機動戦士ガンダムSEED Natural Gifted 作:風早 海月
シグーを駆りながら、クルーゼは後方から追撃してくるメビウス・ゼロによる、執拗なまでの射撃を回避しつつガンバレルを一つづつ潰す。
やがて二機は追撃戦の末──ヘリオポリス内部へと侵入。
ところどころに黒煙が立ち上がり、これが平和の国が抱える中立のヘリオポリスの景色である。
──中立のコロニーを、ここまで破壊することを「悪行」というのだろうか? いや、違うな……。それは大いなる見当違いだ。
「地球軍の兵器を造っているこのコロニーの────どこか中立だというのだ」
ラスティが口にした理論と同じである。が、ラスティと違うのは恐らく反論されても止まらないことだろう。
「ふむ、いよいよ邪魔だな、ムウ・ラ・フラガ!」
華麗に身を翻すシグーに、反応は出来てもゼロが着いていかず。ゼロを叩き切ろうとした斬撃は残った唯一の武器だったリニアガンを切り裂き、ゼロの戦闘力を奪った。
☆☆☆☆☆
地球連合軍の士官―マリュー・ラミアス大尉は学生たちを拘束していた。
まあ彼女1人では何も出来ないので、結局彼ら学生たちを使って作業をしていた。
その時、ゼロとシグーがシャフトから飛び出してきたのだった。
「…!」
イヴはイエローフレームに飛び乗った。そして、モルゲンレーテで見つけたモビルスーツ用の機関銃をシグーに向ける。
「よーく狙って……そこ!」
イエローフレームの撃った機関銃弾がシグーを襲う。たまたま機体色が後ろのビルの保護色になっていて、意識外からの攻撃となり、シグーのライフルをたたき落とす。
「ちぃっ!見落としたか…あれが計画外…吸い出したデータにも無い機体……ふむ、その機体貰い受ける!」
直ぐに重斬刀をかざして接近してくるが、その時だった。
森林地帯から大きな船が飛び出してきたのだった。
「なに!?」
「あれは…」
イエローフレームのメインコンピュータが名前とデータを表示する。
「アーク…エンジェル…」
この世界で今現在唯一、地上・宇宙両用艦として設計された宇宙艦だった。類似艦としてはオーブのイズモ級が挙げられるが、これは地上での運用はほとんど考慮されていない、部分連絡艦である。それに対して、このアークエンジェルは地上での戦闘も可能な能力を持つ。
そのアークエンジェルからミサイルが発射された。
「当たる!」
シグーに、ではなく、ヘリオポリスにだ。
致し方なく、弾幕を張ってメインシャフトをミサイルから保護する。
シグーを助けた形だ。
それを見たクルーゼは引き際をわきまえていた。
が、そこにストライクに搭載されたランチャーストライカーのアグニが襲った。
その威力も知らずに。
シグーは間一髪……というか掠った。そのビームはそのまま真後ろのヘリオポリスの地表に大穴を開けた。
その穴からシグーは飛び出し、逃げていった。
☆☆☆☆☆
アークエンジェルのデッキに降り立ったストライクとイエローフレームは手に乗せていたサイやミリアリアたちを降ろした。
「ラミアス大尉!」
デッキに走ってくる人達がいた。
「バジルール少尉。」
「ご無事で何よりでありました。」
「あなたたちこそ、よくアークエンジェルを…おかげで助かったわ。」
コックピットを開いたキラとイヴがワイヤーで降りると、ザワザワした。
「ら、ラミアス大尉…これは…?」
ラミアスが言い淀んでいると、男の声が響いた。
「へぇー、これは驚いたなぁ。」
男は敬礼して名乗る。
「地球軍第七艦隊所属、ムウ・ラ・フラガ大尉。よろしく。」
「第二宙域第五特務師団所属マリュー・ラミアス大尉であります。」
「同じく、ナタル・バジルール少尉であります。」
「乗艦許可を貰いたいんだけどねぇ。この艦の責任者は?」
「………艦長以下、艦の主だった士官は皆戦死されました。よって今はラミアス大尉がその任にあると思いますが…」
「…ぇ!?」
「無事だったのは、艦にいた下士官と工兵だけです。私はシャフトで運良く難を逃れました。」
「艦長が?そんな…」
「やれやれ…なんてこった。まぁ、とにかく許可をくれよ、ラミアス大尉。俺の乗ってきた艦も落とされちまってねぇ。」
「は、はい。許可致します。」
「で、あれは?」
ムウが振り返って、キラとイヴを見る。
「ご覧の通り、民間人の少年たちです。ストライクの少年は襲撃を受けた時、何故か工廠区にいて、私がGに乗せました。あっちの機体の少女はモルゲンレーテの他の区画で見つけたオーブの自国用機を見つけ、ヘリオポリス防衛のために乗り込んだそうです。キラ・ヤマトとイヴ・ルイスです。」
「ふぅん。」
「彼らのおかげで先にもジン1機を撃退し、あれだけは守ることが出来ました。」
「ジンを撃退した?あの子供たちが?」
「俺は…あのパイロットになるヒヨっ子たちの護衛で来たんだがねぇ……連中は―――」
「ちょうど艦長に着任挨拶をしている時に爆破されましたので、共に……」
「そうか…」
ムウはキラとイヴに歩み寄る。
「な、なんですか?」
「君ら……コーディネーターだろ?」
その一言に、その場にいた人達は色んな意味でざわつく。
「はい。」
キラの一言に、地球軍の警備兵が小銃を鳴らす。
「なんなんだよ、それはぁ!」
「トール…」
「コーディネーターでもキラは敵じゃねぇよ!さっきの見てなかったのか!?どういう頭してんだよ、お前らは!」
「……銃を下ろしなさい。」
ラミアス
「ラミアス大尉…これはいったい!?」
「そう驚くことも無いでしょう?ヘリオポリスは中立国のコロニーですもの。戦火に巻き込まれるのを嫌でここに移ったコーディネーターがいてもおかしくないわ。違う?キラ君。」
「ええ、まぁ…僕は一世代目のコーディネーターですから……」
「一世代目?」
「両親はナチュラルってことか…いや、悪かったなぁとんだ騒ぎにしちまって。俺はただ聞きたかっただけなんだよねぇ。」
「フラガ大尉…」
「ここに来るまでの道中、これのパイロットになるはずだった連中のシュミレーションを結構見てきたが、ヤツらノロくさ動かすにも四苦八苦してたぜ……やれやれだな―――」
「あの。」
ムウが歩きだそうとした時だった。イヴが声を上げる。
「2点、言いたいことがあります。まず、誤解されてるでしょうけど、私はナチュラルですからね?」
「「「「「な!?」」」」」
「…マジかよ…おいおい。」
「そう驚くことも無いでしょう?コーディネーターを上回る天才のナチュラルがいたって。」
「いや、そういねぇよ。」
「エンデュミオンの鷹のあなたがそう言いますか?あなたとてジンを撃墜したことだってあるでしょう?あなたもコーディネーターに上回る能力を持っているということですよ。そして、2つ目。キラはコーディネーターとしてもかなり高位の能力を保有していることを自覚して欲しいな。コーディネーターでも、モビルスーツを全員が戦闘レベルで動かせる訳では無いし、戦闘中にOSを書き換える?普通のコーディネーターには無理です。これは捕虜としてプラントにいた私だからこそ分かると思いますけど、コーディネーターだからといって生まれて直ぐになんでも出来るわけじゃないんです。努力すればするだけ能力が伸びる可能性がナチュラルよりはあるだけです。努力しないコーディネーターは凡人以下です。」
イヴの主張に、地球軍・学生問わずに言葉を失った。
彼らもまた、偏見や先入観に呑まれていたことを自覚したのだった。