機動戦士ガンダムSEED Natural Gifted 作:風早 海月
バルトフェルドのラゴゥ、イヴとリズの強襲型ラゴゥ、ミゲルのディン、イザークのデュエル(アサルトシュラウド)、ディアッカのバスター。
そこにそれぞれ数機の、バクゥ、ザウート、戦闘ヘリ。
そして、レセップス、ピートリー、ヘンリーカーター。
これがザフトの戦力。
そして、敵はアークエンジェル、ストライク、支援航空機、明けの砂漠。
だが、油断は禁物だ。なぜなら、モビルスーツの最も輝く戦域たる宇宙では無いのだ。それこそ、宇宙ではジン1に対してメビウス5と言われるが、空戦ではディン1に対してスピアヘッド2と言われる。数で大きく上回り、かつ地球圏での戦闘経験の多さがザフトの地上での脅威となっている。
地上の戦い…特に砂漠という過酷な環境下では泥沼化しやすい。戦力比の差が小さくなることも多い。
「イヴ、アークエンジェル発見したよ。10時の方向、距離10,000!」
「射撃開始用意。」
強襲型ラゴゥのメイン武装のビームキャノン・ミサイル・シヴァはイヴが管制する。
「攻撃始め!」
前腕の肩部と羽の間に搭載された二門のシヴァが開戦の花火をあげる。
アークエンジェルの側舷装甲に命中するも、アークエンジェルの分厚いラミネート装甲は貫通を許さない。
「くっ…被害状況知らせ!」
「左舷上部第28ブロックに被弾!」
「熱紋照合…!ラゴゥ…いや、ラゴゥの改修機と思われます!」
アークエンジェルのCICに怒号が響く。
「ラゴゥ改修機、こちらに火力集中!28ブロックの装甲が過熱しています!排熱追いつきません!」
「ミサイル発射管、4番から6番、ウォンバット、撃て!1番から3番、対空榴散弾頭準備!」
「対空用ですよ!?」
「当たればいい!装填急げ!ゴットフリート、バリアント照準、てぇ!」
「後方駆逐艦!前方に戦艦と駆逐艦それぞれ一杯づつ!さらに戦闘ヘリ多数接近!」
「迎撃!ちぃっ!艦長!ローエングリンの発車許可を!」
「ダメよ!あれは地上への汚染が大きすぎる!バリアントの出力とチャージサイクルで対応して!くっ、回避!」
ザフトの部隊の戦力は、戦艦レセップス級1隻、駆逐艦ピートリー級2隻。
戦艦1隻を攻めるにはいささか多い戦力だ。
「取舵いっぱーい!回避!」
操舵手のノイマン少尉(昇進した)は元々戦闘機パイロット。大気圏内の飛行はお手の物…とはいえ、これだけのデカブツを手足のように操るには大きすぎる。
だが、ザフトの戦力はアークエンジェルを攻めるのには、いささか少ないと言えた……
「ええぇい!当たれよ!」
ムウのスカイグラスパーに搭載されたアグニがピートリー級の甲板に載っていたザウートもろとも撃ち抜く。
「ピートリー被弾!速力落ちてます!」
「工場区の影に下がらせろ!…なんて強力な砲だ!あんなものを支援航空機に載せるなんて…!」
スカイグラスパーはその性質的に、ムウが宇宙で乗っていたメビウス・ゼロに比べてかなりの火力を誇る。特にランチャーストライカーを装着した場合、アグニの火力が高速で空を舞うという恐ろしい死神となる。
アグニの火力はヘリオポリスでも証明されている通り、フルチャージだったとは言えコロニーの外壁すら撃ち抜いた。スカイグラスパーの強度的にフルチャージは撃てないが、それでも艦船を撃ち抜くのは簡単だ。
「ええい、弾幕切らすな!あの支援機に砲撃を撃たせるな!」
戦場は大きく3つに分割されている。
アークエンジェル・明けの砂漠 VS ラゴゥ強襲型・戦闘ヘリ(アジャイル)・レセップス
スカイグラスパー VS ピートリー・ヘンリーカーター・ディン
ストライク VS ラゴゥ
既にバクゥは全滅している。
その戦場のうち1つに決着が付きかけている。
「スカイグラスパー2号機、発進!」
「なんだと!?」
「パイロットはカガリさんだそうです!」
ソードストライカーを搭載したスカイグラスパー2号機が発進。推力の下がっていたピートリーに2機のスカイグラスパーが攻撃を集中する。
「やるねぇ、お嬢ちゃん…落ちるなよ!」
それが鍵となり、ピートリーが戦闘不能。
そこにアークエンジェルとラゴゥ強襲型の戦場が近づく。
「あの戦闘機…ムウさん!」
遠距離からアークエンジェルへの射撃を続けていたイヴが標的を変える。
「騎兵隊参上ってね!」
そう、ムウがアークエンジェル援護に戻ったからだ。
「リズ、回避!」
「えっ…っ!?ぐぅっ!」
リズは意識外の空からの攻撃に…否、慣れない四足モビルスーツの視界への適応不足から、ムウのアグニを避け損ねる。
「アークエンジェル…走攻守共に1級…いや、超1級の戦艦なだけあるね…」
最初こそ数に押されていたアークエンジェル側だったが、ストライクがバクゥを壊滅させたことから始まって、ムウの地味にでもしっかりとアジャイルを落としていたこと、スカイグラスパー2機のピートリー撃破。更には途中で命令されていたレセップス艦上での迎撃行動を放棄したイザークとディアッカ、砲撃を当て続けていたにもかかわらず大天使撃破に至らなかったイヴとリズ。
形勢は既に傾いている。これをひっくり返すのはもう難しい。
『おい、どーすんだよ、指揮代理さん?』
『バルドフェルド隊に続きます。』
ミゲルがアークエンジェルをおちょくるように空を舞いつつ機関銃を撃つが、ウィークポイントでも無い限り効果はない。アークエンジェルをこれだけ追い詰めながら落としきれない理由は明らかだ。落とすには強力な火砲が必要なのだ。高機動電撃戦が売りのバルトフェルド隊には無いものだった。しかも、それを持つディアッカのバスターは既に砂の上で足を取られている。
アークエンジェルの砲火力はレセップスを痛めつけていた。
『ダコスタ君。』
『は、はっ。』
『退艦命令を出せ。』
『たっ隊長!』
『勝敗は決した。残存兵を纏めてバナディーヤに引き上げ、ジブラルタルにコンタクトを取れ。』
『隊長!』
バルドフェルドが通信を切ったようで、もうなにもバルトフェルドからの言葉は無かった。
『くぅっ……総員退艦!』
『アイマンさんはレセップスの退艦を援護。イザークとディアッカは各個に撤退。』
イヴはそれだけ言うと、通信を切る。
「リズ、撤退しましょう。」
「ごめん、それは出来ないよ。」
機体を伏せさせたリズはシートから身を乗り出すと、下の砲手席(小柄なため特注)に座っていたイヴをシートから抱き上げる。
そして、地面が近くなっていたコックピットからイヴを追い出す。
「ごめんね、イヴ。バルトフェルド隊長は死なせたくないんだ、私。あの人は私がザフトに入隊して初めて面倒を見てもらった隊長でさ……憧れの隊長で…初恋の人で…何より、今でも想い人なんだよ。」
リズはコックピットに戻る。
「これは私のわがまま。だからさ…」
コックピットが閉まる。
「ごめん。」
勢いよく駆け出したラゴゥに、特注の桃色のノーマルスーツに身を包んだイヴはボーゼンとしていた。
そして、イラッときて、直ぐに悲しくなった。
「わがままって…私は肩を並べるに値しないってこと…か…」
☆☆☆☆☆
リズが駆けつけた時、目に映ったのは、アーマーシュナイダーが突き刺さったラゴゥだった。
「間に合えーーーーー!!!!!」
軽量化されたラゴゥ強襲型の前足のクローが、ラゴゥの胸の装甲とその内側の機材少しを抉った。
その瞬間、ラゴゥは爆発した。
「…うそ…でしょ…間に合わなかった…の?」
それを見たリズの頭の中で、
「ストライクゥーーーー!」
既にエネルギー切れのストライクに、クローを突き立てようとするが、キラもバルトフェルドとの戦いでSEEDが割れている。
ラゴゥ強襲型の胸部に膝蹴りを打ち込み、スラスターで下がる。
『坊主!』
上空から投下したムウのランチャーストライカー。それを受け取り、
邪魔だと言わんばかりにムウのスカイグラスパーに連装14基のミサイル発射管からミサイルを放つ。
だが、その一瞬の隙だった。
「そこぉおおおお!!!!!」
キラはアグニを構えて、撃った。
「―――ッ!」
「詰めが甘いぜ…リズ」
近距離のアグニをリズが避けることが出来た理由…そう、それは…
「ぐっ…しくったか…でも、悔いは…あるな……リズ、お前が好きだったんだぜ……それだけ言えずに死なれたくなか…った……」
ドーン!という爆発と共に、
愛した男とならどこへでも、と戦ったアイシャ。
バルトフェルドに片想いして、助けようとしたリズ。
リズに片想いして、身代わりになったミゲル。
愛とはなんなのだろうか、愛が人を殺すこの世界は…
「……バカ…もっと早く………言いなさいよ……こんな時じゃなくて………」
そして、アグニを近距離で余波とはいえ受けたラゴゥ強襲型もボロボロ。リズもまた、機体の配管のひとつと思われる金属製のパイプに腹を貫かれ、シートに縫い付けられていた。
「こんな時…なんて言うんだったっけ……………あぁ…」
激痛の瞬間。リズの唇は確かに動いた。
「無念。」
お久しぶりです。
お久しぶりで、どシリアス&飛ばしすぎなストーリーですみません。
ミゲルがヘリオポリスで生き残った理由はここで死ぬため……え?SEEDで爆散は死んでない?ふ、フラグちゃうで!?(泳ぎ目)
ここからアマルフィ隊は原作の流れから離れます。