機動戦士ガンダムIS(インサイド・ザ・ストラトス) 作:見知らぬとまと
後々大規模改稿を行う可能性があります。
海上に紫電と白光が交錯し、お互いの生命を削り合う。
「La♪」
しかし、相手は最新鋭の戦闘用マシン。
徐々に、バナージの戦闘パターンを学習していく。
バルカンの自動装填の一瞬の空隙に、鋭く福音の前蹴りが突き刺さる。
「ガッ・・はぁッ」
デストロイモードは推力を上昇させるが、その分パイロットへの負担も増す。
一瞬意識を手放すバナージだが、ISのブラックアウト防止機能、そして注入されている薬剤がバナージの意識を繋ぎ止める。
その間にエネルギーウイングの出力を片翼だけ急上昇させ、福音は一気に距離を取る。
「La♪」
福音が鳴る。荘厳に、美しく、そして命を刈り取るために。
ユニコーンが左手のシールドを構える。アナハイム・エレクトロニクスの技術の結晶、それを模倣した擬似Iフィールド・ジェネレーターが翼から放たれたエネルギー弾を受け止める。
爆ぜる灰色の爆風。それが晴れた時には既に、一角獣はゼロ距離にいた。
「はぁあああああ!!!」
デストロイ・モードにより変形したスラスターの大出力が、紅き双角獣に異次元の駆動を可能にする。
蒼き翼が振るわれる。その直前に内側に潜り込んだバナージは、「福音」本体にビーム・トンファーを突き立てる。
「La.....♪」
しかし福音も迸る蒼きエネルギーの翼をスラスター代わりに、高速でバナージを振り払う。
「はぁあああ!!」
刹那、交錯。
ユニコーンの機体からはシールドエネルギーの消費を表す蒼い光が散り、福音の機体では熱量をシールドが相殺し切れずに白銀の装甲を灼く。
ビーム・サーベルがはためけば白銀の装甲を散らし、
翼が振るわれれば白亜の機体に傷がつく。
死の舞踏。
バナージが一手間違えれば『福音』はそのワンオフ・アビリティでシールド・エネルギーを回復し、福音が一手間違えれば大出力から放たれる一撃が装甲を削り取る。
ワンステップのミスが致命傷になる戦いがそこにあった。
「すごい戦いだ...」
紅椿に乗る箒が呟いた。
「だが、接近戦闘は不利だ。あの間合いでは、どう立ち回っても攻撃中は奴のエネルギー翼の射程内だ。触れられれば、おそらくあの機体でも致命傷だぞ」
オープン・チャネルからラウラが答える。
ラウラたちの距離からの砲撃では、あの異次元の駆動を捉えることは愚か、誤射することにもなりかねない。
そして何より、損耗しきった彼らが行ったところで足手まといになることは明らかだった。
自分たちを単独で追い込んだ、圧倒的な戦闘能力を持つIS、『銀の福音』。それを相手にあの機体は一機で互角の戦いを演じている。
もはやラウラや箒は、祈るしかなかった。
その時、戦況が動いた。
「リンクスくん、上に跳んで!!」
後方からの可憐な、しかし決意を込めた鋭い声。
バナージのように卓越した技術がなくとも、
彼女は彼女なりのやり方で、戦うと決めたのだ。
「マルチロックオンシステム手動構築・・・完了!『山嵐』、全弾発射!」」
ユニコーンがそのバーニアで急上昇したのと同時に、更識簪の打鉄弐式から放たれるマルチロックオン・ミサイルが、まるで生物のように不規則に『福音』に襲い掛かる。
防御態勢を取る福音。これまで応戦してきたアムロや箒、そして一夏たちの積み上げてきたダメージと比べれば、それは決して大きくはない。
しかし、戦場でのハイエンド機体同士の戦いにとっては、大きすぎる意味を持っていた。
「La♪」
黒煙を吹き散らす福音。しかしその直後に遥か上から、白い影が飛びついた。
ビーム・サーベルを収納したユニコーンが、福音の両肩を抑え込むように掴んだのだ。マニュピレーターに掴まれた、『福音』の傷つき切った実体装甲が悲鳴を上げる。
「・・・・La♪!」
しかし当然、その背後から包み込むように、致命の蒼い翼が迫る。
「う、おおおおおおおお!!」
バナージの裂帛の気合いと共にユニコーンのバーニアが爆ぜる。福音のエネルギー翼を遥か後方に置き去りにして、展開装甲化したサイコ・フレームと背部バーニアの全出力でユニコーンは日本海上を翔ける。
「はぁあああああああ!!」
莫大な瞬間出力による解決。バナージは紅い残光をはためかせながら、エネルギー翼が本体に追従できない程の超高速で福音を押し出す。
常人ではすぐにでもISによる保護込みでも断続的に気絶してもおかしくない程のGを受けながら、デストロイ・モードによる薬剤注入とその精神力でバナージは福音を無人島に叩きつける。
ギュガガガガガッ...!!!!
装甲と岩が削り合う激しい音を鳴らしつつ、バナージは福音を激突させ続ける。シールド・エネルギーへのダメージだけでなく、装甲の超高速での地面との激突による本体に直接かかった強い衝撃が、福音に致命的なダメージを与えていた。
「これで.....終わりだァアアア!!!」
ユニコーンが吼え、右手に再展開した深紅のビーム・サーベルが、福音に深々と突き刺さる。
最期に弱々しく鐘を鳴らし、福音はついに機能を停止した。