機動戦士ガンダムIS(インサイド・ザ・ストラトス) 作:見知らぬとまと
それに伴いいくつかの話で改稿、および発生した不具合(?)に伴う修正を行ったので、何かあれば誤字脱字など報告お願いします。
「あいつ、なんなのよっ!あれだけの砲撃の直撃を受けてもまだ尽きないなんて、どれだけのシールド・エネルギーがあるの!?」
思わず鈴が毒づくと、苦々しく表情を歪めたセシリアが同調する。
「ブルー・ティアーズの残りエネルギーもそう多くはありません・・・一体どうなって」
「ぐっ!?」
「篠ノ之!代われ!」
エネルギー翼に気を取られ、エネルギー弾の直撃を受けた箒と引き換えに、アムロのνガンダムが前衛に出る。
エネルギーを充填したビーム・サーベルでそれより遥かに大きなエネルギー翼と切り結びながら、フィン・ファンネルが的確にシールド・エネルギーを削っていく。
近づこうとする福音にはシールドから放たれたミサイルが直撃し、その機先を制する。
「そこだっ、撃ち抜く!!」
その一瞬を突くように、ラウラのレールガンが福音へと突き刺さる。
『紅椿』そして『νガンダム』。二機の高性能機、そして後衛機の連携の取れた攻撃。明らかな優位にもかかわらず、それでも福音は墜ちる気配もなかった。
「あーもう埒が明かないわ!」
衝撃砲が通じにくいと理解すると、『甲龍』が青龍刀を構えて前に出る。福音がエネルギー弾を放った直後の、一見して完璧なタイミングだった。
「まずい!凰、今は!」
「くっ!きゃあああああ!」
誘いこまれた。そう理解した時には、すべてが遅かった。
エネルギー翼に包み込まれるようにしてシールド・エネルギーを大幅に損失した鈴。
「鈴!!」
その翼に切り込んだのは、一夏の『白式』だった。
「よくも鈴を!!」
『零落白夜』でエネルギー翼を切り裂き、鈴を救出すると、そのまま福音の追撃を躱す。
「動きが見える、今の俺には!」
翼が触れる一瞬。瞬間的に発動した『零落白夜』が、最低限のシールド・エネルギー消費で福音の攻め手を横一文字に切り払う。
「はああああああッッ!!!」
心に刻まれた姉の技。切り払いからの上段、一閃二断の構えが福音の『絶対防御』を吹き散らし、シールド・エネルギーを大きく損耗させる。
「あとは任せろ!フィン・ファンネル!」
明らかな致命傷に畳みかけるように、連携による連撃が浴びせかけられる。
それでも爆風の晴れた先には、装甲が一回り削れただけの福音が佇んでいるのだ。
『一体どうなってる!?まだ撃墜できていないのか!?』
通信越しにアムロに焦りを隠せない様子の千冬の声が響く。
しかし、アムロはただ黙していた。
この状況をもたらす最悪のファクターに、ついに思い至ったからだ。
「まさか、そんなことが可能なのか・・。しかし、ISなら・・・」
『どうした、何か気づいたのか!?』
アムロは直ぐにオープン・チャネルを開き、すべての生徒に呼びかける。
「ビーム兵器でヤツに攻撃するな!福音の翼は・・・エネルギー兵器を吸収する可能性があるッ!!」
『何ですって!?』
『そんな!?』
『バカな、そんなことがっ!?』
驚愕する生徒たちに代わり再び前衛に出るアムロ。しかし、もはやビーム・サーベルすら満足に切り結ぶことができない。そのエネルギー吸収性能が未知数な以上、それは危険すぎる賭けだった。
拡張領域から緊急事態用に格納された実体ブレード、そしてIS用のライフルを取り出す。
しかしそれは、福音とνガンダムという最新鋭機同士の戦いにおいて、あまりに役不足な武器だった。
エネルギー翼と実体ブレードが干渉光を飛ばし切り合う。しかしその様相は、ビーム・サーベルを使えていた頃とは様変わりしていた。
(武装のパワーで押し負けている・・ッ)
あまりにも長く切り結べばそれだけで実体ブレードが溶解してしまう恐れすらある状態で、一撃一撃が致命の輝きを持つ銀の福音と格闘戦を行う。そんな曲芸じみた戦い自体、一年戦争の後には様々な機体で戦ってきたアムロ・レイというパイロットでなければ成立もしなかっただろう。
ブレードの限界を感じれば一瞬のうちに距離を取り、大した弾数もないIS用ライフルと機体にマウントされた兵装での射撃戦に移行する。しかし、それも長くは続かない。銀の福音の学習能力、ブレードの耐久性、そして・・・
ハイパーバズーカを構えたνガンダムが、何度目かの射撃を行う。一発目は福音の読み通り。しかし、それすらも予測してアムロは福音を捉える。
しかし引き金を引いても、現れたのはピーッ!という警告音だけだった。
(ミサイルに続いてハイパー・バズーカも・・・)
「La♪」
弾切れ。その攻撃の空隙に差し込むように、福音の翼がνガンダムを捉えようと迫る。
一気に危険域に突っ込むシールドエネルギー。それを意識の端にも入れずに、シールドをパージして投げつけることで離脱する。
あと一撃か、二撃か。追撃を受ければ間違いなくこの機体は堕ちていた。その確信があるから、もはやアムロは迂闊に動けない。
そして、十何度目かの支援砲撃が福音に浴びせかけられる。
その煙から晴れた福音は、危険度は高くとも攻撃能力が低下してきた撃墜が難しい機体から、他の機体へと攻撃対象を移した。
「総員、現在地から回避しろーッ!」
アムロの号令に咄嗟に動いた後衛機体たち。そのうちのラウラとシャルロットに、福音が襲い掛かる。
「やはりレールガンは脅威だったか・・・・!」
アムロにもはや福音を引き付けうる戦力はなく、バナージは不在。そして、一夏はエネルギー損耗が激しく、箒は実戦経験不足。他の機体には・・・あの機体と一対一を張れるほどの戦力はない。アムロは歯噛みした。
「万事休すか・・・」
あまりにも絶望的な戦況。思わずそう呟いたアムロに、返す声があった。
「俺はいけます!」
通信越しでなく届いたその声は、紅椿の箒と同行していた一夏だった。
「俺は、まだいけます。俺が、福音を止めます!」
それと同時にデータ共有された『白式』のエネルギー残量に、アムロは目を見開く。安全域を通り越して満量まで回復していたからだ。
(これが、ISの見せる奇跡・・・福音だけではなかったか)
「俺があいつを食い止めます。俺の零落白夜なら、福音も無視できないはずです!」
「しかし、一夏。おそらく最早支援は期待できないと思ったほうがいい。本当に単独で、福音を撃墜できるのか」
「いいえ」
一夏はここで初めて否定を返した。希望に満ちた否定だった。
「バナージは、必ず来ます。聞こえるんです、バナージの声が」
「・・・・・・一夏。よし!前衛は任せる。全機、『白式』を支援しろ!」
『『『『『はいっ!!』』』』』
(慕われているな、一夏・・。)
そうアムロは遠ざかる白式を見送りながら瞑目した。そして、箒に声をかけた。
「篠ノ之、もし白式と福音の戦闘に支援ではなく介入できるとしたら、残弾と性能から見てその『紅椿』だけだ。」
「・・・」
「大丈夫さ。機体よりも何よりも、積み上げてきた自分の力というものは、案外裏切らないものさ」
「・・・はいっ!」
今度こそ飛び立つ箒を見送り、アムロは福音に肉薄した白式の様子を捉えながら、ゆっくりとスラスターを吹かした。
機体が変わり、重力が変わり、仲間が、時代が、敵が、世界が変わり。アムロ・レイというパイロットは、あらゆる戦場を経験してきた。
「時代を変えるパイロットは、ここでも若者の中から現れるんだな・・ブライト」
その言葉は、青い空に溶けて、やがて消えた。