機動戦士ガンダムIS(インサイド・ザ・ストラトス)   作:見知らぬとまと

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再びの連日投稿です。
不定期なので・・・
お気に入り数、しおり数など増えていて喜びました。応援ありがとうございます。


白亜と白銀

宿に帰るための集合時間が来た。

 

専用機持ちはしっかりと集まっている。――――バナージを除いて。

 

 

「まさか、到着予想時刻を見誤ったのか?」

 

バナージは今回、多少の戦闘訓練の後に、沖へ向かって長距離航行能力のテストを行っている。

 

千冬が違和感を感じたその時、バナージからアムロににプライベート・チャネルで連絡が来た。

 

アムロはガンダムフェイスをクローズし、外部に音が漏れないように装着。

 

 

 

フェイスを開いたアムロに千冬が怪訝そうに尋ねたが、すぐに表情を青くした。

 

そのとき、ちょうど千冬とアムロの端末にも警報が鳴りだしたからだ。

 

 

 

内容は米軍・イスラエル共同開発の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』の暴走。

 

その航行予想ルートには――――バナージの航行予定地がちょうど重なっている。

 

 

 

 

千冬と真耶と数瞬ハンドサインを交わすと、アムロは海へと飛び立っていく。

 

 

「緊急事態だ。専用機持ちは各自装備を整えて職員部屋に集合しろ」

 

そう言った千冬の焦燥した様子が、事の緊急性を顕著に伝えていた。

 

 

 

 

 

 

 

時は十数分前に遡る。

 

 

低速長距離航行試験の最中、予定地点までの航行を終え、帰投しようとしたとき、『ソレ』はやってきた。

 

 

ISに搭載されたステルス装備で空間から湧き出るように現れたそれは――白銀のISだった。

 

 

バナージはすぐにオープン・チャネルで呼びかけた。

 

「こちら、日本所属、バナージ・リンクス。Please respond(応答願います)

 

「・・・・・・・・・」

 

MSパイロット時代の癖で英語で呼びかけたにも関わらず、白銀のISは一切の反応を見せなかった。

 

 

そして突然弾かれたように動き出し―――こちらに攻撃を仕掛けてきた。

 

「La♪」

 

「!?」

 

特徴的な音とともに銀の両翼がこちらを向き、エネルギー弾を広範囲にばらまいてくる。

バナージは垂直上昇で躱し、ビーム・カノンで応戦する。

しかし白銀のISは一射目、二射目と難なく躱す。間違いなくMISシリーズに並ぶほどの高性能機だ。

 

 

しかし、それこそがバナージの狙い。誘導された白銀のISを、狙い澄ました一際威力の高いビーム・カノンが突き刺さる。

 

シールド・エネルギーを削り取った手応え。その隙に、バナージのビーム・マグナムが展開される。

 

 

【出力70パーセント・対人高出力モードです】

 

表示を横目に、教員かつISを待機状態で保持しているアムロへとプライベート・チャネルで最短の要件だけを連絡する。

 

 

そして体勢を立て直した白銀のISから、今度は全方位へのエネルギー弾が迫る。

 

一度後退し、密度が低くなった隙間を抜けて回避、再びビーム・カノンを撃ち込む。

 

しかし学習し上手く回避する白銀のIS。しかし、宇宙世紀でのエースパイロットたるバナージには尚及ばない。

 

 

「当たれぇッ!」

 

裂帛の気合ととも撃ち放たれたビーム・マグナムが、白銀のISの翼を掠める。

紫電を纏う光条は、シールド・エネルギーを削り取った上に、翼の一部を溶解させた。

 

それに警戒を強めた白銀のISは、回避軌道を描きながらエネルギー弾による弾幕を展開してくる。

 

バナージは気持ちを切り替え、ブラフとしてビーム・マグナムは左手で保持したまま、右手にビーム・サーベルを構える。

 

そして継続して襲い掛かってくるエネルギー弾を、ハイパー・センサーで遅れて見えるのを利用しビーム・サーベルで弾く。

そしてこちらからはビーム・カノンとバルカン・ポッド、そしてハンド・ビームガンで応戦する。

 

 

膠着した戦況。

近・中距離での戦闘に長けた―――正確には長距離においてはビーム・マグナムにおいても高火力支援のみに特化している―シルヴァ・バレト・サプレッサーの不利を補う操縦技術で、バナージは機体相性を考えると非常に善戦していた。

 

 

 

しかし、バナージには足りないものがあった―――エネルギーと推進剤である。

 

あえて本来得意とする近・中距離での戦いを避けた一つ目の理由だ。

 

 

ついに回避しそこなったエネルギー弾がバナージの装甲を灼いていく。

 

ここからはジリ貧だ。ビーム・マグナムもこんな不安定な状況では当たるまい。

 

 

 

 

バナージのシールド・エネルギーが危険域に突入した。

それでも――この状況を打開する術を、バナージは持っていなかった。

 

「La♪」

 

福音の狭い範囲に集中した高エネルギー弾がシルヴァ・バレト・サプレッサーに直撃し

―――ついに、バナージ・リンクスは、ISで初めての完全な被撃墜を経験することとなる。

 

 

 

 

全身が紅く表示されていたISが除装され、衝撃ですでにぼろぼろの生身で海へと落ちていくバナージ。

 

 

意識を手放すその瞬間―――緑と蒼のISが見えたような気がした。

 

 

 

 

アムロは海上を高速で飛行していた。

 

バナージからの連絡は、

 

『所属不明の銀色の全距離型ISから攻撃を受けています。応援を要請します』

 

という極めてシンプルなものだった。―――それは、それほどまでに余裕のない状況だということを示している。

 

(間に合ってくれよ・・・!)

 

思惟をISに乗せ、アムロはνガンダムを疾駆らせる。

 

 

そしてついに見えた、白銀のIS、『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』。

 

今、白銀と白亜のISが、激突する。

 

 

 

3度閃いたビームライフルが余すことなく直撃し、『福音』はこちらを向いた。

 

「La♪」

 

小手調べだ、とばかりに撃ちこまれたエネルギー弾。

それを動くことすらなく模造ガンダリウム合金製のシールドで防御しながらバルカン・ポッドで両翼を攻撃し、発射途中のエネルギー弾が誘爆し、翼へ大きくダメージを与える。

 

 

遠距離戦は不利だと判断したらしい『福音』が突っ込んでくるが、そここそがνガンダム、いや『アムロ・レイ』の間合い。

 

「そこだッ!」

 

瞬時にビーム・サーベルが引き抜かれ、超高速のキックを斜めに構えた盾で逸らし、翼を切断する。

 

 

 

初めて受けた致命的なダメージに、福音が退こうとする。

 

しかしその隙にもシールド・ビームキャノンが撃ちこまれ、シールド・エネルギーを確実に損耗させていく。

 

そしてその隙にプライベート・チャネルで連絡を取る。

「山田先生、更識、バナージのセーブは」

 

『問題ありません、これより撤退します

  ―――ですが、本当に一人で・・・・?』

 

「時間は稼いでおきます。撃墜するつもりでいきますよ」

 

 

 

そう、アムロの役目は、超高速で移動する福音をここに引き付けておくこと。

 

時間がどれだけかかるかもわからない――そこは千冬たちがいかにスムーズに動けるかで決まる――上、競技用とは違い、完全にISの限界を突き詰めた軍用機を相手に戦う危険な任務だ。

 

 

しかし、自分以外にこれを成し遂げることができる者がいないのも、客観的な事実。

 

真耶と更識簪の撤退を確認し、通信を切り、気合を入れなおす。

 

 

再び迫るエネルギー弾を斬り飛ばすと、アムロはビームライフルを『福音』に向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

千冬は職員部屋のスクリーンで情報を整理しながら、唇を噛んでいた。

 

米軍内部で派閥争いが起きている影響で、司令部が汚点を晒したくないという動機で日本への連絡が遅れたこと。

 

高性能全距離型の軍用ISであること。そして―――暴走中のソレとアムロが交戦しているということ。

 

 

千冬にとってアムロは、好感の持てる同僚だ。

 

礼儀は弁えており、気遣いもできる。そしてその大人びた感じとは裏腹に――裾の内には子供じみた熱情を秘めた、凄腕のパイロット。

 

彼の実力は信頼しているが、ラウラのIS暴走事件からもわかるように、暴走中のISというのは何をしでかすかわからない。

 

―――もし、福音がセカンド・シフトでもしたら――

 

そんな悪い予感が頭をよぎりかけ、かぶりを振る。今考えるべきは、いかに早く最善の増援を送るかだ。

 

 

 

千冬がそんな考え事をしているうちに、それぞれが『福音』についての情報分析を終えた。

 

 

束が手にかけただけあって、『紅椿』は恐るべき超高性能機だ。

   ――その束がこの部屋で口を出してきているのは頂けないが。

 

 

「『紅椿』と『白式』での超音速奇襲を行い、そこからは無人島があるエリアへと誘導。

  消耗している『福音』をそこで専用機持ちでの遠距離攻撃で仕留める。異論は無いか」

 

「「「「「「はいっ!」」」」」」

 

 

 

強力な防御用パッケージを持つ更識簪はバナージの救出へ向かっている為、他の専用機持ちが慌ただしく準備を始める。

 

 

 

『リンクス君への応急処置終わりました。ISの装甲を上手く生かしていたみたいで、そこまでの外傷はありません。意識も戻りそうです』

 

 

「了解した。山田先生はこの宿の警護を」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――千冬の中で、決戦はもうすぐそこに迫っていた。

 

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