Ace of Aces - スラムダンクの続き -   作:こうやあおい

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第6話

 決勝リーグ初日の朝──つかさも応援に駆けつけるべく、いつも通りに起きて制服を着込みいつも通り紳一と一緒に朝食を取った。

「いよいよね、お兄ちゃん。私も今日は目一杯応援するから!」

「会場は平塚の総合体育館だからな。間違えて陵南の方に行くんじゃねぇぞ」

「い、行かないよ!」

「だと良いけどな」

 いつも通りのたわいのない会話を繰り広げ、一歩先に紳一が会場へと向かうべく家を出る。その背を見送ってつかさも出かける準備に取りかかった。

 

 決勝リーグは各ブロックを勝ち上がってきた4校──海南・陵南・湘北そして武里による総当たり戦で順位が決まる仕組みになっている。

 今日は湘北・海南戦と武里・陵南戦が行われ──来週末には湘北・武里戦、海南・陵南戦、最終日に武里・海南戦と陵南・湘北戦が行われて最終順位が決まる。

 

 もう何度目を通したか分からない決勝リーグの予定表にもう一度目を落としつかさは、むぅ、と唇をとがらせた。

「なんか、陵南の日程ツイてないなぁ……。キツそう」

 紳一から決勝リーグに勝ち進んできた4校のスタッツを見せてもらったが、4校のうち武里は一歩、いや二歩ほど実力が劣っている。おそらく武里のブロックに翔陽がいれば勝ち上がってきたのは翔陽だっただろう。故に、実質優勝を争うのは海南・陵南・湘北の三校。となると──湘北・海南と連日で戦わなければならない陵南は肉体的にかなり不利である。逆に海南・湘北は一週間の中日があるために十分な休息を得ることが可能である。──と考えてつかさはハッとした。

「いやいや。海南に有利なんだから、ラッキーよ、ラッキー」

 しかし──。むろん紳一率いる海南に優勝して欲しいとは思っているものの。神奈川からは2校がインターハイに行けるのだから、もう一校は──、と脳裏に仙道の姿を浮かべてつかさは小さく首を振るった。

「さ、私も行かないと!」

 どちらにせよ陵南は今日は大丈夫だろう。どのみち総当たり戦なのだから2戦、3戦目は見られるのだし、やはり海南が第一。気を取り直して家を出るとつかさは電車を乗り継いで平塚の総合体育館へと向かった。

 さすがに会場は決勝リーグだけあって試合開始30分前だというのにほぼ満席だ。

「んー……」

 もしもうっかり湘北サイドに座ってしまったらやりにくい。かといって席を探して歩き回るのも手間だとつかさは立ち見を決め込んでスタンド入り口付近の手すりに手をついた。試合開始まであと10分となる。するとコート両脇の扉が開いて両校のメンバーが会場に姿を現した。

 途端、ワッと観客が沸いた。初出場だというのに湘北への声援もなかなか多く、紳一達の姿を目に留めたつかさも負けじと声を送った。

「かいなーん!! ファイトー!! おにいちゃーん、神くーん!!!」

 するとなぜかめざとくその声に気付いたのは一年の清田信長だったらしく──まるで猿のごとく飛び上がってこちらに向かい手を振ってくれた。

「き、清田くーん、ファイトー!」

「カーッカッカッカ! この神奈川ナンバー1ルーキー・清田信長に大いに期待していてください!!! 海南大勝利間違いなし!!」

 やばい、ちょっと恥ずかしい。と律儀にこちらの声に大声で応えて会場の笑いをかっさらった清田につかさは若干ほほを引きつらせた。

 相変わらず元気、いや、騒がしい一年生だな……とそのまま清田を見やっていると、なにやら湘北一年生の流川と桜木にインネンを付け始めてしまった。はらはらしていると紳一の怒りに触れたのか鉄拳制裁を食らってさらに会場の笑いをさらい──、つかさは一つため息を吐いた。

 清田が流川をライバル視しているらしい、とは紳一に聞いて知っていたが──果たして。

「湘北は……。宮城くんってあの人かな、7番」

 まだ見たことのない宮城と三井を視認すべく湘北サイドに目線を落とすと、見覚えのない選手が二人。神によれば宮城は自分と同じくらいの身長──つまり170センチ未満ということで、おそらくは7番だ。あと見慣れない顔は──14番を付けている短髪の選手である。

「けっこう大きいな。お兄ちゃんくらい? 2番だったらマッチアップは清田くん、か。んー……でも流川くんいるしなぁ……。ディフェンスはゾーンかな、ウチは」

 海南で一番上背があるのはセンター高砂の191センチである。そして次がスモールフォワードである神の189センチであり、高さでは湘北に分がある。とはいえ7番が噂の宮城であればポイントガードだけはかなりのミスマッチだ。

「あの上背でお兄ちゃんの相手はちょっとキツいよ」

 自分が紳一とマッチアップしていた時の差を思い浮かべて、つかさは手すりに体重を乗せて身を乗り出した。

 そして試合開始のブザーがなり、決勝リーグ緒戦の火ぶたが切って落とされた。

 

 試合開始から海南は順調に得点を重ね、いまのところ湘北には得点を許していない。

 が──。

「ナイスリバンッ、赤木さん!」

「うおお、すげぇ湘北の赤木、また取ったぜ!」

 既に数本、オフェンス、ディフェンスと合わせてリバウンドをもぎ取ってセカンドチャンスを作っている赤木に会場は熱い声援を送っており、つかさも感嘆の息を漏らした。

「いいセンターだなぁ……赤木さん。ウチはゴールしたが厳しいなぁ」

 人ごとのように呟けるのは、今のところリードしているからだろうか。いや、客観的に見て湘北の赤木は海南の高砂より実力は一枚上だ。特にゴール下はほぼ隙がない。とはいえ、せっかく赤木がリバウンドを取っても海南がうまく守っているため湘北の得点には繋がっていない。

「にしてもお兄ちゃん、なんであんなムキになってるの……」

 なぜだかめちゃくちゃに動き回っていた湘北の桜木を紳一がマークしており、つかさは解せないといった面もちでコートを見下ろしていた。桜木は、神くらいの上背がありパワーもジャンプ力もずば抜けているが──まだまだ動きが初心者である。なにもあんなにムキにならなくても、と感じるのはコートの外で冷静に見ていればこそなのだろうか? なにせ桜木は、あの仙道が熱を込めて絶賛していた素材でもある。

「ゴール下で桜木くんにつくのは正解だけど。制限エリア外では関心しないなぁ」

 これだから男子はすぐ熱くなって、と感じるも、毎日毎日泥だらけで諸星や紳一に挑み続けていた過去が瞬時にフラッシュバックし──前言撤回、と戒める。どうやらこれは牧家の血や遺伝子の問題と言えそうだ。 

 立ち上がり、あまり良くないのよね。お兄ちゃんは。などとつかさが感じていると、海南監督の高頭もこの状況を良しとしなかったのか早めに動いて早々に桜木をベンチに引っ込めることに成功した。しかし、桜木が引っ込んでようやく高さ的には五分と五分だ。とにかくインサイドが厳しい。と両校のセンターを見やっていると、急に会場が轟いた。どうやら赤木がゴール下で負傷したらしく、コートに倒れ込んでおり審判よりタイムが告げられた。

「これは……」

 一連の騒ぎを見守って、つかさもごくりと息をのんだ。赤木のかわりに再び桜木がコートに戻ってきたものの、赤木不在はどう見ても厳しい。これは、いままでとは逆にインサイドが手薄になり──海南側のチャンスだ。

 むろん海南もそう考えたようで、攻撃をきっちりとインサイド主体に切り替えていた。が、ずば抜けた運動能力を誇る桜木もゴール下で奮闘を見せ、ワッと会場も沸いてつかさも目を見張った。

 ──大黒柱が不在となり、相手は優勝常連校。普通ならばコートに残った選手には緊張が走り空中分解となるのが常だ。

 だというのに、むしろ湘北は赤木がコートを出てから集中力が格段に増した。

「湘北……、強いな……メンタル……」

 桜木も数ヶ月前の陵南との練習試合の時よりも格段に上手くはなっている。この湘北怒濤の勢いに感化されたのか会場からは湘北へ向ける応援コールが海南のそれより勝っており、「あ、まずい」とつかさはハッとした。声を出さなくては、とスッと息を吸い込み声を張る。

「かいなーん!! いっぽん! いっぽんじっくりー! ファイトー!!」

 しかし、無情にもその声はちょうどパスを受け取った流川への黄色い声援にかき消されてつかさは、う、と唸った。

 

「ルカワ! ルカワ! ラブラブラブリー・ルカワ!!」

「ルカワ! ルカワ! ゴーゴーレッツゴー・ルカワ!」

 

 なんなんだ、あれは。と思うもなにやらチアガールのような一団が一心不乱に流川にラブコールを送っており、つかさは頬を引きつらせたのちにふるふると首を振るった。あれは対抗するだけ無駄なようだ。 

「流川くん……」

 いまやすっかり湘北のエースである一年生の流川楓。こちらも190センチに迫ろうというほどの長身で、ルックスも男前であり──騒がれるのもさもありなん、とつかさも流川の背番号「11」を目で追った。

 キャプテンの赤木を失ってエースの責任を感じているのか、それともただの意地か。なにやら躍起になって一人で得点を重ね続けており、そのたびに館内がどよめいている。

「確かに、去年の仙道くんみたい……かなぁ」

 ふと、つかさは脳裏に去年のルーキー時代の仙道のインターハイ予選での姿を浮かべた。諸星以上だ、と感じた仙道のプレイ。多彩な技を持っていて、がんがんと攻めてくるような圧倒的なオフェンス力で。──そう思うと確かに流川の技も多彩であるし、身体能力も仙道に劣っているとは思えない。身長もほぼ同じだ。でも──。

「なんか違うのよね……仙道くんとは……」

 もちろんすごく上手いんだけど。と、なおコートを駆ける10人を目で追っていると、ふいに背後からかなりの人数の足音が登ってくる気配が伝った。

 思わず振り返ると──、ついいま脳裏に浮かべていた人物が姿を現してつかさは一瞬だけ絶句した。

「せ……、仙道、くん」

「ん……? あ、つかさちゃん」

 見上げると、魚住を筆頭に陵南の面々が急に姿を現して──つかさの声に反応したらしき仙道はひょいと魚住のうしろから顔を出して、常のようにニコッと微笑んだ。

「え……なんで……」

 ここにいるんだ、とつかさが言う前に仙道はつかさの方に歩み寄り、そっと手すりに手を添えてつかさを間近から見下ろすように笑みを向けた。

 近い! と抗議しようとするが、当の本人は悪びれる様子もなくにこにこと常の笑みを浮かべている。

「そっか、あっちの会場にいないと思ったらこっちを見てたのか」

「と、当然でしょ! 私、海南の生徒なんだから」

「ははは、ま、そりゃそーか」

 少しばかり睨みあげると仙道の喉仏が愉快そうに上下して、よく響く低い声が間近に降りてきた。近い、と、いやでも少し意識してしまう。

 うしろでは「おい、仙道!」「なにやってんだ!」と陵南のメンバーが声を飛ばしていたが、当の本人はまったく気にするそぶりを見せていない。

 はぁ、と小さくため息をついていると、仙道はそのままスコアボードの方へ視線を投げた。

「お、45対47!?」

 その声を受けてハッとしたのか他の陵南陣もスコアボードを見やり、感心しきりに湘北への賛辞を述べている。

「ん……、だが、赤木がいない……?」

 すると赤木不在にめざとく気付いたらしき魚住がどことなく心配げな声をもらし、あ、とつかさは魚住の方を見やった。

「赤木さん、足を怪我したみたいで少し前に戦列から離れたんです」

「赤木が怪我!?」

「はい。湘北は赤木さんの替わりに桜木くんがセンターに入って……。それで──」

「で、赤木さん不在でなんでここまで競ってんだ? まさか、桜木が……?」

 つかさの声を受けてすぐそばで仙道が漏らし、ああ、とつかさは仙道を見上げる。

「流川くんよ。さっきから流川くんが一人で点差を詰めてるの」

「流川、一人で……?」

 ちょうどコートでは桜木から流川へのパスが通り、館内がどよめいてつかさも仙道も陵南の選手達も自然と流川へ意識を向けた。

 割れんばかりの声援が流川へと向けられ、流川はワンマン速攻で海南ゴールに向かっている。その流川に追いつき、ゴール下を守らんと立ちふさがったのは紳一だ。

「お兄ちゃん……!」

 紳一は流川より3センチほど身長は低いもののジャンプ力は超高校級だ。いままでも、こんな場面で紳一は必ず相手をブロックしてきた。

「止めろ、牧ィィーーー!!」

 ベンチから監督の高頭が声を荒げ、紳一も、そして流川も同時に飛び上がった。

 ──よし、捉えた! 瞬間、つかさは紳一のブロックを確信したものの──流川はそのブロックをかわしていったんボールを引き、そうして空中で再びボールを掲げてそのままリングへと力強くボールを叩き込んだ。

「なに……ッ!?」

「え……ッ!?」

 刹那、仙道とつかさの声が重なった。一瞬だけ館内が静まり……そして嵐のような悲鳴が会場を一瞬にして包み込む。

「ア、アンビリーバブルや! いったん戻してまたダンクしたで!? アンビリーバブルやぁぁ!!」

 陵南の部員が騒ぎ立て、つかさも瞬きを繰り返していた。

「ダ、ダブルクラッチ……ダンク……」

 空中でいったんボールを戻してからブロックをかわし、再びボールを放つ技──ダブルクラッチ。それ自体はつかさにもできる。諸星や仙道にいたっては得意としている技の一つだ。しかし──ダンクシュートとなると話は違う。別次元の技だ。

「だ、大ちゃん……できるのかな……あれ……」

 無意識に呟くと、頭上から「ん?」と声が降りてきた。

「"大ちゃん"……?」

 しかしその仙道の呟きはつかさの脳までは届かず、つかさは脳内で「え? いったん戻したよね? え、ダンク……?」と呟きながら両手を上下させて頭を抱え込んだ。

 バスケットのゴールが3メートルちょっとで、流川の身長が187センチ。流川ほどの身長があれば少しジャンプ力が秀でていればダンクをするのはそう難しいことではない。しかし、一度腕を下げてまたボールごと振り上げるとなると──。つまり──。

 1メートルくらい跳んでいたのだろうか。彼は。と頬を引きつらせていると、前半終了のブザーが鳴る直前で流川が清田からボールをスティールした。

「あ……!」

 そのまま流川はゴール下からのシュートを決め──とうとう前半だけで湘北は得点差をゼロにまで戻してしまった。

「やれやれ、今日の流川はそうとうノッてるな」

 仙道はどこか人ごとのように言ったが、追いつかれてしまった以上つかさにとってはもはや人ごとではない。これは、大丈夫なのだろうか。休息のためにコート外へ引っ込んでいく選手達を見送りつつ歯がみをする。すっかり間近にいる仙道の存在は頭から消えていた。

「仙道、行くぞ!」

「あ、おう」 

 が、陵南陣からの声に仙道が反応してパッとつかさのそばを離れ、あ、とつかさも意識を試合から仙道の方へ戻した。

「あ、仙道くん!」

「ん……?」

 呼び止めると、既に背中を向けていた仙道が改めてつかさの方へと向き直った。

「あ、その……。武里戦、どうだったの? 勝った……?」

 仙道はおそらくあまり大々的に勝利を宣言したいタイプではないのだろう。一瞬瞬きをして、笑みを一段深くし「ああ」とだけ言って頷いた。

「そっか、良かった」

「ま、でも、来週は海南とだけどな」

「あ……」

「さすがに海南戦はつかさちゃんからの応援は期待してねぇから」

 じゃ、と手を振ってから仙道は陵南陣の方へと向かい、つかさはキュッと唇を結ぶ。言い捨てていったということは、答えを期待していないということで。返事をする必要はないのだが──、でも、と巡らせて、ふ、と肩を落とした。

 

「おい、仙道。あんま恥ずかしい真似すんなよな!」

 

 一方、先に観戦席に腰を下ろしていた陵南陣に遅れて仙道が合流すると、前の席に座っていた越野が振り返って責めるようないたたまれないような視線を仙道に向けた。

「なにがだ?」

「なにがだ、じゃねえよ! なんなんだよ、あの子。あれ海南の制服だろう!?」

「ああ……。なにって、牧さんの妹だよ、彼女」

 あれ妹だったっけ? まあいっか、と仙道が首を捻る間もなくザワッと陵南陣営がどよめく。

「なんだって? 牧の妹!? 牧って……あの牧か? 海南の!?」

「ですよね? 魚住さん」

 件の、つかさとの「初対面」の現場に居合わせた魚住に仙道が話をふれば、魚住はその時の光景でも思い出したのか気まずげに「そ、そうだったな」などと呟いている。

「ア、アンビリーバブルや……。ぜんぜん似てへんやんか……。さすがのワイも気付けへんかったわ……」

 相当に驚いたのか彦一はいつもの張り上げるような声ではなく、愕然としたような呟き声を漏らしていた。

 越野はというと、いったん間をおき絶句したのちに再び責めるような視線を仙道に向ける。

「だ、だったらなおさらだ! 敵陣の女に手ぇ出すんじゃねえぞ仙道!」

 この言葉には黙するのが正解だな。と悟った仙道は、首に手をやって越野から視線をはずす、観客席の天井の方へと無言で視線を投げた。

 

 

 結局──海南は湘北に勝利を収めたものの得点差は僅か2点というぎりぎりのゲームであり、海南常勝神話始まって以来もっとも王者を苦しめたチームとして湘北には惜しみない拍手が送られた。

 

 

「ゴール下の赤木さん。中学MVPの三井さん、ガードの宮城くん、今年の新人王は堅いだろう流川くん、そしてリバウンダーの桜木くん……。湘北……どのポジションも目立ってるね」

 試合後に軽く練習をこなしてから帰宅した紳一を前に、話すことは今日の試合についてである。勝ったとはいえ辛勝だった紳一はどこか厳しい顔をしていた。

「勢いがあるからな、湘北は。各ポジション穴もあるが……機能したときは爆発的な勝負強さを見せる。お前……どう思う? このチーム」

「どうって……?」

「例えば、だ。お前がマッチアップするとしたら……」

 えー、とつかさは肩を竦めた。湘北はそれぞれのポジションに良い選手が揃った、能力的にはバランスの良いチームだ。もしも自分が対戦相手の監督だったら頭の痛いことだろう。

「まず、赤木さんはなかなか止められないと思う。センターだから得意なエリアは狭いだろうけど……、それを弱点として対抗できるセンターって普通いないから、お手上げかな。もし動けるセンターがいたらあえて離れて勝負する」

「ふむ……」

「三井さんは、ソツがないし攻守のバランスもいいから2番としてはどの学校でもレギュラー取れると思うけど……。あまり体力がないみたいだから、そこだけが欠点かな。もしかしたら一番怖い選手かもしれない」

「お前……。2番に対する評価甘くねぇか? 愛和と奴らが対戦したらマッチアップは諸星だぜ?」

「あ、それは大ちゃんの圧勝だから大丈夫」

 突っ込んできた紳一にさらりと笑顔で言い放ち、でも……とつかさは息を吐いた。脳裏に浮かんだのは、流川の見せたダブルクラッチだ。

「流川くんは……、私とポジションが同じだから、どうしても自分とマッチアップしてるイメージが浮かんでくるんだけど……。ちょっとイヤだなぁ。こっちが上手とか下手とか関係なく突っ込んで来られそう……」

「仙道とはタイプは違えど、去年の仙道なみのルーキーなのは間違いないだろうな、ヤツは。それに桜木も身体能力だけは県内一かもしれん」

「あはは、お兄ちゃんバスケットカウント取られてたもんね! お兄ちゃんの十八番なのに」

 実は試合後半、紳一は桜木に競り負けてダンクシュートを許した上にテクニカルファウルを取られ、桜木に屈辱の3点プレイを許してしまうという一場面があったのだ。──このゴール下の3点プレイはポイントガードながら紳一のもっとも得意とするプレイでもある。故に、紳一は試合での出来事を思い出してか苦虫を噛み潰したような表情を顔に滲ませた。

「ま、確かに今日の桜木は予想外だったぜ。宮城も骨のあるガードだしな」

「うん。でもまだ、藤真さんのほうがガードとしてはだいぶ上かな」

「当然だ。ま、湘北と陵南……どちらが勝ち上がってくるか見物のカードではあるな」

「その前に、ウチが陵南と、でしょ。仙道くんには、きっと手こずるよ、ウチも」

「……。お前はいったいどっちの味方なんだ……?」

 僅かに紳一の頬が引きつったが、それは愚問である。海南に決まっているではないか。とは答えずにつかさは決勝リーグの対戦表に目線を落とした。

 陵南戦は来週の土曜。不謹慎ながら仙道と海南の対決は純粋に楽しみにしていたが──、海南には仙道クラスの総合力のあるフォワードはいない。きっと去年以上に陵南相手に苦しむことになるだろう。

 もし、海南が負けたら……?

 いや、そんなこと考えない方がいい。彼らは17年連続優勝をしてインターハイに行かなければならないのだから、と思考を切り替えた。

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