機動戦士ガンダムSEED Natural Gifted 作:風早 海月
地球連合軍の艦船は無補給でおよそ2~3ヶ月の行動が可能として設計されている。なぜなら、宇宙で1番怖いのは食料・水の調達である。
「…水は濾過器を通せばサイクルは出来ますが……」
濾過器は非常用である。なぜなら、壊れやすいからだ。
「うーむ、搭乗員数は?」
「100に満たない数です。というか50ほどです。」
「なるほどねぇ…節水すれば第八艦隊に合流まで持つかね?濾過器を併用前提で。」
「ですが、途中で濾過器が壊れれば一気に水不足になります。」
「そりゃあそうだが、船籍のないこのアークエンジェルで、アルテミスかどっかでも行くか?即拿捕だぜ?」
「それは…否定しきれませんが……さすがにユーラシア連邦と言えど………」
「まあ、ともあれ私たちは決断せねばなりません。私もアルテミスは反対です。キラ君やイヴちゃんたちがいなければ…いえ、いなければここに私たちはいませんか。」
ストライクとイエローフレーム無しにクルーゼ隊を退けることは不可能だろう。
「マードック軍曹からの報告によりますと、まもなく先の戦闘の修理が終わるそうです。」
「……そうねぇ…ヘリオポリスには頼れないかしら?」
「ま、面の皮が厚いけど、それが1番なんだがねぇ。」
あれだけの被害を出した理由の片割れにやるものは無いと言われても仕方ないのである。とはいえ、無人の港からホースを引っ張ってくるだけになのであまり問題は無い。
「では港の方に…」
「だな。いいな?艦長?」
「ええ。お願いね、ナタル。」
「はっ。」
バジルールは操船要員に招集をかける。
「…にしても…警戒レベル下げて貰えたらなぁ。すぐにでもガキども下ろしてやれるんだが……」
「ええ。そうね。」
ヘリオポリスのシステムでは、1度上がった警戒レベルはコロニーの管理者でないと戻せず、現在の管理者はオーブ連合首長国から依頼を受けたジャンク屋と代表首長であるウズミ・ナラ・アスハのみであるため、到着まで警戒レベルは変わらないのである。
「艦長、操船クルー配置につきました。」
2分ほどで操船に必要なクルーが配置につく。
「機関始動。両舷前進微速。赤黒なし。アークエンジェル発進。」
「機関始動。両舷前進微速。赤黒なし。アークエンジェル発進。」
ラミアス艦長の指示を復唱するノイマン。
「ヘリオポリス港の前で相対速度合わせ。その後、艦尾を後ろに入港する。ガイドレーザーはでない、留意して。」
「了解!」
ガイドレーザーがない宇宙でのドッキング(入港や接舷)は頭がおかしいほど難しい。まともにぶつかればその運動エネルギーで、アークエンジェルはお釈迦だろう。
昔の西暦時代にあった宇宙開発期初期のドッキングは数時間もかけて行われていた。
「制動噴射まで…2、1、噴射。……相対停止。」
ノイマンは機械の手助けを受けながらも類まれなる操艦技術で綺麗にアークエンジェルを入港させた。
「おいおい…ガイドレーザーもガイドビーコンも無しに入港とか…」
「ノイマン曹長って…」
ロメロ・パルとダリダ・ローラハ・チャンドラⅡ世の両伍長はひきつった顔が止められない。元々戦闘機乗りで、宇宙艦の操縦など初めてだったはずなのだ。それをこんなにも綺麗に、早く、1発で決めるとなると、もはや順応性どころの話では無い。神がかっている。
「作業班は直ちに燃料と水の補給を。食料もせっかくだから倉庫から貰っていきましょう。」
「いいのかい?」
「モルゲンレーテとの契約的にはあちらが補償するはずよ。…でも、謝罪文くらい置いていこうかしら?」
「おいおい、それじゃあ怪盗だぜ。」
軍服の袖をまくって少し着崩したムウは、手を上に向けて肩を竦める。
ムウはブリッジを出て、格納庫に赴く。
「おや、フラガ大尉…どうしたんですかい?」
「なに、クルーゼの事だ。何かあるかもしれんからな。一旦引いたとはいえ、ローラシア級は生きてるしG4機はまだ健在だ。…今のうちにゼロを少しでも…な。とっさの時の反応が遅れてたってのもあるんだがね。」
ムウはOSの設定を少しだけ敏感にするのであった。