Fate / SAO CCC   作:YASUT

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“狂戦士”・バーサスⅡ

 

「アスナ、エギル! 十秒だけ持ちこたえてくれ!!」

「おうよ!!」

「任せてっ!」

 

 指示に応え、二人のプレイヤーが狂戦士に立ち向かう。

 突剣(レイピア)を構えた少女と、巨大な斧を構えた男。

 

「■■■■■■!!」

 

 先行する少女目掛けて、狂戦士は方天画戟を振るう。

 技術の欠片もない駄剣。

 圧倒的な力と速さを誇る暴力。

 

 それらに臆することなく、アスナと呼ばれた少女は更に加速する。

 愛用の突剣(レイピア)を構え、ソードスキルのモーション。

 全プレイヤーの中でも、彼女の器用さ(デクステリティ)敏捷値(アジリティ)は最強クラスだ。

 この二つの数値で、最高のダメージを叩きださんと接近する。

 

 

「っ――――!?」

 

 

 ――瞬間。

 少女の体は消滅した。

 高速で動くアスナを、ハエ叩きの要領で狂戦士はなぎ払ったのだ。

 

「――――え――?」

 

 少年の手が止まる。

 彼の視界にアスナはいない。

 残ったのは、彼女が先程まで纏っていた赤いケープと。

 

 ――感情のない瞳をした、狂戦士のみだった。

 

 障害が視界から消えた程度では、狂っている彼は止まらない。

 否、狂っていなくとも止まることはないだろう。

 元来彼は――呂布奉先は、弱者に興味はない。

 

「キリト、まだか――っ!!」

「っ――!」

 

 再びキリトは狂戦士に向き直る。

 通常、MMOにおいてプレイヤーの死亡は日常茶飯事。

 ボスに特攻するのが役目であるダメージディーラーなら尚のこと。

 まだ少年ではあるものの、彼とてMMOの経験はある。

 本人の感覚が麻痺しているのか、それとも戦闘の興奮で気にならなかったのか。

 ……どちらにせよ、キリトにとっては好都合。

 止まった手を動かし、カーソルを操作する。

 

「っ――――……!!」

 

 方天画戟の一撃でエギルが吹き飛ばされる。

 斧を盾代わりに防御するが、当然ながら性能は盾に及ばない。

 HPを削られ、欄干に背中を打ち付けた。

 

「がっ――――は……!!」

「■■■■――!」

 

 狂戦士の更なる追撃。

 確実に絶命するため、エギル目掛けて突きを放つ。

 

 が。

 

 それより速く、狂戦士の首にソードスキルが直撃した。

 突剣スキル《ぺネトレイト》。器用さ(デクステリティ)敏捷値(アジリティ)に依存する高速の三連突き。

 

 ソードスキルを放ったのはアスナ。

 先程――狂戦士の攻撃を受ける際、彼女はソードスキルを使った。

 攻撃ではなく回避のために。

 装備していた《フーゲッド・ケープ》は破損したが、そのおかげで何とか回避できたのだ。

 

 キリトはその姿を確認すると同時に、左手(・・)にもう一本の剣を出現させる。

 対照的な漆黒の片手剣……《ネーロスパーダ》。

 

「よし――いいぞ、二人共!」

 

 両手に剣を握り、キリトも戦闘に参加する。

 ――《二刀流》。

 これが少年の奥の手。ここまで共に戦ってきた、アスナでさえ知らないエクストラスキル。

 キリトは二本の片手剣で狂戦士を斬りつける。

 ただの通常攻撃だが、ダメージであることは間違いない。

 

「■■■■■――――!!!」

 

 それがカンに障ったのか、バーサーカーは標的を変えた。

 ダメージディーラーが狙われるのは、本来なら危険なことだ。

 攻撃に特化している分だけ装甲が薄いからである。

 狂戦士と一体一、正面からの斬り合いになればキリトに勝目はない。

 だが――それは通常のプレイヤーだったらの話だ。

 彼は違う。彼には、彼しか持たないエクストラスキルがある。

 

「■■■■■――――!」

「オオオオ――!!」

 

 力と速度。どれをとっても狂戦士には敵わない。

 だが二刀流の彼には、槍にはない手数がある。

 縦横無尽に振るわれる方天画戟を、両手の剣でただひたすら弾き続ける。

 

 レベル。

 ステータス。

 装備。

 スキル。

 

 キリトは自身の持ちうるあらゆる“武器”を総動員し、圧倒的強者に食らいつく。

 

「キリト君!」

 

 その様を見て、アスナは真っ先に動いた。

 紅に光るレイピアを構え、もう一度ソードスキルを発動させる。

 一息に六度の突き攻撃。

 手数が優っているのは二刀流のキリトだけではない。

 アスナはこと速さにおいて、プレイヤー最速なのだから。

 

「まだまだ――!」

 

 彼女の攻撃は狂戦士にとって微々たるもの。

 だが敵のHPゲージは少しずつだが減っている。

 体を休めず、アスナは次のスキルを発動させる。

 

 

「――――――」

 

 

 ニタリ、と狂戦士は笑った。

 狂っている彼に理性はないが、意識はある。

 彼の目に映っているのは、必死に噛み付く小さな子供。

 

 サーヴァントの弱体化。

 人間(プレイヤー)の強化。

 強力な武器。

 優遇されたスキル。

 

 色々とお膳立てされているが、少年はついて来ている(・・・・・・・)

 サーヴァントである彼の最後の敵は、武芸とは程遠い女帝だった。

 距離を作り呪いを撃つ彼女達の戦いは、立ち塞がる敵を武のみで蹴散らしてきた彼にとっては面白くないものだった。

 

 だから、少しだけ。

 少しだけではあるが――呂布奉先は、興奮している。

 

 

「■■■■■■■■!!!!」

 

 

「な……!?」

 

 通常、ボスは体力ゲージが一定値を切ると何かが変化する。

 第一層のボス《イルファング・ザ・コボルトロード》ならば刀スキルの使用。

 第二層のボス戦なら、《アステリオス・ザ・トーラスキング》の出現。

 

 バーサーカーの体力はまだ七割以上。

 言ってみればまだ序盤。変化が起きるには早すぎるタイミング。

 

「■■■■――――!!」

「っ――!!?」

 

 鋭い咆哮と攻撃。

 乱雑に振り回していただけのさっきとはまるで別物。

 技術がないのは同じでも――速く、重く、鋭い。

 

「ぐっ――!!」

 

 二本の剣を交差させ、狂戦士の一撃を受け止める。

 衝撃でキリトの体が沈み、足元に亀裂が入った。

 

「――っ、潰す気かコイツ……!」

 

 バーサーカーの腕が膨れ上がり、再び橋に亀裂が走る。

 剣技が一切ない、単純な力の比べ合い。

 完全なる独壇場。この土俵で細腕の彼がバーサーカーに勝つことは不可能に近い。

 

 

「壁役ソードスキル! ヘイト剥がせ!」

 

 

 体力回復を終えたディアベルが叫ぶ。

 同時に《ドラゴンナイツ》のメンバーがバーサーカーに突進。

 剣を、槍を、盾を、光らせ、各々のソードスキルをバーサーカーに浴びせる。

 

 ――だがビクともしない。

 そして何も変わらなかった。

 

 本来ヘイトはそのプレイヤーの行動に応じて変わる。

 タンクの使うスキルは、ダメージよりもヘイトを稼ぐことに特化しているはずなのだ。

 

「どうなってるんだ……まだヘイトが足りないのか!?」

「■■■■――!!」

 

 均衡が崩れる。

 バーサーカーは力を緩め、高速で二連撃。

 つんのめったキリトはあっけなく怪力に弾き飛ばされた。

 

「が――――!」

 

 勢いを殺しきれず橋の上を転がる。

 咄嗟に上体を起こすが、バーサーカーは既に目の前。

 キリトの体力は既に三割を切っている。この一撃を受ければゲームオーバー。

 

 だが、それが振り下ろされることはなかった。

 

 バーサーカーは大きくバックステップし、距離を取る。

 直後、キリトとバーサーカーの間に境界線を引くかのごとく、地面が氷結した。

 

 

 ◆

 

 

 全力で走って、ようやく辿りついた。

 生い茂った樹海の中を、切り開くように流れる大河。

 その上の大橋。バーサーカーが守護する場所。

 

「先に行くぞ」

 

 アーチャーが先行する。

 逃げる準備をしていたキバオウ達。

 吹き飛ばされたキリト。

 カバーに入るディアベル達。

 

 その全員を追い越し、アーチャーはバーサーカーに斬りかかった。

 

「■■■■■――――!!」

「ぬっ――……!」

 

 攻撃が許されたのは一撃のみ。

 初撃を防いだ後、バーサーカーは堰を切ったように攻め立てる。

 より速く――より重く。

 一撃では終わらない。

 右。

 左。

 上。

 縦横無尽に巨大な武器を振り回し、アーチャーをメッタ打ちにする。

 

「っ――流石といったところか。狂化してもこれほどとは、三国志最強は伊達ではないらしい。だが――」

 

 コードキャストを起動する。

 

 ――gain_str(16);

 

 魔術師(ウィザード)のリソースである魔力を消費し、サーヴァントのステータスを変化させるプログラム。

 

 ――筋力値(ストレングス)上昇(ゲイン)

 

「ぬぅん……!」

 

 アーチャーはバーサーカーの攻撃を受け止め、反撃する。

 どうやら余裕が出てきたらしい。

 能力値は総じてバーサーカーの方が上だが、強化すればアーチャーの負担を減らせる。

 加えて、遠坂のおかげで作る剣の質も上がっている。

 いや、正確には戻っている(・・・・・)と言うべきか。

 決して優勢ではないが、少なくとも戦いになっている。

 

「じゃあ、支援よろしくね」

「分かった」

 

 遠坂はアーチャーに加勢する。

 彼女には格闘術の心得もあるが、サーヴァント相手に接近戦を挑むのは些か無謀だ。

 だから、魔術で戦う。ガンドを初めとした遠距離攻撃ならば、この世界ならサーヴァントとも戦える。

 

「ちょっといいか、ハクノさん」

 

 遠坂が遠くまで移動したあと、金属製の鎧を装備した騎士――ディアベルが話しかけてくる。

 

「これは、一体どういう状況なんだ?」

「――――」

 

 ……どう説明するべきか。

 正直に話すべきだろうか?

 自分達は普通のプレイヤーではない、と。

 

「……いや、ごめん。長くなるなら後にしよう」

「ディアベル?」

「まずはこの状況を切り抜けるのが先だ。そうだろう?」

 

 突然、一際大きな金属音が響いた。

 ……あの二人が戦っている音だ。

 弓兵の名を冠するにも関わらず、彼は剣でバーサーカーと渡り合っている。

 しかしこれではジリ貧なだけだ。いずれ力尽きるのは目に見えている。

 

「君達はあれをどうするつもりなんだ? ここで倒すのか、それとも……彼を囮にして逃げるのか」

「倒す」

 

 即答した。

 ここでアーチャーを見捨てることはできない。

 その答えを聞いて安心したのか、ディアベルが微かに笑みを浮かべた。

 

「よかった。でも、勝算はあるのかい?」

 

 静かに首肯する。

 

「そうか。じゃあ、オレ達はどうすればいい? もし邪魔になるのなら――」

「そんなことはない」

 

 ディアベルの言葉を遮る。

 最初は自分達四人のみで戦う予定だった。

 けど、これだけ人がいるのなら――

 

「――今は、体力回復に努めてほしい。準備ができたら知らせる。バーサーカーはここで、皆で倒そう」

 

 ここはゲームの世界だ。プレイヤー一人一人が剣士であり、ソードスキルのアシストのおかげでどんな怪物とも戦える。サーヴァントの能力も本来より著しく弱体化している。

 それでもバーサーカーを倒すのは無理だ。

 先程の彼のように――キリトのように隠し技を使っても、時間稼ぎにしかならないだろう。

 

 ――それを覆すのが、彼女の宝具。

 

「体力回復……それは、全員かな?」

「ああ」

 

 ディアベル達は勿論、キリトやキバオウ……戦力になりうる全員だ。

 

「分かった、じゃあ皆に知らせてくる。何をする気か全く分からないけど……サポートは頼んだよ」

 

 そう言ったあと、ディアベルはキバオウ達の元へ走っていった。

 

「なーにが“何をする気か分からないー”ですか。あれ、バッチリ分かってるって顔ですよ」

「はは。ゲームに慣れてるから分かったのかな」

 

 本来MMOは役割分担が重要なゲームだそうだ。

 攻撃、防御、補助、回復。

 他にもリキャストタイムのカウント役、体力の管理役など、ゲームによって色々あるらしい。

 

 戦闘中のサーヴァント二騎に目をやる。

 アーチャーが攻撃を弾き、遠坂がちょくちょくガンドを撃つ。

 それでもこちらが劣勢のようだ。

 

「……行こうかキャスター。宝具を頼む」

「心得ました。ではでは、久方ぶりの本領発揮と参りましょう。待ちに待った秘密兵器の出番です!」

 

 

 





登場人物多すぎて操りきれねぇ!
ぶっちゃけると遠坂さんを扱い損ねてる。
とはいえ狂戦士編終了まで粗方書き終えちゃったので、いっそこのまま突っ走るゼ。
なおスローペースな模様。
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