機動戦士ガンダムSEED Natural Gifted   作:風早 海月

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新型機開発

 

 

マリオネット。それは糸などで操る人形のことを指す。

 

QF/A-X001 マリオネット

 

この機体もそれを意図して命名されている。

 

「くぅ…難しいですね」

 

デブリ帯でマリオネットの操作をするのはリーサが合流していないので、隊長のニコルがその席についている。だが、同時に多数の機体(今回は2機)をある程度オートで動いてくれるとはいえやはり機械じみた動きしか出来ず、実戦には程遠い結果だった。事実として、ラスティのジン1機相手に3対1で押されている。

 

「…動いていいです?」

「え…あー、ごめんなさい、引かせます」

 

ニコルは2機のマリオネットを後退させて援護射撃に徹するように命令する。要は固定砲台だ。

 

「照準良し…攻撃、始め」

 

ジンが認識できる距離よりも遠くから光学式望遠偵察哨戒装置に連接されたFCSを通して照準を定める。そして、トリガーを引く。

 

「フラッグはいい機体ですね。マリオネットを差し引いても、観測機としても指揮官機としても長期偵察機としてもよく纏まってると思います」

「そうですね。逆にこのマリオネットは曲者ですね…もしかすると、今研究段階のドラグーンシステムと同じで、特殊な能力を持っていないと使えないタイプなのかもしれません」

 

そもそも、1人で2機もしくはそれ以上の機体を操作するのはいくらコーディネーターだとしても難しい。

 

「ん…?」

「どうかしましたか?」

 

イヴが何かに気付いた。

 

「右130°、上方70°に何か…異常な動きをする何かが…」

「…マリオネットに行かせましょう」

「なるほど、そういった使い方も出来るんですね」

 

ニコルがマリオネット1機を偵察モードで当該方向へ向かわせる。

すると、そこには…

 

「連合軍ですね」

「これは…アガメムノン級が8隻…第11艦隊ですね…今の僕たちの戦力では1戦かけるには不足ですね。せめてマリオネットが全てジンなら何とかなったでしょうけど…」

 

以前はクルーゼやアスランがいたため強行突破出来たが、流石に今の戦力では難しい。

 

「ですが、マリオネットの二次案のテストには良さそうですね」

 

マリオネットの二次案は、艦船からの遠隔操作によって戦闘を行わせる案である。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

ヘルダーリンはプラント方面に離脱する準備を進めながら、並行してマリオネット3機にジンのD装備を取り付けていく。

今回の作戦では、マリオネットによる3方向からの奇襲とDフラッグによる遠距離射撃と共にマリオネットの撤退援護。その後、即座に離脱する嫌がらせにも等しい作戦だった。

 

「作戦を開始します」

 

ヘルダーリンの遠隔操作ブースでは、ラスティと怪我で引退した元パイロットのオペレーター2人の3人がそれぞれ1機を担当している。

D装備のマリオネットが第11艦隊の上下と横の3方向から大型ミサイルを放る。もちろん、第11艦隊はそこまで危機意識がない訳でないのでこれをほとんど迎撃に成功するも、マリオネット3機Dフラッグの援護射撃の中で撤収。ヘルダーリンは最大戦速で離脱。これに成功して、アマルフィ隊初の実戦作戦を成功となった。

 

だが、あまりにもマリオネットの評判がオペレーターたちにも悪く、マリオネットはプラントに帰還後お蔵入りとなるのであった。

 

ちなみにDフラッグは、隊長のニコルから良好な評価によって増加試作を行うことになるのであった。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

C.E.71 4月17日。

実験部隊であるアマルフィ隊に、リーサが合流し、パイロット4人に拡充した。

マリオネット3機を返却する代わりに、ジン1機と試験機2機が割り当てられた。だがこの機体は…

 

まず、ヘルダーリンの乗員を含む全てのアマルフィ隊メンバーに対して特に厳重な箝口令が敷かれた。

 

何故ならば、その試験機というのが…

 

「核動力…まさか完成させているとは」

「なるほど、これ程厳重な箝口令の理由になりますね」

 

新型機の動力源は、ニュートロンジャマーキャンセラーを搭載した核動力機であり、半永久的な活動を可能にした機体だ。

だが、ニュートロンジャマーキャンセラーの情報が漏洩すれば、プラントは再び核の火の手が迫る事になる。

 

「現在、ヘルダーリンは核動力機整備用装備の搭載と、あのデカブツのための専用格納施設を搭載するため改造中です。オペレーションスピットブレイクには間に合いませんが、それ以上に重要な任務が与えられています」

 

研究員が機体の前に案内する。

 

「ZGMF-X07A ミッドナイト。以前極秘裏に開発していた核動力機のデータを元に、核動力の双発化と高火力重装甲化を目指した機体です。いくつか並行して開発している核動力機と同じ核エンジンを搭載していますが、単純に2基載せることで出力は2倍となっています。その装甲にはPS装甲が採用されていますが、圧倒的な出力と特殊なピークパフォーマンスシステムによってビーム兵器すらも通用しないレベルの強度のPS装甲となりました。さらに兵装においても、単機で要塞攻略が可能な火力が備わっています」

「高火力インパルス砲…」

「その代わり小回りが効かないので、僚機のサポートを要します。そのサポートにはDフラッグの単座型が妥当だと見てます。また、機動力の低さは追撃戦にも適性が低く、扱いの難しい機体です」

 

具体的にいえば、ミッドナイトの砲の火力は高負荷モードでアークエンジェルのローエングリンに匹敵する。

 

「ちなみに、リーサとラスティはDフラッグの単座型に機種転換しますから、その機種転換訓練も同時並行ですからね」

 

アマルフィ隊のDフラッグは量子型通信指揮装置を改修した量子型無線給電装置を搭載し、ミッドナイトからエネルギーを供給することが可能となっている。

そもそも量子型装置が高価であるため一般機への搭載は見送られているが、今後母艦への帰投を要さないモビルスーツの開発が進んでいく。

そのプラント最先端のモビルスーツ技術のテストに携わっていることにイヴは少しワクワクが隠せないのであった。

 

 

 

 


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