。いちいち動じていたらスティールされて終わる。

 神の言うとおり、対策はしているのだ。絶対に破れる。と、清田を呼んだ。

「これからは2人でボールを運ぶ。覚えてるな? まずプレス突破の大前提は──」

「ポイントガードがボール運ぶことっす!」

 言葉にかぶせるように力強く言われて、小菅は舌打ちしそうになるのをどうにかこらえ、耐えた。

「スマン。プレスに対する心構えは」

「あ……、ゾーンを組ませないことっすね!」

 ああ、と小菅は頷く。

「陵南がどんなゾーンを組むか今後は一切気にするな。あっちが点を取ったらお前はすぐスローインしろ。そして二人で突破する! やれるな?」

「お、おっす!」

 頷いた清田に小菅も頷き返し、既にフロントにあがった神たちに指で指示を送った。そうしてスローインのため外に出た清田からパスを受け取ると──さっそく越野・植草のダブルチームがプレッシャーをかけてくる。

 これ以上思い通りにさせてたまるか。と、小菅はボールをドリブルしながら強く後ろに弾いて、自身の背後にいた清田に渡した。すればダブルチームは清田に移り──自身からマークが外れる。そして今度は自分が清田の背後に回って清田からのパスを受け取り、一気に前進する。

 

「おおッ!」

「海南、巧いッ!」

 

 基本、どんなゾーンであれゾーンプレスとはダブルチームでボールホルダーにプレッシャーをかけてくるのが常だ。ゆえにこうすればボールを取られる事なくフロントコートに近づける、と小菅は最後に受け取ったボールをセンターラインのサイドに立たせていた鈴木へと渡した。同時に素早くインサイドにカットインした神にボールが渡ってそのまま神が決め、「よっしゃ!」と清田も跳び上がった。

 

「よォし! それでいいんだ!」

 

 海南ベンチで高頭も手を叩く。

 が、陵南の選手達も田岡も動じない。海南がプレス突破の策を講じているというのは織り込み済みだ。

 1、2回突破されたところで、手を緩める必要はない。オフェンスで陵南が優位に立っている以上は、多少の漏れがあったところでプレスディフェンスを続ける価値は絶大だからだ。

 事実──、後半開始直後からの陵南怒濤のプレスにより、点差は時間が経つごとに増していっている。海南がプレスを突破して獲った点でも、点差をひっくり返すには至っていない。

 

「チッ……、不味いな」

 

 清田はちらりとスコアボードを見やった。後半残り13分。あと1ゴール許したら、20点差が付いてしまう。

 そもそも去年の予選決勝リーグでも陵南には最大で15点差を付けられていたのだ。あの時は何とか勝てたとはいえ、陵南の地力はやはり高いと認めざるを得ない。

 特に──やはり、仙道だ。敵選手であれ「凄い」と認めるしかない、まさに「天才」だ。この人を超えなければ、次代の神奈川ナンバー1は担えないだろう。

「超えてやる……!」

 こちらがプレスを突破しても、ゾーンを破られたあとの事も想定してきっちり練習を重ねてきたのかチェックが厳しくなってきている。

 しかし、ボールをフロントコートまで運びさえすればダブルチームからは解放される。

 センターラインそばで小菅からボールを受け取った清田は、そのまま一気に鋭くゴール下まで切れ込んだ。が、ゾーンを崩した仙道がチェックに入ってくる。だが──。彼を越えなければ、自分にも海南にも未来はない。

「ジャンプ力なら負けねえぜッ!!」

 そのまま強引に跳び上がってダンクの姿勢を見せれば、甘いとばかりに仙道が全力でブロックに来てあえなくボールは弾かれた。

 

「止められたァ!」

「さすが仙道!」

「甘いぜ二年坊主ッ!!」

 

 が──。

 こぼれたボールをハイポストにいた鈴木が拾った。着地した仙道に田中がスクリーンをかけたのを見て、清田はもう一度手をあげた。そしてパスを受け取る。

「くらえええ!!!」

 ゴール下に自身を遮る敵はいない。視界の端に越野が全力で駆けてきてブロックに跳び上がったのが見えたが、越野に当たり負けするほどヤワな身体はしていない。

「うらああッ!」

 そのまま越野を弾いて、清田は両手で力の限りのダンクシュートをゴールに叩き込んだ。決まった、と無意識に口の端をあげた。

 

「越野ッ──!」

 

 仙道の叫びと共に、審判の笛の音が聞こえた。バスケットカウントだ。着地した清田は興奮のままに握った両手拳を力強く天へ突き上げた。

 

「いよっしゃあああ!!」

 

 海南ベンチも沸いて、一気に清田コールが沸き起こる。

 が──、数秒後にその興奮は審判のけたたましいホイッスルによって掻き消された。

 

「レフェリータイム!」

 

 え──、と見やると、自身に吹っ飛ばされた越野が微動だにしないまま転がっており……、清田は目を見張った。

「こ、越野さんッ!?」

 慌てて駆け寄ると同時に、陵南のベンチからも選手達が飛び出してきて慌ただしく担架を呼ぶ声が聞こえた。

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