機動戦士ガンダムIS(インサイド・ザ・ストラトス) 作:見知らぬとまと
「何のつもりです!急に発砲するだなんて!」
銀髪の転校生、ラウラ・ボーデヴィッヒは、声の主であるバナージ、それと一夏へ声を掛けた。
「貴様らも専用機持ちなのか。丁度いい。私と戦え」
見下したように言う――実際に見下しているが―ラウラの挑発。
しかし、それに対して一夏は、
「断る。戦う理由がねえよ」
と断る。ラウラはそれを聞いて不快げに眉を寄せると、
「貴様にはなくても私にはある。
――――貴様がいなければ教官が2連覇の偉業を成し遂げたことは容易に想像できる」
2連覇。『ブリュンヒルデ』織斑千冬。そして織斑一夏。ここまでの言葉でやっとこの世界の歴史に詳しくないバナージはラウラの怒りの原因に辿り着いた。
IS世界大会、『モンド・グロッソ』。
そしてその総合優勝者にのみ与えられる称号、『ブリュンヒルデ』。それを世界最初に手にした『世界最強』――織斑千冬は、第二回大会決勝戦において、棄権により不戦敗となった。
その棄権の理由こそが――両親などのいない千冬にとって唯一の肉親、織斑一夏の誘拐事件だった。
駆けつけた織斑千冬によって一夏は無事救出され、今に至る。
しかしこの女尊男卑社会の中で英雄視される織斑千冬の功績を傷つけたということで、女性主義団体などから一夏は悪し様に言われることも少なくないのだ。
「ならば、戦うしかないようにしてやる!」
肩部にマウントされたレールガンの砲口を『白式』に向けた。
それを見たシャルルは瞬時に物理シールドを展開、『白式』の前に構える。
しかし、それが発射されることはなかった。
ピットの上にいたラウラのすぐ近くに、何者かが現れたからだ。
「!?貴様ぁ!」
振り向きざまに手からプラズマの刃を展開したラウラだったが、手首を掴まれる。
「アリーナで両者の許可無く戦闘を行うことは禁止だ」
振り向いた先にいたのは男の研修生――アムロだった。
しかし、纏うISは『リ・ガズィ』ではない。
量産型の第二世代IS、『打鉄』である。
アムロのリ・ガズィは調整のため倉持技研に出されている。そこで男性操縦者という立場の危険性を鑑みて、一時的にIS学園の訓練機を申請無しで使用できるのだ。
その後すぐに放送室から今日のアリーナ担当の教師から、
「そこの生徒!何をやっているんですか!」
と放送が飛ぶ。ラウラはそれを聞き再び眉を顰めると、ピットの奥へと消えていった。
その後、一夏たちは早めに上がり、アリーナの
バナージはピットのシャワールームを使い、部屋に帰ってきた。アムロはまだ用事があるらしく、部屋にはまだ帰ってこないらしい。
そんなバナージがいつも通り――女子生徒からの遠巻きの様々な視線に晒される廊下やエントランスを抜けて―部屋のドアを開けた。
「ちゃお♪」
そこにいたのは、紅い眼と水色がかった青い髪が印象的な――女子生徒。
見覚えがある。確か無人IS襲撃事件の時の――
「更識生徒会長ですか?どうしてここに?」
更識楯無。IS学園の生徒会長である。――また、更識簪の姉でもある。
「自分の部屋に関わりの薄い異性がいることに関してはノーコメントなのね・・・まあいいわ。
そう、私が生徒会長更識楯無よ。よろしく、バナージ・リンクスくん」
「は、はぁ・・・」
バナージのために弁解しておくが、バナージは驚きである程度頭が回っていない上に、かつてのネェル・アーガマやガランシェールなどの経験もある上に、ここが女子寮ということもあり、『そんなものなんだろう』と思っているだけである。
その上生徒会長が急に来たため、重要な用事かな?と思っているというのもある。
断じてバナージの女性の
それはさておくとして、この破天荒な生徒会長なのだが、簪より大人びた顔立ち――姉なのだから当然だが――でスタイルもモデルのようだった。
そして何より、この
「それで、急で申し訳ないんだけど・・・」
そして少し真面目な顔になると、彼女は頭を下げて言った。
「簪ちゃんをお願いします!」
バナージは目を白黒させた。
「えーっと・・・・どういうことです?」
そういうと楯無は僅かにしまった!というような顔をした後に、溜息を吐いて説明を始めた。
「えーっと、この後学年別トーナメントがあるのだけれど・・・・
少しルール変更があって、タッグ戦になるのよ。それで簪ちゃんの相手をバナージ君にお願いしたいの。」
ルール変更の発表なんかあったかな、バナージは首をひねったが、とりあえずは話を続けた。
「なるほど、事情は分かりました。でも、更識さん・・・だと分かりにくいな、妹さんにも予定があるんじゃないですか?」
バナージが聞くと楯無はうぐっ・・という表情をして、
「あの子・・・暗いところがあるから、友達が少ないのよ。それでしかも、この前の襲撃事件があったじゃない?あれ以来、なんか凹みっぱなしみたいで・・・だから、お願いできない?」
それを言われるとバナージが戦いに彼女を誘った責任がある。
しかしバナージにも渋る理由があった。
「あの後、妹さんの部屋に行ったんですけど・・・・返事がなかったんですよ。一夏とかに頼んだ方がいいかもしれませんよ」
時はIS学園襲撃事件の数日後に遡る。
更識さんが妙に元気がないんです、と簪のルームメイトや山田先生から相談を受けたバナージは、もともと実戦経験のなかった彼女を心配して行くつもりだったのもあり、会おうとしてみるも、妙に出会わない。
ルームメイトの少女の提案で部屋を訪ねてみるも、簪は居留守で出なかったのだ。
その話を聞くと楯無はあちゃ~、とでも言いたげな顔をした。
「あー、それはね・・・多分二人で話してみれば解決すると思うわよ。」
不思議に思ったバナージではあったが、「取り敢えずやるだけやってみようと思います」と楯無に答えた。
それを聞いて楯無は満足そうな笑みを浮かべて、「よろしくね」と言って部屋から去っていった。
しかし去り際に楯無が思い出したように言った。
「あ、私が関わったってこと、簪ちゃんには言わないでね。――――じゃあ、よろしく」
嵐のような来訪者にぽか~ん、というような表情で立ち尽くしたバナージだった。
が、―――最後に楯無が振り向きざまに浮かべた寂しそうな笑みが、焼き付いて離れなかった。
「はぁー・・・余計なお節介だったかしら・・・」
「更識」
「へっ?」
部屋を出た楯無に話しかけてきたのは、部屋に戻ろうとしていたアムロだった。
「妹思いなのはいい事だがな・・・・」
「え?あ、はい」
急に話しかけられたことと、話の要点が掴めず素で返してしまう楯無。
アムロは、溜息を吐きながら言った。
「タッグマッチへの予定変更は、部外秘だ」
「・・・すいません(´・ω・`)」
なお楯無はこのあと織斑先生に呼び出されたそうな。