――唐突だが。張飛という武将をご存知だろうか。
名は
中国、後漢末期からの三国時代――そのうちの一つ、蜀の将軍として活躍した武将。
劉備玄徳、関羽雲長と義兄弟の契りを交わし、劉備を主君として立て、関羽を兄のように敬愛していたという。
彼の有名なエピソードの一つとして、『
逃走する劉備軍と、追撃する曹操軍。
最後尾を勤めた張飛は己の主君を逃がすため、橋を落として曹操軍にこう言い放つ。
『我こそは張益徳。いざ、ここにどちらが死するかを決しよう』
この時、曹操軍の兵は五千。
対して張飛はわずか二十。
にも関わらず、曹操軍は敢えて先に進もうとはしなかった。
張飛の武と威厳。そして何より、兄を逃がすために五千と向かい合う覚悟。
このときの曹操軍は、たったひとりの張飛という漢に呑まれていたのだ。
かくして劉備軍は、彼の活躍によって逃げ切ることができたのであった。
人並み外れた勇猛さ、そして武勇。
それらは時間を超え、遠く離れた現代においても永く語り継がれている――
「…………」
――――というのはひとまず置いといて。
今はこの場をどうにかしなければなるまい。
橋。橋がある。それもかなり大きな。
重装備の
橋の上で武器を振り回して大立ち回り……なんていうのも可能だろう。
……その中央に。
長い得物を携えた益荒男が、ここは通さぬと言わんばかりに仁王立ちしていた。
さながら張飛か、或いは弁慶の如く。
全身を守護する中華の鎧。頭には冠と、そこから垂れる二つの赤い紐。
……見覚えがある。
彼の名は呂布奉先。
三国時代、最強と謳われた裏切りの将。
月の聖杯戦争にて、ラニ=Ⅷのサーヴァントとして戦った狂戦士。
「……参ったわね。ほんと、どうしましょうか」
隣の遠坂が溜息を漏らす。
「またあのGですか……」
キャスターも溜息。Gとは呂布のことらしい。
無理もないが、今回に限ってはラッキーだろう。
彼とは一度戦ったことがあるし、宝具も知っている。
強敵であることは間違いないが、全く未知のバーサーカーが相手よりは断然マシだろう。
ここでオリンポスの大英雄でも来ていたら、まずキャスターでは勝てない。
「岸波くん。今更だけどあのバーサーカー……ううん、呂布奉先。彼、アーチャーの適正があったはずよね?」
「ああ。あったと思う」
呂布奉先には、現代にまで伝わる様々な逸話がある。
その中には弓に関するコトだってあったはずだ――ってちょっと待て。
「あのバーサーカー……もしかして、眼がいい?」
「ご名答。だから、既に見つかっていてもおかしくないわよね」
「え――!」
見つかっている? ここが?
もしそうだとしたら、ここは危ない。
「いや、私達だけじゃなくて……ほら、あそこ」
「?」
遠坂の指差す方向を見る。
いたのは一つの集団。SAO攻略を目指すプレイヤー達。
先頭を歩くのは、どこか見覚えのある青髪の騎士。
「……中世の騎士団?」
「あながち間違いじゃないかもですね。あれが噂のギルドってやつでしょうか」
こちらには気づいていないらしい。
ディアベル率いる騎士軍団は、モンスターを倒しながら、時に雑談しながらフィールドを踏破していく。
ここはアインクラッド三層。
これまではスライムや猪など、明らかに人間ではないモンスターしか出現しなかった。
しかし、ここからは違う。
この層からはプレイヤー同様、武器を持った人型のモンスターが出現するようになる。
代表的な例を挙げるなら――ゴブリン。
実際に見たことはないが、こちらの武器を強奪することもあるそうだ。
「……あ」
騎士パーティーとゴブリン三体がエンカウントした。
大きめの剣を構えた三人……おそらくは攻撃役……は少し後ろに下がり。
盾を持つディアベル達三人が、ゴブリンにソードスキルを食らわせた。
前に出た三人の攻撃はその一度のみ。次に彼らは防御系スキルを総動員させ、自身の防御力とヘイトを高める。
ゴブリンは奇声を上げながら棍棒で反撃。
が、三人は盾でガード。
攻撃後、控えていた三人が一体に向かって飛び出す。
そしてソードスキルメッタ打ち。
……ゴブリンA、消滅。
B、Cも同じ要領で撃破された。
「…………パーティー、か」
自分の掌を見つめる。
――互いが背中を守り合う関係。
その相手は確かにここにいる。
しかし、今自分が想っている相手は、そういう意味のではなく――
「――――」
七人……いや、ゲーマー二人も含めて九人か。
長所を生かし、短所を補う関係……とは言えないか。
いなくていい者はいない。
たとえ小さくとも、一人一人が歯車になって機能する組織。
だが、それはもう敵わない。
何故なら彼らは、他ならぬ
「…………」
いけない。
不覚にも、彼らに自分達を重ねてしまった。
切り替えて、もう一度ディアベル達を探す。
「ねえ、ちょっと……」
くいっと遠坂に引っ張られ、彼女の視線を追う。
おかげで容易に騎士達を発見できた……が。
「…………睨み合ってる?」
「…………みたいね」
橋の上で仁王立ちするバーサーカー。
まあ、誰が見たってボスだと思うだろう。というか、実際そうだろう。
しかし戦闘はまだ始まってない。
……どういうことだ?
若干離れてはいるものの、ディアベル達は間違いなくバーサーカーの視界に入っているはずだ。
無差別に襲うわけではないということか。
「……少し、様子を見よう」
キャスター、遠坂が頷く。
六人はいかにもボス風の敵を前にして、相談しているようだった。
「どうやらあのG、自分のナワバリ以外はどうでもいいみたいですね」
「みたいね。生前の性格からすると考えられないし、やっぱり狂化してるのかしら。で、おそらく戦うフィールドは橋、と」
「橋……サーヴァント……うっ、頭が――」
なんとなくだが、最低二回はデッドしないと渡れない気がする。
「大丈夫ですご主人様! デッドブリッジの悲劇は絶対に起こさせません! というか、私セイバーじゃないので同じコトやっても多分無駄です」
「弟さんから貰った剣は?」
確か銘は
「いえ、それはちょっと実家に帰らないと……」
「いやいや、あるのか」
正確には
ルーツは同じかもしれないが、厳密には別物……
あ、いや、ルーツが同じだからこそ、実家にあるということ……?
「…………深く考えるのはよそう。大体、剣を持ったキャスターなんて――」
似合わない、と言いかけて止めた。
「
むーん、と考えるキャスター。
「やっぱり似合いませんねぇ。妻が刃物を振るうって、どう見ても仲違いの絵にしか見えません」
「やめるんだキャスター。その発言はまずい」
いろいろ御方にとんでもない喧嘩売ってます。
「――それと、似合わないということはない。決して。確かにイメージがガラッと変わるけど、それはそれで」
「それは良いことを聞きました。では、帰ったら早速コスプレしますね! とりあえずあの赤いの捕まえて、日本刀作らせましょう!」
「……はぁ。能天気ねアンタ達。あの人たちはもう帰っちゃったわよ」
「ん……そうか」
橋を確認する。
――確かに、バーサーカー以外には誰もいない。
何の用意もなく戦うのは危険だと判断したのか。
「正直ホッとしたわ。相手はバーサーカー、しかも呂布奉先だから……彼らに戦わせたら、きっと無双されちゃうでしょうね。冗談抜きで一騎当千よ」
「いえ、ここはBASARAでしょう。ねっ、ご主人様?」
「うんそうだな」
「どっちでもいいわよ。とにかくアーチャーを探して、今度こそ捕まえましょう。今、バーサーカーと正面から戦うのは避けたいわ」
「同感だ」
しかし、以前の自分達はよくあれに勝てたなぁ……。
正直、もう一度戦えと言われても無事に勝てる自信はない。
ここは確実に行きたい。
――協力者を探そう。
心当たりはある。なら、あとは探し当てるだけだ。
ヘラクレス
ランスロット
呂布奉先
坂田金時
スパルタクス
フランケンシュタイン
ヘラクレスだと無理ゲーなのでやめました。
十二の試練改めて見るとひどい。
キャス狐は魔力A、《呪術》EXだから攻撃は通ると思うけど、だからって一人で削り切るとかムリムリ。
だからこそアーチャーなりランサーなりと共闘すれば映えるんですけど、それはまた別の機会に。
ランスロットは単純に動かしづらい。
zeroはアニメしか見てないのだ。
他三体ですが、そもそもアポクリファ呼んでないから詳しく知らない。
そのうち買って読むかもしれないし、読まないかもしれない。