機動戦士ガンダムIS(インサイド・ザ・ストラトス) 作:見知らぬとまと
アムロの福音との戦闘開始から十数分。
エネルギーも切れはじめ、カートリッジの切れたビームライフルを収納し、IS用の実弾ライフルで射撃する。
アムロの苦戦の原因は二つ。
一つ目は、軍用IS『銀の福音』が極めて多いシールド・エネルギーを有した、耐久力に優れた機体だったこと。競技用ISとの差は、それほどに顕著だった。
そして二つ目は、νガンダムのファンネルが作動しないエラーを起こしているということ。
νガンダムのファンネルは未だ、姿勢制御装置以上の役目を果たさないまま背部にくっついている。
ただ、アムロには確かな勝算があった。エネルギーが尽きかけているのは『福音』とて同じ。
しかし、アムロには奥の手がある。
感覚的にわかる。もう少し、あと少しで届くと。
シールドミサイルも底を尽き、『福音』が全方位の高出力エネルギー弾を撃ってきた、まさにその時。
【
待っていた、この時を。
エネルギーの全快と共にνガンダムが最適化され、感覚がクリアに、シャープに研ぎ澄まされていく。
実は、元から改良が予定されていたシルヴァ・バレトとリ・ガズィは、専用機化処理が行われていなかった。つまり、アムロは今初めて、
新武装の表示を見るまでもなく、アムロは叫んだ。
「フィン・ファンネルッ!!」
背部に搭載された6基のフィン・ファンネルが動き出し、『福音』へ狙いを定める。
福音は敵機の方向から発射されたBT兵器に類する兵装を瞬時に識別すると、回避態勢に入った。
そして一定の間合いに入った瞬間、3基の砲口が同時に福音へと火を噴く。
それを福音は体を捻って回避すると、返す刀とばかりにエネルギー弾での反撃を試みる。
しかしそこに、有機的なまでの軌道で残る三基が追撃をかける。
シールド・エネルギーを削られながら福音は離脱を選択。大出力のスラスターを吹かし、BT兵器の飛び交う領域から瞬く間に離脱する。
そしてその福音が次に捉えたものは、ビーム・サーベルを手に一気にスラスターを噴射したνガンダムが福音に肉薄する姿だった。
かつてのMSの、コンピューターに囲まれたリニア・シート――コクピットにいた時と同様に、研ぎ澄まされた感覚で攻撃の隙をを突く。
ISが最適化され、ニュータイプ能力が十全に発揮される。
暴走中だからか、あのISからは『思惟』を感じられない。
しかし、元々ニュータイプとは広い宇宙で遠い彼方の人を感じるためのもの。
その予感じみた超感覚は機械的な動きの初動を正確に捉える。
「そこだッ!」
交錯するように飛び込んだνガンダムのビーム・サーベルが迸り、ついにもう片方の翼を切断する。
そしてエネルギー切れになったビーム・サーベルを収納し、振り向きざまの福音にガンダリウム合金の拳が炸裂する。
ガキンッ!という甲高い音が響き、もはや残り少ないバリアを削っていく。
福音が最後に動く、その刹那。その間隙すら見逃さずに、アムロはスラスターを吹かす。
「とどめだッ!」
νガンダムの回し蹴りが福音を打ち付け、強かに吹き飛ばす。その先は、離脱したはずのファンネルが飛び交う死の空域だった。
6基のビームが、回避不能な軌道で福音を射止める。
【敵IS沈黙】
『やったぁ!』
『流石ですね!』
生徒たちの歓声が飛び交う中、アムロはファンネルを自機付近に帰還させると、静かにビームライフルを展開した。
敵IS沈黙の確かな表示の後、『福音』はそれきり動きを止めていた。――――――――空中のまま。
アムロは直感的に感じた―――来る、と。
変化はすぐに起きた。
痛々しく斬り飛ばされた翼の断面から、輝くエネルギーが噴出する。
それはやがてエネルギーの翼を形作る。空に溶け込むような、美しい群青の翼。
「La♪」
凶器と化した翼が、アムロへと迫る。
しかしそれより尚速く、既にファンネルはνガンダムを取り囲む6面体の頂点に位置取っている。
ギュイイインンッ!!という独特な音を立てて、翼とファンネルが展開したビーム・シールドが激突する。
その隙に離脱したが、アムロは舌を巻いた。
―――とんでもない攻撃性能だ。しかし恐らく、あれは白式のような攻撃特化状態、防御に割けるエネルギーはそう多くはないはず。
アムロのファンネルとビームライフル、そして『福音』のエネルギー弾が入り乱れ、海上を死の輝きが染め上げる。
人間なら間違いなく躊躇うその網を潜り抜けるようにして一瞬のうちに接近した『福音』。その速度は、
しかし、アムロは後方から感じている。
灼けつくような強い―――戦うことで守り抜くという意思を!
スラスターの急制動で高速上昇したνガンダムの足元を、紅白の影が一瞬で過ぎ去っていく。
―――――。
「うおおおおおおッッッ!」
紅椿から跳躍した『白式』が、雪片弐型の蒼白の刃を構える。
左下から右上に斬り上げる逆袈裟切り。
その斬撃は速く、鋭く―――空を切った。
「馬鹿者っ!『零落白夜』すら発動できていないぞ!」
箒は叫んだ。しかし体勢の崩れた一夏から帰ってきたのは、
――――――――――彼の姉、千冬の様に、不敵な笑みだった。
その体勢のまま白式は爆発的に加速した―――鮮やかに瞬く流星のような
さすがの『福音』も第三世代速度型の加速から逃れきれず、『白式』の腕が『福音』の肩を掴んでホールドする。
そして輝く―――――諸刃の
操縦者を傷つけないよう胸部装甲を切り裂く、群青の刃。
それが『福音』から『絶対防御』を引き出し――シールド・エネルギーを大きく消し去った。
しかし、『福音』はそれに耐えきった。
「La♪」
射程圏内で、隙だらけになった『白式』に、死の翼が一夏を捕らえんと蠢く。
しかし、一夏の成長はそこに活路を生み出した。
零落白夜を即時発動・解除する訓練を積んだ一夏。
後退の『
瞬時に離脱してエネルギーを使い果たした『白式』を待っていたのは―――『紅椿』だった。
「あまり無茶をするな!全く、私が待っていなかったら・・・」
心配する箒に、一夏はただ一言。
「それはねえよ。なんとなく、
会話中の二人だが、敵は待ってはくれない。
追撃へ迫る『福音』を、しかし紅椿は長刀の一閃で切り払った。
剣の道を邁進した箒のための主武装、
そのうちの一本、長刀『空裂』から放たれたエネルギー刃が、『福音』に直撃したのだ。
さらに後を追いかけるように、数発のビーム、そしてさらに時間差で放たれた六本のビームが福音を追撃する。
「俺はフォローに回る!任せたぞ!」
アムロの力強い射撃支援を受けながら、二人は『福音』との戦闘を続け、事前にプライベート・チャネルで伝えられた作戦通りに、無人島へと誘導していく。
そして予定空域。
「準備いいか!誘導いくぞ!」
「「「「OK!!」」」」
「3、2、1・・・・今ッ!!」
一夏の号令と共に専用機持ちが一斉に攻撃する。
それぞれの機体から飛行中の福音へ降り注ぐ幾条もの主力級の遠距離攻撃が、『福音』を撃墜する―――はずだった。
彼らは忘れていた。
「La♪」
―――『
―――――――――遂に解き放たれた、『