機動戦士ガンダムIS(インサイド・ザ・ストラトス)   作:見知らぬとまと

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学年別タッグトーナメント攻防戦

トーナメント当日。

 

注目の1回戦第一試合を務めるのは、注目を集めて止まないタッグ2組だった。

 

「・・・頑張ろう、リンクスくん」

 

一組目は倉持技研の従来機『打鉄』から大きく設計思想を変更し、速度を重視した汎用高性能専用機、『打鉄弐式』を用いる更識簪。

 

「ええ。勝ちましょう!」

 

そして高頻度で武装の変更などが行われる、全身装甲型の謎の高性能試作機、『シルヴァ・バレト・サプレッサー』を用いる男性操縦者、バナージ・リンクスのペア。

 

 

 

そして、このペアに相対するのは、

 

「篠ノ之、気を張り詰めすぎるな。3次元を把握する余裕を常に持った方が良い」

 

同じく男性操縦者、だが今回は量産機『打鉄』を用いるアムロ・レイ。

 

「了解しました。・・・勝ちましょう、この戦い」

 

ISの生みの親、篠ノ之束の妹にして剣道において全国大会でも結果を残すほどの実力者、篠ノ之箒。

 

両方とも安定性と耐久性が持ち味の倉持技研製量産機、『打鉄』を用いている。

 

 

 

 

 

 

 

スタートにしてクライマックスすぎるこの対戦表に、アリーナの観客は浮足立っていた。

 

「シャルル、この戦い、どっちが勝つと思う?」

 

「うーん。やっぱり機体の性能差が大きすぎるね。バナージくんと更識さんのペアじゃないかなぁ」

 

「確かに。でもアムロさんは噂によると凄い強さらしいからな。どうなるんだろうな」

 

 

 

 

そんな観客の期待も載せ、今、試合開始の合図が鳴る。

 

「一回戦第一試合、始めッ!」

 

 

試合が始まると同時に動いたのは、アムロだった。

 

本来の打鉄用近接ブレード『葵』ではない西洋剣を手に、一瞬でバナージへと肉薄する。

 

「貰ったッ!」

 

「まだ!」

 

しかし加速性能では上を行く『シルヴァ・バレト』のスラスターを用いて、すぐさま距離をとるバナージ。

 

しかし、バナージの目の前に高速で弾丸が直撃した。

 

アムロが用いたのはISにおける最長射撃記録を持つ『撃鉄』。

 

左腕にマウントしておいたソレを瞬時に打ち放ったのだ。

 

 

態勢をわずかに崩したバナージに、アムロが斬りかかる。

 

シールド・エネルギーを一点に集中させることで防御を試みるバナージ。しかし、

 

ヴゥン!という特有の発振音とともに西洋剣の刃部分には紅色のビームが現れ、想定以上のダメージをシールドに与えた。

 

 

倉持技研製の試験段階のビーム刀剣、『六花零式』。

 

『雪片弐型』、『ビーム・サーベル』のデータをもとに造られたこの武装は、少し頼りない物理刀剣として使えるだけでなく、『雪片弐型』の65%の出力を武装用(ウェポン)エネルギーで展開する。

 

 

 

対するバナージもビーム・サーベルを展開し、激しい干渉光を散らし合いながら接近戦が始まる。

 

 

 

 

一方、残り二人はというと。

 

「ふッ!!」

 

「・・・!」

 

試合開始とともに飛び込んだアムロを迎撃すべく荷電粒子砲『春雷』を構えた簪へ、箒は作戦通り()()()()()

 

 

 

IS適正が高い訳でもなく、ISに乗りなれている訳でもない箒にアムロが考えた作戦は、

 

『常に生身での剣術をイメージし、近接戦に持ち込み倒す』

 

といういたってシンプルな戦い方だった。

 

 

だから箒は、従来のIS操縦のイメージのように『飛ぶ』のではなく、一歩『踏み込む』イメージで間合いを詰める。

 

同時に半ば無意識に瞬時に出力を上げたスラスターが、その一歩の踏み込みをIS戦の距離に対応させる。

 

 

 

簪はそれを捉え、荷電粒子砲『春雷』を構えて、撃ち放つ。

 

それを更に下方向に踏み込んで躱す箒。人型のISはどうしても足元の相手には攻撃しにくい。

 

 

しかし簪は専用機持ちの代表候補生である。全身の角度を変えてもう一射。さらに射撃を続ける。

 

 

荷電粒子砲『春雷』はトーナメントへの調整で本来の連射性能を取り戻し、これまでのようなクールタイムは存在しない。

 

簪はバナージから箒を引き剝がすように反対側で交戦する。

 

 

箒はその砲身を見て躱すも、被弾が重なる。

 

 

箒の視界の端、シールド・エネルギー残量を示すメーターは、3分の2を切ろうとしていた。

しかし。

 

「ここだッ!」

 

「ッ・・・!」

 

 

しかし簪の『打鉄弐式』は――すでに間合いの中だった。

 

簪も薙刀『夢現』を展開し迎え打つ。しかし、この間合いでは性能を差し引いても互角だった。

 

 

しかし簪は冷静だ。

 

(まだ、さっきの『春雷』で稼いだダメージがある・・・このまま行けば勝てる)

 

その上武道の経験を持つ簪には、箒の、主に左半身に無駄な動きがあることが分かっていた。

 

実家の剣術、『篠ノ之流』を継いでいるという箒。その『癖』が出ているのだろう、と簪は思った。

 

 

 

 

 

しかし、やはり観客の視線を集めるのはアリーナの反対側で繰り広げられている、男性操縦者二人の、激しい干渉光を散らし合う戦闘だった。

 

だが徐々に押されるのは当然、

 

「はぁッ!!」

 

「まだだッ!」

 

機体性能で劣るアムロだ。戦闘経験では勝るアムロではあるが、武装面でも良くて互角、他の機体性能は殆どで劣るアムロが優位に立てるほど、ISにおける戦闘能力に開きはなかった。

 

 

しかしアムロは左手に本来の近接用ブレード、『葵』を展開し、ビーム・サーベルを持つ手を下方向に切り払う。

 

 

瞬時に一度後退するバナージ。

 

しかしすぐに顔面を狙い投げつけられた『葵』。

 

しかしバナージはそれを横方向に首をかしげるようにして躱す。

 

左手の『撃鉄』は投げたモーションで下に向いている。

 

 

バナージは上空へ距離を取り――――『ビーム・マグナム』を展開した。

 

 

すぐさま視界下部で専用のウインドウが開く。

 

――――ビーム・マグナム 出力75% 使用可能―――――

 

その文字を確認したバナージはロックオン済みのアムロへ、引き金を引いた。

 

 

 

一方、アムロの視界には見たこともないほどの紅さで、

 

『注意!高出力ビーム兵器にロックされています!』

 

という警告が浮かび上がり、ビープ音を鳴り響かせていた。

 

直感のままにISに全力で『後退』の指示を出すアムロ。

 

そのアムロを掠めたのは――僅かに紫電すら纏った光条だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

膠着した箒と簪の戦局にも動きがあった。

 

二人の間に、アムロの投げた刀が飛んできたのである。

 

それを箒は――左手に装備した。

 

かちり、と動きがはまる。

 

 

違和感を感じつつも、その隙を逃すまいと斬りかかる簪。

 

しかし2秒後、薙刀が切り払われた、と認識した時にはもう大きくSE(シールド・エネルギー)を減らすこととなっていた。

 

 

 

篠ノ之流剣術、『一閃一断の構え』。

 

『一閃目で閃き、二閃目で断つ』とされるコレは、一刀流、二刀流問わず用いられる篠ノ之流剣術の代表格である型である。

 

その名の通り、一撃目で敵の攻撃を受け流し、2撃目で相手に致命傷を与えることを目的としたこの型。

 

篠ノ之流剣術がもともと女性用の刀があるなど女性用にも受け継がれてきた実戦剣術であることに由来する、攻防一体の強力な技である。

 

 

 

あえて最初から2刀流を想定して動くことで簪の油断を誘いつつ、予定通り2刀流になった時に瞬時に移行することで一気に勝負をかける作戦だ。

 

そこで一度ペースを崩されてしまうと理知的・戦略型の簪は弱い。

 

 

そのまま押し込み、最後に右手の紫電一閃。

 

 

 

 

 

 

 

____________________

 

 

アナウンスが響いた。

 

「勝者、更識・リンクスペア!」

 

結局あの後ビーム・カノン等の遠距離攻撃で箒はあえなく陥落し、更識・リンクスペアの勝利となった。

 

 

 

お互いに握手を交わすペア。アリーナに、惜しみない拍手と喝采が響き渡った。




機体性能で劣る箒が簪と拮抗できたのは、篠ノ之流剣術が『受け流す』剣術であったことと、マシンに拘る簪の油断あってこそです。

簪が弱い訳ではありません。相性が悪かったですね。
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