Overline   作:空野 流星

2 / 43
謎の転校生現る!

炎が唸りをあげ、真夜中の闇を照らし出す。

辺りには真っ赤な絨毯が敷き詰められ、吐き気を催すような匂いが充満している。

 

そこで二人は対峙していた。

 

 

「さあ、今こそ。」

 

 

青年は真っ赤に装飾された剣を少女へと突きつける。

 

 

「どうして!」

 

 

少女は涙を流しながら訴える。

 

少女の足元には彼女の両親が真っ赤な絨毯の上で寝そべっている。

 

 

「俺はお前が欲しかった。 自分だけのものにしたかった。」

 

 

青年は狂気に満ちた笑顔で語る。

 

 

少女は、この青年がもう自分の知ってる兄ではないと悟る。

 

 

「貴方は誰……?」

 

 

その問いに青年は行動で答えた。

 

 

「今こそ愛の契りを!」

 

 

青年はその血濡れの剣を……

 

 

 

――少女へと振り下ろした。

 

 

 

 

 

今日も相変わらず、外から建設機械の音が鳴り響いている。

 

 

「なあ葉助、今日転校生が来るって知ってるか?」

 

 

授業中であるにもかかわらず、彼……村田健司は平然と話しかけてくる。

 

 

「そうなんだ。」

 

 

僕は素っ気なく返事を返し、再び窓の外へと視線を戻した。

 

 

「……」

 

 

ふと視線が合った。

 

腰まで伸びた綺麗な金髪。

目を見張るほど真っ赤な色のワンピース。

吸い込まれそうな綺麗な緑の瞳。

 

この場所とは不釣合いな少女がこちらをずっと見つめている。

 

 

「おい、そこの二人!」

 

「やっべ!」

 

 

健司は慌てて教科書で顔を隠した。

 

彼女は担任のキャシー・ダグラス先生。

見た目は美人だが、性格がアレという典型的なパターンの人物である。

そのせいで、未だに彼氏いない歴記録を更新しまくっている。

 

 

「桂木葉助、教科書37Pの上からの文章を読め。」

 

「は、はい。」

 

 

どうやらこれだけで済みそうだ。

健司は横でニヤニヤしている。

 

 

「血管の中を流れるモノの一つであるこの物質がエーテル器官から出来たものであって、魔源(マナ)と呼ばれている。」

 

 

よくある授業の一風景。

 

 

「エーテル器官とは、心臓の一部にある器官です。 

火・水・雷・風の4種類のエーテル属性うちの二種類の属性をもっています。」

 

 

魔道都市ヴェネティアにある、世界最大規模の魔法学園、ラタトクス学園。

 

 

「魔法は人間のイメージと音声――それを魔源(マナ)を使って変換・具現化して発動させたものである。」

 

 

この時の僕達は、その平和がずっと続くと思っていたんだ。

 

 

 

 

 

授業の後、先生にみっちりしぼられてから教室に戻った。

どんな風にしぼられたなんて口でいえないくらいの苦痛だった。

 

 

「ところで健司、さっきの話の続きを教えて欲しいんだけど。」

 

 

先生にしぼられながらも、その事だけは覚えていた。

なんて律儀な青年なのだろうか僕は。

自分でも笑えてくるくらいだ。

 

 

「なんだよ、やっぱり気になってたんじゃないか。」

 

 

そう言って笑いながら僕の肩を叩く。

ちょっと力の入れすぎと思うのだが。

正直痛いんですよ筋肉馬鹿さん。

 

 

「そ、それで……転校生が来るっていってたけど?」

 

「おうおう、この時期に珍しいと思うだろ?」

 

 

確かにそうだ。

新入生ではなく、この6月に転入してくるというのは珍しい。

 

 

「噂なんだが、そいつは超エリート君らしいぞ?」

 

「エリート君ねぇ、でもなんでこの時期なのか。」

 

「それなんだよなぁ、まぁ所詮噂だしなんとも言えないよな。」

 

 

まぁその通りではある。

 

 

「そういえば健司。」

 

 

ふと、さっきの事を思い出したので健司に尋ねる。

 

 

「どうした?」

 

「さっきさ、外にいた女の子見なかった?」

 

「は? お前何言ってんの?」

 

 

予想通りの答えが返ってきた。

 

 

「だよねぇ~」

 

 

僕が見たあの娘は、なんだったのだろうか……

 

 

「まぁとりあえず帰ろうぜ~」

 

 

そう言って健司が歩き出す。

 

ふと、曲がり角から出てくる人影が見えた。

 

 

「あぶな――」

 

 

僕の言葉が間に合うはずもなく、二人はゴツンと衝突した。

 

 

「いってて、わりぃ……」

 

「――こちらこそすまない」

 

 

お互いに立ち上がり視線を交わす。

僕はそれを遠目で見ていた。

 

相手は初めて見る顔であった。

 

男とも女ともとれる美貌。

長く綺麗な金髪は後ろで一つに束ねられている。

 

ふと、先ほど見た少女に似ているなと思った。

 

 

「君は……?」

 

「あぁ、実は明日からこの学校で学ぶことになっている。」

 

 

僕の疑問の意図に気づき、そう答えた。

 

 

「へぇ、あんたが噂の転校生か。」

 

 

健司も興味津々である。

 

 

「私は、レイ・ラグナールだ、よろしく頼む。」

 

 

”ラグナール”

 

 

健司の言っていた超エリートの意味がそれだけで分かった。

 

誰もが知る3賢者の一人、カスパ・ラグナール。

その人物と同じ姓を名乗っているのだから……

 

かつて、人類は魔法を使うことができなかった。

60年程前に訪れた巨大な訪問者――蜥蜴のような姿の者達が現れた

彼らは自分達を時空龍と名乗り、人間達に魔法の知識を与えた。

 

その知識を初めて伝えられた3人が現在の3賢者である。

 

 

”バルト・ザーフィル”

 

 

”メル・オルフェン”

 

 

そして

 

 

”カスパ・ラグナール”

 

 

である。

 

 

魔術に携わる者であるならば誰もが知っている知識である。

 

 

「どうした?」

 

 

レイが困ったように首を傾げている。

正直、想像以上の大物であったため、僕も健司も思考が止まってしまっていた。

 

 

「な、なんでもないよ。」

 

 

とりあえず深呼吸をして高揚した気分を落ち着かせる。

 

 

「それで、一つ頼みたい事があるんだが……」

 

「別にいいけど?」

 

「実は職員室に行きたいんだが、迷ってしまってな。」

 

 

困惑してそう言った。

 

その程度ならいくらでもという所だ。

だが、先ほど職員室から戻ったばかりなんだけどね。

 

 

「それならすぐそこだし案内するよ。」

 

「うぇ、また戻るのかよぉ~」

 

 

健司はうなだれてそう言った。

まぁ気持ちはよく分かるが。

 

 

「すまないな……」

 

「お安い御用だよ。」

 

 

こうして俺達三人は職員室へと向かった。

 

 

 

 

 

「あら、戻ってきてまだ説教して欲しかったのかしら?」

 

 

戻ってきた僕達を見つけてキャシー先生はそう言った。

別にそういうわけではないのだが……

 

 

「いえ、職員室までの道案内を頼まれまして。」

 

 

キャシー先生も僕達の後ろにいるレイに気づいたようで、なるほどねっと呟いた。

 

 

「でも丁度良かったわ。 どうせ説明するつもりだったし。」

 

「と、言いますと?」

 

「実はレイ君の部屋なんだけど、貴方達と同じ部屋になるのよ。」

 

 

えっ、そういうのは前もって言っておくべきなんじゃ?

 

 

「さっき言おうとしたら君たち、説教終わってすぐ戻っちゃうから言いそびれてね。」

 

 

偶然というのは時に恐ろしいものである。

 

 

「荷物はもう寮に届いてると思うから、2人で手伝ってあげること。」

 

「分かりました。」

 

「あぁそれと、明日の実技試験の説明もしてあげてね~」

 

 

この先生、色々と丸投げである。

 

 

――色々あったが、僕達3人の共同生活が始まる事となった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。