機動戦士ガンダムIS(インサイド・ザ・ストラトス)   作:見知らぬとまと

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長くなりました、戦闘回後編です。



白き闇を超えて

窮地の白式を助けたのは、言うまでもなくパートナーである橙色のリヴァイヴ・・・シャルルだった。

 

「無茶しすぎだよ、一夏」

 

「ははっ、悪い悪い」

 

 

そして少し遠くには、砂煙の中で二人の睨み付けるラウラの姿があった。

 

「一人増えた程度で・・・図に乗るなッ!」

 

シャルルにワイヤーブレードが飛ぶ。その本数は、6本。

 

そして飛び込んできた一夏の『白式』を、プラズマ手刀で迎撃する。

 

 

今度こそ時間稼ぎではなく撃墜するつもりの『白式』の雪片弐型の刃が、プラズマ手刀と交錯する。

 

 

(冷静に、こちらの刃は2本、相手は一本。このままなら押し切れる)

 

しかし手数の差は実戦において有利不利に直結する、先程のように防御だけに徹することのできない以上、一夏はじりじりと押されていく。

 

 

(落ち着け、落ち着け・・・こんな時、アムロさんならどうする?バナージなら?千冬姉なら?)

 

『白式』の残りエネルギーは決して多くない。――一夏はこの一撃で勝負を決めようと決意した。

 

 

ラウラの右手のプラズマ手刀を左手で腕を掴むことで防ぎ、右手の雪片弐型でラウラの左手のプラズマ手刀を迎え撃つ。

 

そして――大きく前蹴りを繰り出す。

 

 

一夏の後方のシャルルとの連携を予想していたラウラは前蹴りで体勢を崩す。

 

しかし不安定な空中で、強引に前蹴りを繰り出した影響で、足を突き出した体勢の『白式』には、雪片弐型での攻撃は叶わない。

 

そこで一夏は―――自らの得意技である、『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』を使った。

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)とは、ISのエネルギースラスターにエネルギーを大きく溜め、一瞬のうちにそれを一気に解放することで、爆発的な加速を可能とする技術である。

 

 

足を突き出したまま空中で急加速した『白式』は、特撮ヒーローのライダー・キックのようにラウラの――シュバルツェア・レーゲンの腹部を蹴り飛ばす。

 

今度こそ地面まで吹き飛ばされる『シュバルツェア・レーゲン』。

 

それを追う一夏の、再びの『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』。そして最後の切り札は、当然『零落白夜』。

 

右上に振りかぶった雪片弐型の、極大化した刃が『バリア無効化攻撃』の性能を遺憾なく発揮し、ラウラの肩部レールガンを両断する。

 

発動した『絶対防御』がラウラのシールド・エネルギーを大幅に削り取り――

 

 

 

 

一夏の『白式』は飛び退いた。やがてその形も無くなるだろう。シールド・エネルギーを大幅に消耗した結果である。

 

 

しかし、そこに飛び込む影があった―――シャルルのリヴァイヴである。

 

 

ラウラの『シュバルツェア・レーゲン』はシールド・エネルギーを危険域へ突っ込ませたものの、何とか生存した、という状態である。

 

当然、AICほどではないが集中を要するワイヤーブレードの操作は前蹴りを受けてから完全に断絶していた。

 

 

プラズマ手刀で迎撃を試みるも、肩部の中型物理シールドで防がれてしまう。

 

反撃とばかりに撃ち込まれたライフル弾を、辛うじてラウラはAICを使って無力化する。

 

 

しかしシャルルは、そのライフルを投げ捨て、溶解したシールドをパージした。

 

その下から現れるのは、かつてバナージとの戦いで山田真耶も使用した超高火力武装。

 

灰色の鱗殻(グレー・スケール)』。『盾殺し(シールド・ピアース)』の異名を持つ、連装式パイルバンカーである。

 

ラウラは最後の抵抗とばかりに、『AIC』での防御を試みる。

 

極限の集中の中、網目状に投射するAICで点の突撃であるパイルバンカーを、捉えることに成功した。

 

 

その瞬間、横合いから一発の銃弾がラウラに命中した。

 

さっきシャルルが投げ捨てたライフル。それは射撃訓練の際に、『白式』に使用許可を出したものである。

 

銃撃の主――一夏は、研ぎ澄まされた感覚の中、横から見れば棒立ちのラウラへ、残された銃弾を撃ち込んだのだ。

 

 

AICの集中が途絶える。パイルバンカーがラウラを捉える。

 

ガゴンッ!という鈍い音が炸裂する。

 

シュバルツェア・レーゲンはその形を失った。――――はずだった。

 

 

 

 

唐突だが、兵器として容易に転用しうるISには、条約により禁止されていることが数多く存在する。

 

そのうちの一つが、『ヴァルキリー・トレース・システム』である。

 

ヴァルキリーとは、最も権威あるIS国際大会、『モンド・グロッソ』の各部門優勝者に与えられる称号である。

 

『ヴァルキリー・トレース・システム』・・・・それ即ち、『ヴァルキリー』の動きを模倣することで、疑似的に『最強』に近い力を得ることに他ならない。

 

 

ラウラのIS、『シュバルツェア・レーゲン』には、条件付きで発動する『ヴァルキリー・トレース・システム』が組み込まれていた。

 

ISのダメージレベル、操縦者の精神状態、そして――操縦者がその力を、欲するか否か。

 

 

 

ラウラはその禁忌の力を――――望んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どろり、という擬音が相応しいだろうか。

 

IS『シュバルツェア・レーゲン』は、その形を失った。――液体のように。

 

黒い液体と化した『シュバルツェア・レーゲン』()()()ISは、ラウラを包み、やがて少女のような形へと収束した。

 

黒いその異形の少女が手に持つ武器はただ一つ。『刀』である。

 

 

ライフルを持った一夏へと、一瞬で肉薄した『ソレ』は、ライフルを横薙ぎの一刀で切り裂いて、刀を上段に構えた。

 

 

一夏はとっさにその斬撃を躱し―――激昂した。

 

「あれは、あれは、あれはーッ!」

 

雪片弐型を呼び出そうとした一夏だったが、幸か不幸か、『白式』にそのエネルギーは残されていなかった。

 

『緊急事態です!生徒の皆さんは、アリーナから避難してください!』

 

 

放送が鳴り響く。しかし一夏はそれでも尚、握った拳一つで『ソレ』へと立ち向かおうとし―――

 

ISを纏ったバナージに止められた。

 

「どうしたんだよ、一夏。何があったっていうんだ」

 

「放してくれ、バナージ!あいつは、千冬姉の技を――!!!」

 

 

そう、ラウラだった『ソレ』が模しているのは最強のIS操縦者。

 

彼の姉、織斑千冬の技である。

 

 

 

そんな一夏を、相棒であるシャルルは――でこぴんした。

 

「ッ・・・!?」

 

「落ち着いてよ、一夏。ISもない状態で、どうするの?」

 

「それでも、俺は――!」

 

 

なおも食い下がろうとする一夏に、バナージはある提案をした。

 

「一夏、俺に考えがあるんだ――シルヴァ・バレトのエネルギーを、『白式』に移そう』

 

「バナージ・・!すまん、頼「でも、聞きたいことがあるんだ」・・・何だ?」

 

 

「一夏は、どうして戦うんだ?」

 

「・・・・・」

 

「多分今一夏がやらなくても、先生方がこの事態を収束してくれると思う。

 ―――――それでも、一夏には戦う理由があるのか?」

 

 

一夏は首を横に振った。――――否定ではない。分かってないな、とでも言うように。

 

 

「違うぜ、バナージ。確かに千冬姉の真似事をしてるラウラのISは気に食わねえし、それにいいようにされてるラウラも一度ぶっ飛ばしてやらないと気が済まねぇ。

 

――――――でも、そういうことじゃないんだ。

ここでもし退いたら、俺は俺じゃなくなる。俺が『織斑一夏』であるために、戦うんだ」

 

 

バナージは苦笑した。――――分かってたよ。そんなこと、とでも言うように。

 

一夏の『白式』へエネルギーが流れ込んでくる。

 

 

バナージの『ビーム・マグナム』を使えば、おそらく、いや殆ど確実に『ソレ』を止められるだろう。

 

『ビーム・マグナム』は撃つごとに反動を逃がした腕部装甲の取り換えが必要になるが、それだって拡張領域(バススロット)からの交換がすでに完了している。

 

 

しかしそれでもバナージはエネルギーを一夏へと譲り渡した。

 

MISはエネルギー関連が特殊であるが、その構造性故に他の機体へのエネルギー移譲は簡単になっている。

 

 

 

「一夏、ISを-極限定で呼び出して。それで、『零落白夜』が使えるはずだから」

 

シャルルのアドバイスに従い、白式を呼び出す。

 

腕部装甲と『雪片弐型』、そして脚部装甲しか具現化できていないが、しかし一夏の視界には確かに【『零落白夜』発動可能】の表示がされている。

 

 

「一夏、無事に帰ってきてね」

 

シャルルが言った。

 

「ああ、任せろ。ここで失敗したら男じゃねえよ」

 

「じゃあ、これで無事に帰ってこなかったら一夏には女子の制服で通ってもらうから」

 

「・・・ああいいぜ?なんたって失敗しないからな!」

 

 

シャルルが微笑んだ。緊張がほぐれ、頭も冷えた一夏も笑みを返した。

 

 

 

 

人の減ったアリーナで、箒が一夏を見ていた。

一夏が見つめ返した、『信じて待っていればいい』、そう伝えるために。

 

しかし箒は心配していなかった。

 

箒が一夏のために、徒手でなぞって見せたのは、『一閃一断の構え』。

さっき『ソレ』も使った、千冬の得意技にして、『篠ノ之流剣術』の型。

 

 

一夏はそれを目に焼き付けた。必ず勝って帰ってくるために。

 

 

 

 

 

最後に、バナージと拳を突き合わせた。

 

二人に言葉は必要なかった。ただ拳を合わせるだけで、お互いの気持ちは余すところなく伝わった。

 

 

 

 

『零落白夜』を発動させた一夏へ、『ソレ』が構えをとる。

 

 

荒ぶる『雪片弐型』の刃。一夏は『白式』に語り掛けた。

(今回はそんなに大きくなくていいぜ。鋭い、洗練された刃でいい)

その意思を受け、刃は鋭く収束する。

 

かつて、一夏が千冬に持たせてもらったことのある、真剣の『日本刀』の形へと。

 

 

 

 

『ソレ』がこちらの刃を弾くべく斬りかかってくる。

 

恐るべき速さの一閃。

 

その刹那、一夏の脳裏に稲妻じみた予感が走った。

まるで数秒後の動きが見える。いや――感じる。

 

その予感をなぞる高速の一閃を、一夏は切り払った。

 

 

『ソレ』がやっているのはあくまで千冬の真似事にすぎない。

 

そこに千冬の意思はない。ただ似ているだけ。

 

その型にも、箒のもののような鋭さはない。ただ早いだけ。

 

そしてその動きにも、アムロのような戦略性もなければ、バナージのような想いもない。

 

 

そして――― 一夏のような、熱意がそこにはない。

 

 

 

切り払ったその隙へ、一夏は雪片弐型を上段に振りかぶる。

 

見える――感じる。ラウラがどこにいるのか、どこを斬ればいいのか。

 

 

ラウラから伝わってくる、どこか怯えたような思惟。

 

それを受けながら一夏は―――『ソレ』を断ち切った。

 

『ソレ』を破壊する最低限、浅く切りつけた『ソレ』の内側から、気を失ったラウラが出てくる。

 

 

一夏は、受け止めたラウラのどこか安心したようなその顔を見て、

 

「まあ、ぶっ飛ばすのは勘弁しといてやるよ」

 

駆け寄ってくる仲間達を背後に感じながら、呟いた。

 

 




今回はあまり陽の目を浴びていなかった一夏とシャルル(それとバナージと箒)の回でした。

誤字報告、感想等頂いています。
本当にありがとうございます。今後も『機動戦士ガンダムIS』を宜しくお願いします。
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