機動戦士ガンダムSEED Natural Gifted   作:風早 海月

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低軌道会戦

「地球連合軍、第八艦隊、距離8000!」

「うむ、艦隊戦では敵わん、モビルスーツ発進準備じゃ。よろしいですな?分隊長。」

『はい。僕も出るので、ヘルダーリンはベルモンド艦長の指揮下で随意行動してください。』

 

ブリッツに乗り込むニコルは通信を閉じると、ため息を漏らす。

 

「はぁ……隊長って書類仕事多いんですね……」

 

電子化されたとはいえ、ザフトも組織である。自由の効くザフトと言えども、書類からは逃げられない。

西暦時代のアニメにあったパンツじゃないから――の隊長も言っていたが、これでは自身の撃墜数どころの話ではなくなるのは分かってしまう。

 

ちなみに、クルーゼはその能力を遺憾なく発揮している上にそうそう自分で出撃しないのでやっていけてるのである。

 

『ニコル・アマルフィ、ブリッツ、出ます!』

 

 

リニアカタパルトから飛び出して、ブリッツを踊らせる。

 

『アマルフィ分隊各位へ。今作戦の我が隊の目標はあくまで足つきを地球に降ろさないことです。その点に留意しつつ各自臨機応変に対応してください。』

『了解!』『はい!』『はーい!』『っしょ!』

 

「い、胃が痛くなってきた……」

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

ジン1機に対して、メビウス5機と言われる戦力比。

それがクルーゼ隊の精鋭であるならばそれはさらに広がる。

 

戦闘において、コズミック・イラ70年代においてもランチェスターの第二法則に基づく計算は有効である。Xt^2/‪α‬=戦力である。数の二乗を兵器や兵士の能力を定数化した数で割るのだ。

 

その結果が大きく数で勝る地球連合軍はクープマン分析、つまり局所的有利も相まって、乗積で数の暴力があるにもかかわらず、地球連合軍とザフトは泥沼の戦いをしていた。

 

 

『コーネリアス!』

 

 

メビウスに囲まれて、リニアガンを多数撃ち込まれたジンが爆散する。

 

 

『クソ!イザーク、ディアッカ、前に出すぎるな!ジンでは追従できない!』

『フンっ!腕が悪いだけだ!行くぞディアッカ!』

『おう!』

『おい!』

 

アスランの指揮下だったジンが一機爆散したことで、流石にアスランが突出する2人を窘めるが、アスランをライバル視しながらも、席次の低かったニコルにもう1つの隊長席を奪われたと思っているイザークはお供のディアッカを引き連れてさらに前に出る。

 

ディアッカのバスターは遠距離戦だけでなく、対雑魚相手の制圧戦も得意としている。さらに、アサルトシュラウドを装備したデュエルも、武装を増やし、暴れ回る。

 

『アスラン、僕たちはあくまで…』

『分かっているさ!』

 

アスランはニコルの忠言に、苛立ちながら2機を追う。

 

ちなみに、ミゲルは大好きなバルルス改特火重粒子砲で船を遠距離でちまちまとつついている。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

『ヘルダーリンより各位。ヘルダーリン及びガモフ後方10000に敵増援確認。地球連合軍、第十一艦隊を認む。』

『ガモフ了解。クルーゼ隊長から命令だ。艦を前に出す。第十一艦隊が来る前に第八艦隊を葬るとの事だ。』

 

ベルモンド艦長はその指示に少しだけ悩む。何か違和感が拭えないのだ。

 

「アマルフィ分隊長は?」

「現在敵陣前で前線指揮を執っています。」

 

ベルモンド艦長は再び長考に入る。

 

「ガモフより入電。我に続け。との事です。」

「…………ガモフの後ろを詰めろ。本艦は即応態勢で中央に配置しろ。索敵を密にせよ。」

「はっ!」

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

「ゼルマン、私も出る。ガモフは射程圏内に入り次第順次援護を開始せよ。」

「はっ!」

 

クルーゼはガモフからジン ハイマニューバで出撃した。

 

だが、ここで違和感に気づいた。

 

「……まさか……ふむ、だが、ベルモンド艦長は流石だな。これを見越していたのか。ガモフには生贄になってもらおう。」

 

第八艦隊と第十一艦隊の位置と陣形に違和感を持ったクルーゼだが、その持ち前の直感で何かが横槍を入れてくることが分かった。

 

 

 

 

 

 

―――――ドン!ボゥフ!ズドゥン!

 

 

 

 

 

 

いきなり横から攻撃を受けたガモフは、一気に中破した。

 

 

『ヘルダーリンより各位。ガモフ8時方向距離700に、地球連合軍第十三艦隊を確認。』

 

ニコルは直感的に、そしてこれまでの知識から、第十三艦隊は特殊任務絡みの部隊であることを知っているため、今回の近距離に突然出現したのがミラージュコロイドであると推察出来た。

 

『ブリッツよりアマルフィ分隊へ。全機、回頭!第十一艦隊を抜けて離脱します。ザラ分隊はガモフの退艦を援護してください。ヘルダーリンはガモフに付けて!』

『その必要は無い。ガモフより各位。退艦希望者は既にランチで出発した。本艦はこれより殿を務めさせていただく。』

『ゼルマン艦長!』

『アマルフィ、覚悟を決めた男の誇りを踏みにじる気か!』

『くっ…了解。クルーゼ隊長は?』

『私も既にジンで出ている。第十三艦隊をおちょくってはいるが、そう長くはもたん。ゼルマン、頼むぞ。』

『はっ!』

 

通称『特務艦隊』と呼ばれる地球連合軍の第十三艦隊は艦隊としては少ない数だが、指揮官のカツト・オオツカ准将の《忍者戦法》は度々ザフトに痛撃を食らわせる。

第八艦隊の智将、デュエイン・ハルバートン少将(艦隊の増備に伴って昇進)の先見性は戦術単位でも健在である。

 

 

そして、ニコルが突破を選んだ第十一艦隊。地球連合軍の宇宙艦隊で唯一女性提督である。エレーナ・イワーノヴナ・スミルノフ少将は柔軟な艦隊運用で知られる包囲殲滅戦のエキスパートだ。

 

ニコルは1番難しい脱出経路を選んでしまったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、第八艦隊奥にいたイザークとディアッカは通信に気が付かなかった。




この作品では、地球連合軍の宇宙艦隊には穏健派が多くしてあります。
アークエンジェルを追っているのがクルーゼ隊と知ったハルバートンが3個艦隊で包囲することを目論みました。

各艦隊司令官を詳しく書き出します。

第八艦隊司令官:デュエイン・ハルバートン少将
大局観が鋭く、戦争という《外交手段》を用いているという認識。だからこそ、戦争の早期集結を望んでいる。地球連合軍穏健派の中心的人物。

第十一艦隊司令官:エレーナ・イワーノヴナ・スミルノフ少将
柔軟な艦隊運用を得意としていて、包囲殲滅戦を好む。穏やかな人柄で、美人で、30代半ばで将官になるまで貰い手がおらず、未だに独身。もう不惑の文字がすぐそこにあり焦っている。

第十三艦隊司令官:カツト・オオツカ准将
熱源を絶った隠密行動を得意とする。艦隊としては半個艦隊程しかないが、多大な戦果を上げている。旧日本出身で、核を使ったり味方ごと自爆したりする地球連合軍上層部に違和感を持っている。
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