機動戦士ガンダムIS(インサイド・ザ・ストラトス) 作:見知らぬとまと
本当に申し訳ございません。そして、お待ちいただきありがとうございます。
専用ISスーツに身を包んだバナージは、高速で作業を進めていた。
説明書通りにコアの設定を済ませ、本来より一回り大きい背部スラスターにコアを装着する。
「リンクス君!ISは装甲に慣らすまで時間がかかるんです。そうすぐに使えるものでは―――」
『RX-0』を受け取ったときから山田先生が言っていることだが、バナージはこの機体がその枠に囚われないだろう、と思った。
根拠は無い、理由は
作業中にも装甲の隙間から見える、紅の鋼材。
明らかに試作時よりも完成度が上がり、本物と遜色ない『サイコフレーム』だ。
そしてその予想はすぐに裏付けられる。
コアを装着した途端に脈動するサイコフレーム。気づいたときには、もうすでにバナージはその機体を着装していた。
絶句する山田先生に「クラスの皆を頼みます」と一言残し―――『RX-0』は空へと飛び立った。
「一夏、大丈夫か!?」「ああ、助かったよ」
「La♪」
「くっ!このっ!」
篠ノ之束製第四世代型IS『紅椿』すら圧倒している『福音』は、久方ぶりに脅威判定最大の標的を発見した。
海岸からほど近い海上を飛ぶ一機の白いIS。
問題はそこではない。
その圧倒的な速度。
紅のフレームから漏れ出す光は、『紅椿』の移動時の『展開装甲』とほぼ同等、そして同質だ。
全身エネルギースラスター。アナハイム高専きっての秀才は、スラスター機能のみの劣化版とはいえ、篠ノ之束と同じ発想にまで辿り着いたのだ。
かつてのデストロイ・モードのように紅いフレームを輝かせ――白き獣は、一角のまま、右手の引き金を引いた。
奔る紫電。出力を25%下げ、連射性の上昇したビーム・マグナムは直撃コースで福音へ迫る。
吸収能力を持つ翼すら突き抜け、ダメージを与える一撃。
一騎当千、無双の機体。それはまさしく第四世代の名を冠する次世代の力だった。
「よそ見してる場合かッ!!いくぞ一夏!」
「おう!」
その一瞬に、白式の『雪片弐型』が最強の光を帯びる。
それは、すべてを友人に託すための最後の一撃。
「はああああああああ!!」
福音の単一仕様能力、そして絶対防御すらも貫いて『零落白夜』の一撃が福音のバリアを引き裂く。
「あとは頼んだぜ・・・バナージ!!」
その答えの代わりに、空中を一瞬のうちに駆け抜ける白き一角獣。
そして再び迸る紫電が、友人を追撃せんとする福音を大きく押しのけた。
刹那、肉薄する一角獣が福音を返す刀で追撃する。
「・・・La!」
遅ればせに聞こえる銀の福音の音色は、戦場の趨勢を表しているようですらあった。
紫電が迸るたび、エネルギー吸収すら突き破り銀の福音が悲鳴を上げる。
しかし箒は、その機体の弱点を知っている。
「!」
紅い光が急激に薄れていく。全身をスラスターとする『展開装甲』は、非常に多くのエネルギーを消費するのだ。
空中へ静止した機体。好機とばかりに、エネルギー弾を放った。
空中に爆裂する幾千の弾丸。
しかし、色を失った獣は――――その角を開いた。
―――――
バナージの表情はガンダム・フェイスに覆われて窺い知ることはできない。
しかし、その姿に浮かぶのは余裕でも、嘲笑でも、緊張でもない。
郷愁だ。
金色の
それと同時に
「・・・・La!」
ビーム・マグナムを警戒した銀の福音が接近を試みる。
その刹那、ビーム・マグナムを
エネルギー・シールドから光が迸り、福音のシールド・エネルギーを削る。
予定外の行動に硬直する福音。その一瞬に、ユニコーンはビーム・サーベルを引き抜く。
「はぁぁぁあああッッ!!」
高出力の荷電粒子束が福音のシールド・エネルギーを奪い取る。
一合、また一合と切り結ぶたび、福音からは光が飛ぶ。
「La・・・・!」
福音が翼を広げれば、その内側で本体を殴り飛ばす。
福音が格闘を試みれば、サーベルとバルカンが装甲を切り伏せる。
射撃の間合いへの離脱のための一瞬には、体勢を崩す回し蹴りが。
圧倒的な機体性能、経験値、そして・・・現状のハイパーセンサーを大きく超えた、知覚能力。
「なんだ・・・あの機体は」
その言葉を漏らしたのは、箒だったか、指令室の誰かだったか。
明らかに異質。スポーツの道具としてのISではない。
―――銀の福音と同質の、
MIS、
その名が歴史に刻まれるまで、そう遠くはない。