機動戦士ガンダムIS(インサイド・ザ・ストラトス)   作:見知らぬとまと

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それぞれのトーナメント

そして、数日後。

 

教室へ入ったバナージと一夏、そしてシャルルに大勢の女子生徒が群がった。

 

「リンクス君、わたしと組まない?」

 

「織斑君、一緒に組もう!」

 

「デュノアくん、学年別トーナメントのタッグ組もうよ!」

 

 

当然のことではあるが、学年別トーナメントのタッグ勧誘である。

 

しかしバナージはもう決まっている。

 

「ごめん、組む予定の人がいるんだ」

 

ざわつく女子。

 

すると一夏が、

 

「あ、俺はシャルルと組むから。ごめんな」

 

といった具合に男子は決まっており、撃沈した女子であった。

 

 

 

 

バナージは、その放課後、自分の部屋・・・・ではなく、整備室へと向かっていた。

 

MIS『シルヴァ・バレト・サプレッサー』は、ある種の退化をした機体である。

 

それは、この機体の持つ最強の武装・・・『ビーム・マグナム』を使う上で仕方のないことなのだが、アリーナでのデータを反映させるのには、もう一度調整が必要だったのだ。

 

「ここ、どうなってるんだ。ここの腕部装甲のプリセットが機能しないと不具合が起きるな・・」

 

ISはソフト面での調整も勿論必要だが、ハード面での調整も必要だ。

 

少し特殊な工具が必要になったため、整備室を一度出たバナージは、そこで思わぬ人物と遭遇した。

 

「・・!?リンクスくん」

 

「更識さん・・・」

 

はっ、と驚いた様子の簪。そんな彼女の硬直が解け、逃げ出そうとしたその寸前にバナージは、声をかけることに成功した。

 

「更識さん、俺と一緒にクラス対抗トーナメントに出てくれませんか?」

 

「へっ!?」

 

 

 

 

 

簪の借りている整備室。

 

とりあえず息を落ち着けた簪は、びくびくしながら聞いた。

 

「ど、どうして私と・・・?」

 

「い、嫌なら良いんです。「そんなことは・・・!」――ただ、更識さんなら、頼れると思ったんです。」

 

簪はその一言を聞いて、驚いたように目をしばたたかせると、顔を俯きがちに伏せた。

 

「私は・・・・その、あの時、動けなかったんです。怖くて。リンクスくんのISがやられるのを、見ていることしか出来なかった・・・・!」

 

そう語る簪。バナージはその手を包み込むように握った。

 

驚いた簪がバナージの顔を見つめる。

バナージは戦っている時のように真剣で、けれど故郷でも懐かしむような面持ちで、どこか遠い(宇宙)を見上げて言った。

 

「誰だって戦うことは怖いんです。それでも、自分が死ぬのも、人が死ぬのも冗談じゃないって思うから、やれることをやるんです。」

 

簪は目線を戻したバナージと目が合って、手を離して目線を逸らす。

 

「・・・簪」

 

「えっ?」

 

「名前で呼んでほしい。姉さんも、更識だから」

 

少し気恥ずかしそうに言った簪に微笑ましく思いながら、バナージは言った。

 

「じゃあ、よろしく。簪さん。」

 

「よろしく、リンクスくん」

 

 

 

 

 

 

 

 

___________________________

 

 

 

 

トーナメント受付最終日。

 

アムロは唐突に織斑教諭から――即ち千冬だ―声をかけられた。

 

「レイ研修生、誰とも組まないでいいのか?ランダムになるが」

 

「・・・・やはり出なければならないのか」

 

「当然だろう。どれだけの組織が注目していると思っているんだ」

 

アムロははぁ、と溜息をついてから歩き出した。

 

「当てはあるのか?」

 

と、問う千冬に対して、

 

「これでも教師の真似事をしているんだ。生徒の伸び代でも見ることにするさ」

 

とアムロは背中越しに答えた。

 

 

 

 

 

 

__________________________

 

 

 

IS学園の剣道場。

 

剣道部も去った後のそこには、ただ一人だけの人影があった。

 

「ふっ、はっ、ふっ、はっ・・・・」

 

素振り、というには特殊な『型』を繰り返し練習する少女。

 

特徴的に結った長い黒髪が特徴の彼女は、篠ノ之束の妹――篠ノ之 箒である。

 

そんな彼女の元へ歩いてきた一人の人物。

 

 

 

言わずもがな、アムロである。

 

箒はアムロとの関わりが薄い。

 

だが箒が普段一緒にいる一夏が普段戦闘に関してアドバイスなどを聞いているため、ほかの生徒よりは関わりはある。

 

「篠ノ之、少しいいか?」

 

「あ、はい。なんでしょうか」

 

「学年別トーナメント、タッグは決まっているか?」

 

「いえ、決まっていませんが・・・」

 

 

 

「なら丁度いい。タッグを組まないか?」

 

 

 

しかしそれを差し引いても、これは箒にとって、余りにも唐突だった。

 

 

 

 

 

一息休憩を入れて、着替えてきた箒が(他の女子の注目を浴びると面倒な為、剣道場のままだが)アムロに聞いた。

 

「理由を伺ってもいいでしょうか」

 

アムロは一応はクラスメイトだ、敬語は要らない、と苦笑してから、本題に入った。

 

「見ての通り組む相手が居なくてな。そちらも浮いているようだしな。それに・・・・」

 

箒は少し遠慮の無い物言いだな、と感じつつ、アムロの話の続きを待った。

 

「今の篠ノ之は・・・・『危なっかしい』」

 

「『危なっかしい』・・・・ですか?」

 

アムロは反復して帰ってきた問いに首肯した。

 

「織斑を心配するのは分かるがな、専用機も無い上に、ISの操縦にも慣れていないのでは無茶だ。だが今の篠ノ之にはそういうものを度外視して突っ込んでしまいそうな『危なっかしさ』がある」

 

反論は、無かった。

 

実際IS襲撃事件の際には、もう少しで飛び出してしまいそうだった程だ。

分かっている。そうしたことが自分自身、ひいては一夏の身を危険に晒しうるのを理解しているだけに、箒はアムロの話を黙って聞いていることしか出来なかった。

 

 

俯いた箒を見かねたか、アムロは苦笑しながら言った。

 

「何も悲観することはない。力が無いのなら付ければ良い。

     ――――――今の『型』を見ていれば、才能が無い訳では無いのは分かる」

 

 

 

 

 

_____

 

 

その夜。アムロは作戦を考えながら、物思いに耽っていた。

 

 

なぜ篠ノ之とタッグを組んだか。根も葉も無いことを言えば、アムロは篠ノ之の危なっかしさとその近接戦における才能を元々気に掛けていた、というだけに過ぎない。

 

なまじ非IS戦闘、剣術において力がある故に、何かの弾みで下手な行動に出る。

 

それも、(一夏に)評価されたいという動機が有ればなおさらだ。

 

 

アムロは嘗ての―ホワイトベースにいた時、鉱山基地襲撃のために飛び出していった自分―と近い危なっかしさを感じていた。

 

故に今回のことも、心配、というよりは人生経験のある研修生としての指導、といった風な動機が大きい。

 

 

 

しかしやるからには手は抜くまい。

 

アムロは自分仕様の武装になった『打鉄』のデータ分析を始めた。

 




箒は織斑くんのヒロイン枠です(断言)

簪の口調、難しいですね・・・
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