短いよ!
「――む」
ムーンセルからの情報に、言峰綺礼は本をめくる手を止める。
――世界の異変。あるいは進出。
たった今、アインクラッド第二層を守る最後の砦が撃破された。
「……ようやく、か。いや、あのアーチャーとキャスターならば、寧ろ早いのかもしれないな」
サーヴァントとして見ればどちらも強力とは言えないが、有象無象のプレイヤーたちに比べれば、彼らは強い。
しかし、どちらもアインクラッドの攻略に興味はないらしい。
アーチャーは
二人にとっては当然のことではあるが、彼にとってそれは不都合極まりないことだった。
理由は至極単純。
言峰綺礼は今――――ものすごく退屈している。
この世界はSE.RA.PHと繋がっている。
いかに優れたゲーム機とて、
岸波白野や遠坂凛、言峰綺礼が存在出来ていることは即ち、アインクラッドはムーンセルによって完全に掌握されていることを意味する。
つまりこの城は、
遠坂凛のような『乱入者』、エネミーのような『イレギュラー』がワラワラ集まっても不思議ではない。
――はずなのだが。
「そのような物好きはいない……ということか。方や可能性の塊、あらゆる柵がないSE.RA.PH。対し、こちらはルールによって縛られた箱庭。
神父はため息混じりに本を閉じ、手をかざす。
NPCとして認識されている彼には、プレイヤーにはない特殊な権限が与えられている。
リソースの管理能力。
といっても、精々閲覧できるだけだ。
次の層にはどのようなイベントがあるのか、どのような敵がいるのか、程度の情報を確認できるだけ。
「――ほう?」
とある情報を見て、言峰の手が止まる。
『キャンペーンクエスト』
第三層序盤で発生するイベントの一つで、最たる特徴は階層を跨いでイベントが発生するところだ。
仮にAという選択肢を選び、第三層でのシナリオをクリアしたとする。
そうすると次の第四層では、三層での選択や展開を引き継いで、続きのイベントが開催されるという仕組みだ。
言うなれば、『ストーリーモード』
「――口が笑ってんぞ、クソ神父」
神父以外誰もいなかった教会に、一人の男が訪れる。
青い髪と獣の視線。
男の両肩には、ボロボロになった猪が一頭ずつ豪快に担がれていた。
「帰ったか
「ほらよ。これでいいんだな?」
計二頭の猪を下ろす。
フィールドのモンスターを生きたまま街に持ち込むのは不可能。
一応、これらは食材アイテムである。
「しっかし、てめえは相変わらずサーヴァント使いが荒いな。こんなモン集めて何する気だよ」
なんのことはない素直な疑問。
しかし、それがまずかったのか。
言峰はランサーの問いに、口角を吊り上げて――
「フッ――……知りたいか、ランサー?」
「ッ――!!」
その笑みに、ランサーは戦慄する。
束縛の魔術でも凶悪な呪術でもなく――ただ、純粋な
月の裏側にて岸波白野と戦った後、褒美と称して出された食事。
「私はこのアインクラッドで――『 “ 激☆辛 ” 麻婆店』を開くのだ!!!」
「んだとぉ!?」
「ああ――ついに、私も店を構えることになったか。仕方あるまい。麻婆豆腐がないのならば、この手で作ればいい!
というわけだランサー。早速だが、お前に仕事をくれてやろう」
「味見だけはゼッテーしねえからな」
「はっはっは、流石は私のサーヴァント。よく分かっているではないか」
「話聞けよ!
つーか、んな劇物売れるかよ。来んのは精々あの坊主だけだろ」
「抜かりはない。麻婆豆腐を完食した暁には、強力な
どうかなランサー。これこそ、見事な飴と鞭のバランスだと思わんかね?」
「どう考えても鞭が痛すぎるだろ! 飴にしたって後付けじゃねーか!」
「クク……ああ、今からでも目に浮かぶぞ。辛さと痛みに耐えながら、麻婆豆腐を必死に頬張るプレイヤー達を。
無意味であるにも関わらず、次々と口に運ぶ剣士達。ある者は水を、ある者はご飯を片手に、劇物をひたすら押し込む。
実際は私がテキトーに魔術を掛けてるだけなのだがな――ハッハッハッハッハ!!」
「いい加減にしろよテメエ! ガキ共が不憫過ぎるだろ!!」
がーと吠え続けるランサー。
だが届かない。
彼は、既にその
「さて、次の
「ねえよ人肉なんざ。店を開きたいなら自分で行きな。
オレはちょっくら、坊主と嬢ちゃんに挨拶してくるぜ」
「一戦交える気か? 言っておくが、今の彼らとお前では話にならんぞ」
「あー……そーいや、そーだったな」
サーヴァントのレベルは踏破された階層に応じて自動的に変化するが、マスターがいるランサーは別だ。
彼のレベルはマスターである言峰綺礼と同期している。
NPCとして認識されている言峰綺礼のレベルは通常のプレイヤーよりも高く、加えてランサーの地力も二騎に比べて高い。
二対一……四対一だったとしても、今のランサーならば十分に戦えるだろう。
「ま、それでも退屈凌ぎにはなるだろ。ただの遊びだ、殺しはしねえ。
――とにかく、あんなモン二度と食うか」
「……そうか。そこまで拒むのならば仕方あるまい。私は、もう一つの準備を進めておくとしよう」
「あ?……ああ、最近こそこそやってるアレか。
――神父のくせに『死体漁り』たぁ驚いた。
「死者を使役する者を
言峰は再びウインドウを開き、SAOのデータを閲覧する。
「このゲームの死者は既に百を超えた。だが、彼らのアバターデータは余すことなく記録されている。
モンスターを従えるテイムシステムと、人格を生成するカーディナルシステム。
……これらを使えばムーンセルに頼ることなく、擬似的なサーヴァントが作れるとは思わんか?」
「勝手にしてろ。ゲームのシステムには興味ねえ」
最後にそう言い残し、ランサーは言峰教会をあとにした。
これにてとりあえず一区切り。
武器強化詐欺(ネズハのアレ)は普通にキリトとアスナが解決しました。
第三層ではギルド結成用のクエストが解禁されて、「エルフ」がメインのキャンペーンイベントが発生するらしい。
……というかこれ、一層ずつ順番に書いてくと絶対終わらぬ。
1、時間飛ばして一気にヒースクリフ辺りまで持っていく。
2、盛大なイレギュラー起こしてSAOのストーリーをぶち壊し、なんやかんやで無理矢理完結させる。
のどっちかしかねえ!