「ねぇ、お兄ちゃん。」
「……」
「葉助お兄ちゃん、聞いてる?」
レイの呼ぶ声が、
俺は組み立てていた銃を机の上に置き、背後のベッドの上に座っているレイに振り返った。
「どうした?」
「そろそろ銀華さんの所に行かなくていいの?」
そう言われて腕時計を確認すると、作業を始めてから1時間が経過していた。
確かに、そろそろ報告に行った方がいいかもしれない。
「こいつの組み上げが終わったら行くよ。」
「もう!」
レイは呆れた顔でベッドに潜り込んだ。
僕は机に向き直すと、机の上に置いた銃を手に取った。
ガンメタルブラックのボディが、光に反射して鈍く光る。
これは、今組み上げている新しい
コルト・ガバメントという最新の銃をベースに、俺好みにカスタマイズしている。
装弾数は
更に反動を抑えて左手で扱えるように改良している。
暗殺用にサプレッサーも使用可能である。
組み上げを終え、軽く構えてみる。
重さはフェンリルよりも軽いな……
腕を下し、ホルスターへと銃を収める。
「ちょっと銀華さんの所に行ってくる。」
「はーい。」
レイは布団に潜ったまま、顔を出してはくれなかった。
――
―
「入れ。」
3度のノックの後、銀華さんからの入室許可が出た。
俺はゆっくりとドアノブを回して扉を開く。
目の前に広がるのは散らかった部屋。
足元には丸めた書類が散乱し、机の上は銃のパーツが占拠している。
唯一、本棚の本だけは綺麗に並べられていた。
「銀華さん、少しは掃除したらどうです?」
「気が向いたらやる。」
こんな人が寮母さんをやっていたとは、見る影もない有様だ。
床のゴミを避けながら、なんとか机の前まで辿り着く。
「では報告します。」
「うむ。」
「ターゲットは処理、奴が持っていた情報はこれで全部です。」
机の上に、遺品と資料を置く。
銀華さんは、資料に目を通し始める。
「今度はターゲットの首でも持ってきてくれ。」
「もう、その話で弄るのはやめてくださいよ。」
こうやって、今でも初任務での事を言って弄ってくる。
余程、銀華さんにとって”面白い”事だったのだろう。
「おい、ちょっと待て……この最後の表記は間違いないんだな?」
「はい、確かに奴は”ロキア”と言っていました。」
ロキアという名に、何か覚えがあるのだろうか。
銀華さんの表情が、一層険しくなった。
それどころか、殺気さえも纏っている。
「これは、私も他人事では無くなってきたな……」
「銀華さん?」
「いや、これは後日話そう。 今はそれよりも――」
急に表情を変え、新しいおもちゃを見つけたように目を光らせている。
やはり、コレに気づいたって事か。
俺は観念してホルスターから新しい
「そのデザイン! 新型のガバメントをベースにしているな!」
「さ、流石ですね。」
俺の手から銃を奪い取り、観察を始める。
その姿はまるで子供のようだ。
「拡張性を高めて臨機応変に対応出来るようになっているのか。 しかも――」
「あの、銀華さん?」
「この口径で、リボルバー系よりも装弾数は多いし、反動も――」
だめだ、自分の世界に入って全く話を聞いてくれない。
こうなってはもうダメだ……
「名前は?」
「は?」
「コイツに名前はもう付けたのか!?」
「いえ、まだですけど。」
それを聞くと、銀華さんは急に悩み始めた。
予想通りなら、
「そうだな――”ヘイムダル”」
渾身の命名だとばかりにドヤ顔を決めている。
また銀華さんお得意の、昔読んだ本に出てくる名称なのだろうか。
「
「そうですね。」
彼女の命名からは誰も逃れられない。
それは呪いのように絶対的なのだ。
――たまには自分で名前をつけてあげたい。
「よし、じゃぁ早速試し撃ちに行くぞ!」
「い、今からですか!?」
「当然だ、さぁ行くぞ葉助!」
意気揚々と準備を始める銀華さん。
俺は、拒否する事すら叶わずに、ただついていくしかなかった。