機動戦士ガンダムSEED Natural Gifted 作:風早 海月
「はぁ……コロニー内の避難はほぼ100%終わっているそうだけど、先程ので警報レベルはナインに上がったそうよ。」
ラミアスは艦長席の受話器を戻すと、艦の士官が揃った艦橋でそう切り出した。
「シェルターは完全にロックされちまったわけか。…ああ、そんじゃああのガキどもはどうすんだ?」
「え?」
「もう、どっか探して放り込むって訳にもいかないじゃないの。」
「彼らは軍の機密情報を見たため、ラミアス大尉が拘束されたのです。このまま解放する訳には…」
「じゃあ…脱出にも付き合ってもらうってのか?出てきゃあド派手な戦闘になるぞ。」
「ストライク…そして例の機体の力も必要になると思うのですが…」
「あれをまた実戦で使われると?」
「使わなきゃ、脱出は無理でしょう?」
「あの坊主は了解してるのかい?」
「今度はフラガ大尉が乗られれば…」
「おい、無茶言うなよ。あんなもんが俺に扱えるわけないだろ。あの坊主が書き換えたっていうOSのデータ、見てないのか?あんなもんが普通の人間に扱えるのかよ?嬢ちゃんみたいなGiftedならともかく。」
「なら…元に戻させて……とにかく、あんな民間人の……それもコーディネーターの子供に、大事な機体をこれ以上任せるわけには…」
「そんでノロくさ出てって的になれっての?」
バジルールはムウの言い分に反撃出来ず、口ごもるのだった。
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「コロニー全域に電波干渉。Nジャマー数値増大。」
「なんだと?」
艦長席に座る艦橋指揮を任されていたバジルールが聞く。
「ちぃっ…やっぱこっちが出てくまで待つ気はないかぁ、あのヤロウ!」
「またヘリオポリス内で仕掛けてくるつもりですか?」
「楽だぜぇ?こっちは発砲出来ない。むこうは撃ち放題だ。」
ムウは笑うが、笑い事ではないのである。
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「お断りします!僕達をもう戦争になんて巻き込まないでください!」
「キラ君…」
「あなたの言うことは正しいのかもしれない。僕達の外の世界は戦争をしているんだって。でも、僕らは戦いが嫌で中立のここを選んだんだ!それを…!」
その時、艦内に放送がかかる。
『ラミアス大尉!ラミアス大尉!至急ブリッジへ!』
ラミアスは近くの通信機のスイッチを入れる。
『どうしたの?』
『モビルスーツが来るぞ!早く上がって指揮を執れ。君が艦長だ。』
『私が?』
『先任大尉は俺だが、この艦のことは分からん。』
『分かりました。総員第一戦闘配置。アークエンジェル発進準備。大尉のモビルアーマーは?』
『ダメだ、出られん。』
『では、フラガ大尉にはCICをお願いします。』
通信を切ると、ラミアス艦長は振り返る。
「聞いての通りよ。また戦闘になるわ。シェルターは今レベルナインであなたたちを下ろしてあげることも出来ない。どうにかこれを乗り切ってヘリオポリスを脱出することが出来れば…」
「卑怯だ、あなたたちは…!」
「キラ君……」
「キラ、あなたは出なくていい。私がイエローフレームで出る。」
「イヴ…!?」
「マードック軍曹にも話してあります。シートは私サイズのものがモルゲンレーテにあったので付け替えてもらっています。……今更コルシカ条約なんてあってないようなものでしょう?」
「…ごめんなさい。頼むわ。」
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「ヘリオポリスからの脱出を最優先とする。戦闘ではコロニーを傷付けないよう、留意せよ。」
「無茶だろ…」
ラミアス艦長の指示に、CICの下士官が呻く。
「1番コンテナ開けぇ!エールストライカー装備だ!」
マードック軍曹の指示で同規格のバックパック接続のイエローフレームに追加装備が付けられる。
「接近する熱源2。熱源パターン確認。ジンです。」
「なってこったい!こりゃあ拠点制圧用の、重爆撃装備だぞ!あんなもんをここで使う気か!?」
「さらに後方、熱源2。」
「イエローフレーム、発進させろ。」
「はっ!これは…1機はX303、イージスです!」
ピンと張った空気が流れる。
「もう実戦に投入してくるなんて…!」
「今は敵だ!あれに沈められたいか!?」
「コリントス、発射準備。レーザー誘導。」
「フェイズシフトに実体弾は効かないわ。主砲、レーザー誘導。焦点拡散!」
有効距離を短くすることで、コロニーへの被害を減らすのだ。
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「ふん!そぉら、堕ちろぉー!」
「重粒子砲……ジン本体のエネルギーでは無い……射撃数は少ないか。なら全てシールドで防ぐしかないかな。」
ストライク用のシールドを掲げて、重粒子ビームを受け止める。
「ラミネート装甲…そう長くは持たないか。」
イエローフレームは持ってきたビームライフルを構える。
「1発で止める…!よーく狙って……ここ!」
イヴの的確な狙撃に、重粒子砲持ちのジンは肩と胴体の間を撃ち抜かれて損傷する。
「ぐぁあ!?くそ、機体が…離脱する!」
ミゲルは重い機体を翻して、コロニー外へ逃げる。
「よし。アークエンジェル…!」
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「イエローフレーム、ジンを撃退!」
「やるなぁ嬢ちゃん!」
「ジン2機、来ます!」
「主砲制御こっちに回せ!手動でやる!」
アークエンジェルのCICではやはりムウが強かった。手動で主砲をジンに当てたのだ。
「オロール!くそぉ!」
「さらに1機来ます!」
「迎撃!」
「間に合いません!」
アークエンジェルは並の戦艦ではない。装甲こそラミネート装甲だが、戦艦特有の排熱性能を誇り、かなりの防御力を持つとともに並でない攻撃力を持つ。
被弾しても、従来の艦ほどのダメージはない。
『ラミアス艦長、艦の設備で非居住地区を撃ち抜いて脱出出来ませんか?これ以上コロニーに被害が出れば、強硬手段が取れなくなります。』
『……それしかないわね。』
幸いにして、まだコロニーの自動修復ナノマシンの残量は何とかなるだろう。
「特装砲発射準備!照準、採光部。発射と同時に機関一杯!」
「りょ、了解!」
「ローエングリン、照準!…撃て!」
ラミアス艦長はイエローフレームが甲板に着艦したことを確認して、ローエングリンを撃った。
「開口部開きます!」
「全速!急げ!自動修復ナノマシンが塞ぐ前に!」
「馬鹿な!なんてむちゃくちゃな離脱方法だ!」
アスランは唖然としながら、母艦に通信を入れる。
『ヴェザリウス、応答せよ!』
『こちらヴェザリウス。』
『敵艦が外壁を撃ち抜いて離脱!そちらに向かう!』
『了解した。なあに、こちらは2隻だ。心配するな。』
アスランは少しばかり胸騒ぎがしてたまらないのであった。